2019年04月

2019年04月01日



遅くなりましたが,今回は民事訴訟法の勉強法と基本書,参考書等についてお話したいと思います。

■民事訴訟法の特徴


「民事訴訟法」とは,民事訴訟の手続を定めた法律です。

例えば,AさんがBさんに「100万円払え」という訴訟(裁判)を起こす際に,どこの裁判所で訴訟をするのかとか(管轄),訴訟の判断の対象をどうやって決めるかとか,主張や証拠の取扱いをどうするか等,細かいルールが定められています。

実際に裁判をしたことのない受験生の多くにとっては,民事訴訟のイメージは湧きづらく,しかも学者の先生の議論の対立が激しいため「ある基本書にはαと書いてあるが,別の基本書にはβと書いてあって,どっちが正しいか分からない」と混乱してしまうことが多い科目です。


そのため,民事訴訟法の勉強を効率的に進めるためには,早い段階で全体像を把握して民事訴訟のイメージを掴むことと,学説の激しい議論に巻き込まれないようにすることが大事です。

では,どうすれば良いのかというと,これまでお話してきた他の科目と同じ勉強方法が通用します。


まず,早い段階で全体像を把握するために,最初に入門書を読むべきです。

また,学説の激しい議論に巻き込まれないようにするためには,「最終的にどのような必要最低限の知識があれば司法試験で合格できるのか」という観点から,早い段階で司法試験用の問題集を使いはじめ,基本書は問題を解くための知識をインプットするための補助として使う,という勉強方法が効率的です。


この勉強方法をとれば,司法試験の合格に必要な民事訴訟法の知識は,驚く程少なくて済むということが分かってくるはずです。


民事訴訟法の合格に必要な知識は,他の民事系科目(民法・商法)よりも,かなり少ないんです。

民事訴訟法を苦手にしている受験生や,「民訴の勉強はつまらない」と感じてる受験生は多いのですが,民事訴訟法は,条文の数自体も民法・商法より少ないですし,論文式試験で問われる論点も概ね決まっているので,効率的に勉強をすれば,少ない時間で合格に必要な力を身につけられる科目ですし,やり方を間違えなければ安定した得点源にすることが出来ます。


また,民事訴訟法はロジカルな科目でもあり,最初はつまらないと感じていても勉強が進むにつれて,面白くなっていくと思います。

他方,民事訴訟法の勉強が面白くなってきた人は注意が必要です。

先程もお話したとおり,民事訴訟法は学者の先生の議論の対立が激しいため,様々な学説の勉強が楽しくなってしまい,様々な基本書を読み比べたりして必要以上に民事訴訟法に勉強時間を費やしてしまう受験生がいます。

しかし,民事系科目では,民法と商法という,他により勉強時間が必要な科目があるので,司法試験に合格するという観点からは,民事訴訟法は基本的な事項を中心に効率的に勉強して,その代わりに民法や商法といった,勉強時間が物を言う科目に労力をさいたほうが,全体的な効率は良いです。



その他,民事訴訟法の勉強をする上で2点ほど注意していただきたい点があります。


○基本的な定義は正確に書けるようにしておく

1つは,基本的な定義は正確に書けるようにしておく,ということです。

民事訴訟法の論文式試験では,処分権主義,弁論主義,弁論主義の第一テーゼから第三テーゼといった法律用語の定義(意味)を正確に書けるようにしておく必要があります。

民事訴訟法の論文式試験で定義を正確に書けないと,それだけで不合格になってしまっても文句は言えないくらいのダメージを受ける可能性が高いです。

そのため,民事訴訟法の勉強では,基本的な定義を正確に書けるように準備しておく必要があります。

もっとも,あれもこれもと定義を覚えていてはいくら時間があっても足りませんので,覚える定義は「論文式試験を解くために必要は範囲」で十分です。

予備校本の巻末に定義集が載っていたりしますので,それを中心に覚えていっても良いと思いますし,論文式試験の問題を解いてみて「この定義を覚えていないと問題が解けない」と思った定義をノートやパソコンでまとめたりして覚えていく,という方法でも良いと思います。

