2020年05月26日



今回は行政法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書などについてお話をしたいと思います。


■行政法の特徴


「行政法」は、文字通り「行政に関わる法律」のことです。

これまでご紹介した憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法は、それぞれ「憲法」などの名前の法律がありましたが、「行政法」という名前の法律はありません。

「行政事件訴訟法」「行政手続法」「国家賠償法」など、様々な法律をひとまとめにして「行政法」という「くくり」にしています。

なので、「行政法」を勉強する際には、いくつもの法律を広く勉強する必要があります。


司法試験の論文試験で出題される「行政法」にはいくつかの特徴があります。



1つ目は、市民側が行政側を訴えるパターンの問題が良く出ることです。

市民側が行政側を訴える場合には、主に「行政事件訴訟法」や「国家賠償法」や「地方自治法」などの法律を使うことが多いのですが、これらの法律の中には、「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「不作為の違法確認訴訟」「義務付け訴訟」「差止訴訟」「当事者訴訟」「国家賠償法」「住民訴訟」など、様々な訴訟類型(裁判の起こし方)が書かれています。

そして、司法試験や予備試験の論文試験試験を解く時にこの訴訟類型を間違えてしまうと、ほとんど点が付かず、それだけで不合格になってしまう可能性が高くなってしまいます。

そのため、「訴訟類型」を間違えないように十分な準備をしておく必要があります。

(会社法の対策と似ています。)

また、それぞれの「訴訟類型」ごとに、どんなことを書くと点が付くのかということも整理しておく必要があります。

この方法については、この記事の中で後でお話します。




行政法の論文試験の特徴の2つ目は、「ほとんど勉強をしたことがない法律」の解釈について聞かれることが多い、ということです。

先程お話ししたように「行政法」という「くくり」の中には、様々な法律があるのですが、最近の司法試験の論文試験の過去問をざっと見るだけでも、以下のようにマニアックな法律をからめた出題がされています。

令和元年
・土地収用法

平成30年
・墓地,埋葬等に関する法律、どっかの全く知らない市の「墓地等の経営の許可等に関する条例」

平成29年
・道路法

平成28年
・建築基準法、都市計画法、風営法

平成27年
・消防法

行政法の教科書を見てもらえれば分かると思うのですが、これらのマニアックな法律は、行政法の教科書にも詳しい解説は書いてありません。

なぜ司法試験でこのようなマニアックな法律が出題されるのかというと、それは

「知らない法律をその場で見て、その場で考えて問題を解いてね」

ということなんです。

決して、このようなマニアックな法律の「逐条解説」みたいな分厚い本を買ってきて勉強しろ、と言われている訳ではありません。

良く知らない法律をその場で読んで、自分の頭で考えて解けるようになれば良いんです。


では、どうすれば、「知らない法律をその場で読んで、自分の頭で考えて解ける」ようになるのかというと、行政法の基本的なことを勉強した上で、後は司法試験や予備試験の論文式試験の過去問や、予備校の問題集・答練を解いて練習するしかありません。

自転車の運転や、スポーツやゲームも、最初は上手くできなくても、何度もやっているうちに身体が覚えていきますよね。

それと同じような感じです。



行政法の論文試験の3つ目の特徴は、「誘導」が多いということです。

「誘導」というのは、問題を解くためのヒントとか指示のことです。

ちょっと分かりにくいと思いますので、実際の司法試験の過去問から「誘導」の一部を抜粋してみます。

試験問題そのものを見たいという人は以下の法務省のホームページから閲覧できます。

ざっと目を通してもらうだけで構いません。


(抜粋ここから)

【法律事務所の会議録】
弁護士D:Aさんは,本件事業認定は違法であると考えているとのことです。本件権利取得裁決には固有の違法事由はありませんので,本件では,本件事業認定の違法性についてのみ検討する
こととしましょう。もっとも,まずは,どのような訴訟を提起するかについて,検討しておく必要がありますね。

弁護士E:本件事業認定も本件権利取得裁決も,行訴法第3条第2項における「処分その他公権力の行使」に該当しますが,いずれも,既に出訴期間を徒過し,取消訴訟を提起することはでき
ないのではないでしょうか。

弁護士D:そうですね。もっとも,本件取消訴訟については,行訴法第14条第1項及び第2項における「正当な理由」が認められ,適法に提起することができるかもしれません。

弁護士E:仮に本件取消訴訟を適法に提起することができたとしても,本件権利取得裁決には固有の違法事由はありませんので,本件取消訴訟では専ら本件事業認定の違法性を主張することと
なりますね。

弁士D:では,E先生には,仮に本件取消訴訟を適法に提起することができるとした場合,本件事
業認定の違法性を主張することができるかについて検討をお願いします。ただし,「正当な
理由」が認められるかについては,検討する必要はありません。

弁護士E:承知しました。

弁護士D:とはいえ,「正当な理由」が認められない場合の対応も考えておく必要があります。本件取消訴訟を適法に提起することができないとすれば,どのような訴訟を提起することができ
ると考えられますか。

弁護士E:本件事業認定に無効の瑕疵があり,したがって,本件権利取得裁決も無効であるとして,
B県に対し,行訴法第3条第4項に基づいて,本件権利取得裁決の無効確認訴訟を提起する
ことが考えられます。また,本件権利取得裁決が無効であるなら,別途,C市に対する訴訟
も提起することができます。

