仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

弁護士の就職活動と良い事務所の見極め方について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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就活についての具体的な進め方についてご質問させていただきたく思います。
合格発表後にひまわり等のサイトから事務所へ応募して、通常の就活と同様に履歴書や面接を行なっていくかと思いますが、いわゆる優良事務所の見極め方として、何か参考になることがありましたら教えていただきたく思います。
私個人としては、将来の独立なども見据えて、全般的な法律相談の他に、不動産取引について専門性を高められる事務所へ就職を希望しておりますので、こうした事務所をどう探すかについて悩んでいるところでございます。
お多忙かと存じますので、お時間ある時にお答えしていただければ、大変参考となりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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就職にあたり、どうやって「優良」な事務所を探すかという質問ですが、何をもって「良い」な事務所というのかが難しいところです。

就職先を決める際には

(1)勤務時間の長さ(何時頃に帰れそうか、休みはどのくらいあるか)

(2)給与、個人事件の受任の可否、個人事件の収入を事務所に何割入れるか

(3)ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄・相性

(4)業務内容

などの事情を確認して、自分にとって「良い」と思えるか判断することになると思います。


(1)の「勤務時間」は、「早く帰れるほうが嬉しい」という人もいると思いますが、短い期間で多くの経験を積みたいので「勤務時間が長くても多数の事件の関われるほうが嬉しい」という人もいると思いますし、「勤務時間が長くても収入が多い方が良い」という人もいると思います。

(3)の「ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄」についても、穏やかな人のほうが合う人もいれば、体育会系のノリのほうが肌に合う人もいると思いますし、ある程度厳しい人が上司じゃないとだらけてしまうという人もいると思うので、人それぞれかなと思います。


なので、最終的には直接確認しないと分からない部分も多い、というのが正直なところです。


(1)の勤務時間と(2)の給与等の条件については、普通の事務所であれば、面接の時等に聞くと教えてくれるはずです。

もし面接の時に勤務時間や給与の条件等をきちんと説明してくれないような場合には、その事務所は、ちょっと怖いなという気がします。


(3)の「ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄」については、採用の手続がある程度進んでくると「一緒に飲みに行こう」という言われることがありますので、一緒に会食などをして話をしていれば、事務所の方々の人柄や、職場の雰囲気がある程度分かる場合があると思います。(今はコロナの関係でオンラインのみで採用を決定しているところもあると思いますが。)

ただ、弁護士によっては、仕事以外の場面では温厚だけれども、仕事のことになると人が変わったように厳しくなるという人もいるので、会食の場だけでは人柄は分からないことも結構あります。


最終的には、司法修習中の情報収集で、いろんな事務所の評判を聞いて判断することも必要だと思います。

東京の場合は事務所が無数にあるので、あらゆる事務所の評判を聞くことは難しいと思いますが、
修習中に裁判官、検察官、弁護士などと話をしていると「あそこの事務所の先生は優秀だし人柄も良いよ」という話が出てくることがあり、その中で一般的に「良い」と言われている事務所や先生が分かってくることがあると思います。

また弁護士に「絶対に行かないほうが良い事務所」を聞くと、知っている範囲で教えてくれることが多いと思います。



(4)の「業務内容」については、事前に事務所のホームページなどで調べておいて、分からなかった部分を面接や会食の際に質問し確認していく、という方法が一般的だと思います。



その他、事務所の規模と比較して毎年多くの弁護士を採用しているにもかかわらず、弁護士の数が増えていない事務所は注意が必要です。

毎年のように弁護士を採用していてその分事務所の弁護士の数が増えているのであれば、成長している法律事務所ということで問題はないと思いますが、毎年のように弁護士を採用しているにも関わらず事務所の弁護士の数が増えていない事務所は、入所した弁護士が毎年のように辞めている可能性が高く、職場環境に何らかの問題がある可能性があるからです。


また質問がありましたらコメント欄に記載してください。



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弁護士として東京都内で就職するか地元で就職するかについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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はじめまして。
いつも参考にさせていただいております。
先生の転職先として弁護士がお勧めという記事を読んで、一念発起して司法試験の勉強を始めました。