私は「C-Book 民事訴訟法II」の巻末にある定義集をトイレの壁に貼って,少しずつ覚えるようにしていました。

最初のうちは完全に覚えられなくても,何度も見ているうちに覚えられるようになるはずです。


●ISBN-10: 4844956108



○『民事訴訟法の4段階構造』をきちんと頭に入れる

民事訴訟法の勉強をする上での注意事項2点目は,「勉強がある程度進んできたら,『民事訴訟法の4段階構造』をきちんと頭に入れる」ということです。

司法試験の受験生の中には試験本番で「弁論主義の問題なのに,処分権主義について論じてしまった」とか,「自由心証主義の問題なのに,弁論主義について論じてしまった」とか,「何を聞かれているのか分からず白紙答案になってしまったが,弁論主義を論じるのが正解だった」という,大きなミスをして不合格になってしまう受験生がいます。

このようなミスをする原因の1つは勉強不足ですが,もう1つの原因として『民事訴訟法の4段階構造』をきちんと理解していない場合があります。


『民事訴訟法の4段階構造』とは,民事訴訟法のシステムを「1 訴訟物レベル」「2 法律上の主張レベル」「3 事実上の主張レベル」「4 立証レベル」の4つに分けるというものです。

たとえば,「1 訴訟物レベル」では処分権主義が問題になりますし,「3 事実上の主張レベル」では弁論主義の第一テーゼと第二テーゼが問題になり,「4 立証レベル」では弁論主義の第三テーゼが問題になります。

また,「3 事実上の主張レベル」と「4 立証レベル」を繋ぐシステムとして自由心証主義や経験則の問題があります。

民事訴訟法の勉強が進んでくると,処分権主義や弁論主義など,ちょっと似てるけど全然違う論点が出てきて,混乱してしまいがちです。

しかし,この『民事訴訟法の4段階構造』を頭に入れておけば,「この問題は「1 訴訟物レベル」の話だから,処分権主義が問題になりそうだな」とか,試験で何を書けば良いのかが分かるようになります。


個人的にはこの『民事訴訟法の4段階構造』はもの凄く大事だと思いますし,私の通っていた大学の教授も大事だと言っていたのですが,残念ながらこの『民事訴訟法の4段階構造』を詳しく説明していない教科書もあります。

個人的に『民事訴訟法の4段階構造』の説明で一番分かりやすかったのは「C-Book 民事訴訟法I」の「序論」「1 民事訴訟手続の流れ」「三 「民事訴訟の構造」から見た手続の流れ」の説明です。

●ISBN-10: 4844956094



ある程度勉強が進んだら,基本書や予備校本の『民事訴訟法の4段階構造』の箇所を読んでみて,頭にしっかりと焼き付けておくことをお勧めします。


前置きがだいぶ長くなりましたが,続いて民事訴訟法でお勧めの基本書等についてお話をしたいと思います。


■民事訴訟法の入門書を読もう


民事訴訟法の入門書としては,他の科目と同様「伊藤真の民事訴訟法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521646


個人的には,民事訴訟法に関してはこの「伊藤真の民事訴訟法入門」に,司法試験の論文式試験の合格に最低限必要な知識の半分くらいは書かれているんじゃないかと思っています。

そのくらい基本的な事項がコンパクトにまとまっています。


学者の先生が書いた入門書としては「民事裁判入門」が比較的有名です。


●民事裁判入門 第3版補訂版
ISBN-10: 4641136238

「民事裁判入門」は,民事訴訟法の幹の部分に絞ってコンパクトな説明がなされた良書ですが,初心者にとってはちょっと難しいと思います。







■民事訴訟法の論文問題集を読もう


他の科目と同様に,民事訴訟法も初期の段階から論文問題集を読むことをおすすめします。

先程も申し上げたとおり,民事訴訟法の基本書は激しい学説の対立などの説明も多く,初心者が最初から基本書を読むと「司法試験の合格に必要のない部分」も読むことになり,効率が悪いです。