弁護士D:では,B県に対する無効確認訴訟が訴訟要件を充足しているか,E先生に検討していただきましょう。無効確認訴訟の訴訟要件については,いくつかの考え方がありますが,E先生
は,行訴法第36条の訴訟要件である「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を
前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」につい
て検討してください。C市に対してどのような訴訟を提起することができるのか,また,C
市に対する訴訟を提起できる場合にも無効確認訴訟を適法に提起することができるのかとい
う点に絞って検討していただければ結構です。

弁護士E:承知しました。

(抜粋ここまで)

これは法律事務所の中の弁護士の会話ですが、この中に問題を解くための「ヒント」や「指示」が、盛り込まれています。

たとえば、

・「・・・ついて,検討しておく必要がありますね」

・「・・・については,検討する必要はありません。」

・「・・・かという点に絞って検討していただければ結構です。」

という部分は「指示」の部分にあたります。


「検討する必要がありますね」と書かれている部分を、答案の中で検討していないと、点を大きく失ってしまい、それだけ不合格の可能性が高まります。

他方、「・・・については検討する必要はありません」「という点に絞って検討していただければ結構です」と言われているのに、検討する必要がない部分まで答案に書くと、試験本番で時間を大きくロスしてしまいます。

司法試験の論文式試験は時間との勝負なので、検討する必要がない部分に時間をかけてしまうと、検討しなければならない部分にかける時間がなくなってしまい、他の受験生と大きな点数の差が付いてしまいます。

なので、このような「指示」を見落とすことは致命傷になります。


それから

「・・・訴訟を提起することが考えられます」

のような部分は、「ヒント」になっていたりします。


こういったヒントを見落とすと、それだけで不合格に繋がります。

司法試験に不合格になった受験生の相談を受けると、こういった「ヒント」を見落として、書くべきことを書かずに酷い点数になった、という人もいます。

なので「誘導」にきちんと従うということは、とても大事なことです。

この「誘導」を見落とさないようにするのも、基本的には問題演習をこなしていくうちにコツが分かってきます。


ちょっと長くなりましたが、まとめると行政法の論文式試験には、

① 「訴訟類型」について準備をしておかないと本試験で酷い目に合う可能性がある

② あまり見たことがない法律が出るので、自分の頭で考えて解く必要がある

③ 「誘導」にきちんと乗れるように、練習をおく必要がある

等の特徴があります。


ただ、行政法については基本的なことをきちんと勉強した上で、↑のような特徴を踏まえた上で対策をきちんととっておけば、本試験で合格点+αの点を取ることは、それほど難しくありません。

このような特徴を踏まえた上で、行政法をできるだけ短い勉強時間で合格レベルに持っていくための勉強方法と、おすすめの基本書や参考書について、お話していきたいと思います。









■行政法の入門書を読もう


行政法についても初学者の方は入門書を読むことをお勧めします。



はじめて行政法を勉強する場合には、他の科目と同様「伊藤真の行政法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521190 

基本書を読めない私のような人間でも、挫折することなく読めるサイズまで基本的な事項が凝縮されています。

カバンに入れておいてスキマ時間に読んでもいいと思いますしし、2~3時間かけて一気に読んでも良いと思います。

2~3回読めば十分だと思います。



その他に、予備校系の入門書としては柴田孝之先生の「S式生講義 入門行政法」も良いと思います。

柴田孝之先生は、かなり昔からLEC(東京リーガルマインド)で司法試験の講師をしている先生で、私の同期の合格者の中にも柴田先生の授業を受けていたという人が何人もいました。

説明が論理的なので、理屈で理解したい人には相性が良いと思います。

「伊藤真の行政法入門」はどちらかというと教科書っぽい書き方ですが、「S式生講義 入門行政法」は講義を再現したような内容になっているので、どちらか好きなほうを読むと良いと思います。

●ISBN-10: 442612476X



「伊藤真の行政法入門」や「S式生講義 入門行政法」ではちょっと物足りなかったという人は、「伊藤真ファーストトラックシリーズ」もおすすめです。

「伊藤真ファーストトラックシリーズ」は、後述の「行政法 伊藤真試験対策講座」をぎゅっと圧縮したような内容になっています。

この「伊藤真ファーストトラックシリーズ」を何回か読んで内容が理解できるようになれば、他の基本書や予備校本も読みやすくなると思います。

●ISBN-10: 4335314574



学者の先生が書いた入門書のうち、私が読んだ中では藤田宙靖先生の「行政法」が分かりやすくて読みやすいと思います。

●ISBN-10: 4641131953

学者の先生の書いた本の中で、私が通読できた数少ない教科書のうちの1冊です。

藤田宙靖先生は、学者から最高裁判所の裁判官になったという凄い先生なのですが、この入門書を読んでいると初学者に対する配慮や愛情みたいなもの感じます。

内容はしっかりしていますが、文章が平易なので初学者でも読みやすいです。

新司法試験の制度ができるだいぶ前から出版されている本なので、ベースは昔ながらの行政法の本という感じで、今流行の司法試験に合わせたような流行の教科書という感じではありません。

しかし2016年に改訂されていて、行政不服審査法の改正にも対応しているので司法試験の入門書として使って困るということはないと思います。








■行政法の論文問題集を読もう


入門書を読んだら早めに行政法の論文問題集を読むと良いです。



読む論文問題集としては「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 4335303599

●ISBN-10: 433530367X

「試験対策問題集 司法試験論文」と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の使い分けについては「論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」を参照してください。