私は現在都庁で地方公務員として働いており、今年度32歳になります。
運良く昨年度に予備試験に合格することができ、今年度の司法試験に合格できれば、仕事を辞めて司法修習に入る予定です。

学歴が低く、元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えて街弁として働こうと考えおりますが、このまま都内で就職するか地元の名古屋で就職するかで迷っております。

都内では弁護士の人数が多く、街弁としてお金を稼いでいけるのかという心配がありますが、大学卒業後からずっと東京で生活しており、今更名古屋に戻るのもあまり気乗りがしません。
もっとも、稼がなくては元も子もないですし、地元だと人との関係もあるので、地方の弁護士が東京に比べると稼ぎやすいのであれば、名古屋に戻るほうが良いのかなと考えております。

司法試験の勉強は独学で行っており、周りに弁護士の知り合いもいないため、どうしたらいいのか迷っております。

先生のお立場からは、どちらのほうが良いかご意見頂ければ大変嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
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●どの法律事務所に就職するか、何をしたいのか

東京都内で就職するか地元で就職するかということで悩まれているとのことですが、「稼ぎやすさ」や「働きやすさ」という点では、どの地域で就職するかというだけでなく、どの事務所の就職するかということも大事だと思います。

東京にも素晴らしい事務所はたくさんありますし、地元の名古屋にも素晴らしい先生はたくさんいらっしゃると思います。

ですから、どこで就職をするか悩まれているのであれば、東京都内と地元の両方で就職活動をしてみて、自分の希望に合った事務所や、「この先生の下で働きたい」という弁護士が見つかれば、そこに就職する、というのが良いと思います。


また、弁護士になってどのような仕事をしたいのかという観点も大事だと思います。

「元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えている」ということですが、元公務員であっても、年齢が高くても、企業法務をやっている法律事務所の就職することは可能だと思います。

四大法律事務所のように、若い人を採用している超大規模事務所への就職は難しいと思いますが、中堅や小規模の事務所であれば、企業法務に携わっている法律事務所への就職は可能だと思います。

また、いわゆる「街弁」といっても、純粋に個人だけを相手にしている事務所は少なく、企業からの相談や事件の依頼を受けている事務所は多いです。

なので、自分が弁護士としてどのような仕事をしたいのかということを考えた上で、その仕事ができる法律事務所を探し、その法律事務所が見つかったら都内であれ地元であれそこに就職する、というほうが、就職した後に後悔する可能性は低いと思います。




●東京都内で就職する場合と地元で就職する場合のメリットとデメリット

一応、東京都内で就職する場合と、地元で就職する場合のメリットとデメリットを思いつく範囲で挙げてみたいと思います。

私は東京都内や名古屋で働いたことはなく、あくまで東京に就職した同期などの話を聞いた範囲や、地元で働いた範囲での認識なので、その点はご了承ください。


○弁護士として東京都内で就職するメリット

・就職先の選択肢が多い。扱う業務の幅も様々で特定の分野に特化した事務所も見つけやすい。

 ⇒東京は法律事務所の数が多いので、やはり就職先の選択肢は多いですし、法律事務所に限らずインハウスや任期付公務員の求人なども多いです。自分がやりたい分野を扱っている就職先を比較的見つけやすいと思います。


・就職に失敗しても就職先の事務所を変えやすい。

 ⇒東京は弁護士の数が多く弁護士の転職も珍しいことではないので、嫌な事務所を辞めて別の事務所に就職する、ということも比較的簡単にできます。


・弁護士会の会務をやらなくても済む場合が多い。

 ⇒東京には(派閥などの関係で)積極的に会務をやる弁護士がいるので、就職先の事務所が会務に積極的でなければ、弁護士会の会務の追われるということもあまりないようです。ただし、就職する事務所によっては、半強制的に会務をやらされている人もいます。(このあたりは面接の時に確認しておくと良いと思います。)


・(就職する事務所や経営方針によるが)単価の高い事件が比較的多い。

 ⇒弁護士の報酬は事件の経済的利益や実際に稼働した時間によって決めることが多いですが、東京は企業の数が多いので、企業を相手とする事務所に就職すれば、弁護士の報酬も高くなることが多いです。顧問料も地方よりも東京都内のほうが高い傾向にあります。(弁護士が東京に集中している理由はこの点が大きいと思います。)