「司法試験の合格に最低限必要な知識」は,司法試験の論文問題集の参考答案に書いてありますがら,入門書を読んだら,論文問題集を読むことをおすすめします。

そして読む論文問題集としては「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。

個人的には「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」のには,司法試験の民事訴訟法で合格点をとるのに必要な知識の9割以上が含まれていると思っています。


●ISBN-10: 4335303572

●ISBN-10: 4335303629

受験生の答案を見ていると,この「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」のAランク(最重要ランク)レベルの論証すらまともに書けていないという人が少なくありません。



最初から全てを理解しようとする必要はありませんので,まずはAランクの問題と答えを何度か読み,分からないところについて基本書などを読んで理解を深め,参考答案と同じような答案を書けるように訓練をしていきましょう。

運が良ければ,

(ア)「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」のAランクの問題について,理解をした上で参考答案と同じような答案を書けるようにする

(イ)司法試験の過去問5年分くらいをやる

(ウ)答練と直前模試を受けてきちんと復習をする

というだけで,民事訴訟法については司法試験で合格レベルの答案を書ける可能性があります。


ただ,年度によってはBランク,Cランクレベルの問題が出題される可能性もありますので,できるだけBランク,Cランクレベルの問題もマスターできるようにしておいたほうが良いと思います。



なお,法科大学院に入学すると,「ロースクール民事訴訟法」等の問題集(?)を購入するように指示され,L2(未修者の2年目,既修者の1年目)から,この「ロースクール民事訴訟法」等を中心に授業が進められていくことが多いと思います。

★ISBN-10: 4641138109

「ロースクール民事訴訟法」は非常にレベルの高い本ですが,この本のレベルに付いていけない受験生も多いです。

私も「ロースクール民事訴訟法」を指定されていましたが,分からないところが沢山ありましたし,今になって考えると,司法試験に合格するという観点からは「ロースクール民事訴訟法」は必ずしも必要ではなかったと思っています。

「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」の問題すらまともに理解できていない状況で,「ロースクール民事訴訟法」を正面から取り組んだとしても,消化不良になってしまい,あまり効率は良くないと思います。

法科大学院で単位を取るためには「ロースクール民事訴訟法」等もやらざるを得ないのですが,同級生と協力し合って授業の準備をしたり,先輩からノートをもらう等して,効率的に単位を取るようにしたほうが良いと思います。




■おすすめの民事訴訟法の基本書と予備校本



私は受験生時代に民事訴訟法の基本書について何を使うか散々迷いました。

そして,最終的にメインで使っていたのが「民事訴訟法講義案」です。

●ISBN-10: 4906929486


民事訴訟法の勉強でつまずく理由の多くが「学説の対立が激しくて,どの説を使えば良いのか分からない。混乱する。」というものです。

しかし,この「民事訴訟法講義案」は裁判所の研修教材なので,一貫して「実際に実務で使われている説」で説明がなされています。

そのため,「学説の対立で悩んで時間が足りなくなる」という悩みが無くなります。

「学説の対立で悩んで分からなくなってしまった」という時に,この「民事訴訟法講義案」を読むとスッキリ解決することが多いので,手元に置いておくと便利です。

実務に入ってからも,この本が必要ですし。



ただ,この基本書にも欠点が2つあります。

1つは,「実際に実務で使われている説」に基づいて説明をされているので,実務で使われていない「争点効」については詳しい記述がありません。

もっとも,争点効については「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」をやれば答案は書けるようになるので,この点は大きな問題でありません。


