2018年04月19日

私は色々思うところがあって市役所を辞めましたが,今になって考えると,市役所の仕事には楽しいことや良いところも沢山ありましたし,他方でストレスを感じる点も少なからずありました。

市役所に就職しようと思っている人の参考のために,私が考えると市役所・町村役場の「良いところ」と「悪いところ」についてお話したいと思います。


■よいところ


●安定性1(クビになりにくい)


市役所に就職するメリットとして一番挙げられるのが「安定性」ではないでしょうか。

一度市役所に就職をしてしまえば,よほど悪いことをしない限りクビになることはなかなかありません。

一応,公務員にも「分限免職」といって,仕事ができない職員をクビに出来る制度はあるのですが,「分限免職」をするためには,仕事の途中に家に帰ってしまうとか,頻繁に同僚と大きなトラブルを起こすとか,そういった事情がないと,人事もなかなか免職に踏み切れないのです。

ただ,仕事が出来ない人や,人間性に問題がある人がクビになりにくいという点は,真面目に仕事をしている人にとってはデメリットでもあります。

仕事ができない人や,トラブルメーカーと同じ部署に配属されることもあり,その場合には苦労します。

私も市役所の中で3本の指に入ると言われていた,有名なトラブルメーカーと同じ仕事をすることになったことがあるのですが,仕事を与えるとトラブルを起こしてしまい,かえって仕事が増えてしまうので大変でした。

もっとも,市役所の職員は真面目な人が多いので,トラブルメーカーと同じ職場になっても,その他の職員同士でフォローし合っていけば,何とか仕事を回すことは可能です。



●安定性2(給料・年金・福利厚生が安定している)


市役所を辞めて痛感したのは,公務員は給料,福利厚生,年金の制度がしっかりしているということです。

弁護士に転職して,市役所の時よりも年収は大幅に増えましたが,自営業者は,万が一病気になった場合には,収入が途絶えてしまいます。

また,自営業者は基本的に国民年金にしか加入していないので,自分で他の年金制度に加入するなど,老後の生活に向けて準備をしておく必要があります。

他方,公務員は病気になっても,一定期間は給与が支給される制度があります。

また,年金についても,掛金の半分は職場が負担してくれますし,自分で個別に年金制度に入らなくても,老後の生活に不安を感じる必要はほとんどありません。

さらに,会社員のように,会社が倒産したり,リストラに遭う可能性もほとんどありませんから,そういった点でも収入が安定しています。

このように考えると,公務員はやはり恵まれていると思います。



●市外への転勤がほとんどない


全国的に展開している企業の会社員や,国家公務員,都道府県庁の職員の場合には,引っ越しを伴う転勤が多々あります。

今の企業では,日本国内だけでなく,東南アジア,中国,ロシアなど,外国への転勤を命じられた日とも少なくないですよね。

独身の若いうちであれば,県外や海外への転勤も新鮮で面白いと思いますが,結婚をして子どもが出来ると,転勤で頭を抱えるサラリーマンも増えてきます。

可愛い子供と離れて単身赴任をしなければならないこともあるでしょうし,共働きの場合には奥さんが仕事を辞めなければならなくなったという話も良く聞きます。

また,親の介護をしているような場合にも,転勤の問題が大きくのしかかることがあります。

他方,市役所の職員は,基本的に市内で異動するので,市外・県外への転勤はほとんどありませんし,海外への転勤はほぼ皆無です。

たまに,他の自治体に出向になることがありますが,長い役所人生の中でせいぜい2~3年程度でしょう。

年齢を重ねると,転勤がほとんどないという市役所のメリットはとても大きいと思います。






●就職しやすい・採用試験が比較的簡単である


反論があるところだと思いますが,市役所のメリットとして「就職しやすい」という点があると思います。

私が大学生の時,超が付く程の就職氷河期で,同級生は民間企業を30社とか100社とか回って,それでも内定をもらえないような人がいました。

他方,私は国家公務員試験と市役所2つを受験し,うち国家公務員試験と1つの市役所に合格し,内定をもらいました。

内定率66%です。

不合格となった市役所は,たまたまその年だけ当時合格率1%という超難関で(受験者約1000人に対し合格者10名),成績の開示請求をしたところ前年か次の年であれば余裕で合格できるくらいの点数は取れていました。

公務員は,採用基準が比較的明確で,筆記試験の点数が重視され,面接も対策しやすいので,きちんと試験対策をしておけば,かなりの高確率で内定をもらうことができます。

私は公務員試験を受験する際には,スクールに通わずに,大学生協で売っていた入門書と,実務教育出版の公務員試験対策用の問題集を買ってきて,半年くらいダラダラと勉強をしただけでしたが,それでも合格することが出来ました。

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公務員試験は,倍率が10倍とか30倍程度と発表されるので「自分には無理だ」と最初から諦めてしまう人が多いのですが,ちゃんと試験対策をして受験をしている人はごく僅かです。

また「法律や経済学をきちんと勉強しないと合格できない」と勘違いしている人が多いのですが,公務員試験(国家総合職を除く)の法律や経済学の試験はレベルが低いので,法律や経済学の基本中の基本さえ分かっていれば,十分に合格することが出来ます。

面接試験については運の要素もありますが,面接試験の段階で人数が大幅に絞り込まれるので,筆記試験で十分な点数をとっていれば,民間企業と違ってかなり高い確率で面接試験も通ることがきます。

個人的な意見ですが,暑いなか汗を流しながら民間企業で何社も面接を受けて精神をすり減らすよりも,クーラーの効いた涼しい図書館でコツコルと公務員試験の勉強をして,2~3庁に絞って公務員試験を受験するほうが,就職活動の苦労は少ないんじゃないかと思います。



●異動によって全く違う仕事が出来る


市役所の仕事のデメリットとして「異動がある」という点が挙げられることがありますが,私は異動はメリットだと思っています。

同じ職場に嫌な人や合わない人がいても,異動希望を出すことで異動させてもらえることもありますし,せいぜい5年くらい我慢すれば,嫌な人と別の職場にいくことができます。

また,仕事に内容にもよりますが,同じ仕事を5年くらいやっていると飽きてくるんですよね。

市役所では,「税の仕事をした後に,総務の仕事をして,政策企画の仕事をして,教育委員会に行って・・・」みたいに,一回の人生の中で,畑違いの仕事をいくつも経験することができます。

新しい仕事を覚えるのは大変ですが,飽きてしまった仕事を続けるよりも,何度も未知の仕事に出会うことができるのは,市役所の魅力の一つだと思います。

私も異動発表の時期(3月)になると,「次はどんな仕事が出来るんだろう」とワクワクしていました。

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●比較的良い人が多い


これは私がたまたま周囲の人に恵まれただけかも知れませんが,市役所に入る大部分の人は,コツコツを勉強をしてきた真面目な人が多いと思います。

中には仕事をしない人とか,トラブルメーカーもいて苦労することもありますが,市役所を辞めてみると,一般的な世間と比較すると,ヤバイ人の割合は比較的少ないほうだと実感します。




■悪いところ


ここからは市役所の悪いところ,ブラックな面を挙げていきたいと思います。



●真面目に仕事をする人の仕事が増えていくことがある


「市役所あるある」だと思いますが,市役所の職員の中には,「楽をしたい」「自分の仕事を増やしたくない」と考えている人がいます。

心理学の中に「人が集団になると,手を抜く人が現れる」という「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」というものがあります。

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「集団の中で自分が頑張っても自分が評価されない」「自分が頑張っても報酬が増えるわけではない」という環境の中で,この「リンゲルマン効果」が発生しやすいらしいのですが,役所の仕事はまさに「リンゲルマン効果」が発生しやすい環境です。

役所は課や係という単位で集団になってやる仕事が多いですし,仕事をしてもしなくても給料はほとんど変わらず,年齢を重ねるごとに順調に増えていきます。

仕事をしないからといってクビになることも,ほとんどありません。

しかも仕事をすればする程,他の仕事が与えられて忙しくなっていくこともあるんですよね。

ですから,市役所の職員の中には「楽をしたい」「自分の仕事を増やしたくない」と考えてしまう人が少なからずいるのです。


私は「仕事の量に違いがあるのはおかしい!」と思って行動を起こしたことがあるのですが,酷い目に遭いました。

同じ部署の中で,ある後輩の残業時間が飛び抜けて多かったので,「私が後輩の仕事を引き受けます」といって,一番忙しい担当を引き受けました。

そして,仕事の内容をマニュアル化したり,書式を統一したり,定型的な作業についてはプログラムを組んだりして作業の効率化を進め,一番忙しかったはずの仕事の残業時間をほぼゼロにしました。

