仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが,色々と考えるところがあり思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し,現在は弁護士として働いています。 司法試験のこと,転職のこと,公務員のことなどについて,だらだらと書いていきたいと思います。 ※質問がある方はコメント欄にご記入ください。時間をいただくと思いますが、できるだけ回答させていただきたいと思います。


質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

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いつも拝見させて頂いております。
先生の記事を見て司法試験の勉強を始めようかと迷っているところです。
特に、頑張り次第で億単位の収入が目指せ、青天井であるという世界に憧れております。

現在、26歳であり予備試験・司法試験を見据えると弁護士資格が取得できるのは30歳前後かと思います。
年齢を考えますと四大事務所に入所することは難しいです。
弁護士で億稼ぐというと、やはり四大事務所のパートナー先生というイメージor四大事務所出身で独立された先生というイメージがあります。
私のように社会人経験を経ている者でも資格取得後に経済的に成功されている方も周りにいらっしゃいますでしょうか?
もしくは、そうした金銭的成功を目指す場合は起業等別の手段をとるほうが良いのでしょうか。
先生の率直なご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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返事がとても遅くなってしまい申し訳ありません。

コメントをいただいた時にメールが来るように設定をしているのですが、メールを見逃してしまったようです。


私のような地方都市の一弁護士の意見が参考になるか分かりませんが、質問いただいた「社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは可能か」という点について、結論として不可能ではないと思います。

ただし、実力と努力と運次第だと思いますし、一般論として弁護士で1億円以上の額を稼ぐのはかなり大変なことですので、弁護士という職業に思い入れがないのであれば、敢えて弁護士という仕事に拘る必要もないと思います。




私が弁護士をしている地域は地方都市ですが、大御所の先生の2人から「昔は億を稼いでいた」という話を聞いたことがあります。

その先生は2人とも優秀な方ですが、四大事務所の出身ではありませんので、四大事務所所属の弁護士や、四大事務所出身の弁護士でなくても、1億円を超える収入を得る弁護士がいない訳ではありません。


ただ「億を稼いだ」と言っても、「収入」が1億を超えたという話であって、経費等を差し引いた「所得」の額が1億円を超えるかどうかは別の話です。

弁護士白書2015年版」によると、日本弁護士連合会が2014年に行った調査では、回答者3724人中のなかで、「年収」が1億円を超える弁護士は88人であり、「所得」が1億円を超える弁護士は7人であったとされています。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/4-1_jissei_2015.pdf

サラリーマンの「年収1億」と自営業者の「年収1億」は意味合いが違うので注意が必要です。




また、現在は地方都市の人口は減っていますし、企業も減ってきていますので、今から1億円を超える収入を目指すのであれば、首都圏で激しい競争を勝ち抜いていく必要があると思います。



昔はアメリカに留学してアメリカのどこかの州の弁護士資格を取るということが流行っていましたが、「そういう時代ではなくなったよね」という先生も増えてきたような気がします。

四大事務所に入るという方法は弁護士として成功するための1つの手段であるとは思いますが、四大事務所のような大規模事務所に入れたとしても、同じ事務所で働き続けて1億円を超えるような収入を得られる人はごく一部に限られています。


また独立して1億円の収入を得るためには、時代の流れに乗っていく必要もあります。

例えば、過払いが多かった時期は、過払いに特化することで大きな収入を得た弁護士がいましたが(過払いに特化していなくても昔は年収6000万円を超えたという話を先輩から聞いたことがあります。うらやましい。。。)今では過払いに特化して安定した収入を得ることは困難です。

現在は交通事故事件に特化して収入を得ている弁護士も多いですが、最近では自動車の安全機能が進化して交通事故の件数が減ってきていますし、自動運転が発達すれば交通事故はほとんど無くなるかも知れません。

このように、一口に大きな収入を得ると言っても、どのような手法で、何を目指して収入を得るのかは、時代の流れを読みながら自分の頭で考えていく必要があると思います。



その他、弁護士の中には、弁護士をしながら投資をしたり、他の事業を立ち上げて、そこから多額の収入を得ているという人もいます。(他方で投資や事業に手を出して失敗をする弁護士も少なくないと聞きますが・・・)


