2018年10月11日




■会社法・商法の特徴


「商法」とは,文字通り「商い」に関する法律です。

この世の中で「商い」をしているのは株式会社などの「会社」と,個人事業主などの「個人」がいます。

昔は「商い」に関する法律のうち,「会社」に関する法律が色々あったのですが,「会社に関する法律は出来るだけ1つにまとめよう」ということで平成18年に「会社法」という法律が施行されました。

そのため,昔からあった「商法」と法律の一部(32条から500条まで)は,ごっそりと削除されています。

このような経緯で,「商法」の科目における,司法試験の出題範囲は「会社法」「商法(商法総則・商行為法)」「手形法」「小切手法」など,いくつかの法律に分かれているのですが,司法試験や予備試験の問題は主に「会社法」から出題されます。

「商法(商法総則・商行為法)」は,予備試験の短答式試験で数問程度出題され,予備試験及び司法試験の論文式試験で,会社法の問題に絡めて出題されることがあります。

「手形法」「小切手法」は,予備試験の短答式試験で数問程度出題されますが,論文式試験で出題される可能性は低いので,全く勉強しない受験生もいます(私も受験生時代は「手形法」「小切手法」はほとんど勉強しませんでした。)。

そのため,司法試験受験生は「会社法」を必死で勉強することになるのですが・・・この「会社法」は1000条近くある上に,1つ1つの条文が長いんです。


他方で,多くの受験生は「会社法」の勉強を後回しにすることが多いため,司法試験の本番では,六法で必要な条文を引くことすら出来ずに不合格になっていく人も少なからずいます。

要するに,司法試験の「会社法」のレベルはとても低いんです。



レベルが低いということは裏を返せばチャンスで,「会社法」を大事なところに絞って勉強して,安定した点数を取ることが出来るようになれば,他の受験生から大きくリードすることができ,司法試験に合格出来る確率を一気に上げることができます。

そこで,会社法・商法の効率的な勉強方法とおすすめの基本書などについてお話します。





■商法の入門書を読もう


「会社法・商法」は「民法」の「特別法」です。

「特別法」がどういう意味かというと,普通であれば「民法」という法律が適用される場面であっても,会社の取引や,商売を行っている人の取引では「会社法・商法」という法律が優先して適用される,ということです。

他方で,会社の取引や,商売を行っている人の取引あっても,「会社法・商法」などの特別法に書いていないことは基本的に「民法」がそのまま適用されます。

ですから,「会社法・商法」を理解したり,「会社法・商法」の問題を解いていくためには「民法」の知識が必要になります。

そのため,会社法・商法の勉強に取りかかるのは,民法の入門書を読んで,ある程度民法を理解した後のほうが効率が良いです。



会社法・商法の勉強については,他の科目と同様に,最初に入門書を読んで全体像を理解しておくと,後々の勉強が進みやすくなります。


司法試験の入門書としては,会社法・商法の基礎がコンパクトにまとめられている「伊藤真の商法入門」が読みやすくて,とっつきやすいと思います。


気合いを入れれば半日で一気に読み終わることができるサイズです。

●ISBN-10: 4535521204



最近の本では,会社法の分野限定ですが,超有名な神田秀樹先生が入門書を出版されています。

会社法の全体像を把握するにはおすすめです。

●ISBN-10: 4816361758








■会社法・商法の論文問題集を読もう


他の科目と同様に,会社法・商法も論文問題集を読むことをおすすめします。

司法試験の受験勉強の最終的な目標は,「論文試験で答案を書くことができるようになること」であるからです。

最初に読む問題集としては「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 4335303661

●ISBN-10: 4335303580


最初は会社法の範囲に絞って2~3回程度読んでみて,分からないところを中心に基本書や判例集を読んでみると良いと思います。


注意点として,「伊藤塾試験対策問題集」は参考答案の質がとても高いのですが,会社法・商法は範囲が広いため,この問題集だけでは知識に穴ができてしまいます。

そこで,会社法・商法の知識の穴を埋めていく作業が必要になります。






■会社法・商法の知識の穴を埋めよう


以前の(新)司法試験では,会社法・商法についても短答式試験が課されていたため,知識の穴は短答式試験の勉強である程度埋めることができました。

また,予備試験を受験する人は,会社法・商法についても短答式試験の勉強をするため,そこである程度は知識の穴を埋めることができます。

しかし,今の司法試験では,会社法・商法についても短答式試験が課されていないため,予備試験を受験せずに,法科大学院ルートで司法試験を受験する人は,どうしても知識が断片的になってしまいます。