しかし,私の残業が減ったところ,「アイツは残業していない。暇そうだ。こっちの係の仕事をアイツにやらせよう。」という感じで,色々な人の仕事が私に割り振られるようになりました。

他にも体調が悪い人の仕事や,他の係の仕事も引き受けていたので,最終的に3人分くらいの仕事が私に集まってきました。

私に仕事を押しつけて来た人の中には,日中,ほとんどヤフーニュースを見ていたり,1日の3分の1くらいの時間を喫煙所で過ごしているような人もいました。

私はそれでも何とか工夫をして残業時間を月30時間程度に抑えていましたが,私がその部署から離れた後,後任者から「月100時間程度の残業をしても仕事終わらない」「一人でどうやってこれだけの仕事をやっていたの?」と苦情が来たほどでした。

これは極端な例ではありますが,市役所で働いていると同じような出来事はよく見られます。

私は仕事が暇なよりは忙しいほうが好きなのですが,それでも人に仕事を押しつけて自分だけ楽をしようとしている人を見ると,イライラしてしまうんですよね。

市役所で働いていく上では,特に「大部屋」と呼ばれる部署で働く場合には,仕事を押しつけられないようにする術を身につけておかないと,ちょっと苦労するかも知れません。




●何のために,誰のためにやっているのか分からない仕事がある


これは役所に限らず,どんな仕事にでもあることだと思いますが,「この仕事って何か意味あるの?」「この仕事って誰のためになっているの?」という仕事が結構あります。

たとえば,役所間や部署間での「照会」。

役所の各部署には「こんな事例がありますか」とか「あなたの部署の事業内容と予算を教えてください」という照会が大量に来ます。

もちろん必要な照会もあるのですが「これって聞いて何か意味があるの?」「とりあえず照会したという実績を残したいために形式的にやっているだけでしょ?」というようなものも多いです。


また,同じような照会が違う部署から何度も来たりします。

「あなたの部署の事業内容と予算を教えてください」という照会が,財政課から来て,企画課から来て,秘書課から来て・・・と,様々な部署から来て,しかも回答用の書式が微妙に違ったりするので,同じような作業を何度も繰り返すことになります。

こういった作業は,事業内容と予算・決算状況をまとめたデータベースを作って,各課がそこにアクセスできるようにすれば効率的になると思うのですが,過去の慣例が強すぎて業務改善されていきません。


その他にも,市町村が国とやり取りをする時に,間に県を挟まないといけないことが多々あります。

市町村が国に意見を求める時に,県の担当者に連絡をして,県の担当者が国に連絡をして・・・国の担当者が,県の担当者に連絡して,県の担当者が市町村に連絡する・・・,という形式を取ることがあるのですが,「いやいや。県の担当者いらなくない?」と思うことが多々あります。

県の担当者を挟むことで伝言ゲームのような形になって,何を言いたいのか分からなくなったり,やり取りに非常に時間がかかったりします。

こういったやり取りも行政の無駄だな。。。と思うことがあります。


他にもエクセルを使えばあっというまに終わる作業なのに,「昔からこうやっている」という謎の無駄な作業があったりることもあります。


こういった行政の無駄的な作業をさせられるのは苦痛ですが,逆に「これってオカシイよ」と声をあげて,業務を効率化していくことを考えると市役所の仕事も面白くなると思います。


私も様々な部署で業務を効率化しようと工夫をしてみました。

そうすると「なぜ,今さらやり方を変える必要があるんだ?」という反発が必ずと言って良い程出てきます。

でも,それでもより効率的なやり方を求めて,普段よりも早く仕事を終わらせることが出来るようになると,達成感があります。

ただし,あまり仕事を効率化すると,他の仕事を割り当てられたり,部署の人員が減らされたりするんですけどね・・・。




●国や県と比べて予算(お金)がない


夕張市が財政破綻したのは有名ですが,夕張市に限らず,多くの市町村は予算のやりくりに苦労しています。

配属される部署によっては,消耗品を買うお金すらろくにないので,私は仕事で使う文房具や付箋を100円ショップで買ったりしていました。

国や県に勤務している人の話を聞くと,そこまでお金がない,ということは聞かないので,やはり市町村のほうが予算は厳しいと思います。


それから,以前に地方分権の流れが進んで「国と自治体の立場は対等であるべき」といった議論もありましたが,残念ながら今でも国は自治体に対し強い権限を持っています。

国(厳密には国会)が法律を作って,市町村の役割を定めると,市町村の仕事はどんどん増えていきます。

それに対し市町村の財源は増えていかない・・・。

市町村で仕事をしていると,予算がなくて頭を抱えることが多いのですが,国や県で働いている同級生が羨ましく思えることがあります。




●仕事が出来ない人が出世することがある


市役所では通常であれば,優秀で真面目で周囲の信頼の厚い人が出世してくことが多いのですが,中には「なぜこの人が偉くなったんだ?」と疑問符が付くような人が課長になったり部長になったりすることがあります。

仕事が出来ない人が上司になると部下は大変です。

何か大きな問題が起きて部下が一生懸命対応しようとしているのに,上司は指示もしない,責任も取らない,ただ傍観しているだけ。なんてこともあります。


それから「部下として優秀な人」が「上司として優秀な人」になるとは限りません。

野球でも,現役時代は優秀な選手だったのに,監督になったら全く実績を残せなかったというパターンがありますよね。

役所の仕事は個人プレーよりも,人間関係やコミュニケーションがとても大事で,上司になる人は部下の仕事を広く見渡して適切な指示を出すことができないといけません。

しかし,役所の上司の中には「置物」のようにハンコを付いているだけ,という人もいるんですよね。

上司の中には部下から怒られたりして,「おれは管理職になりたくなかったのに・・・」とぼやいている人もいたりします。

役所に入ったらば,将来を見据えて,自分が管理職や先輩と呼ばれるようになった時のために,人を動かす技術についても勉強をしておいたほうが良いと思います。

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●ぶっ飛んでいる人・自由に生きている人が少ない


これは悪いところと言って良いのか分かりませんが,役所で働いている人は真面目な人が多いのですが,大きな夢を持っている人,自由に生きている人,スター性がある人が少ないと思います。


たとえば,ソフトバンクの孫正義社長とか,ライブドアの堀江貴文元社長みたいな凄い人が,市役所で働いている訳がないですよね。

そのため,役所の人達だけで飲み会をしていても,同じような話が多く,つまらないことが多いです。

役所の同期とバーに言った時に,職業がバレるような会話は一切していないのに,マスターから「君たち,公務員でしょ。」と言われたことがあります。

「なんで分かったんですか?」と聞いたところ「分かるよ。公務員の人って,何ていうか,魅力がないんだよね。」とバッサリ言われてしまいました。

これは自分でも半ば分かっていたことで,公務員になると,その後の人生がどうなるかはだいたい予想できてしまうので,夢を持ったり,自由に生きよう,というポジティブな気持ちが小さくなってしまうんです。

その後,市役所を辞めて弁護士になって,他の士業の人や,企業の経営者と話す機会が増えたところ「世の中には,こんなに自由に生きている人,ポジティブな人がいるんだ。」という出来事が増えました。

役所に入って「つまらないな」と感じている人は,異業種交流会に参加するとか,他の仕事をしている友達と定期的に会ってみるとか,役所以外の雰囲気に定期的に触れる機会を作ったほうが良いと思います。


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●誰でも出来る仕事が多い


私が市役所の先輩から「市役所の仕事というのは,誰でも出来る仕事なんだよ」と言われたことがあります。

確かに,市役所の仕事の中には大変な仕事もありますが,異動を前提としている仕事なので「この人じゃないと出来ない」という仕事が少ないんですよね。

「この仕事を一生続けたい」と言っても,数年経つと異動命令が出て,他の職場に配属されてしまいます。

テレビ番組の「プロフェッショナル」や「情熱大陸」に出てくるような,「1つの仕事に熱い情熱を持って一生を捧げる」みたいな働き方が難しい仕事です。

そうは言っても,公務員の中にも,与えられた仕事の1つ1つに熱意を持って取り組んで,「プロフェッショナル」や「情熱大陸」に出ているような職員もいるので,仕事に前向きに取り組んで,職場の理解があれば「自分にしか出来ない仕事」をすることも可能になるかも知れません。