○弁護士として地元で就職するメリット

・地元のコネを使って就職できる場合がある。

 ⇒これは説明するまでもないと思いますが、親、親戚、友人のコネで地元の法律事務所に就職する人は少なくありません。運が良ければほとんど苦労せずに就職先が決まることがあります。

・知人や家族などのツテで仕事が入ってくることがある。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、地元で弁護士として働いていると同級生や同級生の知り合いなどから法律相談や事件の依頼があることが多いです。そのため、ある程度人間関係を持っている人であれば、事件が無くて生活に困る、という事態には比較的なりにくいと思います。出身校が進学校の場合、同窓会に出席すると、同級生が地元の会社の経営者になっていることもあったりしますし、同窓会の繋がりで事件の依頼があったり顧問契約に繋がることもあると思います。


・交渉や訴訟をなどをしていて、裁判官や相手方の弁護士がどのようなタイプなのか情報が比較的入りやすい。
 
 ⇒東京で事件をやると、担当の裁判官や相手方の弁護士は基本的に知らない人であることが多いので、どんな人か分かりにくいという側面があります。他方、裁判官や弁護士の数が比較的少ない地域であれば、裁判官や弁護士の情報が入ってきやすいので「あの裁判官は争点整理をああまりしてくれなくて事件が長引くことが多いらしいから、こちらから早めに準備書面で争点を整理しておこう」とか「相手方の弁護士は○○先生で人間的に信用できる人だから和解の話を早めにして良さそうだな」とか、そういった心構えや準備がしやすいという点で、精神的に良い部分はあると思います。(逆に「相手方の弁護士が○○先生だった・・あの先生すぐにキレるんだよな・・・」みたいなこともありますが、それはそれで心の準備ができます。)

・車で通勤できることがある。

 ⇒事務所の方針や事務所の場所によると思いますが、地方都市の場合は、車で通勤できることがあります。満員電車に乗ることなく、車で短時間で職場に行けるメリットは結構大きいと思います。私も車で通勤していますが通勤のストレスはゼロです。子供ができたときには通勤途中に子供を学校に送っていったりすることもできると思いますので、車が使えるのは便利だと思います。


○弁護士として東京都内で就職するデメリット

・事務所にもよるが長時間働いている弁護士が多い(と思う。)。

 ⇒東京都内に就職した私の同期のほとんどは、平日は深夜まで働いていますし、土日も片方又は両方出勤しているという人が多いです。「人の数倍働いて人の数倍稼ぐ」というような働き方が多いようなイメージです。東京の弁護士の話を聞くと「他の事務所は終電で帰れないところも多いけど、うちの事務所は基本的に終電で帰れるから恵まれている」みたいなことを言う人もいます・・・。他方、地方都市では事務所によると思いますが、比較的ワークライフバランスを保っている事務所が多いのではないかと思います。地方都市は場所にもよりますが、賃料や人件費が都内の比べると低いので、事務所経営がしやすいところが多いと思います。

・移動が電車になることが多い。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、やはり満員電車での通勤は苦痛です。ただし、弁護士は事務所によってはラッシュの時間に出勤しなくて良いので、サラリーマン時代よりは通勤は楽かも知れません。



○弁護士として地元で就職するデメリット

・地元の人間関係がかえって煩わしく感じることがある。

 ⇒これもケースバイケースなのですが、地元で働いていると、あまり仲の良くなかった同級生から夜中に電話が掛かってきて延々と法律相談される・・・なんてこともたあにありますし、家族や親戚から頼まれて、あまり筋の良くない事件を受けて欲しいと言われるなんてこともあります。このあたりは上手く断れるようになれば問題ないのですが、慣れるまでは煩わしいと感じることもあると思います。(もっとも、東京の場合も知人が増えてくると同様の問題があると思います。)


・弁護士の関係が密接である分、会務などの仕事に追われることがある。

 ⇒これは単位会の規模によると思いますが、東京に比べると地方のほうが、弁護士会の会務や委員会活動などが回ってくる可能性が高いです。私の単位会では、会務や委員会活動を積極的にやっている先生が多く、本当に頭が下がります。会務や委員会活動をあまりやりたくない人にとっては大変かも知れません。(このあたりは合格後に地元の先生聞いてみると正確な情報が得られると思います。)