個人的には,「試験対策問題集 司法試験論文」のほうをおすすめしています。

この伊藤塾の問題集は、やはり他の科目と同様に参考答案の質が高いので、言い回しをそのまま真似して本試験で使うことができます。

この問題集の「ケース」以外の部分の問題文と参考答案を何度も読んでいると、行政法の問題の解き方の流れのようなものが分かってくると思います。

参考答案を読んでもよく理解できない部分も出てくると思いますので、その場合は、後述の基本書や判例集の該当箇所を読んで理解を深めていくと、力がついていくと思います。

時間がない人は、とりあえず「ケース」以外の部分の「A」ランクの問題に絞って回しても良いと思います。

行政法の勉強では、先程お話しした行政法の特徴を踏まえ、過去問や予備校の答練にもある程度時間をかけたいところなので、問題集の全部を完璧に仕上げることに拘りすぎて過去問や予備校の答練をこなす時間が無くなってしまうよりは、問題集の「A」ランクの部分だけでも良いので早めに仕上げて、過去問や予備校の答練の演習の時間を十分に確保したほうが良いと思います。








■おすすめの行政法の基本書と予備校本



行政法のおすすめの基本書などをいくつか紹介します。


私の周りの合格者で使っている人が多かったのが「櫻井敬子」先生と「橋本博之」先生の「行政法」です。

●ISBN-10: 4335357974

比較的コンパクトで読みやすいので、通読用に使っても時間不足になる可能性は低いと思います。

この本を使っている受験生が多いので「他の人と同じ本が良い」という人には無難な基本書だと思います。

私もこの基本書を持っているのですが・・・ほとんど読んだ記憶がありません。

この基本書の問題ではなく、私の問題ですが、合う合わないは相性があると思います。





私がメインで使っていた基本書は「行政法 (LEGAL QUEST)」です。

●ISBN-10: 4641179409

私は通読はしていませんが、調べ物をしたり法科大学院の課題をこなしたりするのに頻繁につまみ読みをしていたので、おそらく全体のうち7割くらいのページは読んだと思います。

この基本書は4人の共著ですが、著者の1人である稲葉馨先生は、(新)司法試験で新しく行政法が試験科目に含まれた時の考査委員をされていた先生です。

そのためか、伝統的な行政法の教科書と違って、(新)司法試験の出題形式を意識した内容になっているように思われます。

単に知識を詰め込むだけでなく、自分の頭で考えて問題を解くことができるように工夫がされていると思います。

先程お話したとおり、司法試験の行政法の問題は、自分の頭で現場で考えて処理しなければならない問題が出題されることが多いので、そういった意味では良い基本書だと思います。

この基本書のデメリットとしては、ちょっと先進的な内容が含まれていて難しいと思う人もいると思います。

他方で理屈でロジカルに考えたい人には相性が良い基本書だと思いますし、薄いので気合いを入れれば1日か2日で読めると思います。




その他、王道の基本書としては「宇賀克也」先生の「行政法概説Ⅰ」と「行政法概説II」が有名です。

●ISBN-10: 4641227837

●ISBN-10: 4641227446


「概説」(=だいたいの説明)とは名ばかりに、2冊合わせて1000頁を超えるボリュームです。

宇賀先生はとても優秀な先生なので、1000頁分くらいの知識は全体の知識量のごく一部に過ぎないのだと思いますが、司法試験受験生にとって1000頁というボリュームはちょっと多いです。

天才タイプ以外の人が通読しようとすると挫折する可能性が大きいです。

なので、通読用に使うことはおすすめしません。

ただ、判例が大量に掲載されており、論文試験の問題を解いたりしている時に、辞書として使うのには大変便利なので、お金に余裕のある人は2冊とも手元に置いておくとかなり便利です。

また内容が詳しいので司法修習や実務に入ってからも使えるので、そういった意味では最強の部類の基本書です。


私も受験生自体に2冊とも買って、今でも仕事で辞書的に使っています。

ちなみに「宇賀克也」先生は「行政法概説Ⅲ」という本も出してますが、こちらは司法試験ではほとんど出題されない範囲の本なので、司法試験・予備試験対策のために「行政法概説Ⅲ」を買う必要はほとんどありません。



その他、年配の弁護士におすすめの行政法の基本書を聞くと「塩野宏」先生の「行政法」をおすすめされるかも知れません。

●ISBN-10: 4641131864

●ISBN-10: 4641227713

「買いたい人だけ買ってください」とでも言うような、とてもシンプルな見た目の本。

塩野先生の「行政法」は、見た目と同様に説明も比較的シンプルなので、ある程度勉強が進んだ人であれば、「余計な説明がないので読みやすい」と思います。


塩野先生はかなりご高齢で、今後の改訂も無いかもしれないので、積極的にはおすすめしませんが、図書館などで読んでみて、「自分に合う」と思った人や、同級生に「渋い」って思われたい人は候補に入れても良いかも知れません。






予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「行政法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 行政法」が良いと思います。