●市民の目が厳しい


市役所で働いている以上,仕方がないことですが,公務員に対する社会の目はとても厳しいです。

例えば,公務で真夏の炎天下で長時間,泥上げ作業をしていて「咽が渇いたな・・・」と勤務時間中にコンビニに立ち寄ろうものなら,役所に苦情が来たりします。

「勤務時間中にコンビニでジュースを買っている市役所職員がいた。けしからん!」と。


その他にも,自分が住んでいるアパートの近隣住民に,公務員だということが知られてしまうと,何かにつけてクレームが来ることもあります。

「ゴミを出した時間が規定の時間の5分前だった」とか「公務員なのに町内会の草刈りの行事に参加しないなんてけしからん」なんて怒られることもあります。

それだけ世間の公務員に対する目は厳しいので,公務員になった後は,プライベートでも世間から批判を受ける行動をしないよう,気をつけないといけないこともあります。


■まとめ


以上,市役所(町村役場)の「良いところ」と「悪いところ」について考えてみました。

振り返ってみると,市役所の仕事が「良いもの」になるか「悪いもの」になるかは,運の要素もありますが,自分の考え方次第ってところも大きいように思います。

一般的なサラリーマンに比べると公務員は恵まれている点も多いと思うので,就職先をどこにするか悩んでいる人は参考にしてみてください。

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2018年04月17日


私が市役所に入った時,正直,市役所の職員がどんな仕事をしているのか分かりませんでした。

市町村採用試験の面接では「キミは入ってどんな仕事をしたいのかね?」とか「ウチの自治体の課題は何で,その課題はどうすれば解決できると思う?」等と聞かれることが多いです。

その際に,市町村が具体的にどのような仕事をしているのかイメージできないと回答に困ることもあると思います。


私は全く準備をしないまま面接試験に臨んだため・・・

面接官「うちに役所に入ったらどんな仕事をしたい?」

私「役所の仕事?・・・ゴミの仕事とか・・・ですかね。」

面接官「うーん。じゃあ,当自治体の課題は何だと思う?」

私「ゴミとか多くて・・・困っているんですかね・・・」

と,ゴミみたいな返事をしてしまい,壁に頭を打ち付けたくなる程,後悔した記憶があります。
(それでも合格しましたが・・・。)


市役所等の職員が,普段どのような仕事をしているのか分からないと,市役所等に入った後にギャップに驚くこともあると思いますので,私の知っている範囲で市役所の主な仕事や部署・課について紹介したいと思います。

市町村への就職を希望している人は,希望する仕事に関する本を読んでみるとイメージが膨らんで面接対策になると思いますし,採用試験の勉強に対するモチベーションも上がると思います。





■政策や企画に関する仕事


●政策課・企画課


市役所への就職を希望している人の中には,政策や企画に関する仕事を希望している人も多いと思います。

市役所では一般的に,市長の指示のもと,今後数年間の総合計画を立てて,計画に基づいて行政運営をしていきます。

政策課・企画課は市全体の将来に関わることが出来る仕事として人気のある部署で,政策課・企画課への異動希望を出しても,競争率が高いため政策・企画に関する仕事ができないということもあります。

また,市全体の仕事が分かっていないと,市町村の政策・企画に関する仕事をすることも難しいです。

政策課・企画課では,市役所の各部署から今後の計画を提出してもらい,それを取りまとめて市全体の計画を立案するのですが,各部署から提出された事業の中身が分からないと,提出された計画をそれっぽく文書にまとめるだけの仕事しか出来ず,総合計画が実効性のあるものなりません。

ですから,市町村の政策・企画に関する仕事をしたいという人は,公共政策に関する勉強をすることも勿論ですが,いろんな部署を回って一生懸命に仕事を覚えることも大事だと思います。

★ISBN-10: 4641184283



●統計調査・国勢調査課


国は5年に一度,「国勢調査」と言う「国内の人口、世帯、産業構造等」に関する調査を行うことになっているのですが,このデータを集める仕事は市町村が行って(やらされて)います。

みなさんの中にも,「国勢調査です」と言われて,アンケート用紙みたいなものを渡されて書いたことがある人がいるのではないでしょうか。

実際に各家を訪問してアンケート用紙みたいなものを渡すのは「国勢調査員」という人がやるのですが,最近では「個人情報を知られたくない」とか「なんで調査に協力しなければならないんだ」という人が増えてきて,回答を集めるのも大変なようです。

そのため,国勢調査員が集めることが出来なかった回答は,市役所の職員が自ら訪問して回収したりしなければならないこともあるようで,かなり大変な仕事だと思います。

国勢調査がない時期は,あまり忙しくないと思いますが,国勢調査がある時期は残業や土日出勤も多いと思います。

国勢調査の仕事は,政策課・企画課と同じ部署にあることも多いので,「政策や企画に関する仕事をしたくて,政策課・企画課への異動希望を出したのに,国勢調査担当になって大変な思いをした」という話もたまに聞くところです。

もっとも,国勢調査の仕事も,自分が関わった調査で,自分が住む街の様々なことが分かってくるので,大変だけれども面白い仕事だと思います。

★国勢調査 日本社会の百年
ISBN-10: 4000291610






■総務関係の仕事


総務関係の部署は,単調な仕事も多いのですが,市役所を裏側から支える大事な仕事で,仕事が出来る人や,将来を期待されている人が行くことが多い部署でもあります。



●総務課・文書課


総務課・文書課は,主に文書の管理を行っています。

市役所等の役所では,何かを行う度に文書を作成し,上司のハンコをもらいます。

これを「決裁」というのですが,この決裁制度があるために,市役所で作成される文書の量は,とんでもなく多くなります。

そのため,作成された大量の文書を,どうやって管理していくか,ということが役所では大事なんです。

総務課では,作成された大量の文書の管理や取りまとめを行ったり,役所に送付された文書を各課に振り分けたりと,文書に関する仕事をしています。

また,各自治体で情報公開条例が整備されたこともあり,市民などから提出された文書の開示請求などの対応をする必要もあります。

その他,総務課は,選挙管理委員会の事務局になっていることも多く,国や自治体の選挙がある時には,夜遅くまで選挙の準備に追われることもあります。

総務課・文書課の仕事は,地味だけれども,大事な仕事なので,仕事が出来る人が配属されることが多いです。


年間の計画が立てやすい部署であるため,残業はそれ程多くないと思いますが,選挙の時期になると,日付が変わっても帰れない,という日が続くこともあると思います。

★ISBN-10: 4324103542



●法制課


総務課とセットになっていることが多い部署として,法制に関する仕事があります。

法制課は企業で言えば法務部のような部署です。

市役所の業務の中で法律的な問題が起きたときに,法律相談を受けたり法的なアドバイスをすることもありますし,顧問弁護士と打ち合わせをすることもあります。

その他に,市町村の条例や規則を作ったり,改正する仕事もします。

本来は,条例や規則は,条例等が関連する担当課が作ることになっているのですが,担当課の職員は条例等の作成・改正に慣れているわけではありませんから,実際には法制課の職員が条例の作成・改正の作業をすることが多いです。

また,年度末になると,国の法律が作られたり改正されるので,それに合わせて市町村の条例や規則も変えていく必要があります。

これが結構な手間で,年度末になると法制課は忙しくなり,日付が変わっても帰れない,ということもあると思います。

また,法律や条例を読むのが苦痛,という人には辛い仕事だと思います。

他方,年度末以外は一般的にそれ程忙しくないと思いますし,法律が好きな人にとってはやり甲斐のある仕事だと思います。

★ISBN-10: 4324091951



●人事課・職員研修課


人事課は,職員の採用や研修を行ったり,異動(転勤)を決めたりします。

人事権という強い権限を持っているため,将来を期待されたエリートコースの職員が配属されることが多い課です。

仕事内容は地味なものもありますが,人事は職員の人生を左右する仕事ですから,責任も重いです。

また,人事の時期になると,残業もかなり多くなるようですし,年末年始も人事を決めるために仕事をしていることもあるようです。

最近では,自治体の財政が厳しくなっていることもあり,職員の数も減らさざるを得ない状況にあります。

どの部署の人数をどうやって減らすのかという問題は,労働組合からの反発もあり得るところで,なかなか大変な仕事だと思います。

なかなか行こうと思って行ける部署ではありませんが,配属された場合には,その後も出世コースを歩めるパターンが多いと思います。


★ISBN-10: 4324078769




●給与課


給与課では,職員の給与,旅費,勤務時間,休暇を管理したり,福利厚生に関する仕事をしたり,職員に貸与する作業着の管理を行ったりします。

多くの自治体では職員の給与はシステムで管理しているので,面倒な計算はないかというと,そうでもなく,イレギュラーな残業や代休の処理など,面倒な計算を地道にしなければならないこともあるようです。