知識が断片的になると,論文式試験で全く見たことも聞いたこともない問題が出て慌てる,ということになりかねません。

そこで,知識の穴を埋めていく作業が必要になるのですが,知識の穴に埋め方にはいくつか方法があります。




○他の論文問題集も読んでみる

知識の穴を埋めるには,やはり司法試験に出題されるような問題を掲載した問題集を読むのが効率が良いです。

私は優秀な同級生とゼミを組んで「ロースクール演習 会社法」という問題集の問題をこなしました。

●ISBN-10: 4587040037

「ロースクール演習 会社法」は大学の先生が書いている問題集で,解説の質も高く,問題も司法試験を意識した良質なものが多く,おすすめです。

ただ,欠点として解答例が載っていません。

優秀な同級生とゼミを組んで,交代で解答を作成したり,先輩にお願いをして解答例をもらうと良いと思います。

解説が詳しいので,時間がない人は,「問題文を読んで,問題意識を持った上で,解説を読む」という作業をするだけでも十分に勉強になると思います。



その他に,「とにかく網羅的に問題集をガンガンと読み込みたい」という人には,「えんしゅう」本も便利です。

答案の質は「伊藤塾試験対策問題集」には落ちますが,答案構成のようなシンプルな形の答案例が掲載されているので,短時間で読み込むことができます。

●ISBN-10: 4864662657





○趣旨規範ハンドブックを使う

辰已法律研究所 から「趣旨・規範ハンドブック」という便利な本が出版されています。

●ISBN-10: 4864663688

この本は,司法試験の論文式試験で出題された,あるいは出題される可能性がある要件や論点知識をコンパクトに整理した本です。

ある程度勉強が進んできた後に,この本を見ながら自分が知らない知識がないか確認し,知らない知識が出てきたら基本書等を読んで知識を整理しておく,という使い方ができます。


また,司法試験の会社法の試験については,問題の処理パターンを用意しておくことが必要です。

会社法の問題では,実際の訴訟を念頭において,どのような訴訟を提起するか,そして,その訴訟においてどのような主張をするのか,という点が問われることが多いのですが,1000条近くある会社法の条文において,訴訟の要件を規定した条文は飛び飛びに規定されているため,各訴訟の条文がどこにあるかを把握するとともに,その条文においてどのような点が争点となりうるのかを予め整理しておく必要があります。

会社法の勉強において,この作業を疎かにしていると,他の受験生に大きな差をつけられてしまう可能性があります。

この問題の処理パターンを整理する作業は面倒なのですが,この「趣旨・規範ハンドブック」では,既に会社法の問題の処理パターンを整理した表が記載されているんです。

ですから,この「趣旨・規範ハンドブック」を持っていれば,わざわざ自分で問題の処理パターンを整理する必要がなく,便利です。

私は,民事系・刑事系・公法系とも「趣旨・規範ハンドブック」を買って,知識の整理に使っていましたが,特に会社法・商法,憲法,行政法で,知識の穴を埋めるのに役に立ちましたのでおすすめです。







■おすすめの会社法・商法の基本書と予備校本



○会社法

私が受験生時代にメインで使っていた会社法の基本書が「会社法(LEGAL QUEST)」です(通称「リーガルクエスト」。「リークエ」とも言う。)。

新司法試験が始まった頃から人気になった基本書です。

会社法の基本書はボリュームが大きくなりがちなのですが,この「会社法(LEGAL QUEST)」は司法試験で問われる可能性のある会社法の情報を500頁程度にコンパクトにまとめています。

●ISBN-10: 4641179352

私が司法試験の勉強を始めた当初は予備校本を使っていたのですが,超優秀な同級生から「リーガルクエスト」を勧められて使い始めたところ,コンパクトで分かりやすい説明が便利で,最後までメインで使いました。