●ISBN-10: 4335304900

●ISBN-10: 4844976125


私は法科大学院の入学試験の勉強のために伊藤塾の「行政法 伊藤真試験対策講座」を使っていました。

予備校本だけあって内容は分かりやすかったですが、ボリュームがそこそこあるので、通読をするのには気合いと根性が必要かも知れません。



「C-Book 行政法」は、法科大学院に入学した後、辞書として使っていました。

「調べ物をしたいけど、基本書で該当箇所を探すのはダルいな」という時に「C-Book」は便利です。

「C-Book目次が細分化されているので分からない事が出てきた時に調べたい内容を探しやすいですし、「C-Book」には基本書のどのページに書かれているかというインデックスのようなものがあって基本書の該当箇所にすぐに飛ぶことができるので便利です。

ただし、「C-Book」は量が多いので通読はあまりおすすめしません。







■行政法の判例集


行政法の判例集も様々なものが出版されていますが,「行政法判例百選Ⅰ」と「行政法判例百選Ⅱ」と直近数年分の「重要判例解説」があれば十分だと思います。

●ISBN-10: 4641115354

●ISBN-10: 4641115362

●464111594X

相変わらず字が小さいのがデメリットですが、パソコンがある人は自分で電子書籍化するか、Kindle版を買えば、「目が疲れる問題」は解決できると思います。

判例百選に掲載されている判例の数はかなり多いので、宇賀先生の基本書と併用すれば司法試験の勉強をするにあたって不足するということはまずないと思いますし、解説も充実しているので分からないことを理解しようとする時にも便利です。

「伊藤真の判例シリーズ」も便利で分かりやすいのですが、改訂が少ないのと、掲載判例が少なめなのと、その割にボリュームがあるのがネックです。

私は「伊藤真の判例シリーズ」も買いましたが結局ほとんど使ってません。

●4335304102 






■「訴訟類型」の整理など


先程お話ししたとおり、行政法の論文試験では、「訴訟類型」を整理して実戦で使えるようにする、ことが大事です。

そのため、予め「訴訟類型」を整理しておくと良いです。


「訴訟類型」は、ある程度勉強をしていればどのようなものがあるか分かってくると思いますが、整理をしておかないと本番で間違える可能性が出てきます。

「行政法の論文試験が苦手」という受験生の中には、この「訴訟類型の整理」をきちんとしていない人が多いように思われます。

自分で「訴訟類型」を整理しても良いのですが、それが面倒な人は辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック 公法系」に、「訴訟類型」の整理や本試験の解き方が詳しく書かれています。

「訴訟類型を整理しろと言われても、やり方が分からないよ」という人は「趣旨規範ハンドブック」の力を借りると良いと思います。

私も最初は自分で整理していたのですが、量が増えるにつれて次第に訳が分からなくなって面倒になったので、最終的には「趣旨規範ハンドブック」の力を借りて頭を整理しました。

●ISBN-10: 4864664218


「趣旨規範ハンドブック」はシンプルなのが売りですが、その分「勉強がそれなりに進んでいる人」向けなので、勉強の進み具合によっては「何が書いてあるのか良く分からない」という人もいると思います。


その場合には「受験新報」のノートのほうが分かりやすいかも知れません。

「受験新報」は定期的に「訴訟類型」や行政法の問題の解き方を綺麗に整理した「行政法答案構成ノート」を出しています。


こちらのノートもかなり使いやすいので、同期の合格者の中には受験新報のノートを使っている人も結構いました。

「趣旨規範ハンドブック」を使っても「受験新報のノート」を使ってもどちらでも問題ありませんので、見比べてみて自分が使いやすいほうを使うと良いでしょう。

●ASIN: B07K14BNBL






■論文式試験の過去問の分析


先程お話ししたとおり、司法試験(予備試験も)では論文式試験の過去問の分析は大事です。


先程お話ししたように

① 「訴訟類型」を整理して実戦で使えるようにする

② あまり勉強したことがない法律について、自分の頭で考えて解けるようにする

③ 「誘導」にきちんと乗れるようにする

という技術を身につけるためには、司法試験の論文試験の過去問を最低でも5年分はやっておくべきです。

過去問を5年分くらいやると、次第に「なんだか毎年同じようなことが聞かれているな」という感覚になってくると思います。

聞かれている論点は違っても、求めれている考え方や、誘導の仕方は、パターンがある程度決まっているので、過去問をこなしてくと「はいはい。こういうパターンね。前に見たことあるよ。」と落ち着いて問題を処理できるようになっていくと思います。


過去問を解く時には、できれば自分よりも優秀な人とゼミを組んで、毎週何曜日の何時までに全員が答案を書き上げるという約束をして、答案が出来上がったらお互いに答案を批評しあうと、過去問から得られるモノの量と質が大幅にあがると思います。


自分や他の人が書いた答案を分析する時は、辰已法律研究所の「ぶんせき本」の優秀答案や予備校のコメント、法務省の採点実感等を読みながらやると良いです。

●ISBN-10: 4864664668

●ISBN-10: 4864664676



過去問を何度も回しているのに、解き方が分からない、という人は、主に2つのパターンに分けられると思います。


1つ目は、基本的な知識や理解が足りていないパターン。

この場合は、

「伊藤塾試験対策問題集」のAランクの問題などを解く
分からない部分を基本書などで復習する

をループしたりして、基本的な知識をインプットし理解を深めるしかないと思います。



2つ目は、司法試験の問題との相性が悪く解き方のコツがなかなか掴めないタイプ。

このパターンは、知識や理解は十分にあるのに、論文試験は苦手というパターンで、優秀な人の中にもこういう人がたまにいます。

論文試験の解き方のコツや誘導の乗り方がどうしても掴めない人は、論文試験が得意な人に方法を聞いて回るという方法もあるのですが、「誘導」に乗るのが苦手な人は、辰巳法律研究所の福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」という講座を個人的におすすめします。