また,職員の勤務時間や休暇に関する制度に関する細かい知識を覚える必要があるため,勉強が嫌いな人にとってはきつい仕事かも知れません。

公務員には労働法がそのまま適用されるわけではありませんが,社会保険労務士の勉強が役に立つ仕事でもあります。

間違いが許されない責任が重い仕事であるため,人事課と同様に,仕事が出来る人材が配属されることが多いです。

そのため,「同じ課の中に仕事をしない人や仕事が出来ない人がいて困る」ということが少ない部署だと思います。

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●情報政策課


大きめの市役所には,職員のパソコンや,庁内のネットワークを管理する課があります。

たいてい「情報政策課」とか「情報企画課」といった名前が付けられていることが多いと思います。

パソコンやシステム管理が好きな人が異動希望を出すので,やや競争率の激しい課だと思います。

年度末の配置換えでは,情報政策課の職員が汗をかきながら走り回ったりしていますが,システム管理が好きな人は,そういった忙しさも苦にならないようですね。

システムにガチで詳しい人が行くことが多いので,パソコンやネットワークに詳しくない人にとっては,あまり縁のない課かも知れません。

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●秘書課


名前のとおり,市長や副市長の秘書です。

市長等のスケジュールを管理したり,旅費の手続をしたり,市長等に会いに来る人の対応をしたりと,気を遣う大変な仕事だと思います。

ある程度ベテランの男性の職員と,若い女性の職員が配属されることが多いと思います。

大変な仕事ですが,秘書課に行く人は市長の信頼を得ている人や,将来出世する人が多いので,秘書課に異動になると,同期から一目置かれること間違いなしです。




●広報課


自治体の広報活動を行ったり,市民からの苦情を受けたり,報道機関との窓口になったり,広報を発行したりする部署です。

自治体によっては職員自らが取材に行くこともあるようで,取材や広報活動が好きな人にとっては魅力的な部署だと思います。

多くの自治体では広報を重視していますし,変な人に自治体の看板を任せる訳にはいかないので,仕事が出来る人が行くことが多い部署です。

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●財産管理課・管財課


文字通り,市町村の財産を管理している課です。

庁舎(建物)の維持管理・修理をしたり,使わない普通財産(土地など)を売ったり貸したり,自動車の管理をしています。

一般の職員は財産管理課に関わることがないので,仕事内容は謎な部分もありますが,「地味だけれども間違えてはいけない」仕事が多いと思います。

「蛍光灯が切れた時に連絡をする課」くらいの認識しかなかったりする影の薄い部署ですが,庁舎の老朽化が問題になっている自治体だったりすると,解決しなければいけない問題が山積みになっていて大変だと思います。

真面目に仕事をする人が異動になることが多い部署です。



■お金に関する仕事


●会計課

お金の支払いを管理する部署です。

自治体のシステムでは,市長(実際には各課の職員)が支出命令という伝票のようなものを出して,会計管理者という人が支出命令に添付された書類を審査して,審査を通過したものが支払われる,というシステムになっています(たぶん。)。

会計課の職員は,会計管理者のもと,各課から送られてきた大量の書類を審査したり,銀行に支払いを依頼したりする仕事をしています。

審査の仕事は,会計の仕事だけでなく,法律の知識も必要になるので,勉強が嫌いな人や,地道な作業が嫌いな人にとっては辛い仕事かも知れません。

ただ,市民と直接関わる部署ではないため,人と接するのが苦手な人には比較的向いている部署だと思います。

お金を支払う仕事については,ほとんどの自治体で会計システムが導入されているため,それ程大変ということではないと思いますが,1日の終わりに1円でも数字が合わないと帰ることができず,間違いが許されないちょっとシビアな仕事です。

また,会計課では決算書の作成が業務になっていることが多く,出納整理期間という決算の時期(4月から5月頭頃まで)は残業が続くことが多いです。

会計課は,人数が少なく,間違いが許されない仕事を扱うので,仕事が出来る人が配属されることが多いです。


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●財政課


財政課は主に市全体の予算を管理する部署です。

各部署は基本的に「お金」がないと事業を行うことが出来ません。

そのため,各部署は毎年秋頃になると,財政課に対し予算の要求をし,財政課の職員がヒアリングをしながら「この予算は認める」「この予算は認められない」といった判断をします。

国で言う「財務省」のような部署で,市役所の中では,人事課に次いて大きな権限を持っていることが多く,エリートコースの職員が配属されることが多いです。

私がいた自治体では体力のある体育会系の人が配属されることが多く,予算作成の時期には「毎日午前3時まで仕事しているぜ!」「先月の残業代が40万だったぜ!」みたいなことを自慢げに言っている財政課の職員もいたりします。


自分よりも年上の職員と対等の立場で交渉することもあり,「仕事頑張っているオレが大好き!」という人には向いている部署だと思いますが,予算の時期の残業の多さで精神を病んでしまう人もいますので,メンタルが弱い人にはお勧めできないかも知れません。

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●市税課・固定資産税課


市民税は市民税(住民税)を,固定資産税課は固定資産税に関する仕事する部署です。


市民税課では,毎年4月頃から忙しそうに市民税を賦課するための準備をしています。


他方,固定資産税課は,1月から3月頃が忙しいようです。

固定資産の評価をするためには,実際に現地で建物の調査をしたりするので,外での仕事が好きな人にとっては,固定資産税課は仕事のしやすい部署だと思います。

どちらも季節労働者的な側面があり,税金を賦課する時期は残業が続くものの,それ以外の時期は残業も少なく,職員の人数も多いため,比較的休暇も取りやすいようです。


ただし,市民税課・固定資産税課に限らないことですが,職員の人数が多い課には問題のある職員(仕事をしない職員,人間関係のトラブルを引き起こしがちな職員)が一定割合で配属されることが多いです。

そのため,運悪く,問題のある職員の隣の席になって,ストレスが溜まっていくこともあります。


ちなみに,市民税・固定資産税の仕事に一定期間従事すると,税理士試験の一部が免除になることがあるようです。

そのため,将来,税理士を目指している人は,市民税課・固定資産税課に異動届を出しておくと良いかも知れません。

★ISBN-10: 4324103429




●納税課・収納課


市民税課・固定資産税課は,主に税金を賦課する(税金を払ってください,という通知をする)仕事をしていますが,税金が払われない時に,税金を取り立てるための部署があります。

税金を取り立てるための部署は,納税課という名前だったり,収納課という名前だったります。

滞納者に通知を出したり,電話をかけたり,自宅を訪問して「税金を払ってください」という仕事をするのですが,優しい心を持っている人には,なかなか辛い仕事のようです。


税金を払わない人の中には,やんちゃな人も多く,逆に脅されたり,身の危険を感じることもあるようです。

他方,税金を払わない人にお願いをするという仕事の性質上,絶対にやらなければいけないという仕事は少なく,あまり仕事に一生懸命ではない職員も一定割合いる部署です。


なかなか人を選ぶ部署だと思いますが,人数が多いため,希望していないのに納税課に配属されてしまうこともあります。




●監査事務局


監査事務局は,普段,各課や会計課が作成した書類の監査をしています。

また,市民から監査請求があった場合に,監査委員とともに,監査請求に理由があるか等の判断をし,対処をします。

監査事務局の執務室に呼ばれて行ったことがあるのですが,数人の職員が黙々と書類をめくって,淡々と付箋に文字を書いて貼り付けていく・・・という,極めて地味な仕事をしていました。

