司法試験・予備試験の論文答案が書けるようにならない場合について


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はじめまして 
社会人で独学で予備試験を目指している者です 
経済的な理由から予備校受講を断念し独学での勉強に手探り状態だったのですが、このサイトに出逢い1年間に何をしていけばいいのか理解できました 
今は憲法を勉強していますが残りの科目もこのサイトを参考に勉強を進めていきたいと思います 
ただ論文の勉強に関して結構時間を割いて勉強しているのですが、一向にあとはこれを繰り返していくだけという状態が掴めず途方にくれています 
一度は1回全部覚えてコツを掴むとか重要な部分を所々覚える等試してみたんですが書ける兆しが全く見えてきません 
一体どのようにしていけばあとはこれを繰り返すんだという状態にもっていけるのでしょうか? 
ご多忙だと思いますがご教授頂ければ幸いです 
宜しくお願い致します
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相談者の方についてですが

(ア)憲法以外はまだ手をつけていない状況なのか
また
(イ)「書けるようにならない」というのは,「伊藤塾試験対策問題集」などに掲載されているような基本的レベルの答案が書けないのか,司法試験・予備試験の本試験(過去問)のレベルの問題が書けるようにならないのか。

によって話が変わってくるかなと思います。

まず,憲法以外はまだ手をつけていない状況であれば,早めに他の科目についても論文式試験の勉強を進めていったほうが良いと思います。

というのも,「●憲法の勉強方法とおすすめの憲法の基本書や参考書など」という記事で書いたとおり,司法試験の論文式試験の中でも憲法は論文は特殊で,慣れるまでは論文の答案書きづらい科目だからです。

憲法については,一度書き方のコツを掴むと安定した得点源に出来るのですが,書き方のコツを掴むまでは「全然書けないんだけど・・・」という状態が続く人が多いです。

私も「憲法の答案がそこそこ書けるようになったな」と思えたのは本試験の半年前頃で,「安定して点数が取れそうだ」と思えるようになったのは本試験の直前でした。なので,憲法以外の科目に手を付けていないという初期の段階で,本試験レベルの憲法の答案が思うように書けなくてもあまり気にすることはありませんし,当然のことだと思います。

憲法以外の科目で,例えば,民法,商法,刑法,刑事訴訟法などは,「事案の問題点と関連する条文を探して,必要があれば問題点を指摘し規範を立てて,問題文に書かれている事実を規範に当てはめて結論を出す」という,比較的シンプルな方法で答案が書けることが多いので,まず他の科目の勉強を進めてみて,その科目で答案がある程度書けそうか試してみると良いと思います。

他の科目である程度答案が書けるようであれば,憲法の答案が書けないのは,勉強方法の問題というよりも,憲法の特殊性に躓いているということだと思います。


2点目の『「伊藤塾試験対策問題集」にあるような基本的なレベルの答案が書けないのか,司法試験・予備試験の本試験(過去問)のレベルの問題が書けるようにならないのか』,という点ですが,もし「司法試験・予備試験の本試験(過去問)のレベルの問題が書けるようにならない」ということであれば,これも勉強の進捗状況によっては当然のことです。

私が「本試験レベルの問題を取りあえず形に出来るようになった」と思えたのは,本試験3ヶ月前くらいの答練が終わった頃です。

他方,「「伊藤塾試験対策問題集」にあるような基本的なレベルの答案が書けない」とうことであれば勉強方法を工夫する必要があると思います。


そこで,まず(1)司法試験・予備試験の論文試験を書けるようにするための一般的な勉強方法を述べた上で,その後,(2)憲法の論文の書き方の勉強方法について述べ,最後に(3)本試験レベルの論文答案を書けるようになるための勉強方法についてお話したいと思います。



  • ●(1)司法試験・予備試験の論文式答案を書けるようにするための一般的な勉強方法



  • ○論文答案の書き方を学ぶ

これまで何度もお話しているとおり,司法試験・予備試験の論文式答案を書けるようになるためには,まず「伊藤塾試験対策問題集」等,基本的なレベルの論文式の問題と参考答案が掲載された問題集を読んだり,写経したりして,参考答案と同じような答案を書けるようにすることが一番の近道だと思います。