2つめの問題は「研修用教材なので,読んでいてつまらない」ということです。

辞書的に使うのであれば,つまらなくても問題ないのですが,基本書を通読するタイプの人にとっては,淡々とした説明が続くのは結構キツイと思います。



そこで,学者の先生が書いた基本書もいくつか紹介したいと思います。

もし私が今受験生だったら買うだろう,という基本書が高橋宏志先生の「民事訴訟法概論」です。

●ISBN-10: 464113734X

高橋宏志先生は,後述の「重点講義民事訴訟法」などを執筆されている超有名な先生なのですが,高橋宏志先生の説明は一見難しいようで分かりやすいです。

特に勉強が進んでくると,高橋宏志先生の説明に助けられることが多いと思います。



私が受験生の時には「民事訴訟法講義案」の他に,高橋宏志先生の「重点講義民事訴訟法」を買って,「民事訴訟法講義案」を読んでもしっくり来ない時に「重点講義民事訴訟法」を辞書として使うようにしていました。

●ISBN-10: 4641136556

●ISBN-10: 4641136882


この「重点講義民事訴訟法」は痒い所にも手が届く良書で,読み手を学説の荒波に巻き込むこともないすっきりとした説明が好印象で使い勝手が良いのですが,高い(2分冊で合計1万以上),重い(全体で1500頁以上),頁数が多いのに全範囲を網羅している訳ではない,という欠点もありました。

他方,最近出版された高橋宏志先生の「民事訴訟法概論」は,安い(3700円くらい),重くない(400頁ちょっと),全範囲網羅,ということで,受験生だったら間違いなく買っていたと思います。


その他,おすすめの基本書としては,藤田広美先生の「講義 民事訴訟」があります。

藤田広美先生は,裁判官時代に先程ご紹介した「民事訴訟法講義案」を執筆したと言われています。

元裁判官が書いているため,受験生を学説の対立に巻き込むことなく,丁寧に説明をしてくれています。

●ISBN-10: 4130323695




予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「民事訴訟法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 民事訴訟法」が良いと思います。

●ISBN-10: 433530482X

●ISBN-10: 4844956094

●ISBN-10: 4844956108


「民事訴訟法 伊藤真試験対策講座」は何度も通読ができるように工夫がされているので,本を何度も読んで覚えるタイプの受験生とっては便利だと思います。

「伊藤真試験対策講座」(シケタイ)については昔から批判もあるところですが,基本書を使わずにシケタイだけ読んで上位合格している人もいますので,使い方の問題かなと思います。

ただ,辞書的に使うにはシケタイ使い勝手が悪いです。私は「民事訴訟法 伊藤真試験対策講座」を買いましたが,私は通読タイプではなかったので,数十頁を読んで挫折してあとは本棚のオブジェになっていました。


「C-Book 民事訴訟法」は細かい学説の対立が見やすく整理されていて,学説の対立で混乱した時に読むと悩みが解消することが多いと思います。

また,先程お話ししたとおり『民事訴訟法の4段階構造』を理解する上では便利だと思います。








■民事訴訟法の判例集


民事訴訟法の判例集としては,「民事訴訟法判例百選」があれば十分だと思います。

●ISBN-10: 4641115273

判例がある論点については,基本書を読むだけでなく,判例集で事案と判旨を読み解説も読むと理解が深まりますし,基本書を読んで理解ができなかった時に判例集を読むと解決することもあります。

なので,民事訴訟法についても判例集は1冊は持っておいたほうが良いのですが,判例百選は解説を書いている方々に著名な学者が多いだけあって,解説も充実しています。

判例百選のデメリットは字が小さいことですが,裁断・スキャンして電子書籍化することで字が小さいという問題は解決できます。





■論文式試験の過去問の分析


民事訴訟法の分野においても,司法試験の論文式試験の過去問の分析は大事です。

他の科目と同様に,法務省のホームページから論文式試験の過去問をプリントアウトし,過去数年分の論文式試験を実際に時間を計って解いてみると良いです。

民事訴訟法の過去問を実際に解いてみると「こんな難しい問題解ける訳がない」「こんな細かい知識まで聞かれるのか?」と挫折感を覚えるかも知れません。

しかし,心配する必要はありません。

「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」に書かれているレベルの論点をしっかり理解・記憶していれば,平均的な合格者以上の知識はあります。