この「絶対にすべらない答案の書き方」は、司法試験の論文試験の各科目の問題文の読み方、時間配分の仕方、答案構成の仕方、答案の書き方、誘導の乗り方などを一定のルールに従ってやることで、論文試験で酷い点数を取るリスクをゼロに近づける、みたいな内容です(私の理解が間違っていたらすみません)。

私も「論文試験の解き方がよく分からないな」と思っていた時に同級生に福田先生の講座を勧められて受講したのですが、講義の内容を全部文字に起こして、福田先生の言っているルールを守ように徹底したところ、点数が安定するようになりました。

DVDの講座で2万5000円くらいしたと思うので、購入するのはちょっと勇気がいる価格だと思いますし、同級生の中では「あまり響かなかった」という人もいたので相性みたいなものがあると思います。

あと、この講座は司法試験でもの凄い高得点を取る的な内容ではなく、タイトルどおり「すべらない」=「落ちない」ことをメインにしている内容なので、「合格点を取る自信は十分にあるけど、10番以内で合格したい」みたいな人向けの内容ではありません。

いきなり講座を買う勇気がない人は、本も出ているので、そっちを読んでみてから講座を受けるか判断しても良いかもしれません。

●ISBN-10: 4864661596

ただ、本は講座に比べると内容は薄めです(価格が違うので仕方ないのですが)。









■答練・直前模試を受けよう


司法試験・予備試験ともに遅くとも年明け頃から予備校の答練を受けたほうが良いです。

予備校の答練は、司法試験も予備試験も、10月頃から第1クールが始まり、年明けの1月か2月頃から第2クールが始まります。

「第1クール」「第2クール」という名前は予備校によって若干違いますが、1セット目、2セット目みたいな意味です。

勉強のスケジュールがある程度進んでいて、お金に余裕がある人は第1クールも第2クールも両方受けて良いと思いますが、私は第2クールだけ受けました。

第1クールは受講しない受験生も多いので、第1クールで出題されたものと同じような問題が本試験で出たとしても、それ程差が付かないことが多いと思います。

また、過去問の検討が不十分な場合には、無理をして第1クールの答練を受けるよりは、過去問の検討を十分にしたほうが力が付く可能性が高いと思います。

予備校の答練も良く練られていますが、やはり質的な意味では過去問のほうが得られるものが多いです。



過去問を5年分くらいこなしてから答練を受けると、自分の苦手な部分や、弱点が分かってくると思います。

たとえば、いつも時間内に書き終わらないとか、訴訟類型の判断に時間がかかるとか、実体法的な論点が弱いなど。

弱点が分かれば、その原因を探った上で、復習をすることで本試験までの間に補強をしていくことができます。


どの予備校の答練を受けるか迷った場合には,「予備校の答練について」という記事を参考にしてください。

個人的には受講生の多い予備校の答練を受けることをおすすめしています。







■短答式試験(行政法)の勉強方法


現在の司法試験の短答式試験では,行政法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,行政法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。


それに対して,予備試験の短答式試験では,行政法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。

他の科目の記事でお話したとおり、短答式試験の勉強方法は基本的に短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べるという単純作業です。



短答式試験の過去問集は,私は当初は辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」を使っていましたが、途中からスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」をメインで使っていました。


●ISBN-10: 4864664536

●ASIN: B083SRMJPH


辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」は以前に比べると解説が若干コンパクトになったような気がします。

ただ、解説は以前と同様、条文の内容や判例の判旨をそのまま記載しているだけのものも多く、「条文や判決にはそう書いてあるんだろうけど、なんでそうなるの?」という部分がよく分からなかったりします。


スクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」は、解説はコンパクトですが、条文の制度趣旨などまでに遡って説明してくれているので、ある程度勉強が進んできた人であれば頭に残りやすく、早く回せると思います。

ただ、最近のスクール東京の問題集の解説は言い回しが独特になってきたので読みづらいと感じる人もいると思いますし、他の問題集に比べると改訂が遅めです。

スクール東京の成川先生は、以前に早稲田セミナーという司法試験予備校を経営していた方で、長年司法試験の講師をされていただけあって著書もインパクトのあるものが多いのですが、個性的な方なので相性が合わない人は合わないかも知れません。


短答式の過去問集は各予備校から出ていますが、一長一短で好みが分かれるところなので、試し読みしてみて、気に入ったものを買うと良いと思います。

解説だけで言うと伊藤塾の問題集も良いと思いますが、伊藤塾の問題集は問題数が少ないのがネックです。


●ASIN: B07XK14931

●ISBN-10: 4847146085

●ISBN-10: 4587226971


迷った場合には、スクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」を試し読みしてみて、「合わないな」と感じた方は、辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」を使うのが無難かな、と思います。


単純作業が苦痛でない人は「肢別本」が効率的です。

●ISBN-10: 4864664145

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトな問題集なので、速く回せます。

同級生が「1日で肢別本1冊読む」という人もいたので、気合いと根性がある人であれば、肢別本を選択肢に入れても良いと思います。

肢別本はアプリも出ています。




短答式の勉強のために「択一六法」を買う受験生もいます。

●ISBN-10: 4844974726

「択一六法」は先程紹介した東京リーガルマインド(LEC)の「C-BOOK」をコンパクトにまとめたような本です。

短答式対策の勉強をしていると、知識を整理するためにノートを作りたくなる衝動に駆られることがあるのですが、自分でノートを作るのは時間がかかるので、択一六法で代用できないか検討する価値はあると思います。