「リーガルクエスト」は,気合いを入れれば1日で読めるサイズなので,基本書を通読して勉強するタイプの受験生にもおすすめ出来る本です(私は受験生時代は基本書の通読はしていませんでしたが。)。



私は会社法の基本書として「リーガルクエスト」の他に,江頭憲治郎先生の「株式会社法」を買って,辞書として使っていました。

●ISBN-10: 4641137862 

江頭先生は,商法の分野では超が付く程有名な先生なので,江頭先生の基本書を愛用している司法試験受験生も少なくありません。

ただ,江頭先生の基本書は1000頁以上ある非常に厚い本ですし,司法試験に出題されないような点についても細かい記述があったりと,初学者にはハードルが高いです。

他方,会社法の勉強が進んできた後に,疑問に思ったことを江頭先生の本で調べると,江頭先生の丁寧な説明で疑問が一気に解消することもあります。

そのため,江頭先生の基本書は,買うとしてもサブで辞書として使うことをお勧めします。




その他,最近出てきた基本書では,田中亘先生の「会社法」も人気です。

●ISBN-10: 4130323725

田中亘先生は,先程紹介した「リーガルクエスト」の共同執筆者の1人です。

「リーガルクエスト」と比べると,田中亘先生の「会社法」は丁寧な説明が多い分,ページ数も800頁と「リーガルクエスト」よりも量が多くなっています。

司法試験に合格するためには「リーガルクエスト」に書いてある程度のことを理解していれば十分ですが,「リーガルクエストは説明があっさりしすぎて頭に入らない」と感じる人は,田中先生の「会社法」を使ってみると良いと思います。

「リーガルクエスト」と田中先生の「会社法」を両方買う必要はないと思いますので,迷ったら図書館で借りたり立ち読みをしてみて,自分がしっくりきたほうを買うと良いと思います。



私の同級生の司法試験の上位合格者の中には,予備校本をメインで使っていた人もいます。

「会社法 伊藤真試験対策講座」は昔から人気のある予備校本で,司法試験に必要な知識がコンパクトにまとめられていますので,「基本書が肌に合わない」という人にはおすすめです。

●ISBN-10: 4335304897



予備校本として,私は東京リーガルマインドの「C-Book 商法I」も買って江頭先生の基本書と同様に辞書として使っていましたが,江頭先生の基本書と判例集があれば,大抵のことは解決しますので(江頭先生の基本書と判例集を読んでも解決しないことは,司法試験レベルでは分からなくて問題はないので),無理して買う必要はないと思います。

●ISBN-10: 4844946099




その他,会社法で疑問点が出てきた際に,コンメンタールがある便利です。

●ISBN-10: 4535402698

私は実務に出てからは基本書よりもコンメンタールを使うことが多くなりましたが,ちょっと高い本なので,必要に応じて図書館で借りて調べる,という程度の使い方でも良いと思います。

また,「基本書や判例集に載っていないことは,司法試験の合格に必要のない知識である」と割り切って,受験生の間はコンメンタールを一切使わないというのも1つの考え方です。



○商法総則・商行為法 

先程もお話したとおり司法試験の「商法」の科目では主に「会社法」の分野から出題されますが,論文式試験では「商法総則・商行為法」の知識を絡めた出題がなされることがあります。

そのため,商法総則・商行為法の分野の基本書も手元に置いておく必要があります。

とは言っても,やはりメインは会社法なので,商法総則・商行為法の分野の基本書は薄い本で十分です。


私は,商法総則・商行為法の分野の基本書として,弥永真生先生の「リーガルマインド商法総則・商行為法」と東京リーガルマインドの「C-Book 商法II」を手元に置いて,問題演習などをして分からないことが出てきた時に読む,という使い方をしていました。


●ISBN-10: 464113684X

●ISBN-10: 4844946072


弥永真生先生は,大学在学中に不動産鑑定士試験,公認会計士試験,司法試験に合格したとんでもなく優秀な先生なのですが,弥永先生の「リーガルマインド商法総則・商行為法」はコンパクトで分かりやすいです。