ただ,相談者の方は問題集を使っていても,なかなか書けるようにならないということですので,司法試験の論文式試験の答案の書き方の基本が理解出来ていない可能性があります。

「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」の部分には,司法試験・予備試験の答案の書き方の基本が説明されています。私は答案の書き方が分からなくなった時や,答案が上手く書けない時に,この「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」の部分を読み込むようにしていました。30回以上はこの「はしがき」の部分を読んだと思います。


具体的には,基本的な論文答案の書き方は以下のような流れになります(例外もあります)。

(1)問題文・事案から問題点を抽出する

(2)必要に応じて事案の問題点を指摘する

(3)必要に応じて論点の問題点を指摘する(多くの問題には論点の問題点があります)

(4)規範を立てるための論証をする。その場合,出来るだけ条文の趣旨,法原則,保護法益などを使って理由付けをする。また,例外を論じる際には必ず原則について触れてから例外を論じる。

(5)規範を立てる(規範は基本的に暗記しておく必要があります)

(6)あてはめ。問題文の,規範に関連する事実を拾い上げて,規範との関係でどのような意味があるのか述べる(評価をする)。

(7)結論を書く。必ず問題文に対応する形で。Ex:問題分が「AのBに対する請求が認められるか」という問であれば,「AのBに対する請求は認められる。」「AのBに対する請求は認められない。」という結論になる。


(ア)問題集の参考答案と(イ)「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」を読み比べながら,答案の各記述が,「はしがき」で説明している段階のどの部分にあたるのか意識しながら読むと分かりやすいと思います。

そして実際に自分が答案を書く場合には,上記の流れで,(1)~(3)まず問題点を指摘して,(4)規範を立てるための論証ををして,(5)規範を立てて,(6)あてはめをして,(7)結論を書く,という流れを意識しながら答案を作成したり,答案構成をすると書きやすくなると思います。


『「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」だけでは,論文式試験の答案の書き方がまだよく分からない』という場合には,司法試験・予備試験の答案の書き方について解説をした本を数冊読んでみるのも良いと思います。

論文答案の書き方の本は多数がありますが,個人的におすすめなのが「柴田孝之」先生の本です。

柴田孝之はLEC(東京リーガルマインド)の人気講師で,司法試験に合格した同級生にも「柴田先生の講座を受けたことがある」という人が何人かいました。

私が司法試験の勉強を始めたばかりの頃,論文式試験の答案の書き方が全く分からなかった時に,柴田先生「司法試験合格論文機械的作成法」という本を通勤時間などを利用して読んだところ,だいぶ頭がすっきりしました。

●司法試験合格論文機械的作成法

「なぜ,その箇所で,それを論じなければならないのか。」という事が説得的・ロジカルに書かれています。特に理屈が分かったほうが勉強が進む,という人にお勧めな本です。

「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」の解説を10倍くらい詳しく,丁寧に説明したような内容になっています。


今では古い本ですが,論文式試験の書き方の基本文は今でも変わっていませんし,アマゾンなので中古で安く売られているので読んで損をすることはないと思います。

柴田先生は「柴田式司法試験論文過去問思考術―答案作成の過程を学ぶ」という本も出していますので,「古い本は嫌だ」という人は,こちらを参考にしていただいても良いと思います。

●柴田式司法試験論文過去問思考術―答案作成の過程を学ぶ




  • ○覚えられない部分について基本書を読んでみる

『「伊藤塾試験対策問題集」などの問題集をやっていて,同じような答案を書こうと思ってもなかなか頭に入って来ない,覚えられない』という場合には,その論点について基本書や予備校本を読み,当該論点やその周辺知識について理解を深めてみると良いです。