このように考えていくと、弁護士で1億円以上の収入を得るためには、企業の経営者や投資家と同様にもの凄い努力をする必要があるので、単に「お金を稼ぎたい」という目的なのであれば、敢えて目標を弁護士に絞る必要はないのではないかと思います。

弁護士を目指す人は、どちらからというと「弁護士という仕事を通じて人や社会の役に立ちたい」という気持ちを持っている人が多いと思います。

それなりの収入を目指すとなれば、とんでもない激務やストレスを覚悟する必要がありますから、お金以外に「なぜこの仕事を選んだのか」という明確な理由がないと、結果を残しつつ続けていくこと難しいと思います。

ですから、それなりの収入を得たいというのであれば、自分がどういう形で他人や社会に貢献したいと思うのかを良く考えて、辛いことがあっても信念を持って続けられるような仕事を選ぶことが重要ではないかと思います。






ちなみに弁護士に限らず、仕事をしてお金を得た場合には所得税という税金がかかります。

ご存じだと思いますが所得税は累進課税で、「所得」が4000万円を超えると45%もの税金がかかります。

そして、住民税が10%なので、お金をいっぱい稼いだとしても、結局半分以上は税金で持っていかれます。




他方、株式投資等で得た収入については、日本では税率は約20%しかかかりません。

お金持ちになりたいのであれば、弁護士よりも投資のほうが効率が良いかも知れません。

アメリカの有名な投資家チャーリー・マンガーも元弁護士ですし。

★ISBN-10: 4822255360



ちなみに、最近ですと弁護士の福永活也さんという方が大きな収益を上げて本を出しているようです。

この方も昔は一般企業で働いていたようですので、私の話よりもずっと参考になるのではないかと思います。


★ISBN-10: 4295403156







以上、

・社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは不可能ではないが、実力と努力と運次第

・収入だけに着目するのであれば、敢えて弁護士という職業に拘る必要はないと思います

というのが私の意見でした。


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質問をいただきましたので,回答したいと思います。

返事がかなり遅くなり申し訳ありません。

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こんにちわ。はじめまして。質問させていただきたいことがあります。
今となってはイソベンやノキベンという言葉さえ取り上げられることも減ってしまいましたが社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合、どのようなキャリアになるのでしょうか。
例えば地元が東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらいでといったような具体的なお話が聞きたいです。
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「社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合」のキャリアは様々ですが,ご質問があった「東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらい」という点に関して言えば

・東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上)は東京に就職をする。

・地方で就職を希望している人の多数(感覚的に7~8割)は地方に就職するが,地方で就職先を見つけられなかった場合は首都圏や大阪近辺で就職先を探して就職する。

・即独(弁護士登録と同時に独立)は,かなり少ない(100人中1人か2人いるかいないかのレベル)。

という感じだと思います。



  • ○東京で就職を希望している人

東京などの首都圏では,弁護士の数が増えていますが,東京の先生の話を聞くと,売り手市場になっているので,弁護士を採用するのが難しくなっているという話を聞きます。

弁護士が増え始めた60期(2006年修習開始組)くらいの弁護士が独立をし始めて,イソベンを募集している事務所が多いからではないか,という噂を聞いたりしますが,数年前に比べると就職氷河期という感じではありません。

そのため,30代であっても社会人経験があって,マナーや常識がある人であれば,東京で就職先を決めることは,現時点ではそれ程難しくないと思います。

ですから,東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上,自分の周囲に関して言えばほぼ100%)は東京に就職をしているというイメージです。



  • ○地方で就職を希望している人

他方,地方で就職先を探している人の7~8割くらいはそのまま地方で就職をしますが,地方では表だって弁護士を募集している事務所が比較的少ないこともありますし,タイミングによってはその地方で弁護士を募集していないということもありますので,コネがなかったりすると自分が希望した地域で就職先を見つけられないことがあります。

地方で就職先を見つけられなかった人は,東京などの首都圏での就職活動に切り替えて,首都圏の事務所に就職をするというパターンが一般的かと思います。



  • ○即独について

即独に関しては,就職氷河期と言われていた私の世代でもクラスに1人くらいしかいなかったので,年齢にかかわらず,割合は少ないんじゃないかと思います。

うちの弁護士会に来た修習生の中でも「即独をしました」という話は聞いたことがありません(私が知らないだけかも知れませんが。)。

即独はあまりお勧めしませんが,即独をするなら,東京などの首都圏よりも,弁護士の数が比較的少ない地方で,かつ即独に理解のありそうな弁護士会のある場所にしたほうが良いと思います。



