2019年09月

2019年09月24日


前回お答えした点について,再度質問がありましたので,改めて私見についてお答えしたいと思います。

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改正民法の過去問の練習はどうやるのが理想ですか?
改正前と後では回答が違いやりようがないと思いませんか?
これからでてくる問題集ではなく、過去の試験問題のことです。
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ご回答ありがとうございます。
質問が悪かったようですが、論文の過去の試験問題を解く時の事でした。
昔のは当然、その時の法制度ですから、今からと解くと答えが違う可能性があると思うのです。
こう言う時はどうしますか。
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えんしゅう本は改正民法に対応しているようです。
しかし、試験にでた過去問は当時の法体系ですから、今では使えない回答もあると思うのです。
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論文式試験の過去問については,民法改正後に論述の仕方等が変わってくるものがあるのはそのとおりだと思います。

しかし,「やりようがない」といこということはありませんし,後述のとおり論文試験の過去問は,知識をインプットするためにやるというよりも,本試験のクセを把握した上で,本試験を解く技術を身につけるために行うためのものなので,やり方さえ気をつければ特に問題はないと思います。


個人的には,今回の民法改正が論文式試験の過去問の演習について与える影響については,それ程心配する必要はない,と思いますので,以下理由を述べています。


  • ●論文式試験では条文をきちんと読むことが大事であること

1つ目の理由ですが,,論文式試験では六法で条文を見ることができますので,論文式試験の過去問の演習をする際に,改正後の民法の条文を使っていれば,「改正点に気づかない」ということはないはずです。
これは本試験でも同様です。

★新しい民法の全条文: 債権法・成年年齢・相続法・特別養子改正



また,論文式試験では,短答式試験と異なり,1回の試験で関係する条文数は少ないですし,論文式試験で問われる可能性の高い条文の数も限られています。

そして,論文式試験の過去問を解いた後に,その問題に関係する条文(1年度あたり10個あるかないかくらいだと思います)について,改正点をまとめた本で改正があるかどうかと,改正がある場合にどのような改正があったかをチェックすれば,良いと思います。

改正点があった条文については,以下のような改正点をまとめた本で改正内容について読んで,本試験で同じ条文が問われた時に対応できるようにしておけば問題ありません。


★一問一答 民法(債権関係)改正 (一問一答シリーズ)

★Before/After 民法改正

したがって,短答式試験の過去問演習とは異なり,論文式試験の過去問演習に関しては,特にそれほど問題はないと思います。



実際,私が受験生の時,新司法試験の過去問の数が限られていたため,旧司法試験の問題を解いていたことがあるのですが,その際にも現在の条文とは処理が異なるものが出てくるということはありました。

しかし,改正後の条文(六法等)を使っていれば,改正点に気づかずにスルーしてしまうということはありませんし,改正後の条文の解説や基本書等を読めば,問題の処理の仕方は分かります。

民法に限らず,他の科目でも法改正や判例変更は毎年のようにありますのが,上記のように対応すれば特に問題はないはずです。

そのため,少なくとも私は論文試験の過去問で問われた条文に改正があったことで,困ってしまった,ということはなかったです。



  • ●今回の民法改正は,過去の判例の解釈や学説を条文化して整理したものが多いこと

今回の民法改正に関して言えば,論文式試験で問われる「論点」という箇所について,大きく考え方が変わったという部分はそれほど多い訳ではなく,過去の判例の解釈や学説を条文化して整理したものが多いです。

(民法の改正点は,先に挙げたような民法改正点に関する本を読むのが良いと思いますが,辰巳法律研究所のウェブページと,法務省民事局の「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」がコンパクトで分かりやすいので,改正点をまだ把握していないという場合には,これらの資料にも目をとおして概略だけでも把握しておくと良いと思います。)


そのため,過去の試験では論点について厚く論述が必要だった部分が,改正後には端的に条文を当てはめて処理すれば足りるという箇所が多くなりますので,論文式試験に関して言えば,問題を解く際にきちんと条文を読んで事案に当てはめるということを意識すれば,それ程苦労することはないと思います。

さらに,民法は短答式試験対策において細かい知識のインプットもすると思いますので,短答式試験の対策をしておけば,短答式試験の勉強で得た知識を論文式試験で活用することができます。