人と接するのが苦手で,単純作業が平気な人にとっては楽な仕事だと思いますが,人と話をするのが好きな人や,単純作業が苦手な人にとっては苦痛だと思います。


監査は行政の適正な運営を行うための大事な仕事なので,ある程度ベテランの,真面目な職員が配属されることが多いです。


★ISBN-10: 4324104182




■市民に関する仕事


●戸籍住民課


戸籍住民課では,市民に戸籍や住民票の写しを渡したり,戸籍や住所が変わった人の手続を行う部署です。

市役所の仕事の中で一番イメージしやすい部署だと思います。

市民と接する仕事ではありますが,他の部署に比べると,苦情やクレームは比較的少ないと思います。

なかば接客業のような仕事ですし,やる事は決まっているので,人と接するのが苦痛でない人にとっては楽な仕事だと思います。

ただし,「誰にでも出来る」「比較的らくちん」な仕事という性質上,他の部署で精神的に病んでしまった職員が送り込まれることも多いです。

戸籍住民課に配属された職員の中には「やり甲斐がない」と嘆く人もいますが,戸籍や住民票というものは実は奥が深く,法律的な問題も絡むことがあるので,仕事への取り組み方にとっては面白い仕事にすることも出来ると思います。




●出張所


市役所や町村役場では,出張所が設けられていることがあります。

わざわざ中心部にある本庁に行かなくても,住民が手続できるようにするためです。

出張所は人数が少ない分,一人で様々な業務を行う必要があります。

そのため,戸籍住民課等の窓口業務を数多くこなしたベテランが所長になることが多いです。

業務の範囲も広いため,様々な仕事を覚えることができます。

本庁から離れており,人数が少ないため,人間関係が良好であればストレスの少ない楽しい職場になりますが,変な人が所長になったりすると,逃げ場がない分,地獄を見ることもあるようです。




●消費生活センター


消費生活センターでは,消費者被害,借金問題等をかかえる市民等の相談にのり,被害のデータを集めたり,問題の解決等に向けて相手方と交渉をしたりする仕事をしています。


多くの消費生活センターでは,非常勤職員(パートの職員)がメインで相談や受付をし,常勤の職員(一般の職員)が非常勤職員を取りまとめる,という形式を取っていることが多いように思われます。

また,必要に応じて弁護士と連携をして問題の解決を図ることもあります。

消費者被害や借金問題に関わるという点で,弁護士の仕事に共通する点も多く,「困った人の役に立つのが生きがい」という人にとっては,非常にやり甲斐のある仕事だと思います。

是非,正義感の強い人にやっていただきたい仕事ですが,常勤の職員が少ない部署であるため,異動希望を出しても一回も配属されない可能性があります。








■福祉に関する仕事


●高齢者福祉課・障がい福祉課・児童福祉課


福祉関係の部署には,大きく分けて「高齢者」「障がい者」「児童」に関する部署があることが多いです。

いずれも部署も,高齢者・障がい者をサポートする事業を行ったり,窓口で相談にのったり,補助金を支出したりする仕事をしていると思います。

どこの市役所でも福祉関係の部署は忙しいことが多く,年間を通して残業も多いため,メンタルで病んでしまう職員が出やすい部署でもあります。

異動の時期になると「福祉に異動しませんように・・・」と全力で祈っている人がたまにいます。


他方,「福祉の仕事が大好き」という人にとっては,福祉の仕事が楽しくて仕方ないようで,「高齢者」「障がい者」「児童」の部署をぐるぐると渡り歩く職人のような人もいます。

クレームやトラブルも多い部署で,精神的なストレスも多いですが,自分の仕事が人の役に立っていることが直に分かる部署でもありますから,福祉の仕事にやり甲斐を感じられる人にとっては,悪くない職場なのかも知れません。



●生活保護課


生活保護課は,生活保護を必要とする人に生活保護を支給したり,生活保護を受けている人と面談をしたりして,生活のサポートなども行っているようです。

自治体の規模によっては,生活保護の業務は県が行うこともあるので,生活保護の業務がない自治体もあります。

生活保護課も忙しい部署ですが,「高齢者」「障がい者」「児童」の部署に比べると,パワフルで元気な職員が多い印象です。

生活保護の仕事が大変だから敢えてパワフルな職員を送りこんでいるのか,あるいは生活保護の仕事をしているうちに必要に迫られてパワフルになっていくのかは分かりません。

一般的に生活保護課の残業は多いものの,仕事の量を自分で調節できる個人事業主的な側面があるようで,精神的に病む人は少ないように思われます。

(精神的に弱い人が配属されないだけかも知れませんが・・・・。)

★ISBN-10: 4750345849



■環境に関する仕事


●ごみ対策課


市町村によって名称は異なりますが「ごみ対策課」「ごみ減量推進課」「廃棄物対策課」など,ゴミに関する業務を行う部署があります。

ゴミを減量するための計画を作ったり,ゴミの減量を推進するための町内会の役員(「ごみ減量推進員」)とのやり取りをしたり,不法投棄されたゴミへの対応をしたりしているようです。

私がいた自治体ではゴミの減量に力を入れていたせいか,仕事が出来る人が配属されることが多かったと思います。

一般的には残業はそれ程多くない部署だと思います。

★ISBN-10: 4621082981



●ごみ処理施設


一般的に「清掃センター」「クリーンセンター」などの名称が付けられていることが多いですが,ごみ処理施設は,ゴミ収集車がゴミを持ってく場所です。

とても大きな焼却炉のようなものでゴミを燃やしたり,ゴミの分別をしたりする施設です。

一般職で採用された人は,ごみ処理施設で,職員の給料の手続や福利厚生の手続などを行ったり,事務仕事をすることが普通なので,自らゴミ処理作業をすることはありません。

ただ,ごみ処理施設では,いわゆる「現業さん」という,ゴミ処理を専業とする公務員が働いていることも多いです。

私の知っている限りでは「現業さん」は気の良い人が多いのですが,中には職人気質のちょっと頑固な人もいたりして,気が弱い人の場合,現業さんとのやり取りに苦労することもあるようです。

私のいた自治体では,問題を起こした人や,仕事をあまりしない人が,ごみ処理施設に異動させられることが多かったように思います。

残業はあまり多くないようですので人間関係を上手くやれる人であれば,一般職にとっては比較的楽な部署だと思いますが,単純な事務仕事が多いので,やり甲斐という点ではもの足りないと感じる人も多いようです。



■商業・工業・観光に関する仕事


●観光課


観光課は,文字どおり,観光客の誘致をしたり,地元のお祭りのお手伝いをしたり,観光計画を作ったりする課です。

人と触れ合うことが好きな人や,お祭りが好きな人にとっては,面白い仕事だと思いますし,自分が住む自治体を観光で盛り上げていく仕事というものは,やり甲斐のあることだと思います。

一方で,土日に地元で祭りがあると手伝いに行かなければいかなければいけないことも多いので,土日に出勤をして,平日に代休を取る,ということも多いようです。

また,市町村が主体的に関わっているお祭りが近付くと残業が多くなることもあります。

★ISBN-10: 487299681X




●商工課・商業対策課


商工課・商業対策課では,地元の商店街の振興に関する仕事をしたり,企業の誘致事業を行ったりします。

商工課にいた同期の話では,夜に開かれる地元の商店街の会合などに出席することも多く,家に帰る時間が遅くなることが多い,とのことでした。

自治体を元気にするためには,商工業を盛り上げていく必要がありますから,商工課の仕事は大変な仕事ですが,やり甲斐のある仕事だと思います。

この仕事に命を燃やしている職員の中には,経営学を学んだり,中小企業診断士の資格に挑戦する人もいます。

商工課・商業対策課の中にも様々な業務があるので,一概に忙しい訳ではないと思いますが,人付き合いが苦手な人が,地元の商店街との付き合いが必要な業務に就くと苦労すると思います。


★ISBN-10: 4484132370






■農業に関する仕事



●農林課


農林課は,文字通り,農業や林業に関する業務を行っている課です。

主に農業関係の団体や農家に補助金を支出する仕事が多く,意外に事務仕事が多い職場ですが,転作事業(田で米以外の作物を耕作する事業)における補助金を支出する際には,長靴を履いて1日中,田んぼを1つ1つ見て走り回って,転作がされているか確認をしなければならないようで,毎年5月から6月頃になると忙しそうにしています。