  • ○その他のキャリアについて

社会人を経由して30代で司法試験に受かった人のキャリアは様々で, 

・もともと働いていた会社に戻ってインハウスロイヤーとして勤務した

・法テラスの養成事務所を経て法テラスのスタッフ弁護士として働いている

・元々特許関係の事務所で働いていたので戻って弁護士として勤務した

・元々司法書士事務所でアルバイトをしていたので,その司法書士事務所と連携する形で法律事務所を立ち上げた

という人もいました。



  • ○30代で司法試験に合格することについて

就職先やキャリアに関しては,あまり20代でも30代でも変わらないかと思います。

今は若い修習生が若干増えているような気もしますが,大御所の先生でも「俺も30代でやっと司法試験に合格したんだよな」という人も結構いますし,30代~40代の修習生は珍しくないので,採用する側も年齢だけでなく,その人の経歴,ポテンシャル,人柄のほうを気にすることが多いかと思います。

私の同級生の中でも,就職先がなかなか決まらなかった人はむしろ20代後半くらいの年齢の人が多かったです。

社会人経験のある30代は就職活動も一度経験している人が多いですし,受け答えもしっかりしている人が多いので,意外にあっさりと内定を取ってくる人も多いです。

「30代だから仕事が見つからないかも知れない」という危機感がある人が多いことも,内定の取りやすさに繋がっているのかも知れません。



20代と30代で変わる点があるとすれば

・四大事務所やそれに準じるような大手事務所は若い人材を採用する傾向があるので,30代だと大手事務所への就職が難しい(ただし,前職で特別な経験があれば例外もあるらしいです。)。

・20代から30代前半の弁護士は転職が容易だが(人によっては数年で4~5回事務所を変える人もいます。),30代後半になってくると,比較的転職は若干ハードルが高い。(けど,転職できない訳ではないし,独立をすればいいやという人もいる。)

・裁判官は基本的に若い人が任官するので,30代で司法試験に合格して裁判官を希望するのは難しい。(一度弁護士になってから,弁護士任官すればなれるかも知れません。)

・検察官は30代でも任官する人はいるが,若い人に比べるとハードルは高い。

というあたりでしょうか。



私は20代後半で司法試験の勉強を始めたのですが,なぜ司法試験を選んだかというと,司法試験の世界は,30代で合格しても他の資格に比べてハンデが少ないと思ったからです。


例えば公認会計士の場合,若くないと監査法人の就職は厳しいらしいですし(30代後半,40代での新採用は少ないので目立つらしいです。),公認会計士の友人の話を聞くと,監査法人に就職した後も,基本的にチームで仕事をするため,自分よりも全然若い上司からあれこれと指示をされたり,怒られたりするパターンがあるようです。


医師に関しても,一般的に医学部の高齢受験は大学によっては不利と言われていますし,30代で研修医になった友人の話を聞くと,やはり上下関係が厳しい世界であるため,年下の先輩から,あれこれと怒られたりするのが辛いと言っていました(医者になったのに,あまり嬉しくなさそう)。



他方,弁護士に関しては,司法修習中は指導教官(弁護士,裁判官,検察官)が年下というパターンはありますが,司法修習は監査法人や研修医に比べるとかなり緩いと思います。

こんなことを言ったら怒られるかも知れませんが,年齢関係なくあまり真面目に勉強をしていない修習生はあたり前にいるので,年下の先輩に怒られたり,怒鳴られたりするというパターンはかなり少ないと思います。むしろ,社会人経験があると,丁寧な接し方をされることが多いと思います。