なお,個人的に,今回の民法の改正点のうち,論文式試験対策として特に準備をしておいたほうが良いと思うのは,売買における瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わり,従来の契約責任説ベース的な考え方になった点です。

受験生であれば,法定責任説と契約責任説の双方を勉強していると思いますが,この契約不適合責任になったことで,細かい処理が従来と変わってきますので,短答式試験でも論文式試験でも問われる可能性はあると思いますし,準備をしておかないと本番で出てきた時に慌てる可能性があります。

ですから,契約不適合責任についてはきちんと準備しておいたほうが良いと思いますし,過去問演習でこの論点について準備をすることは出来ません。

ただし,契約不適合責任については予備校の答練や模試をやればおそらく1回は出題されると思いますので,心配であれば,過去問の演習とは別に予備校の答練や模試を受けておけば良いと思います。



  • ●過去問演習は知識をインプットするよりも本試験を解く技術を身につける場として活用すべきであること

それから,基本的に論文式試験の過去問は,知識をインプットするためにやるというよりも,本試験を解くための技術を身につけるために行うものだと私は思っています。

もちろん,論文式試験の過去問を解いていて,知識や理解に漏れがあった場合には徹底的に復習をしておくことは大事です。

しかし,論文式試験の過去問を解く主な目的は,本試験のクセや傾向を把握したり,「自分の知らない未知の問題が出てきてパニックになってしまい答案が書けなかった」というようなことが無いよう,本試験を解くための技術を身につけるために行うというのが第一次的な目的だと思います。

合格レベルの受験生が「論文式試験では,毎年同じことが聞かれている」と言うことがありますが,これは論文式試験では問われる論点は毎年違ったとしても,法改正があったとしても,同じような観点・視点から,似たような理解の仕方が問われることが多いからです。

そのため,仮に改正前の民法による過去問であっても,本試験に必要な技術や考え方を身につけるという目的で過去問演習に取り組む上では,法改正の有無はそれ程気にする必要はないと思います。



以上のとおり,個人的には,今回の民法改正が論文式試験の過去問の演習について与える影響については,それ程心配する必要はない,と思っています。


相談者さんが,「やりようがない」と思っているとすれば,おそらく今回の民法改正の内容をまだ十分に把握していないからではないかとも思いますので,先程紹介した本やウェブページなどでまず民法の改正点を頭の中に(最初は完璧に入れなくてもよいので)整理しておくと良いと思います。


なお,新しい「えんしゅう本」について「試験にでた過去問は当時の法体系ですから、今では使えない回答もあると思うのです」との点ですが,辰巳法律研究所のウェブページには「平成29年民法(債権法)改正,平成30年民法(相続法)改正に対応させました」と書いてありますので,「今では使えない回答」ということはないと思います。

ただし,先程述べたとおり,契約不適合責任の論点のように,従来の判例等と異なる処理が必要となる部分については,過去問だけでは対応できませんので,短答式試験の勉強や,予備校の答練・模試などを通じて準備をしておく必要があると思います。

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Comments(1) |  │   (13:19)

2019年09月12日

質問があったのでお答えしたいと思います。

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改正民法の過去問の練習はどうやるのが理想ですか?
改正前と後では回答が違いやりようがないと思いませんか?
これからでてくる問題集ではなく、過去の試験問題のことです。
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以前は民法改正に対応した短答式の過去問集はなかったのですが,今は東京リーガルマインド (LEC)から「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集 民法」という民法改正に対応した問題集が出版されているので,そちらを使うのが良いと思います。

★ISBN-10: 4844923099


この問題集では,過去問の解答・解説を改正後の民法に合わせていますので,来年の司法試験対策として問題無く使えるはずです。

その他,過去問集ではありませんが,民法改正に対応した短答式の問題集として法学検定試験委員会の「債権法改正対応 民法択一問題集」や,資格スクエアのアプリなどがあります。

●債権法改正対応 民法択一問題集


●資格スクエア



「債権法改正対応 民法択一問題集」や資格スクエアのアプリは易しい問題が多いので,初学者向けです。



その他,改正民法対策については,「●司法試験における民法改正への対策について」という記事と,「●司法試験・予備試験における民法改正への対策について(その2)」という記事にも書いていますので,そちらも参考にしてみてください。