もし「民事訴訟法 伊藤塾試験対策問題集 論文5」に書かれているレベルの論点をしっかり理解・記憶しているにもかかわらず,過去問が解けなかったという場合には,通常は,知識不足が原因でなく,司法試験の解き方のコツが分かっていないことが原因であることがほとんどです。

民事訴訟法の論文式試験の問題文には「指導担当弁護士と修習生の会話」や「裁判官と修習生の会話」等の形で指示やヒントが与えられることが多く,問題文に記載されている指導担当弁護士・裁判官の指示に従って処理をしていけば,基本的な知識をもとに合格レベルの答案は書けるようになっています。

なので,民事訴訟法の論文式試験対策としては,基本的な知識をもとに,問題文にある指導担当弁護士・裁判官の指示・ヒントに従って,合格レベルの答案を書けるようにする訓練をするということが大事になってきます。

この練習は1人でやるよりも,何人かで時間を計って問題を解き,答案をお互いに見せ合って検討すると,他の受験生のレベルも分かるので,「どの程度のことを書けば合格点に達しそうか」という感覚が掴みやすくなってくると思います。

また,他の科目と同様に,論文式試験の過去問の答案を作ってみた後に,辰已法律研究所の「ぶんせき本」などを使って,優秀答案と自分の答案の何が違うかを比べてみて,なぜ優秀答案と同じような答案が書けなかったのかということを分析してみると,次第に答案を作成するポイントやコツが分かってくると思います。

●ISBN-10: 4864663769



また,何度もお話していることですが,試験が近付いてきたら,できる限り答案練習会(答練)や模擬試験に参加しておいたほうが良いです。

民事訴訟法の論文式試験では,基本的な事項を正確に書くということと,未知(自分の知らない)問題が出た時に,問題文の指示・ヒントに従って決められた時間内に答案を作るという技術が必要になります。

この技術は,基本書を読んだりしているだけでは身につくものではなく,実際に時間を計って何度も論文式試験の問題を解くことで少しずつ身についていきます。

予備校の答案練習会(答練)や模擬試験は,強制的に答案を作成する練習をするのに良い機会ですから,受けておいたほうが良いです。


なお,公法系・刑事系と違って,民事系(民事訴訟法を含む)については予備校の出題予想はあたらないことも多いです。

なので,民事系についてはあまりヤマをはらずに,論文問題集や予備校の答練で広めに対策をしておいたがほうがヤマが外れて慌てるというリスクを減らすことができます。




■短答式試験(民事訴訟法)の勉強方法


司法試験の短答式試験では,民事訴訟法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,民事訴訟法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。

他方,予備試験の短答式試験では,民事訴訟法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。


これまでお話しているとおり,短答式試験の勉強方法は,較的単純で,短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べる,という単純作業の繰り返しだけで,成績が伸びていきます。



短答式試験の過去問集は,個人的にはスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」が,解説がコンパクトで速くまわせるのでおすすめです。

●ISBN-10: 4905444284

●ISBN-10: 4905444276


詳細な解説があったほうが良いという人には,辰已法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が良いと思いますが,これを使う場合には時間不足にならないようにスケジュール管理に注意をしたほうが良いです。

●ISBN-10: 4864663858



時間がない人は,「肢別本」が速く回せるのでおすすめです。

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトなので早く回せるのがメリットです。


●ISBN-10: 4864664188

肢別本は1問1答式で早く回せますが,本試験と出題形式が違うため,肢の切り方の練習ができないというデメリットもあります。

しかし,民事訴訟法に関しては,肢の切り方でシビアな判断を求められる科目ではありませんから,肢別本で知識を叩き込んだ後に,年度別の問題集で肢の切り方の練習をすれば十分かと思います。