その他,鳥やシカ,クマなどによる農作物への被害への対策をする仕事もあり,この鳥獣被害の担当になると,被害がある度に現場に呼び出されるようです。

事務仕事もありつつ,外での仕事もあるので,「ずっと役所の建物の中で事務仕事をしているのは辛い」という人には向いているかも知れません。

残業はそれ程多くない部署ですが,大きな災害があって国の補助事業の仕事が入ったりすると,長期間残業しなければならないこともあるようです。

私がいた自治体では,仕事ができる人と,あまり仕事ができない人(or仕事をしない人)が,バランス良く配属されているように思いました。


★ISBN-10: 4872995260




●農林土木課


農林土木課では,農道や林道,農業用の水路等の建設,維持管理を行っています。

後にご紹介する「道路建設課」「道路管理課」「河川整備課・河川管理課」の農林業バージョンのような職場です。

そのため,事務職の他に技術職の職員も配属されます。

農道や林道,水路等を実際に建設する年度は忙しいようですが,建設を実施しない年度は比較的残業も少ないようです。

ただ,運悪く大きな災害が来ると,農道・林道・水路の復旧工事を急ピッチで進めなければならず,月100時間程度の残業が数ヶ月程度続くこともあるようです。

農業土木課に同僚に誘われて,農業関係の施設を見学したことがあるのですが,知らない世界が多くて面白いんですよね。

川から水を引くための「頭首工」という設備や,水を公平に分けるための「分水工」という巨大施設があったりして,見ているだけでワクワクします。

興味がある人は「頭首工」や「円筒分水」で画像検索してみてください。




■建設・土木に関する仕事



●道路建設課


道路建設課は,文字どおり道路の建設を行う部署です。

技術系の職員にとっては花形の部署で,人気のある部署です。

自分が設計に携わった道路が実際に完成した時の達成感は大きいようですね。

技術職の職員から「あの道路は俺が設計したんだぜ」とか「この道路照明灯は私が選んだのよ」,みたいな自慢話は良く聞きます。

あまり遅くまで残業をしている職員は見かけませんが,道路を作るのが好きな人は残業もあまり苦にならないようです。

ちなみに事務職の職員は,予算の編成や職員の給与の手続など,技術職の仕事を裏から支える仕事をしています。

最近はあまり聞きませんが,昔は事務職と技術職が大喧嘩をすることもあったようです。

★ISBN-10: 4121023218



●道路管理課


道路管理課は,既に作られた道路の「管理」を行う課です。

道路建設課と名前は似ていますが,花形の道路建設課の仕事とは異なり,「道路に穴が空いているんだけど!」等の苦情の電話が来たらすぐに現場に向かって,業者を手配して道路の修理を行うという,とても大事だけど大変な仕事をしている部署です。

「道路『建設』に異動希望を出したのに,道路『管理』に配属された・・・」と嘆いている技術職の職員をよく見かけます。

ただ,役所の偉い人に聞きくところによれば,道路建設課に異動希望を出した職員が,道路管理課に配属されるのには理由があるようです。

それは,道路を作る時には,作った後の維持管理やメンテナンスコストのこともきちんと考えなければいけないので,道路建設の仕事をする前に,道路管理の仕事を覚えて欲しい,という理由のようです。

そうは言ってもやはり道路管理の仕事は大変そうで,大きな災害で道路が壊れたりすると,農林土木課と同様に,復旧工事を急ピッチで進めなければならず,月100時間程度の残業が数ヶ月程度続くこともあるようです。

比較的人数の多い部署なので,技術系の職員であれば,役所人生のうち1回は配属される可能性が高いと思います。


★ISBN-10: 432409098X



●用地課


自治体が,道路等を作る時に,一般人から土地を買わなければいけないのですが,この道路等のための用地を取得する業務を行っているのが「用地課」です。

「道路を作るので,あなたの土地を売ってください」と言われても,どうしても売りたくない人っていますよね。

先祖代々から引き継いだ土地であるとか,買うなら全部買って欲しいのに一部しか買ってくれいのが不満とか。

用地課では,そのように「土地は売らん!」という市民と粘り強く交渉をしなければならないところが大変なようです。

しかし,少なくとも私が働いていた市役所の用地課では,あまり残業も多くないようで,メンタル系の病気になる人も知る限りいませんでしたので,市役所の中では比較的働きやすい部署なのではないかと思います。


★ISBN-10: 4324104034



■都市計画に関する仕事


●都市計画課


都市計画課では,文字通り「都市計画」に関する仕事をしています。

都市計画とは,大まかに言うと「ここに道路を作って,ここに公共施設を建てて,ここは商業地域,ここは住宅地域にして・・」というように,都市の将来的な計画を作ることです。

「●シムシティ」という自分で街を作っていくゲームがありますが,それを思い浮かべてもらえると少し分かりやすいと思います。

事務系の職員にとって企画課が花形の部署であるように,技術系の職員にとっては都市計画課が花形の部署です。

そのため,都市計画課に何度も異動希望を出して,やっと配属された,という人もいます。

都市計画を作る時期になると残業も増えて忙しくなるようですが,都市計画課に配属される人は都市計画をやりたくて集まっている人が多いので,残業を苦にしない人が多いようです。


★ISBN-10: 4324103526




■水道に関する仕事


●水道局


自治体によっては水道を管理する水道局という公企業を持っていることも多く,その場合には,水道局に異動させられることもあります。

事務職員にとっては,市役所本体の仕事と同じような仕事も多く,文書管理,給与管理等の総務的な仕事をすることもあります。

ただ,市役所では単式簿記というシンプルな会計処理をしているのに対し,水道局では複式簿記という一般企業と同じような会計処理をしているので,簿記の勉強をしたことがない人が水道局の会計課に配属されると苦労するかも知れません。

水道局では,水道管の管理などの技術的な仕事も多いので,技術職の職員も多く配属されます。

私も水道関係に仕事に駆り出されたことがありますが,水道というものは技術的に興味深く,面白いんですよね。

水というものは,当然,高いところから低いところに流れますが,高低差が激しいと圧力を調整するための設備が必要になったり,低い場所から高い場所に水をあげなければいけなかったり,サイフォンという装置を使って障害物を回避したり・・・と,技術職でなくても仕事をしていると新しい世界が広がってワクワクすることもあると思います。

他の自治体で災害が発生して水道が大きな被害を受けた場合,緊急で被災した自治体に派遣されることもあり,そのような場合にはやり甲斐を感じることもできるようです。


★ISBN-10: 4526077283



■教育に関する仕事


●教育委員会


教育委員会では,小中学校の管理,計画,指導,社会教育などの仕事をしています。

学校内のトラブルが起きた時に「教育委員会に言いつけてやる!」と言う保護者がいるように,学校内でのトラブルが発生した時に,苦情などが教育委員会に集まってきます。

中には「いじめ」などの重大な問題もあります。

「いじめ」については,「いじめ防止対策推進法」という法律が出来たことにより,重大事案が発生した場合にきちんとした対応をしなければならくなりましたので,学校内でトラブルが発生した場合には,教育委員会の職員は夜遅くまで残業したり土日に出勤をして,対応をすることもあります。

その他,社会教育の担当になると,土日のイベントに出席しなければならないため,土日に出勤し平日に代休をとる,ということも多いようです。


教育委員会にも様々な仕事がありますが,出世コースを歩む人の中には,一度,教育委員会の総務関係の仕事を担当して,本庁に戻って出世する,というパターンもあります。

教育委員会には,学校の先生が一時的に在籍することも多いので,役場の外の人と一緒に仕事ができるのは新鮮で面白いと思います。

★ISBN-10: 4004314550


●図書館


図書館では,本の整理をしたり,本の貸し出しをしたり,図書館内の予算や総務関係の仕事をしたりします。

図書館は,市役所の中でもトップクラスに異動を希望する人が多いです。

特に残業やトラブルを抱えて精神的に疲れてしまった人が図書館に移動希望を出すことが多いですね。

一般的に残業も少なく,クレームやトラブルも少ないので,ストレスを抱えずに仕事ができることが多いです。

図書館で働いていた人は口を揃えたように「図書館の仕事は天国だった」と言います。

ただし,図書館の仕事に慣れてしまうと,他の忙しい部署に異動になった後に,仕事についていけなくて苦労したり,精神的に病んでしまうこともあるようです。

残念ながら,最近では図書館の業務を外部組織に委託することも増えてきており,市町村の職員が図書館で働く機会は減っているようです。

ずっと図書館で働きたい人は,狭き門ではありますが,司書の資格をとって,専門職での採用試験を受けたほうが良いと思います。


★SBN-10: 4480067566


●公民館


図書館と同様にラクな仕事と思われがちな公民館ですが,意外に公民館で働いている同僚は忙しそうでした。

イベントや行事を企画しなければならないことも多く,土日の出勤も多いようです。

ただ,イベントの企画が好きな人や,社会教育が好きな人にとっては忙しくても苦にならないと思います。

人数が少なく閉鎖的な職場であるため,性格的に合わない上司や同僚がいて苦労した,という話もたまに聞きます。

★ISBN-10: 4894642166



以上,市役所・町村役場の仕事についてのお話でした。

自治体の仕事をもっと知りたいという人は,実際に自治体に就職した先輩に会って話を聞いてみるのも大事だと思います。

役所に就職してから「こんなはずじゃなかった・・・」とならないよう,就職してからのイメージを持っておくことが,大事だと思います。





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2018年02月21日




■憲法の特徴

「憲法」は国の統治の基本を定めた法律です。

憲法98条1項に「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない!」と書いてあるように,憲法に違反する法律なんかは無効となるので,理論的には憲法はとても大事な法律なんですが・・・。