「C-Book 商法II」は,商法総則・商行為法だけでなく,手形法・小切手法の分野も記載されています。

司法試験で手形法・小切手法の知識が問われる可能性は低いですが,判例を読んでいる時などに,手形法・小切手法の知識がないと判例の言っていることが分からない場合等がありますので,手元にあると便利だと思います。







■会社法・商法の判例集


会社法・商法の判例集としては,「会社法判例百選」と「商法(総則・商行為)判例百選」があれば十分だと思います。

●ISBN-10: 4641115052

●ISBN-10: 4641114943

公法・刑事系の分野と比べると,会社法の分野では合格に必要な判例の知識は相対的に少ないのですが,それでも司法試験では会社法の分野でも判例を踏まえた出題がなされることが多々あります。

問題演習等を通じて,知らない判例が出てきた際には,こまめに判例百選を読む癖を付けておくと良いと思います。

また,疑問点が出てきた際に,判例百選の解説を読んで問題が解決することもありますので,そういった点でも判例百選は便利です。






■論文式試験の過去問の分析


会社法・商法の分野においても,司法試験の論文式試験の過去問の分析は大事です。

他の科目と同様に,法務省のホームページから論文式試験の過去問をプリントアウトし,過去数年分の論文式試験を実際に時間を計って解いてみると良いです。

最初は「こんな問題解けるわけない」と挫折感を感じることもあると思いますが,繰り返し解いて本番の問題のクセや傾向を掴むことが大事です。

そして,他の科目と同様に,論文式試験の過去問の答案を作ってみた後に,辰已法律研究所の「ぶんせき本」などを使って,優秀答案と自分の答案の何が違うかを研究してみると良いです。

●ISBN-10: 4864663211

●ISBN-10: 4864663246


また,試験が近付いてきたら,1社で構わないので予備校が行っている答案練習会(答練)や模擬試験に参加しておいたほうがベターです。

答練に参加して実際に他の受験生と一緒に論文式試験の問題を解いていくことで,自分の知らない問題が出た場合の対処法や,時間管理の方法などの訓練もすることができますし,答練などで出た問題と似たような問題が本試験で出た時に,他の受験生に差を付けられずに済みます。

辰巳法律研究所であれば「スタンダード論文答練」の第1クールが10~11月頃から,第2クールが1月頃から始まり,4月頃に直前模試が実施されます。

その他,伊藤塾や早稲田セミナーなどの答練も有名ですが,お金と時間に余裕がなければ,辰巳法律研究所の第2クールと直前模試だけでも十分だと思います。



論文式問題集や過去問を解いたり,答練に参加したりしているうちに,会社法の問題の解き方にパターンがあることが分かってくると思います。


会社法の問題の多くは最初に訴訟類型(どのような訴訟になるか)を考え,その訴訟類型の要件(勝つための要件)を検討し,要件に事案を当てはめていく,というパターンで処理できます。

そして,司法試験で出題される会社法の訴訟類型は15個から20個程度しかないので,この訴訟類型と,その要件を押さえておけば,少なくとも何を書けば良いか分からないという状況に陥ることはほとんどありませんし,問題で聞かれていないことを書いて不合格となるとういリスクを小さくすることができます。

ただし,この会社法の問題の処理パターンは,普通の基本書などには書いていません。

したがって,会社法の問題の処理パターンは本来であれば,自分で整理しておく必要があるのですが,先程お話ししたように辰已法律研究所 から「趣旨・規範ハンドブック」という便利な本が出版されていて,この本の中で会社法の問題の処理パターン(訴訟類型や検討すべき要件)がコンパクトに整理されています。

●ISBN-10: 4864663688

ですから,「自分で会社法の問題の処理パターンを整理する時間的余裕がない」という場合には,「趣旨・規範ハンドブック」などの教材をもとに,自分なりの解法を整理しておくと良いと思います。









■短答式試験(会社法・商法)の勉強方法


司法試験の短答式試験では,会社法・商法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,会社法・商法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。

他方,予備試験の短答式試験では,会社法・商法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。


会社法・商法の短答式試験の勉強方法は,比較的単純で,短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べる,という単純作業の繰り返しだけで,成績が伸びていきます。



短答式試験の過去問集は,個人的にはスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」が,解説がコンパクトでおすすめです。