短答式の勉強として,他に「択一六法を何度も読み込む」という方法があります。

私の同級生の中には「伊藤真の条文シリーズ7 民事訴訟法」を何度も読み込むことで,民事訴訟法の短答式試験で常に満点近い点数をとっている人がいました。

●ISBN-10: 4335312644

ただし,この「択一六法を何度も読み込む」という勉強法は,よほど集中力や根性がある人以外にはお勧めできません。

私も同級生の真似をして「伊藤真の条文シリーズ」を読み込んでみようとしたのですが,知識が頭に全然入って来ず,上滑りをしてしまう感じで挫折をしました。

「択一六法を何度も読み込む」という勉強法は,人を選ぶ勉強法ですので,合う人だけ試してもらえればと思います。

【アクセスの多い記事】
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Comments(2) |  │   (19:26)


※※※※※※※※※※※※※※※
お世話になります。
お忙しい中大変恐縮ですが、もう一つ質問させてください。
弁護士業界はこれから40年、どのようになると考えますか。

今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。
私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。

一方で弁護士はAIの台頭により、これから無くなる職業として挙げられています。晴れて弁護士になったとして、比較的高給であるが先が短いのではないかと考えてしまいます。若手から50代までのキャリアパスは一般的にどのようになりますか。弁護士は将来も需要があるのでしょうか。

学生時代からの夢。諦めるつもりはさらさらありませんが具体的なビジョンが欲しいです。
よろしくお願いします。
※※※※※※※※※※※※※※※



弁護士の将来については,

(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか

という問題と

(2)弁護士数と人口のバランス

を考える必要があると思います。


(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか



まず(1)の「弁護士の仕事がAIに取って代わられるか」という点については,「現時点での制度を前提にすると,交通事故等の一部の分野を除いて,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

以下理由を述べていきます。


・判例を集めるのが難しい,判例を集めたとしても画一的な方針を決めることが難しい

「弁護士の仕事がAIに取って代わられる」という論拠の根拠として,「AIは膨大な量の判例を記憶して,その中から適切な解決方法を選択し,書面等まで作成することができる。だから,弁護士の仕事がAIに取って代わられるんだ。」ということが言われていると思います。

しかし,AIが「膨大な量の判例」を記憶するためには,AIにインプットするための「膨大な量の判例」を用意しなければなりませんが,現在の制度では公表されている判決はごく一部だけであり,AIが必要とするだけの判例を用意することは困難だと思います。

我々が普段弁護士業務をしている中でも「判例システム」を使って似たような判例を探すということはやっていますが,似たような判例がデータ上存在しない,というケースが多々あります。

むしろ,全く同じ事例はないと言っても過言ではないですし,全く同じ事例がないからこそ弁護士という仕事が必要になっています。

そういった時は,弁護士が依頼者から良く話を聞いた上で,自分の頭で考えて最善の方針を立てる必要がありますが,こういった作業はAIが不得意な分野だと思います。



・日本では規範を立てずに結論を出している判決が多い

裁判官が判決を書くためには,裁判官が「規範」という基準を作って,それに事実を当てはめて結論を導く,というやり方をするのが本来の姿です。

このような本来の姿の判決が多くあればAIに情報をインプットすることで画一的な結論を導ける可能性はあると思うのですが・・・しかし実務では裁判官が「規範」と立てずに結論を出している裁判例がとても多いです。

特に最高裁の判決などを見ていると,なぜそのような結論になったのか,理由がはっきりしないものが少なくありません。

この「規範を立てない判決」は批判もされているところですが,なぜ判決がそのような結論になったのか理由がはっきりしない場合には,どのような事実が結論に影響を与えるのか,判例評釈などを大量に読んだ上で自分の頭で考えて推測を立てていくしかありません。