実は実務になると「憲法」ってあまり使うことがないんですよね。

ある弁護士がテレビで「弁護士になってから憲法は使わないんで忘れちゃいました」と言っていましたが,そういう弁護士も少なくないんじゃないかと思います。

訴訟の世界では「途中で憲法と権利濫用の主張をし始めたら負け筋」と言われることもあったりします。

そうは言っても,司法試験では,ガチガチの憲法訴訟(憲法問題が争点となる訴訟)をベースとした出題がされます。

これが多くの受験生を苦しめているんです。

民事系と刑法系は得意なのに,憲法の論文式試験でとてつもなく悪い点数を取ってしまって,不合格になってしまう,という受験生も少なくありません。

私も途中までは憲法な苦手科目で「とにかく憲法が危ない!」「答案の書き方が全くく分からない!」と悩んでいました。

しかし,司法試験に合格した後になって思ったことは「憲法は意外に覚えることが少ない」「コツさえ掴め少ない勉強時間で合格レベルに持っていくことができる科目」ということです。

以下,少ない勉強時間で,あまり無駄なく憲法を司法試験の合格レベルに持っていくための勉強方法とおすすめの基本書等についてお話したいと思います。


■憲法の入門書を読もう


これまで何度も言っていることですが,初学者の方は入門書を読むことをおすすめします。



憲法の入門書としては,「伊藤真の憲法入門」か柴田孝之先生の「S式生講義 入門憲法」をお勧めします。

●ISBN-10: 4535523045

●ISBN-10: 4426117607

どちらの本も予備校の入門講座を本にしたような内容ですが,「伊藤真の憲法入門」のほうが語り口としては優しい感じで,「S式生講義 入門憲法」はロジカルにビシッと言い切ってくれる感じなので,どちらを選ぶかは好みだと思います。

両方を読んだ私としての個人的な印象としては「伊藤真の憲法入門」のほうが分かりやすいが,「S式生講義 入門憲法」のほうが頭に残りやすい,という感じですかね。



難しい本でも良ければ高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」をおすすめします。

この「立憲主義と日本国憲法」は入門書ではなく基本書(普通の教科書)なのですが,放送大学の教材になっていたため,法律を勉強したことがない人でも読むことができるレベルの内容になっています。

しかも,この「立憲主義と日本国憲法」は司法試験の勉強をする上で,最後までメインで十分に使える内容になっています。

●ISBN-10: 464122725X



■憲法の論文問題集を読もう


憲法という科目が司法試験受験生を苦しめる理由の多くは「論文式試験の答案の書き方が分からない」というものです。

論文式試験の答案の書き方が分からない受験生の多くは「論文式試験の答案が書けないのは知識が足りないからだ」と考えて,基本書や判例集を読み込むという勉強法に走りがちなのですが,基本書や判例集を読み込んでも,論文式試験の答案をかけるようにはなりません

司法試験の憲法の論文式試験の過去問や優秀答案を見ると,法律的な知識はそれ程多くは問われておらず,むしろ憲法訴訟の主張反論の組立て方や,事実認定(何が重要な事実で結論にどのように影響を及ぼすのかという評価)の能力が大きく問われていることが分かります。

ですから,憲法の論文式試験の勉強では,とにかく問題を解きまくって,憲法訴訟の主張反論の組立て方や,事実認定のコツを掴むことが大事です。


そのため,民法や刑法と同様に,入門書を読み終わったら論文式試験の問題集を何回か読んで,問題集から知識やテクニックを学んだほうが効率が良いです。

憲法の論文式試験の問題集としては,やはり「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。

●ISBN-10: 4335303688

●ISBN-10: 4335303564

最初のうちはSランクとAランクの問題だけを何回か読み回してみると良いです。

3回読んでも理解できないところは,基本書,予備校本,判例集の解説などを読んでみて,知識を補充していくと良いです。

SランクとAランクの問題がある程度理解できたら,「ケース」とBランクの問題を同じように回していくと良いです。


憲法の問題集には,他にも色々な問題集が出ていますが,多くの受験生にとっては,憲法の問題集を何冊も回しているような時間的余裕はないでしょう。

「伊藤塾試験対策問題集」をある程度回したら,新司法試験の過去問(平成18年以降)や予備校の答練の問題をこなしていったほうが効率が良いと思います。


時間的に余裕がある人には,「事例研究 憲法」をおすすめします。

学者の先生が書いた本ですが,司法試験を意識して作られた本で,司法試験で問われる憲法訴訟の考え方を身につけやすい問題集です。

●ISBN-10: 4535519447




■おすすめの憲法の基本書と予備校本


おすすめの憲法の基本書と予備校本を紹介する前に言っておくべきことがあるのですが,私は受験生時代に憲法の基本書や予備校本で通読した(最初から最後まで読んだ)本はありません。

ただし,論文式試験の問題集や司法試験の過去問をやっていて,分からなかった箇所,しっくり来なかった箇所については,穴が空くほど基本書を何度も何度も読み込みました。

時間的に余裕がある人は,基本書や予備校本を通読したほうが良いと思いますが,短期合格を目指している人や,私のように1日の勉強時間が極端に短い人にとっては,なかなか基本書や予備校本で通読する時間はないと思います。


敢えて通読するなら,入門書のところでお勧めした高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」が良いと思います。

私は違憲審査基準の考え方がどうしても分からなくて,色々な基本書や予備校本を虫食い的に読みましたが,この「立憲主義と日本国憲法」の違憲審査基準の考え方を読んで理解が進みました。

●ISBN-10: 464122725X



「立憲主義と日本国憲法」については「内容が薄くて短答式試験の範囲をカバー出来ていない」という人もいますが,憲法の短答式試験で点が取れない人は,基本書の読みこみが足りないのではなく,過去問の演習が足りない場合が多いです。

「立憲主義と日本国憲法」よりも分厚い教科書はいくらでもありますが,分厚い教科書を何度も読み込むよりも,憲法の短答式試験の過去問を繰り返したり,論文式試験の演習を繰り返したほうが,司法試験の合格に必要な知識だけを効率的にインプットできると思います。



憲法の有名な教科書として芦部信喜先生(高橋和之先生)の「憲法」という本がありますが,私はあまり司法試験の受験生,特に初学者には芦部信喜先生の「憲法」はおすすめしません。

●ISBN-10: 4000227998

芦部信喜先生は,日本の憲法学の基礎を築いたスゴイ先生で,芦部信喜先生の「憲法」も司法試験の合格レベルくらいの知識や理解が身についてから読むと,そのクオリティの高さに身震いするほど素晴らしい本です。

ただ,芦部信喜先生の「憲法」はシンプル過ぎて,通常の初学者が読んでも何が何だか理解できないと思います。

私も受験生時代に「芦部憲法は行間を読むんだよ!」と宗教的な事を言われて何度か芦部先生の「憲法」を読もうとチャレンジしましたが挫折しました。行間には何も書いてないんですよね。当たり前なんですけど。


芦部信喜先生の「憲法」を使うよりも,野中俊彦先生,‎中村睦男先生,‎高橋和之先生,高見勝利先生の「憲法」という教科書(通称「四人本」)をおすすめすます。

私もこの四人本を買って辞書として使っていました。

●ISBN-10: 464113118X

●ISBN-10: 4641131198

この四人本は,芦部先生の「憲法」の「行間」を追加してくれたような親切な基本書で,分からないことがあれば四人本を調べると良いと思います。

四人本と判例百選を調べても分からないことは「司法試験では不要」と考えて問題ないでしょう。




予備校本を使いたい人は,「伊藤真試験対策講座」か,東京リーガルマインドの「C-Book」を使うことになると思いますが,憲法に関しては予備校本をメインで使うことは,あまりおすすめしません。