●ASIN:B06XCHVDBH

●ASIN: 4905444284


詳細な解説があったほうが良いという人には,辰已法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が良いと思いますが,これを使う場合には時間不足にならないようにスケジュール管理に注意をしたほうが良いです。

●ISBN-10: 486466384X



「時間はないけど,根性はある」という人は,気合いを入れて肢別本をぐるぐると回しましょう。

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトなので早く回せるのがメリットです。

そのため,受験生に人気のある教材ですが,勉強が単調になってしまうので,飽きっぽい人にはちょっと辛いと思います(私は何度も挫折しています)。

●ISBN-10: 9784864663632




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2018年09月20日

「伊藤真の○○入門」シリーズと「伊藤真新ステップアップシリーズ」の違いについて「到達点は違いますか? 2冊買うのではなく1つを何度もやりたいのでどちらかに絞りたいです。」という質問をいただきましたので,私の考えをお話したいと思います。


結論から言えば,敢えてどちらか1つに絞るとすれば「伊藤真新ステップアップシリーズ」ということになりますが,効率のことを考えれば,出来れば初学者の段階では,「伊藤真の○○入門」シリーズを読み,ある程度勉強が進んだ段階で必要に応じて「伊藤真新ステップアップシリーズ」を使ったほうが良いだろう,というのが私の考えです。


「伊藤真の○○入門」シリーズは,法律の初学者のために書かれた本で,実際に講義を受けているような丁寧な説明があることと,論点(法律的な争点・問題点)に関する記載があまりなく,その分読みやすいことが特徴です。

そのため,初学者が各法律の全体像や軸となる考え方を素早く把握し,その後の学習の効率を上げるのに適している本です。


●ISBN-10: 4535520399

●ISBN-10: 4535522596


他方,「伊藤真新ステップアップシリーズ」は,各法律の主要な項目毎に,「概説」(制度の趣旨や定義等)を説明した上で,司法試験で問われることの多い最重要論点(これを知らなければ落ちても文句は言えないという法律上の争点・問題点)について「問題の所在」「学説の整理」「判例」「結論」がコンパクトに整理されています。





このように,両者は性質が違うので,司法試験の勉強をまだきちんとしたことがない人は,最初は「伊藤真の○○入門」シリーズを読んで各法律の全体像や軸となる考え方を素早く身につけたほうが学習効率は良いと思います。

他方,「伊藤真新ステップアップシリーズ」は,一見,初学者用の本に見えるのですが,シンプルで無駄な記述が少なく洗練されているが故に難易度が高い本であり,初学者が手を出すと挫折をしたり,学習効率が悪くなったりする可能性があります。



私の経験をお話すると,私は一応法学部出身で,公務員試験(地方上級,国家公務員一般職)に合格した経験があったので,ある程度法律的な知識があるつもりでした。

しかし,司法試験の勉強の初期の段階で「伊藤真新ステップアップシリーズ」を読んでみたところ,「何となく分かった」という感じはするものの,いまいち十分な理解が出来ず消化不良な感じがしたので,1回で読んで取りあえず終わりにしました。

そこで,入門知識のインプットとしては「伊藤真の○○入門」シリーズを2~3回読んで取りあえず良しとし,その後は「伊藤塾試験対策問題集」を何度も読んだり,実際に答案を書いてみるというトレーニングをして一気に論文試験の力を上げていきました。(このあたりは「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」などでお話したとおりです。)


その後,司法試験の勉強を進め,択一過去問をやったり,予備校の答練を受けたりするようになると,細かい論点の知識や択一用の知識が増えていき,基本的な知識や理解がおろそかになっているという危機感を感じるようになりました。

これが知識のドーナッツ化という現象で,時間をかけて一生懸命勉強しているのに何故か論文式試験の点数が上がらなくなり,司法試験に落ちてしまうという受験生に良くみられる現象です。

司法試験の論文式試験では,基本的な知識を,正確に書くことで点数が上がるようになっていて,細かい知識や高度な知識は書けなくても,それだけで不合格になることはありません(これは受験業界で昔から良く指摘されていることです。)。

しかし,勉強が進むにつれて知識が増えすぎて「基本って何だけって・・・」という状況になり,「このままでは基本がおそろかになって,不合格になってしまうのではないか」「やばい・・・」と思うようになりました。