判決の結論に至る理由がはっきりしない以上,AIに大量の判決の情報をインプットしたとしても,AIが画一的な結論を導くということは難しいと思います。



・和解に関するデータを集めるのが難しい

また,民事訴訟の半数以上は,判決によらずに「和解」と言って話合いで解決されています。

依頼者の利益を最大化するためには,和解についても適切な判断をする必要があります。

AIが「和解をすべきか」「和解をするとしてどういう和解をすべきか」という判断をするためには,和解に関する大量のデータを集める必要があります。

しかし,成立した和解のデータは公表されていませんし,和解に至る過程についても裁判所の記録にはほとんど残っていませんので,AIにインプットするための和解のデータを集めるのも難しいと思います。

さらに,和解をするためには,相手方が何を考えているかを推測した上で,駆け引きをすることが必要なることもありますが,AIにそのような駆け引きがどこまで出来るかという問題もあります。



・まとめ

以上のように考えると,「日本において,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

ただし,交通事故等の一部の分野については,裁判例のデータが大量にありますし,判決に至る基準も基本的に「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」や「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本などがあり,比較的しっかりしてます。

なので,交通事故等の分野に限って言えば,必要な情報を入力することで自動的に訴状を作る,といったシステムを作ることは可能ではないかと思います(比較的シンプルな事案であれば,今でもそういったシステムは作れると思います。)。

ただ,こういったシステムを作ったとしても,個人が1件の交通事故だけのためにシステムを買うということはちょっと考えにくいので,法律事務所がシステムを購入して弁護士の業務の補助に使う,という形になるのではないかと思います。





(2)弁護士数と日本の人口のバランス


弁護士の将来を考える上では,AIの問題よりも「弁護士数と日本の人口のバランス」の影響のほうが大きいと思います。

現在は司法試験の合格者も1500人程度となり,就職難の状況も解消されたようですが,依然として弁護士の数は増え続けています。

日弁連の資料によれば「司法試験合格者1500人を維持していくと,法曹人口総数は,2062年に6万5324人となって,新規法曹資格者と法曹でなくなる者が均衡し,安定する。この時の弁護士人口は5万7464人と予想される。」とされています。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2016/1-3-7_tokei_2016.pdf

2018年の弁護士数は4万0066人で日本全体の人口が約1億2644人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約3156人です。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2018/1-1-1_tokei_2018.pdf

他方,前記のとおり2060年頃の弁護士数が5万7464人だとして,「平成30年版高齢社会白書」によると2060年頃の予想される日本の人口が9284万人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約1616人です。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html


仮に司法試験の合格者が1500人のままだとすると,単純計算で弁護士1人あたりの日本人口が半分程度になり,その結果,弁護士の平均収入も半分程度になってしまうかも知れない,ということが考えられます。

ただ,私はこの点についても少し楽観視をしていて,いずれ日本の人口が減り,学生の数が減るについて,司法試験の合格者数も減っていくと思いますし,弁護士の収入が半分程度になってしまう可能性も低いと思います。

弁護士の就職難が問題になった時も,国もさすがにまずいと思ったのか,司法試験の合格者数を絞っていますし,今後,仮にまた弁護士に就職難が問題になるようなことがあれば,司法試験の合格者数を減らす方向の議論が出てくると思います。

また,日本の人口が減るということは,企業においても労働力が減るということですので,元弁護士等,ある程度専門的な知識を持った人材を今よりも多く採用するという場面が出てくるかも知れません。

現在も,一部の自治体が弁護士を公務員として採用しようと募集をしていますが,なかなか弁護士からの応募が無くて弁護士を採用できないでいる,という状況があるようです。

したがって,弁護士の数が増え,日本の人口が減るにつれて,本来の弁護士業務以外の仕事をする弁護士(又は元弁護士)が増えていったり,司法試験の合格者数が減り,受給バランスがそれほど大きくは崩れないのではないかと思っています。