論点について理解がないまま答案例だけを暗記しようとしても覚える作業が辛いですし,論点やその周辺知識についての理解がないと,別の角度から出題された時に論点に気づくことが出来なかったり,当てはめが稚拙になりがちです。また,論点について理解があれば考えながら文章を書くことが出来るようになるので,覚えるべき量も減っていきます。

ですから,論文問題集を回していて,上滑り(読んだり写経しているけど頭に入って来ない状態)をしているなと感じた場合には,腰を据えて,問題集で出てきた論点部分などについて基本書・予備校本等を読んで理解を深めていくと良いです。

また,基本書等を読んで気に入った理由付けやフレーズなどがあれば,問題集にどんどん書き込みをしていったり,気に入った理由付け等を使った論証をパソコンで作ってみる,という勉強方法も有効です。

私は重要論点の一部については,論文式試験用の問題集,基本書,判例集等を参考にしながら,パソコンで自分なりの論証集を作り,あてはめの仕方等を整理していました。

なかなか論証を覚えられないという場合は,基本書等を参考にしながら自分の頭を使って自分なりの論証を作ると,記憶に残りやすいと思います。



  • ○条文の趣旨を意識する。

特に民法,商法,刑法,民事訴訟法などで有効な方法ですが,重要な条文の趣旨(なぜそのような条文が作られたのかという理由)を意識して答案を作成すると,論文式答案が書きやすくなることが多いです。

論文式試験の答案で規範を立てる際に理由付けをしますが,「理由付けの部分が覚えられなくて困る」という人は,基本的に条文の趣旨を使って理由付けをしようとすると,覚える量が減りますし,「理由付けで何を書いて良いのか分からない」という場面が減っていきます。

たとえば,民法177条の趣旨について,基本書に「177条は,物権変動を公示することにより、同一の不動産につき正当な利益を有する第三者に不測の損害を被らせないようにするためにあるんですよ。」みたいなことが書いています。

この趣旨と規範を覚えておけば,『177条の「第三者」の意義』の以下のような論証を作ることができます。

(論点の問題提起 ⇒ 考えて書く)
登記をしなければ物権変動を対抗できない177条の「第三者」の意義が問題となる。

(理由付け ⇒ 覚えている趣旨を利用して書く)
177条の趣旨は物権変動を公示することにより、同一の不動産につき正当な利益を有する第三者に不測の損害を被らせないようにする点にあると解される。

(規範 ⇒ 暗記の吐き出し)
そこで、177条の「第三者」とは、物権変動の当事者および、その包括承継人(相続人・包括受適者)以外の者で他人の登記の欠缺を主張して他人の物権変動を否定することについて正当な利益を有する者を意味すると解する。

みたいな感じですね。



民法177条について,別の角度から出題をされても,趣旨を覚えておけば,趣旨を使いますことで様々な論証に対応することができます。

刑法の「趣旨」は基本的に「保護法益」になることが多いので,刑法の場合には保護法益を意識して論証すると,答案が書きやすくなります。



  • ○基本書・予備校本等を使いながら答案を書いてみる。

勉強を始めた頃は暗記している法律知識が少ないので,何も見ないで答案を作るというのが難しい場合があります。

問題文を見ても全く書ける気がしないという場合には,何も書かずに参考答案等を見るのも1つの方法ですが,基本書・予備校本・判例集など,使えるものを使って問題集の問題や,司法試験の過去問を解いてみるのも勉強になります。

「基本書などを見ながら答案を作ったら意味ないだろ」と思われるかも知れませんが,そんなことはありません。

基本書などを使って,「ぼくのかんがえたさいきょうの答案」を作ってみた上で,問題集の参考答案や,「ぶんせき本」の優秀答案と比較をしてみてください。

●ぶんせき本

おそらく,ダメな箇所が沢山見つかると思いますし,基本書等を参考にしながら書いたはずなのに,要求されている問題点に気づいていなかったりすることもあると思います。

その上で,優秀答案と比較して自分の答案がなぜダメなのか,なぜ論点に気づかなかったのか(問題文の誘導を見落としていたりすることが多々あります。)等について,じっくりと考えてみると良いです。