そこで,私よりも1学年上の司法試験の合格者に相談をしたところ,「伊藤真新ステップアップシリーズ」で,基本的な知識を再度整理するように勧められ,改めて「伊藤真新ステップアップシリーズ」を読んでみたところ,基本的な知識の再整理が一気に進み「この本は便利な本だ!」と思うようになりました。


私が相談した人は,旧司法試験時代から,10年以上司法試験にチャレンジして落ち続けていて,合格するためには細かい知識や高度な知識を覚えなければと必死になって基本的な知識をおそろかにしてしまっていたのですが,司法試験の上位合格者から「伊藤真新ステップアップシリーズ」を使って基本を見直すように言われて,基本的な知識を正確に理解し記憶するようにしたら,「次の年にあっさりと合格した」「今までの苦労な何だったんだと思った」と言っていました。


このように,私の経験の限りでは,初学者の頃は「伊藤真新ステップアップシリーズ」の便利さや凄さは実感できないことが多く,むしろある程度勉強が進んだ段階で「基本的な知識や理解に漏れがないことを確認する作業」として読み直したほうが,効率が良いのではないかと思います。


ただ,いただいた質問の「伊藤真の○○入門」シリーズと「伊藤真新ステップアップシリーズ」の「到達点は違いますか? 2冊買うのではなく1つを何度もやりたいのでどちらかに絞りたいです。」にそのまま答えるとすれば,「伊藤真の○○入門」は論点知識に記述がほとんどなく,試験の直前期まで使える本ではなく,他方で「伊藤真新ステップアップシリーズ」は試験の直前期でも便利な本であるため,敢えてどちらか1つに絞るとすれば「伊藤真新ステップアップシリーズ」であろう,とうことになると思います。

もっとも,以上の話はあくまで私の経験上の話であって,(私と違って)頭の良い人であれば初学者の段階から「伊藤真新ステップアップシリーズ」を読んでみても,ガンカンと理解が進むという人もいると思います。



以上,整理すると

・初学者には「伊藤真の○○入門」をおすすめする

・「伊藤真新ステップアップシリーズ」は,どちらかというと試験の直前期に使うと便利

・ただ,敢えて1つに絞るとすれば「伊藤真新ステップアップシリーズ」



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2018年06月22日

伊藤塾試験対策問題集 論文 」 と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文 」 の使い分け,及び論文式試験の対策法について質問をいただきましたので,「もし私だったら」という観点でお話したいと思います。

(最近仕事が忙しかったため,遅くなってしまいすみません。)


私が受験生の時には予備試験制度がなく「試験対策問題集 論文」しかなかったため,「試験対策問題集 論文」と「試験対策問題集 予備試験論文」の使い分けについては「今から予備試験を受験するとすれば」という仮定の話になりますが,個人的には比較的時間に余裕がある場合には「試験対策問題集 論文」,時間があまりない場合には「試験対策問題集 予備試験論文」を使うと思います。


具体的には,おおまかに以下のような順番で勉強を進めると思います。

( 「 試験対策問題集 予備試験論文 」 と 「 試験対策問題集 論文 」は名前が紛らわしいので,以下「試験対策問題集 論文」については「試験対策問題集 司法試験論文」とします。)


【時間的に比較的余裕がある場合(2年後以降の受験を考えている場合)】

(1) 「 試験対策問題集 司法試験論文 」のAランク問題を読み,写経したり音読したりして参考答案と同じような答案を書けるように訓練する。

(2)「試験対策問題集 司法試験論文」のBランクとCランクの問題を何回か読む。余裕があれば,参考答案と同じような答案を書けるように訓練する。

(3)法律実務基礎科目対策として, 「伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の 「 刑事実務基礎 」と 「 民事実務基礎 」を何回か読む。

(4)少なくとも過去5年分程度の予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いて答案を作成し,辰巳法律研究所の 「 司法試験予備試験 論文本試験 科目別・A答案再現&ぶんせき本 」を読んで,自分の書いた答案の良い箇所,ダメな箇所をピックアップする作業を繰り返す。(この時に「試験対策問題集 予備試験論文」を持っていれば,「試験対策問題集 予備試験論文」の過去問の答案も参考にする。)