・就職に失敗した場合に、同じ単位会の中で転職しにくい場合がある。

⇒これも単位会の規模によると思いますが、地方都市では顔見知りの弁護士が比較的多いので、法律事務所を辞めた後に同じ単位会の中で就職活動をしようとすると、「○○先生のところ辞めたんだね。○○先生とは面識があるから採用すると○○先生に申し訳ないので・・・。」みたいな感じで、採用を躊躇される場合があります。そういった意味では、東京に比べると就職先の事務所を変えるハードルはやや高めです。

・人口規模にもよるが、事件の相手方の関係者が、知り合いだったりするという場面が増える。

 ⇒名古屋は人口が多いのでこのような問題は少ないかも知れませんが、地元に就職すると事件の相手方の関係者が、自分の知人だった、という場面に出くわすことはあると思います。


●司法修習でどこに配属されるかにもよる

余談ですが、司法修習の配属先との関係で自分では想像もしていなかったような場所に就職する人が結構います。

現在東京都内に住んでいて地元が名古屋ということであれば、第1希望と第2希望に東京と名古屋を記載するという人が多いと思うのですが、司法修習地の配属先は希望が通るとは限りません。

司法修習の配属先の希望は

第1群(東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、大阪、名古屋、その他の政令指定都市などの大都会)から2箇所まで選べる

第2群(水戸、前橋、金沢、高松などの、そこそこの都会)は第1希望から第4希望の好きなところに書けるが、第3希望と第4希望に書くことになるパターンが多い

第5希望と第6希望を書く時は、第3群(その他の地方都市・山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほうなど)から選ばないといけない

といったルールになっています。


第1希望と第2希望を東京と名古屋などの激戦区にすると、第1希望と第2希望の抽選に外れた場合、第3希望と第4希望の争いでも敗れてしまい、第5希望か第6希望の場所に飛ばされる、というケースが結構あります。

じゃあ第5希望か第6希望を書かなければ良いのかというと、そういうことでもなくて、第5希望か第6希望を何も書いていないとさらに人気の少ない北海道の地方都市に飛ばされたりします。

なので何をどう頑張っても、現在東京に住んでいる方が、司法修習で地方都市(山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほう)に飛ばされるというケースが結構あるんです。

司法修習で地方都市に配属された場合、地方都市から頑張って東京や地元に通って就職活動をする人が多いのですが、地方都市の生活が気に入る人も一定割合いて、中には修習先の弁護士にも気に入られてさらに居心地が良くなり、そのまま修習先に就職してしまうというパターンも結構あります。

なので、今から就職先を考えておくことは大事なことですが、実際に司法修習が始まってみないと、どこに就職することになるか分からない、ということも多いと思います。



●東京か地元が迷った場合には

東京に就職するか地元に就職するか迷った場合には、家族(や交際相手)の意見を聞いてみるのも良いと思います。

現在結婚されているか分かりませんが、結婚の予定があるのであればいずれかの実家に近いほうが子育てはしやすいと思いますし、長男であれば将来両親が高齢になった場合には、実家が近いほうが何かと都合が良い、ということもあると思います。

家族などの意見を聞いても決まらないという場合には、私だったら取りあえず東京都内で就職先を見つけて、東京が合わないと思った場合や、家族の都合で地元に戻る必要が生じた時点で、地元に戻ると思います。

一度地元に就職した後に東京で就職し直すよりも、東京で就職した後に地元に戻るほうが、一般的にはハードルが低いからです。

司法修習地の希望が通るかわかりませんが、取りあえず名古屋で司法修習をして地元の先生とのコネを作りつつ、東京に通って就職活動をして東京に就職し、地元に戻りたくなったら地元の先生のコネを頼って地元に戻る・・・私だったらそういう計画を立てるかもな・・・と思います。