私は司法試験の論文式の過去問について,時間を計って答案を書き,「ぶんせき本」の優秀答案と比較したり,出題趣旨と比較したりするという勉強方法をする際,何も書くことが思いつかない時は,潔く基本書・予備校本等を参考にするようにしていました。

何も書かず,何も悩まない状態で優秀答案を読むよりも,基本書等を読みながら悩みに悩んで答案を作成した後に優秀答案等を読むほうが,得られるものが遙かに大きいからです。

「何も書けない時は基本書等を使ってでも答案を書いてみる」という勉強方法は試してみると良いと思います。





  • ●(2)憲法の論文の書き方の勉強方法

憲法の論文式試験の答案の書き方の勉強方法は「●憲法の勉強方法とおすすめの憲法の基本書や参考書など」という記事に書いたとおりですが,まず基本書や参考書を読みながらでも良いので,司法試験の憲法の論文式試験の過去問について,自分なりの答案を作ってみると良いと思います。

最初のうちは,思うように答案を作ることが出来ないと思いますが,「どうやって違憲審査基準を立てれば良いのだろう」とか,「想定される反論は,どういう発想で書くのが正解なのだろうか」とか疑問点が出てくると思います。

そういった疑問点をもった上で,司法試験・予備試験用の答案作成の考え方に関する書籍を読んだり,予備校の講座を受け,その後に過去問について答案を作成し,また司法試験・予備試験用の答案の書き方に関する書籍を読む・・・ということを繰り返していくうちに,次第に憲法の答案の書き方が身についていくと思います。

憲法の答案の書き方の本はいろいろとありますが,木村草太先生の「憲法の急所―権利論を組み立てる」や,小山剛先生の「憲法上の権利の作法」が個人的にはおすすめです。


●憲法の急所―権利論を組み立てる

●憲法上の権利の作法


予備校の講座の中では,個人的には辰已法律研究所の福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」が分かりやすく,一番ためになりました。

名前のとおり,司法試験に「落ちない」答案を書くためにはどうすれば良いか,という観点で解説がなされていて,私のように地頭が良くない受験生でも,聞いたその時から使えるような内容になっています。 


あとは合格者のブログなんかも参考になります。


私が受験生の時には「masoブロ」というブログを参考にさせていただきました。

初学者のうちは内容が難しいと思いますが,ある程度勉強が進んできて,自分なりの答案作成のルールを作る段階になると大変参考になると思います。





  • ●(3)本試験レベルの論文答案を書けるようになるための勉強方法

予備試験・本試験レベルの論文答案を書けるためになるためには,他の記事で繰り返しお話しているとおり,過去問について論文答案を作成してみて,「ぶんせき本」を読み,優秀答案と自分の答案を比較する,という作業を繰り返すことが一番近道だと思います。

●ぶんせき本

一緒に勉強をする仲間がいるのであれば,同じ問題について時間を決めてそれぞれが答案を作成し,お互いに答案を見せ合って,良いと思う部分,悪いと思う部分を指摘しあうとさらに良いです。

人間は自分の悪い部分を認めたくないことが多いので,自分で自分の答案を分析していると,どうしても甘くなりがちです。他人に厳しい目で批判をしてもらうことも大事です。

司法試験の論文式試験は確かに難しいのですが,過去問を繰り返し解いていると「結局同じようなことが聞かれているな」「問われている論点は違っても,答案作成をする上で気をつけるポイントは結局同じだな」ということが分かってくると思います。この感覚が掴めてくると,本試験の問題もあまり怖くなくなってきます。


もし,過去問を繰り返し解いていても実力が上がっていく感覚がない場合には,基本レベルの知識・理解が不足している可能性がありますので,「伊藤塾試験対策問題集」等の問題集を復習したり,問われた論点について基本書等を読んで理解を深める,という勉強を繰り返すと良いと思います。

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民法の勉強方法とおすすめの民法の基本書や参考書など(その1)
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