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Comments(3) |  │   (14:30)

ご質問がありましたので回答したいと思います。
(最近かなり忙しくて,返事が遅くなってしまいすみません。)

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お世話になっております。

前に就職活動についてお尋ねしたTKです。
その節は本当にありがとうございました。
現在も就職活動を頑張っています。
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質問ばかりで大変申し訳ないとは思ったのですが、どうしても先生からお話をお伺いしたく、この前とは別の件についてコメントをさせていただきました。

それは、司法修習についてです。
(合格もしていない段階で、このようなことをお尋ねするべきではないのかもしれませんが。。)

仮に合格していた場合、私は、先生と同じように、修習のどれであっても全力で取り組みたいと思いますし、起案もよい成績をとりたいと思っています。

それは、私が弁護士だけではなく、検察官にも関心を持っていることが理由としてあります。
ただ、それだけではなく、修習という貴重な経験をすることができるのに、全力を出さないのはもったいないとも思うからです。
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そこで、お尋ねしたいのですが、合格発表前もしくは修習前に、できることはあるのでしょうか。
(修習に行けば、私よりすごい方たちが沢山いることは重々承知ですが、そういう方達に絶対に負けたくありません。)

先生のご経験から、今の段階でこの本を読んでおく方がいい、この分野は徹底的に復習しておく方がいい等というものがあれば是非教えていただけないでしょうか。

お忙しい中、申し訳ありません。
お時間があるときで構いませんので、ご回答いただけないでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。

TK
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質問者さんは検察官を目指されているということで,司法修習で出来るだけ良い成績と取るために司法修習開始前から勉強をしておきたいというお話だと思います。

司法修習の前に勉強しておいたほうが良いことや,私が行った勉強についてお話したいと思います。




  • ○1 民法・刑法・刑事訴訟法の復習について

司法修習では,民事裁判,民事弁護,刑事裁判,刑事弁護,検察という5科目について勉強をしていくことになります。

そして,この司法修習で主に必要となる知識は,民法,刑法(特に共犯関係と各論),刑事訴訟法です。

憲法,行政法,商法,民事訴訟法等はほとんど使いません。

(私が修習生の時に,一度だけ起案で会社法の要件事実の理解が必要になる問題が出題されたことがありましたが,他の修習生もみんな分からなかったようで,知らなくても何とかなりました。)



民法,刑法は司法試験の受験勉強である程度は勉強していると思いますが,民法,刑法の知識に穴があると司法修習の起案や二回試験で足元をすくわれる可能性があります。

そこで,民法や刑法の知識に不安がある人は,今のうちに復習をしておくと良いです。


民法については,できるだけまんべんなく知識をインプットしておくと良いでしょう。

肢別本が苦にならない人であれば,寝っ転がりながらでも良いので肢別本をぐるぐると回しても良いと思いますし,基本書が好きな人は基本書を読んでも良いと思います。


刑法に関しては特に刑法各論の構成要件の定義を出来るだけ正確に覚えておく必要があるので,刑法各論の主要な罪について,定義や規範に不安がある人は復習をしておきましょう。

また,共同正犯の処理について,司法修習では実務と同じ説を使ったほうが起案が書きやすいですし,点数も安定します。

実務で使われている共同正犯の処理の仕方は,刑法講義案や,司法修習前に配布される「検察終局起案の考え方」という白表紙(教科書)に書いてありますので,司法試験で実務と違う学説で共同正犯を処理していた人は,今のうちに実務における共同正犯の処理の仕方を覚えておくと良いと思います。


その他,司法修習では刑事訴訟法の知識も必要となります。

刑事訴訟法に関しては司法修習に入った後,検察修習等で知識を再インプットする機会があると思いますが,刑事訴訟法に苦手意識がある人は今のうちに復習をしておいたほうが良いと思います。




  • ○2 要件事実の復習について

民事裁判では当然要件事実の知識が必要になります。

「新問題研究要件事実」は白表紙として配布されると思いますが,司法試験受験生であれば既に持っていると思いますので,「新問題研究要件事実」に書かれている内容について理解に穴がある場合には,徹底的に復習をしておきましょう。

★新問題研究要件事実


「新問題研究要件事実」を終えたら,自分が好きな要件事実の本を使えば良いと思いますが,私は色々と手を出したものの,最終的に「紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造」に落ち着きました。

★紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造

この「紛争類型別の要件事実」という本は薄くて分かりにくいのですが(私も昔はこの本が大嫌いでした),マスターをすると短時間で要件事実を復習できる強力なツールになります。

「紛争類型別の要件事実」を読みつつ,分からないところは「要件事実マニュアル」などで該当箇所を読んで理解を深めていくという使い方をしていくと,あれこれと他の本に手を出すよりも短時間で要件事実の基本をマスター出来ると思います。

★要件事実マニュアル


私は二回試験の直前も要件事実については「新問題研究要件事実」と「紛争類型別の要件事実」を復習しただけでしたが,民事裁判も民事弁護も「優」だったので,時間に余裕がない人はあれこれと手を出すよりも「新問題研究要件事実」と「紛争類型別の要件事実」をマスターしたほうが良いのではないかと思います。


「新問題研究要件事実」や「紛争類型別の要件事実」の内容が薄すぎて辛いという人は岡口裁判官の「要件事実入門」や「要件事実論30講」がおすすめです。

★ISBN-10: 4908621071

★ISBN-10: 4335357508





  • ○3 司法修習前に読んでおいたほうが良い参考書等(民事系)

司法修習では,民事系,刑事系ともに事実認定に関する訓練をしていくことになりますので,薄い本でも構いませんので,事実認定に関する本を民事系,刑事系,それぞれ最低1冊ずつ読んでおくと良いと思います。


私が司法修習前に読んだ本の1つ「ステップアップ民事事実認定」という本です。

★ステップアップ民事事実認定

「ステップアップ民事事実認定」は今では絶版になっているようですが,まだAmazonなどで中古本が出回っています。薄めの本で短時間で読めるので時間をかけたくない人にはお勧めです。


民事系の事実認定は,司法試験の勉強ではほとんどやっていないはずなので,余裕があれば何冊か読んでみると良いと思います。

私は「完全講義 民事裁判実務の基礎」という本も読みました。

★完全講義 民事裁判実務の基礎

こちらは最近になって改訂もされているようですし,新しい本を使いたい人は,この「完全講義 民事裁判実務の基礎」を読んでみると良いと思います。



その他,私は司法修習に入ってから「民事訴訟における事実認定」という本も買って読みました。

★民事訴訟における事実認定

この本も勉強になるのでおすすめです。

時間がない人は「参考裁判例」という項目だけでも読んでおくと,実務的な感覚が掴めてくると思います。




  • ○4 司法修習前に読んでおいたほうが良い参考書等(刑事系)

刑事系の事実認定の本としては石井一正先生の「刑事事実認定入門」が薄くて読みやすくておすすめです。

★刑事事実認定入門


その他,白表紙として配られる「検察終局処分起案の考え方」という本を早めにマスターしておくことを強くおすすめします。

司法修習生が最初につまずくことが多いのが「起案の書き方がよく分からない」という壁です。

司法修習の刑事系科目は,刑事裁判,刑事弁護,検察の3科目ですが,この3科目の中で起案の書き方がカッチリと決まっていてマスターしやすいのが「検察」です。

そこで,最初に「検察」について起案の書き方をマスターしておくと,他の科目の起案に応用することができ,全体の科目の起案の書き方をマスターしやすくなります。

検察科目については「検察終局処分起案の考え方」という本をマスターした上で,刑法・刑事訴訟法の復習をきちんとし,起案のたびに何度も復習をしておけば安定してAを取れるようになります。