私が弁護士になった後も,30代~50代の修習生が弁護士会にやってきますが,当たり前のことなので全く気になりません。

弁護士になった後も,基本的に個人で仕事をすることが多いので,年齢による上下関係を気にすることは,あまりありません。

弁護士の世界では相手方の先生が年上だから訴訟や交渉で気を遣うなんてことはあり得ないですし,年齢関係なく,主張したいことは主張できる世界だと思います。


なので,私は20代後半で転職を考えた時に司法試験を受けることにしたのですが,年齢を考えると結果的に正解だったなと思っています。




以上,あまり回答になっていないかもしれませんが,「絶対に四大事務所レベルの事務所への就職したい」とか,「裁判官になること以外は考えられない」などの特別な事情がないのであれば,年齢によって進路にそれほどの大きな違いはないと思います。

あまり年齢を気にせずに司法試験の勉強に専念するのが良いのではないかと思います。



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遅くなりましたが,今回は刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書などについてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の特徴


「刑事訴訟法」は,刑事手続(犯罪の捜査,処分,刑事訴訟の手続など)について定めた法律です。

「刑事訴訟法」と「民事訴訟法」は名前が似ているので,初学者の方は似たような科目だろうと思われるかも知れませんが,両者の性質はかなり違います。

「刑事訴訟法は苦手だけど民事訴訟法は得意」という受験生もいますし,「民事訴訟法は苦手だけど刑事訴訟法は得意」という受験生もいますので,同じ「訴訟法」という名前は付いていますが,得意不得意が分かれやすい科目です。

ただし,司法試験の受験科目の中でも,刑事訴訟法(その他,刑法,憲法)という刑事系科目は,少ない勉強時間で高得点を取れる可能性が高い科目ですので,「短期間」で司法試験に合格したい人にとっては,この刑事訴訟法という科目を素早く仕上げて得意科目に出来れば,あとは勉強時間の必要な民事系さえ守り切れれば意外とあっさりと司法試験に合格することも可能になります。


私も地頭は良くないほうですし,司法試験の勉強時間は少ないほうですが,少ない勉強時間で司法試験に合格出来たのも,刑事訴訟法,刑法,憲法という,比較的短期間で仕上げることが可能な科目で安定して高得点が取れるようになったから,という部分が大きいです。


なぜ,刑事訴訟法は短期間で高得点を取れる可能性があるかというと,それは法律知識だけでなく「事実の評価」という常識論で書くことができる部分に点が多く振られているからです(これは刑法,憲法も共通です)。


たとえば,放火事件が起きた現場で犯人を捕まえるために,ビデオで録画をするという捜査が適法かという問題が出た時に,その捜査にどのくらいの必要性があるのか,ということを論じる必要があります。

そして,たとえば問題文に

「過去に放火事件が起きた現場にも,今回ビデオ録画をする現場にも管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられている」
「現場は住宅密集地で道路も狭い」
「現場は人通りが少ない」
「これまでの犯行時刻はいずれも深夜である」

というような事情が書かれていた場合,

「本件でビデオ録画が行われた現場は,過去に放火事件が起きた現場と同様に管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられているという共通点があり,犯人が当該現場において犯行に及ぶ可能性は高い。また,現場は住宅密集地であり放火事件が発生すれば延焼によって大きな被害が発生する可能性があるだけでなく,当該現場は人通りが少なく,これまでの犯行時刻がいずれも深夜であったことを考慮すると,警察官が現場に張り込んで捜査を行うことは困難である。したがって,本件現場においてビデオ録画の方法を用いて捜査を行う必要性が高い。」

みたいな答案を書くことになります。

上記の答案の箇所は,事実を結論につなげるために「評価」する部分になるのですが,上記の例を見てもらえれば分かるとおり,法律的な知識がなくても書ける部分なので,「名探偵コナン」とか「金田一少年の事件簿」のような推理漫画に出てきそうな発想が役立つ場面です。

そして,この法律的な知識がなくても書ける「評価」の部分は,論文式の問題をこなしたり,過去問を解いて慣れていけば,比較的短期間で高得点を稼げる部分になる部分です。


そのため,刑事訴訟法の論文式試験において短期間で高得点を取れるようになるためには

・基本的な論点知識を正確にインプットする(量はそれほど多くない)

・論文式の問題集や過去問をこなして「事実の評価」に慣れる

ということが大事です。


この点を踏まえた上で,刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書についてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の入門書を読もう


刑事訴訟法の入門書としては,初学者の方には他の科目と同様「伊藤真の刑事訴訟法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521638 