またご不明な点がありましたらコメント欄に記載してください。



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論文式試験が終わった後の過ごし方について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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論文試験が終わりました。
このところ仕事が忙しくて、金曜は9時まで残業があり、昨日は昼休みの間ずっと電話と携帯メールで職場とやりとりするという状況でしたが、何とか全科目受験することができました。
さて、試験の方ですが、やはり時間が足りないことを痛感しました。綺麗な字を書くことを諦めてかなり汚い字で書き殴りましたが、それでも時間内に答案を書き切るのがやっと、という感じでした。その上、商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました。
それでも全科目受験できて、論文の採点をしてもらえるということだけでも、約1年間(最後の4ヶ月は仕事の関係でほとんど勉強できなかったものの)それなりに一生懸命勉強してきた甲斐があったと、満足しています。
最後に一つだけ質問させて下さい。
さすがに論文試験に通っているとは思えないのですが、これから1月中旬の合格発表まで、どのように過ごしたらいいか教えて下さい。
具体的には、今から合格発表まで、試験のことは忘れて一切勉強から離れてもいいものか(万一受かっていても、2週間の準備で口述試験は何とかなるものなのか)、今から何かしら準備をしないと口述試験は通らないものか、仮にそうであれば、どんな準備をどのくらいすればいいのか、ご経験を踏まえてアドバイスをいただけたら、と思います。仕事は引き続き多忙ではありますが、週末のうち1日は休めるというのが最近のペースです。
よろしくお願い致します。
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論文試験おつかれさまでした。


私が受験生の時はまだ予備試験がなく、私自身は予備試験は経験していないので、そのことを踏まえた回答であることをご了承ください。


論文試験が終わった後の時間の過ごし方ですが、予備試験の場合には、論文試験が終わった後も勉強を継続する受験生が多いと思います。

予備試験の場合には、論文試験が終わっても合格すれば口述試験を受験しなければならない訳ですし、口述試験に合格すれば、翌年の5月には司法試験を受験することになるからです。

また、残念ながら予備試験に不合格になった場合にも、次の年もまた予備試験を受験することになる訳ですから、勉強を継続する受験生が多いと思います。


  • ●口述試験について

ちなみに、過去3年間の予備試験の口述試験の合格率は、以下のとおりです。

令和元年 96.3%(受験者数494人、合格者数476人)

平成30年 94.9%(受験者数456人、合格者数433人)

平成29年 94.6%(受験者数469人、合格者数444人)


予備試験の口述試験の合格率は95%前後ですので、一見すると簡単な試験に感じるかも知れませんが、予備試験の口述試験の受験生は、短答式試験と論文式試験をくぐり抜けてきた猛者ばかりですので、その猛者の中で約5%が落ちる試験であると考えると、決して簡単な試験ではないと思います。

予備試験の口述試験で出題された具体的な問題は公開されていませんが、法務省のホームページで「予備試験口述試験における問題のテーマ」を閲覧することができます。


たとえば、令和元年度の口述試験のテーマは以下のとおりです。

民事

1日目
賃貸借契約の終了等に基づく不動産明渡請求事案における実体法ないし攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,
弁護士倫理上の諸問題

2日目
所有権に基づく不動産明渡請求訴訟における攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,立証方法,訴訟手続,
弁護士倫理上の諸問題


刑事
1日目
遺棄罪,身分犯と共犯,不作為犯,
公判前整理手続,証人尋問

2日目
同時傷害の特例に関する諸問題(要件,適用範囲等),
承継的共同正犯,
訴因変更


こうして見ると、論文式試験で問われるような主要なテーマだけでなく、「民事保全」「公判前整理手続」「証人尋問」といった短答式試験で問われることがあるような比較的細かい手続的なテーマも出題されるので、それなりに準備が必要だと思います。



  • 論文式試験が終わった後の過ごし方

もし私が予備試験の受験生であればですが、民法、要件事実、刑法を中心に勉強を継続すると思います。

これは予備試験の口述試験の過去のテーマを見ると、毎年、要件事実がからむ民法上の主要論点や、刑法の知識が問われていますし、他の受験生も時間をかけて勉強することが多い民法、要件事実、刑法に関する知識・理解の差で合否が決まる可能性が高いと思われるからです。

要件事実については、他の記事でも書きましたが、予備試験・司法試験レベルでは、「新問題研究要件事実」「紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造」の2冊を抑えておけば十分です。(司法修習や二回試験もこの2冊を抑えておけば十分に対応できます。)