また,私の現在の収入を前提にすると,仮に収入が半分になったとしても食べていけないことはないかと思います。

個人的には,仮に弁護士としての仕事が大幅に減るようなことがあれば,人生1回しかない訳ですし,他にもやってみたい仕事がたくさんあるので,他の仕事に挑戦してみたいと思っています。




(3)弁護士の資格を取ることはキャリアの自由度が増えるということ


最後に。

質問者された方は「今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。」という不安を抱えて,弁護士を目指されているということですが,私も公務員をしていた時,同じような不安を抱えていました。

今振り返ってみると,あの頃の自分の視野は狭かったなと思います。

司法試験に合格した今になって思うことは「人生は思ったよりも自由なんだ」ということです。

司法試験に合格した後のキャリアとしては,一般的には弁護士・裁判官・検察官等になる人が多いですが,司法試験に合格して法律の基本的な知識を身につけることで,仕事の幅はそれ以外の職業,例えば経営者,政治家,経営コンサルト,企業や官公庁のインハウス等,色々な職業に広がっていきます。

司法試験に合格すると,仮に他の仕事に挑戦をして失敗をしたとしても,また弁護士に戻れって頑張って働けば食べられないということはないだろう,という安心感があります。

なので,司法試験に合格するということは,弁護士という仕事を目指すというだけでなく,人生の選択肢を広げるという観点でも挑戦をする価値はあるかと思います。


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以下の質問をいただきましたので回答したいと思います。

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いつも記事を見ているものです。
私は4月から市役所の職員になるのですが管理人様の記事で弁護士もいいなと思いました。
そこで、前職が市役所の弁護士は就職は不利なのでしょうか?
ぜひお願いします。
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結論から言うと,

・基本的に元公務員(市役所職員)だからと言って,それだけで弁護士としての就職が不利になる,ということはない

・ただし弁護士になる年齢が遅くなると,一部の大手事務所への就職は難しくなることがある

というのが私の見解です。


私が就職活動をしていた時期はいわゆる就職氷河期で,司法修習が終わる直前になっても就職が決まらないという修習生も結構の割合でいました。

しかし,私は幸いにも何件かの事務所からお声をかけていただき,かなり早い段階で内定をいただくことができました。

内定をもらった後も,修習生の同期から「君が元公務員だという話を聞いて,会ってみたいと言っている弁護士がいる。」という話をもらったりしていましたので,元公務員を採用したいというニーズは一定割合であるのだと思います。

たとえば,顧問先に自治体を抱えている法律事務所であれば「うちの事務所には元公務員がいるので内情も分かっています。」というアピールにもなると思いますし,自治体から相談を受けた時に事務所に公務員の内情を分かっている弁護士がいたほうが便利,ということもあると思います。

また,私の知り合いの弁護士の中には「社会経験のない新人は,ビジネスマナーのイロハから教えなければいけないので面倒。」「社会経験があってビジネスマナー等がしっかりしている人のほうが,即戦力になるので,できれば元社会人を採用したい。」という人もいます。

そのため,元公務員ということが,弁護士としての就職において有利に働く場面はあると思います。


他方,大手の事務所では,年齢の若い人を優先して採用するという事務所もあります。

弁護士の数が多い事務所の場合,30代ないし40代の弁護士を採用すると,20代の先輩弁護士が30代ないし40代の後輩弁護士を部下として使うことになって,やりづらい,という配慮があるのだと思います。

そのため,「元公務員であるか」という問題とは別に,社会人経験を経たために弁護士になる年齢が遅くなると,一部の大手事務所への就職は難しくなると思います。



弁護士業界は数年前までは買手市場で就職状況も厳しかったですが,去年あたりからは売手市場に転じていて,修習生の話を聞いていても,さほど苦労することなく就職先が決まっているようです。

したがって,就職先に強いこだわりがある訳でなければ,公務員から弁護士に転職をしたとしても,就職活動で困るということはないと思います。

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