ロースクールの授業に重い基本書や六法を持っていくのが面倒なので、択一六法だけ持って授業を受ける猛者もいたりします。


以上、行政法のおすすめの勉強方法と基本書でした。

勉強の進め方は人それぞれなので、必ずしも上記のとおり進めなければならないという訳ではありません。

予備校に通っている方は、予備校の講義をペースメーカーにして進めていくと良いでしょう。

質問がありましたらコメント欄に記入してください。


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2020年04月01日

質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。
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勉強の仕方について
勉強の時、ノートのとり方がうまく行かないことはありませんでしたか。
最近、ノートを取らず、予備校本を読んで、問題集や過去問をやってわからない所は又予備校本を読んでを繰り返しております。
そこで、論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?
それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。
勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。
基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。
説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。
――――――――――――――――――――――――――
伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。
他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。
あまりうまく説明できませんが、宜しくお願いします。
――――――――――――――――――――――――――


  • ●論証集やノートを作る必要性について

司法試験の勉強における論証集やノートの使い方について質問がありましたので、お答えしたいと思います。

私も勉強を始めた頃は論証集(論証パターン)の扱いについて悩んだことがあるので、お気持ちは分かります。

結論としては、
(ア)自分で論証集・ノートを作る必要性があると感じていて、かつ時間があるのであれば論証集やノートを作れば良いと思いますし、
(イ)
現時点で論証集・ノートを作る必要性を感じていない場合や、論証集やノートを作る時間的余裕がない場合には、敢えて作る必要はないと思います。


参考として私が受験生の時にどうしていたかという話をしたいと思います。

私は、勉強を始めた頃は論証集やノートは作っていませんでした。必要性を感じていなかったからです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」など論文式試験用の問題集を読めば主要な論点の論証は載っていますので、論証を覚えたいのであれば、論文式試験用の問題集の問題と参考答案を何度も読みながら分からないこところを基本書や予備校本で調べるという作業を繰り返したり、参考答案を写経したりすれば良いと思います。

★ISBN-10: 433530370X

また、勉強を始めたばかりの頃や、自分の頭で考えて論証を作るよりも、出来の良い論証を丸暗記してしまったほうが学習効率が良いので、敢えて自分なりの論証集というものを作る必要性は低いと思います。(「守破離」の「守」、つまり、教わった型を守る)段階です。)



しかし、ある程度勉強が進んできて理解が深まってくると、「自分の頭で考えた論証」や「お気に入りの先生の基本書に書いてある論証」や「司法試験の優秀答案にあった論証」のほうを使いたいという場面出てくると思います。(「守破離」の「破離」、つまり、教わった型を自分なりに改善・改良できる段階になっていきます。)

こうなってくると「試験対策問題集 論文」などの論証を丸暗記するよりも、自分が理解したことや、腑に落ちたことをベースに論証を作って覚えたほうが、記憶に残りやすくなってくるんです。

また単に論点を学習する上で、過去の裁判例でどのような事案であったとか、どのような当てはめたがされたなどの情報を整理したくなってくることも出てきました。

そこで、私は「自分なりの論証を作ったほうが記憶に残りやすい」と感じた論点が出てきた時や、事案や当てはめを整理したい論証ができた時には、その論点について、ワードで自分なりの論証集を作るようにしていました。


たとえば、刑法の共同正犯の成立要件に関する論証ですが、一般的な予備校の問題集にある論証のままだと、事案への「当てはめ」がやりにくいと感じていたので、基本書や過去の判例を参考に以下のような論証を作っていました。


【ここから】

※C-book366、370、山口160、講義案318、ステップアップ101、終局起案手引25、

(1)
実行行為の一部を分担していないが
共謀に参加した者についても
共同正犯(60条)が成立しうるか
が問題となる

(2)
思うに、
「共同して犯罪を実行した」(60条)場合に
全員が正犯とされるという
共同正犯の正犯性の根拠は
各共謀者の
自らの犯罪を実現するために
共謀をなし
共謀に基づいて
相互に
他方の行為を利用・補充し合って
犯罪が実行された場合には
各関与者が
自ら事態の成り行きを操作して
直接的に
法益侵害またはその危険を惹起した
という意味で
各関与者が
自ら犯罪を実行したものと
規範的に評価できる点にある。
そこで、
①共同実行の事実
(共謀に基づいて
共謀者のいずれかが
実行行為を行ったこと)
②各被疑者が犯意を相互に認識したこと
(犯意の相互認識)
③各被疑者に
故意だけでなく
他の者と行為を利用・補充し合い
自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)があること
という要件を満たす場合には
実行行為の一部を分担しない者についても
共同正犯が成立しうると解する。
(最大決昭33.5.28:百選Ⅰ75))
(最決平15.5.1:百選Ⅰ76))

(3) あてはめ
→別途、表を作って整理

※講義案318-
実行共同正犯・共謀共同正犯のいずれにおいても上記の要件となる。
∵共同正犯の正犯性の根拠は共謀へ参加した点にある
→共同正犯の成否という観点では,
実行共同正犯と共謀共同正犯との間には何ら本質的な差異はない
実行共同正犯・共謀共同正犯の区別は
刑事訴訟法の訴因の特定や訴因変更において問題となるにすぎない
【ここまで】