●ISBN-10: 4335302711

●ISBN-10: 4844916076

●ISBN-10: 4844916084


「伊藤真試験対策講座」の「憲法」は分かりやすいのですが,改訂される度に厚くなっていて,今では学者の先生が書いた基本書よりも厚くなっています。

「伊藤真試験対策講座」も「C-Book」,分からないことを調べるための辞書として使うには良いと思いますが,最初から最後まで読み込むにはあまり効率的ではないと思います。

「C-Book」は体系的に整理されていて,調べ物をしたり,自分の論証を作ったりするのに便利なので,私は「C-Book」を買って四人本と共に辞書として使っていました。



■論文式試験の過去問の分析


先程もお話しましたが,「伊藤塾試験対策問題集」をある程度回したら,新司法試験の過去問(平成18年以降)や予備校の答練の問題をガンガン解いていきましょう。

最初は1行も書けずに途方に暮れることもあると思いますが,たくさんの問題を解いて優秀答案を読んでいるうちに,憲法の解き方のパターンみたいなものが分かってくると思います。

民法や刑法でもお話したように,司法試験や予備試験の過去問を解いた後には,辰已法律研究所の「ぶんせき本」などを使って,優秀答案と自分の答案の何が違うかを研究してみると良いです。

●ISBN-10: 4864663211

●ISBN-10: 4864663246

ゼミ形式で喧嘩にならない程度にお互いの答案の悪いところを指摘し合うと,自分が気づかなかった欠点に気づくことが出来ます。

司法試験は「他の人が書けないような素晴らしい答案を書こう」と考えていると,酷い点になることが多いです。

それよりも「普通の合格者が書くような当たり前の普通の答案を書こう」と意識したほうが,高得点を取れることが多いです。

司法試験は実務家を選ぶための試験ですが「他の人が書けないような答案」というものは,往々にして「実務家の感覚から遠く離れた的外れな答案」であることが多いのです。

「的外れな答案」を書かないようにするためには,司法試験の過去問について,自分で実際に答案を書いてみて,合格者(=実務家と同じ考え方を持っている人)と考え方がズレているところを修正していく,という作業が必要になっていきます。



■憲法の答案の書き方


司法試験の憲法の答案の書き方は独特で,苦手な人はいつまでも苦手にしています。

私も憲法の論文式試験は,法科大学院の1年目くらいまで,何をどのように書けばよいのか分からず苦手だったのですが,辰巳法律研究所の福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」という講座を受講したところ,憲法の苦手意識がだいぶ無くなりました。

その後に,憲法の答案の書き方の本を色々読んで,自分なりに答案の作成方法の手順をノートにまとめる,という作業を繰り返したところ,答練で安定的に高得点が取れるようになり,得意科目になりました。

憲法は合格に必要な知識が少ない科目なので,一度得意科目になると放置していてもあまり成績が下がりません

ですから,憲法については早めに過去問を解くなどして,答案の書き方を研究しておき,早めに得意科目にしておくと,他の科目に勉強時間を割くことが出来るようになり,合格も近付きます。


「憲法の答案の書き方が分からなくて困っている」という人は,とりあえず先程お話したの福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」をおすすめします。

私が受験生だった時は1万6000円くらいする講座だったと思いますが,先日,本屋で2500円くらいで売っているのを見かけました。

●ISBN-10: 4864661596

「絶対にすべらない答案の書き方」については,受験生の中でも賛否両論あるところですが,個人的には非常に役に立ちました。

憲法以外にも,司法試験の本番で失敗をしないためのコツを丁寧に解説してくれていますので,読んで実際に答練などで実践してみることをお勧めします。



憲法の答案の書き方に関する本としては,木村草太先生の「憲法の急所―権利論を組み立てる」をおすすめします。

この本は私が受験生の時に出版されたのですが,私の周りの受験生の中では大人気でした。

下手に基本書や予備校本を読み込むよりも「憲法の急所」を読んだほうが,論文式試験に必要な考え方が身につくはずです。

●ISBN-10: 4904702263




その他に小山剛先生の「憲法上の権利の作法」も手元にあると便利です。

ちょっと難しめの本ですが,「絶対にすべらない答案の書き方」では対応できない問題について,どのように答案を作成すれば良いのかを考える際に参考になります。

●ISBN-10: 4860310888





■短答式試験(憲法)の勉強方法


憲法については短答式試験も苦手にしている受験生が多いと思います。

判例百選に載っていないような判旨が問題に出たり,○か×か微妙なニュアンスの言い回しに振り回されたりと,憲法の短答式試験は他の科目とちょっと雰囲気が違うんですよね。

そこで,分厚い判例集を読み込んだりする受験生が出てくるのですが,受験勉強としては非効率だと思います。

司法試験の短答式試験対策の基本は,やはり「過去問」です。

「過去問」を繰り返し解いていると,同じようなことが,手を変え品を変え繰り返し出題されていることが分かります。

私も憲法の短答式試験は苦手でしたが,過去問を繰り返し解いているうちに,自然に点が伸びていきました。


短答式試験の過去問集は,自分が使いやすくて網羅性があるものであれば,何でも良いと思います。

個人的にはこれまでお話しているとおり,スクール東京の「体系別 司法試験・予備試験 短答 過去問集 憲法」が,解説が分かりやくシンプルで,速く回せるのでおすすめです。

●ASIN: B01N981IDE



詳細な解説が欲しい人は辰巳法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が無難だと思います。

特に憲法の短答式試験では判例百選に載っていないような判旨が出題されることがありますが,「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」は解説で判旨を長く引用してくれているので,いちいち判例集に戻る必要がなく,便利です。

●ISBN-10: 4864663386


時間がない人は,肢別本を根性でぐるぐると回しましょう。

司法試験の憲法であれば,気合いを入れて肢別本を何度も回せば,本番で落ちないくらいの点数は取れるはずです。

●ISBN-10: 4864663599



■判例集


先程もお話したとおり,憲法の択一式試験では,判例百選に載っていないような判旨が問題に出ます。

そのため,司法試験の受験生の間では,判旨が長く引用されている判例集が人気になったりします。

判旨が長く引用されているメジャーな判例集として「憲法判例」などがあります。

●ISBN-10: 4641131635


「憲法判例」のような判旨が長く引用されている判例集は手元にあると便利なのですが,法科大学院生の場合,判例検索システムを無料で使えるので「憲法判例」のような本が必須という訳ではありません。

私は「憲法判例」のような本を使わずに,判例検索システムで判例の判旨などをパソコンを使ってWORDに貼り付けて整理し,判旨のうち短答式試験で問われた箇所にパソコン上で線を引いておき,出題された年度をメモしておく,という作業をしていました。

そうしたところ,司法試験の短答式試験では,繰り返し同じような箇所が聞かれていることが分かってきて,「何も頑張って判例集を読み込まなくても,同じようなことが手を変え品を変え繰り返し聞かれているのだから,過去問を繰り返し解いていけば,合格に必要な知識はインプット出来る」ということが分かりました。

ですから,「憲法判例」のような判旨が長く引用されている判例集は,必ず必要という訳ではありません。



ただし,判例百選は買っておいたほうが良いです。

●ISBN-10: 4641115176

●ISBN-10: 4641115184


判例百選は,判旨の引用は短いですが,日本を代表する学者の先生方が解説を書いていて,その解説が試験問題を解くためのヒントになることもあります。

解説も自分に合うものも合わないものもあると思いますが,勉強をしていてしっくり来ない時に判例百選の解説を読むと,すっと知識が頭に入っていくことがあります。

また,憲法の勉強では,判例の細かい判旨まで全て暗記する必要はありませんが,重要な判例の基本的な考え方や規範については覚えておく必要があります。

重要な判例の基本的な考え方や規範は,短答式試験の過去問を解いたり,論文式試験の問題をこなしているうちに覚えていくと思いますが,問題集の解説を読んでも納得がいかなかった時に,判例を調べるためには判例百選が便利です。



なお,多くの受験生は,試験直前期に話題の最新判例をチェックするために重要判例も買います。

私も重要判例は買いましたが,時間がなかったためほとんど見ていません。

●ISBN-10: 4641115915

直近の重要判例については,予備校の直前模試を受験すると,付録で付いてきたりしますし,「ハイローヤー」といった受験雑誌で特集が組まれることもありますので,時間のない人は,予備校の力を借りてインプットしても良いと思います。

●ASIN: B072RBY412






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