厚い本を使って消化不良になるよりも、この薄い2冊をきちんとマスターして、後はこの本で学んだことを試験本番で応用しながら対応するほうが効率が良いはずです。

口述試験の過去のテーマを見ても、ほぼこの2冊に書いてある論点が出されていると思います。

●ISBN-10 : 486684048X

●ISBN-10 : 4908108226



執行・保全、刑事訴訟法の手続に不安があれば、それに関する本をざっくりと読んでおくと思います。

執行・保全は他の受験生も苦手であることが多く、基本的なことさえ分かっていれば良いので、薄めの本で十分です。

個人的には「基礎からわかる民事執行法・民事保全法」か有斐閣アルマの「民事執行・保全法」が良いと思います。

●ISBN-10 : 4335354754

●ISBN-13 : 978-4641220850



刑事訴訟手続については、司法研修所の「刑事第一審公判手続の概要」が薄くて使いやすいと思います。

●ISBN-10 : 4908108447

刑事訴訟手続に関しては、この本に書いていないことが聞かれる可能性は低いと思いますし、仮にこの本に書いていないことが聞かれたとしても、他の受験生も分からない人が多いと思うので、あまり差はつかないと思います。



また、予備試験の論文式試験に合格している可能性があると感じた場合には、予備校の口述試験も受けたおいたほうがベターだと思います。

口述試験に限りませんが、模試を受けておいたほうが、落ち着いて本番を受けられる可能性が高くなりますし、模試と似たような問題が出題される可能性もあるからです。



なお、「商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました」とのことですが、私も法科大学院の入学試験で商法の2問目の問題がほとんど分からず5行くらい書いて終わってしまったのですが、それでも合格していました。

論文試験の合格発表から口述試験までの期間は短いので、「どうせ不合格だろう」と思っていて何も対策をしていないと、予想外に合格の通知を受けた時に慌てることになるかも知れません。



  • ●再現答案の作成

それから、論文試験が終わってからできるだけ早い時期に、論文試験の再現答案を作っておくことを強くお勧めします。

論文試験の再現答案を作っておけば、論文試験に不合格となってしまった場合でも、次の試験に向けた方針を立てやすくなるからです。

論文試験で何度も不合格になる人の中には、再現答案を作っていない人が結構いますが、非常にもったいないと思います。

予備校の講師や合格者に「なぜ論文試験に落ちてしまったのか?」とか「これからどんな勉強をしたら良いか?」という相談をする時にも、論文試験の再現答案があったほうが具体的なアドバイスがしやすいです。

また、自分の中で勉強の方針を立てる時にも、論文試験の再現答案と、合格者の再現答案を比較することで、自分の弱い部分を見つけやすくなり、より効率的な勉強方針を立てやすくなるので、合格に近付きやすくなります。




  • ●勉強を継続した人と継続しなかった人の違いなど

最後に蛇足ですが、私の同級生や先輩の中には、司法試験を初めて受験した年に、短答式試験で不合格になった人と、論文式試験で不合格になった人がいるのですが、

(ア)短答式試験の不合格の通知を受けてすぐに(6月から)受験勉強を再開した人と

(イ)短答式試験に合格はしたものの、最終の合格発表まで勉強をしておらず、論文式試験で不合格になったことが分かった後に(9月から)受験勉強を再開した人

の2つを比べると、次の年は(ア)のほうが、合格する人が多かったような気がします。(正確にデータをとった訳ではないですが。)


1年目の受験時の能力で比較すると、短答式試験に合格した(イ)の人のほうが能力が高く合格に近いはずなのですが、6月から9月のたった3ヶ月間の間に、短答式試験で不合格になった(ア)の人が、短答式試験に合格した(イ)の人を追い越したのだと思います。

(あるいは、短答式試験で不合格になったために、死に物狂いで勉強したというのもあるのかも知れません。)

お仕事で忙しいとは思いますが、これから1月中旬までは2ヶ月半程度ありますので、その間、全く勉強をしないとなると、勉強を続けている他の受験生に差を付けられてしまうということになると思います。


なので、個人的には少しずつでも勉強を継続されたほうがよいのではないかと思います。


またご不明な点がありましたら質問してください。


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