そして、この論証集には、参考にした基本書・予備校本・判例集の頁・番号を記載し、答練をやったり、過去問をやって気づいたことや、気に入った論証のフレーズを加えていき、答練や試験の直前期に見直すようにしていました。


このような自分なりの論証集は全ての論点について作っていた訳ではなく、あくまで論証を作る必要性を感じた論点(自分で論証を作ったほうが理解しやすい、記憶に残りやすいと感じた論点)に絞って作っていました。

自分なりの論証集を作っていない論点については、伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を直前期に読んで覚えたり、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を直前期に読んで、暗記するという作業をしていました。




その他、論証の他に、似て非なる知識が出てきた時に、主に択一対策用に表を作って知識を整理する、といこともやっていました。

たとえば、民法であれば「共有」「合有」「総有」の違いを整理するとか、「代理」と「使者」の違いを整理したりするというものです。


以上のやり方は、あくまで私のやり方ですので、上記のとおりにしなければならないということではありません。

前記のとおり、①自分で論証集やノートを作る必要性があると感じているという点と、②論証集やノートを作っている時間があるのか、という2点から、作るかどうかを判断したほうが良いと思います。

受験生の中には、論証集やノートの作成に時間をかけすぎて、本番に間に合わなくなってしまう人もいますので、時間がない場合には、論証集は全て論文問題集や趣旨規範ハンドブックで代用するとか、ノートは択一六法で代用する等の判断が必要になってくると思います。


私の同級生の中には、自分の論証集やノートを一切作らずに合格している人も多数います。

論証集・ノートを一切作らずに合格している人は、問題演習をたくさんこなしながら、演習の復習の際に知識をインプットしている人が多かったように思います。





  • ●「論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。」


この点も人それぞれだと思います。

「普段のノート」について、どのようなものを作っていらっしゃるのか分からなかったのですが、私は趣旨規範ハンドブックをスキャンした上でOCRソフト(読取革命)で読み込んで、ワードに貼り付けて、そこに自分のメモを打ち込んでいくとう方法を取っていました。

「OCRソフト」とは以下のようなソフトです。

★ASIN: B0091L3FDS


しかし、OCRソフトを使っても、趣旨規範ハンドブックの内容をワードの貼り付けるという作業は結構時間がかかりますので(慣れている人でも丸1日くらいはかかると思います。)、私の方法は効率が良かったとは言えないとと思います。

私の同級生(合格者)は趣旨規範ハンドブックに手書きで、自分が必要だと思う情報をどんどん書き込んでいって、直前期に見直すという方法をとっていました。

ただ、この方法も、同級生曰く「趣旨規範ハンドブックが改訂される度に、手書きのメモを書き写さなければならないのが非常の面倒くさい」と言っていましたので(これも1日から数日かかるようです)、前記のようにワードにデータを貼り付けたりするのか、紙ベースで手書きで書き込んでいくかは、一長一短だと思います。



  • ●「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。」

「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く」という点については先程お話ししたとおりです。

自分なりの論証集や知識を整理したノートを作る必要性と時間があると思うのであれば作ればよいと思いますし、必要性を感じないとか、時間がないという場合にはノートを作る必要はないと思います。

「問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか」という点については、どのような形で問題演習をするかによると思います。

短答式の問題を解く場合であれば、事案図を書くためのメモ紙等があれば十分だと思いますし、肢別本をガンガン回す時にはノートは使わない人のほうが多いと思います。

論文式の問題集を使う時には、知識のインプットがメインであれば、ノートを使わずにとにかく読み込むというやり方でも良いと思いますし、実際に答案が書けるかチェックしたいということであればノートや答案用紙に実際に答案を書いてみるという作業をしたほうが良いと思います。

なお、司法試験の論文式の過去問を解く時は、下書き用紙に答案構成をした上で、本番と同じ答案用紙に答案を実際に書くという作業をするべきです。

答案用紙は法務省のHPからダウンロードできます。

http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00165.html





  • ●「基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。」

「基本書を7回読めとかいいますが」という点については、これも人それぞれだと思います。

以前の記事で書いていると思いますが、私は基本書を通読する必要性を感じなかったので、通読した基本書はほとんどありません(通読したのは入門書のみ。)。


他方で、問題演習をして腑に落ちない部分が出てきた時は、基本書や予備校本の該当箇所を何度も読んでいましたので、重要な論点に限って言えば、10回以上基本書を読んでいる部分もあると思います。

基本書を何回読むかが問題なのでなく、予備試験・司法試験の本番で実際に答案を書くことができるのか、合格点が取れるかどうかが問題です。

基本書を何度も読んで合格点が取れるようになるタイプであれば別ですが、そのような人は一部の天才だけなので、普通の受験生であれば、問題演習を中心に勉強をしていったほうが効率が良いと思います。

また、普通の受験生は基本書を7回も読んでいる時間はないと思います。

試しに基本書を1頁読むのにどのくらいの時間がかかるか計った上で、全8科目(憲・民・刑・民訴・刑訴・商法・行政・選択)の基本書の合計の頁数を掛けるみると、基本書の通読には膨大な時間がかかることが分かると思います。