内容は基本中の基本のみ記載されていますが,コンパクトで分かりやすいので,読むのに挫折するということはまずないはずです。

図書館や喫茶店に2~3時間程籠もれば読み切ることができるでしょう。



他に最近出てきた入門書としては「入門刑事手続法」も良書だと思います。

●ISBN-10: 4641139245

ただし,「入門」という名前が付いてますが,入門書というよりもコンパクトな基本書に近いです。

「伊藤真の刑事訴訟法入門」と同じ感覚で読み進めようとすると結構しんどいと思いますので,初学者の方は無理して読む必要はないと思います。






■刑事訴訟法の論文問題集を読もう


入門書を読んだら早めに刑事訴訟法の論文問題集を読むと良いと思います。



読む論文問題集としては他の科目と同様「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 433530353X

●ISBN-10: 4335303637

「試験対策問題集 司法試験論文」と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の使い分けについては「●論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」を参照してください。

個人的には,「試験対策問題集 司法試験論文」のほうをおすすめします。

論文式試験に必要な法律知識としては,「試験対策問題集 司法試験論文」の「ケース」以外の部分をマスターすれば,9割は完成といって過言ではないと思います。

あとは答練などを利用して最新判例を押さえて,過去問をこなせばほぼ完璧でしょう。


実際,司法試験の受験生を見ていると,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ているような基本的な論点を落としている人も沢山います。

司法試験の受験生の刑事訴訟法のレベルはそれ程高くないと思いますので,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ている論点さえしっかり押さえておけば,合格者平均を超える法律知識はインプット出来ると思います。

実際,私も法科大学院に入った1年目の夏休みに,ひたすら刑事訴訟法と刑法の「試験対策問題集 司法試験論文」を繰り返したのですが,刑事訴訟法と刑法の成績が一気に上がり,刑事訴訟法に関しては学年1位になりました。

もちろん成績があがったのは法科大学院の授業の復習をやったからという面もありますが,基本的な論文式試験の答案を書けるようになったことで,一気に実力が付いたことを実感できました。


周りの受験生を見ていると「試験対策問題集司法試験論文よりも遙かに問題数の多い(100問以上)問題集をこなしている」という人もいるのですが,そういった人がきちんと基本問題の答案を書けるようなっているかというと,そういう訳でもありません。

普通の人間は,100問以上の答案の書き方を覚えるなんてなかなか出来ません。

せいぜい,1科目30問~50問程度が限度でしょう。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題は「ケース」を除くと約50問,Aランクの問題に絞ると30問程度ですので,答案の書き方を覚えるという点ではちょうど良い量だと思います。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題と参考答案を何度か読んだら,実際に自分で書いてみると良いです。

最初のうちは思うように書けないと思いますが,繰り返すうちに参考答案と似たような答案が書けるようになってくるはずです。

最終的に「規範」や「定義」の部分については,正確に書けるようにしましょう。




論文式試験の問題集としては他にも色々ありますが,個人的には「試験対策問題集 司法試験論文」の基本問題(ケース以外の部分)をやって,後述の答練,過去問をやれば問題演習としては十分だと思います。




■おすすめの刑事訴訟法の基本書と予備校本


刑事訴訟法の基本書は良書が多いです。

私が受験生時代にメインで使っていたのが有斐閣アルマの「刑事訴訟法」です。

最初にお話したとおり,司法試験・予備試験の刑事訴訟法の論文式試験で要求される法律的知識はそれほど多くはないので,コンパクトな基本書を使ったほうが勉強に無駄が生じにくく,効率的だと思います。

内容も実務寄りで,司法試験の基本書として使いづらいということもありません。

●ISBN-10: 4641220506

ただ,この本は私が受験生の時にある事件がきっかけで,一時出版停止になってしまったことがあり,それ以来ちょっと人気がないです。



「アルマはちょっと使いたくない」という人は,最近の基本書の中ではLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」が比較的使いやすいと思います。

個人的にはもうちょっとコンパクトなほうが好みですが,数ある刑事訴訟法の基本書の中では,このLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」はコンパクトなほうで,読みやすいと思います。