(5)(4)と平行して,予備校の答練を受け,復習をする。

(6)時間的に余裕があれば,司法試験の過去問にも目を通しておく。

(7)さらに時間的に余裕があれば,「試験対策問題集 予備試験論文」の問題をやる(おそらくここまで時間がある人はいないと思いますが。)。



【時間的に余裕がない場合(1年後の受験を考えている場合)】

(1) 「 試験対策問題集 予備試験論文 」を何回か読む。

(2)法律実務基礎科目対策として, 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」の 「 刑事実務基礎 」 と「 民事実務基礎 」を何回か読む。

(3)少なくとも過去5年分程度の予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いて答案を作成し(最初はまともな答案が書けなくても気にしない),辰巳法律研究所の 「 司法試験予備試験 論文本試験 科目別・A答案再現&ぶんせき本 」を読んで,自分の書いた答案の良い箇所,ダメな箇所をピックアップする作業を繰り返す。(この時に「試験対策問題集 予備試験論文」の過去問の答案も参考にする。)

(4)(3)と平行して,予備校の答練を受けて,復習をする。

(5)知識の穴は短答式試験対策で埋めるつもりで,短答式試験の勉強を真面目にやる。

(6)民法,刑法,民事訴訟法,刑事訴訟法について論文プロパーの基本的な知識に不安を感じたら,伊藤塾の 「 伊藤真新ステップアップシリーズ 」 を読んで知識に穴や不十分な点がないか確認し,穴等があれば補充する。



「試験対策問題集 司法試験論文」は司法試験のために作られた問題集であり,問題数も比較的充実していますので,主要論点のほとんどが網羅されています。

予備試験受験生も,最終的には司法試験に合格することを目標にしますから,時間的に余裕があるのであれば最初から「試験対策問題集 司法試験論文」を使ったほうが,司法試験合格までのトータルで見た場合の効率は良いと思います。



他方,「試験対策問題集 予備試験論文」は,問題数が少なめでコンパクトであることと,予備試験の形式に特化した問題や予備試験の過去問が掲載されている点が特徴です。

そのため,時間的に余裕がない切羽詰まった予備試験受験生にとっては,「試験対策問題集 司法試験論文」ではなく「試験対策問題集 予備試験論文」を使いつつ,知識の穴を短答式試験対策や予備校の答練で埋めていくという方法のほうが時間切れを起こすリスクが少ないと思います。

ただ,この場合には予備試験に合格した後に演習不足を補うために別途「試験対策問題集 司法試験論文」をこなすか,司法試験予備校の答練を複数受験する等の工夫が必要になると思います。




なお,私の同級生を見ると,「もともと勉強は出来る人ではないけど,あっさりと論文式試験に合格した」グループと,「法科大学院の成績がトップクラスで周りから優秀と言われているにもかかわらず,何故か論文式試験に落ちてしまう」グループがありました。

「もともと勉強は出来る人ではないけど,あっさりと論文式試験に合格した」グループは,論文式試験の問題集,予備校の論文答練,論文式試験の過去問を勉強の軸にしている人が多かったです。

他方,「周りから優秀と言われているにもかかわらず,論文式試験に落ちてしまう」グループは,論文式試験の問題集,予備校の論文答練,論文式試験の過去問を勉強をおそろかにしている人が多かったです。

司法試験や予備試験の論文式試験は,最低限の知識は必要ですが,短答式試験にそこそこ点数で合格するくらいの知識と,論文プロパーと呼ばれる論文式試験に良くでる基本的な知識(論文式の問題集,答練,論文過去問で良く問われる知識)があれば,後は論文式試験の考え方や,解き方をマスターしていくことで,合格点を取ることが出来るようになっています。

スポーツの本を読んでも,それだけではなかなか上手くならないけれども,実際にスポーツをやっているとスポーツが上手くなっていくのと同じような感じです。

ですから,短期合格を目指す方は,多くの問題に触れて,論文式試験の考え方,解き方に慣れるとともに,基本的な論文プロパーの知識を正確に書けるように訓練しておくと,合格に近づけると思います。



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