実際に基本書を何度も通読して合格している受験生も少なくありませんので、基本書を通読するな、とは言いませんが、本当に基本書を7回も読む時間があるのかという点と、基本書を7回読んで試験本番で使える知識・技術がどれだけ得られるのかということを良く考えた上で、自分の必要な勉強方法が何なのかを選別していったほうが良いと思います。


なお、特殊な例として、基本書を論証集のように使っている人もいます。

基本書を読む時に、問題提起の部分、規範の部分、理由付けの部分、あてはめの部分をそれぞれマーカー色分けをして、基本書を読む時に、自分の頭の中で論証(もし論文式試験で問われたたらどういう答案になるのか)を構成しながら読むという高度な方法なのですが、地頭が良い方であればこういう方法もあると思います。

江頭先生や伊藤眞先生のような重厚な基本書でこれをやろうとするとかなりキツイと思いますが、最近は予備校本的な初心者にも優しい基本書も増えてきていますし、このような使い方が出来るのであれば、基本書を何度も読むというのもありではないかと思います。




  • ●「伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。」

論証集は色々なものがありますが、個人的には主要論点を抑えるという点で伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を使いつつ、細かい論点を押さえるために辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使うというのがお勧めです。

予備校本の巻末にも論証集は載っていますが、これらの論証集は基本的に事案が書いておらず、あてはめの記載もないため、使い勝手はあまり良くないです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」は、重要論点はほぼ網羅していて、答案例の質も良いのですし、あてはめもシンプルながら要点が押さえられています。

他方、「試験対策問題集 論文」は改訂が数年に1回しかないため、最新判例に関する論点や、近時の本試験で出題されたような先進的な論点については掲載されていないことあります。

そのため、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使って、論点に漏れがないようにカバーをしておくのが安全かと思います。







以上が私の意見ですが、分からないことがありましたらまた質問をいただければと思います。


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Comments(3) |  │   (22:00)

質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

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はじめまして。
いつも貴重な情報をありがとうございます。
質問させて下さい。

不動産、相続に関係した案件はどの程度あるのでしょうか?
弁護士業は特定の分野に特化して成り立つのでしょうか?
東京と地方、所属事務所によって様々だと思いますが、少しでも教えていただけるとありがたいです。

※当方地方在住の30代の男で.現在不動産鑑定士として働いています。司法試験に挑戦し、不動産、相続問題を扱う弁護士になりたいと思っています。
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回答が遅くなり本当に申し訳ありません。

.現在不動産鑑定士さんとして働いていらっしゃるんですね。

不動産鑑定士試験は今でも相当難しいと思いますが、そこから今度は司法試験に挑戦しようと考えておられるのは凄いモチベーションのある方ですね。


ご質問をいただいた点についてお答えします。




  • ●不動産に関係する案件について

私は地方都市で働いていますが、不動産に関する事件は良くあります。

ただし、不動産関係の事案は飛び込みで来ることは比較的少なくて、不動産業者の紹介や司法書士さんの紹介で来ることが多いです。

ですから、不動産に関する事案を得意分野とすることを希望しているのであれば、不動産業者や司法書士さんとのコネクションを作っておくと良いと思います(不動産鑑定士さんであればすでにコネクションはあると思いますが)。

また現在不動産鑑定士として働いていらっしゃるようですので、不動産鑑定士としての知識や経験を活かして不動産業者や大家さんを相手にしたセミナー等を定期的に開催して、顔を売っていくのも良いかもしれません。

その他、全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)や、全日(全日本不動産協会)の役員の方々と知り合いになると、そこから紹介で不動産関係に事件や講師の依頼などの仕事が来ることもあると思います。




  • ●相続案件について

現在は超高齢化社会ですので、相続案件は今でも多いですし、これからも無くならないと思います。

弁護士会や法テラスの法律相談に行くと、2割から4割くらいは相続関係の相談という感じです。


相続関係で多いのは以下のようような相談や事件です。

(ア)遺産分割(亡くなった人の遺産を相続人でどうやって分けるかの問題)

(イ)遺留分請求(遺言で財産をもらえなかった相続人が財産をもらった人に法律で定められた割合を請求)

(ウ)相続放棄(借金を持っている人が亡くなった場合に相続人が借金を相続しないように放棄をする等の手続)

(エ)遺言作成(自分が亡くなった後の財産の分け方などについて遺言で残しておきたい)


このうち、「(ア)遺産分割」と「(イ)遺留分請求」の事件は、遺産の額によって弁護士の報酬の額が変わってくることが多いのですが、最近の傾向としては取り扱う事件の遺産の額が少しずつ減っているような気がしますが、件数自体はそれ程減っている感じはしません(感覚的な話なのでデータを取ると違うかもしれませんが。)。





  • ●弁護士業は特定の分野に特化して成り立つか

「弁護士業は特定の分野に特化して成り立つか」は、(1)特化する分野と、(2)どこで弁護士業をやるかによると思います。

不動産事件と相続事件に特化するという場合であれば、ある程度人口が多い都市部であれば、分野を絞っても、業務として成り立たせることは十分に可能だと思います。

他方、地方だと、分野を絞り過ぎると業務として成り立たせるだけの十分な需要が見込めないことも考えられます。

「地方在住」とのことですと、不動産事件と相続事件だけに絞るのはちょっと厳しい可能性がありますので、もう少し範囲を広げたほうが良いのではないかと思います。



私の見解は以上ですが、不明な点がありましたらまた質問をいただければです。

頑張ってください。


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