●ISBN-10: 4641179336



最近の受験生の中には酒巻匡先生の「刑事訴訟法」という基本書を使っている人も少なくないと思います。

●ISBN-10: 4641139067

酒巻匡先生は以前に法学教室で「刑事手続法を学ぶ」という連載を担当されていて,その連載をもとに作られたと言われているのがこの「刑事訴訟法」という基本書です。

法科大学院の授業でも酒巻匡先生の文献が参考資料として指定されることが多く,受験生の間では神様みたいな存在なのですが,酒巻匡先生の「刑事訴訟法」は司法試験に合格するという観点から言えば,オーバースペックかなと思います。

ただ,刑事訴訟法の問題を解いたり,他の基本書を読んでいて,分からないことやスッキリしないことがあった場合に,酒巻匡先生の本を調べると鋭い切れ味の解説があることも多いので,ある程度勉強が進んできた後に辞書として使う分には理解が深り,知識の定着にも役立って良いと思います。




その他,基本書ではないのですが,手元にあると便利なのが「条解刑事訴訟法」です。

●ISBN-10: 4335356544

1300頁を超え価格も約2万円とまさに「条解」の名にふさわしいモンスターですが,私は司法修習以降,弁護士になった今でもこの「条解刑事訴訟法」をメインで使っています。

何が便利かというと,分からないことを調ると大抵答え書いてあるということ,そして内容が実務向けなので学説の対立に振り回され時間を費やすことがない,という点です。

この本は「辞書」なので,間違っても司法試験のためにこの本を最初から最後まで通読するということはやってはいけませんが,手元にあると便利です。

高い本なので無理して買う必要はないと思います。大学の図書館に1冊はあると思うので,司法試験に合格するまでは,調べたいことがあった時に図書館で使う,でも良いと思います。

司法修習生になると買う人が多いです。合格祝いに刑法と刑事訴訟法の「条解」を買ってもらうという人も。





予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「刑事訴訟法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 刑事訴訟法」が良いと思います。

●ISBN-10: 4335304919

●ISBN-10: 4844966057

●ISBN-10: 4844966065


私の同級生が基本書を一切読まずに「伊藤真試験対策講座」を使って司法試験に2桁で合格しているので,「伊藤真試験対策講座」を使って失敗するということはないと思います。

説明が丁寧な分,勉強が進んでくると,丁寧な説明が冗長に感じてしまうこともあるかも知れませんが,ポイントにマーカーを引くなど工夫することで,高速で何度も回せるようになるようです。



「C-Book」は私は2冊とも買って辞書として使っていました。

「C-Book」は学説や判例が整理されていて分かりやすいのですが,量が多いので通読をしようとすると時間不足になる可能性があるので注意してください。









■刑事訴訟法の判例集


刑事訴訟法の判例集は様々なものが出版されていますが,「刑事訴訟法判例百選」1冊で十分だと思います。

●ISBN-10: 464111532X

私も刑事訴訟法の判例集を何冊か買いましたが,最終的に使っていたのは「刑事訴訟法判例百選」です。

問題を解いたり,基本書を読んでいて,分からないことが出てきた時や,判例の詳しい事案を把握したい時などに使っていました。

通読すべきかという点については賛否両論あると思いますが,個人的には通読をする必要はないと思います。

判例百選のデメリットは字が小さいことですが,他の科目と同様に裁断・スキャンして電子書籍化することで字が小さいという問題は解決できます。

電子書籍化の方法は「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」という記事に書いてますので,そちらを参考にしてみてください。



■論文式試験の過去問の分析


刑事訴訟法は特に,司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問の分析は大事です。

最初にお話したとおり,刑事訴訟法は「事実の評価」の部分に点が多く振られています。

「事実の評価」は法律的な知識が無くても書ける部分ですが,慣れていないと,どのように「評価」すれば良いのかさっぱり分かりません。

私も初学者の頃「事実を評価しろって言うけど,評価って何だよ?」って思っていましたし,とても悩みました。

しかし,事実をどう「評価」すれば良いのかは,過去の司法試験(予備試験)の論文式試験の優秀答案を見れば一目瞭然です。

実際に司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解き,辰已法律研究所の「ぶんせき本」の優秀答案や予備校のコメントを読んだ上で,優秀答案の答案の書き方を真似してみましょう。


「評価」の仕方について,1人で悩むよりも,優秀答案を読んだり,書き方を真似をした上達するスピードは速いです。



なお,本試験形式の問題において,問題文にある重要な事実を答案で書かない受験生がいます。

事実に気づいていないか,事実に気づいていたものの答案に書きそびれてしまったかだと思いますが,問題文にある重要な事実は答案できちんと指摘して評価をしないと,点が伸びません。


例えば,事実を漏らさないようにする方法ですが,問題文を読む時に

必要性に関係がありそうな事実 ⇒ 赤の蛍光ペンを引く

緊急性に関係がありそうな事実 ⇒ オレンジの蛍光ペンを引く

相当性に関係がありそうな事実 ⇒ 緑の蛍光ペンを引く

というようにルールを決めて蛍光ペンを引いておき,答案を作成する時に,必要性について論じる時には赤の蛍光ペンが引かれている事実を書き写した上で評価する,というようにしておくと事実の書き漏らしが格段に減ると思います。


このように司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解く時には,自分の中でルールを作ってみて,それを試してみる,ということも大事です。


■答練・直前模試を受けよう


遅くとも本試験の5ヶ月くらい前には予備校の答練を受けるべきです。

刑事訴訟法は特に新しい判例が次々と出ますが,本試験で最新判例を意識した出題がなされることが良くあります。

私が受験した年も最新判例を意識したと思われる出題がなされたのですが,予備校の答練で同じような問題が出題されており,直前模試の付録でも「この最新判例出題されるかも」としつこく注意をしてくれたため,本番は万全な体制で臨むことが出来ました。

最新判例に対する対策としては「重要判例解説」を読むという方法もあるのですが,判例集を読んでいるだけでは答案は書けるようにはなりません。

●ISBN-10: 4641115931

実際に最新判例を題材とした問題を解き,優秀答案を参考にしたりすることで,高得点の答案を書けるようになります。

特に刑事系に関しては予備校の答練・模試と似た問題が本試験で出題されることも多いので,出来るだけ予備校の答練・模試を受けた上で,きちんと復習をしておきましょう。

どの予備校の答練を受けるか迷った場合には,「●予備校の答練について」という記事を参考にしてください。

個人的には受講生の多い予備校の答練を受けることをおすすめしています。



なお,本番で答練と同じような問題が出た時にには「思い込み」に注意してください。

本試験では「答練と同じように見えるけど,実は違う問題」が出ることがあります。

ヤマが当たったと思った時には一度深呼吸をして,落ち着いて本当に同じ論点で間違いないのかきちんと見極めるようにしましょう。






■短答式試験(刑事訴訟法)の勉強方法


司法試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,刑事訴訟法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。

他方,予備試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。


これまでお話しているとおり,短答式試験の勉強方法は,比較的単純で,短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べる,という単純作業の繰り返しだけで,成績が伸びていきます。



短答式試験の過去問集は,個人的にはスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」が,解説がコンパクトで速くまわせるのでおすすめです。

解説も「考えて答えが出せるように」となかなか攻めた内容になっているので,人によっては「頭に残りやすい」と感じる人もいると思いますし,他方で「もう少し客観的な解説が欲しい」と感じる人もいるかも知れません。

●ISBN-10: 4905444284

●ISBN-10: 4905444276




詳細な解説があったほうが良いという人には,辰已法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が良いと思います。

これを使う場合には時間不足にならないようにスケジュール管理に注意してください。

●ISBN-10: 4864663874



時間がない人は,「肢別本」が速く回せるのでおすすめです。

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトなので早く回せるのがメリットです。

気合いと根性がある人は,肢別本が一番効率が良いと思いますが,苦行っぽくなりがちで,私のように意思が弱い人間にとっては挫折しやすいのがデメリットです。


●ISBN-10: 486466420X


その他,短答式の勉強として,他に「択一六法を何度も読み込む」という方法がありますが,刑事訴訟法に関してはおすすめしません。

短答式の問題を解きながら,自分用のノートを作る代わりに択一六法にマーカーを引いていき,直前に見直せるノートとして使う,という方法であれば択一六法を使うにもアリだと思います。

また,択一六法は予備校本をコンパクトにしたような本なので,コンパクトな辞書が欲しいという時には便利だったりします。

●ISBN-10: 4844964712



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