そして,刑事裁判と刑事弁護についても,「検察終局処分起案の考え方」の手法や考え方を土台にしつつ,刑事裁判と刑事弁護の起案の書き方に応用すると書きやすいです。

なので,早めに「検察終局処分起案の考え方」を何度も読み込み,検察科目の書き方を頭に叩き込んでおけば,他の修習生と差を付けやすくなると思います。


余談ですが起案の書き方をマスターするコツの1つは,起案の際の項目とその順番をきちんと暗記しておくことです。

たとえば,検察科目の起案の順番は(私が修習生の時と変わっていなければ)以下のとおりです。

――――――――――――――――――――――――――
第1 公訴事実等
1 公訴事実
2 罪名及び罰条
第2 求刑

第1 ○○の犯人性
1 間接『事実』
(1)被害品の近接所持
ア 認定した間接事実
イ 認定根拠
ウ 意味づけ
2 直接『証拠』
(1)直接証拠となる証拠
(2)直接証拠であることの理由
(3)信用性
3 共犯者A2の供述
(1)認否
(2)信用性
4 被疑者A1の供述
(1)認否
(2)信用性
5 結論
第2 A2の犯人性
第3 犯罪の成否等
1 構成要件・客観面
(1)構成要件要素
(2)○○(罪名が恐喝であれば「恐喝行為」)
ア 意義
イ 事実認定
(ア)積極証拠に基づく事実認定
(イ)消極証拠の信用性
ⅰ 弁解内容 or 供述内容(A以外の場合)
ⅱ 信用性
ウ 当てはめ、法的評価
2 構成要件・主観面
(1)A1について
ア 故意
イ 不法領得の意思
(2)A2について
3 共犯性
(1)共同実行の事実
(2)共同実行の意思
ア 犯意の相互認識
(ア)事実認定
(イ)消極証拠の信用性
(ウ)法的評価
イ 正犯意思
(ア)事実認定
(イ)消極証拠の信用性
(ウ)法的評価
(ウ 共同実行の意思に基づく犯罪行為・結果等)
4 違法性、責任、訴訟条件等
5 罪数関係
6 その他の犯罪の成否
第4 情状
1 A両名に関する事情
(1)不利な事情
(2)有利な事情
2 A1に関する事情
(1)不利な事情
(2)有利な事情
3 A2に関する事情
(1)不利な事情
(2)有利な事情
――――――――――――――――――――――――――

問題によっては書かなくてよい項目もありますが,基本的に検察の起案はこの順番で書くことになります(私が修習生の時と指導内容が変わっている可能性がありますので念のため,「検察終局処分起案の考え方」で確認をしておいてください。)。

この順番をまず頭に叩き込んでおけば,起案の際に「書くべき事項を書かなかった」という失敗を減らすことができます。

そして,検察以外の科目についても,白表紙等を読んで,起案で論じるべき項目とその順序を整理して,頭に叩き込んでおく良いです。







  • ○5 白表紙が届いたら白表紙を読む

司法修習に申し込みをしてしばらくすると最高裁から「白表紙」という参考書が届きます。

基本的に白表紙には起案や実務に必要な知識が詰め込まれていますので,白表紙が届いたら,可能な範囲で白表紙を読んでおくと良いです。

白表紙の中には辞書的な役割のものもありますので(民事判決起案の手引の別冊事実摘示記載例集,刑事弁護実務の別冊書式編など),そういったものは流し読みでOKです。



  • ○6 先輩や同級生からデータをもらう

司法修習が始まる前,あるいは司法修習が始まった頃から,司法修習生の間で先輩が作ったデータやノートが出回ると思います。

要件事実をコンパクトにまとめたノートだったり,事実認定の注意点をまとめたノートだったり,二回試験で不合格になった実例をまとめた資料だったりします。

この修習生の間で出回るデータの中には,使えるものもあれば,使えないものもあります。

先輩のノートが欲しい場合には,司法修習が始まり次第,早めに友達を作って,わらしべ長者的手法(自分が持っているのをあげるから,君のもちょうだいという手法)で先輩のデータを集めて,使えそうなものを整理しておくと良いと思います。

なお,私が修習生の時は,過去の起案のデータをもらうことも事実上黙認されていたのですが(むしろ「過去の起案のデータをもらって起案の練習をしなさい」と言う教官もいました),最近の司法修習生に聞くと現在は起案データのやり取りは強く禁止されているらしいので,起案データのやり取りは止めたほうが良いと思います。




  • ○7 司法修習の際に手元にあると便利な参考書等

私が司法修習生の時に(白表紙等以外で)持って置いて便利だった本をいくつか紹介します。


★ 要件事実マニュアル


まず要件事実マニュアルは便利なので持っておいたほうが良いです。

要件事実を素早く調べることができ,解説も正確(岡口裁判官が書いている)かつ詳細なので便利です。

全5巻ありますが,司法修習で主に必要になるのは1巻と2巻ですので,とりあえず1巻と2巻だけ用意しておくと良いと思います。



★条解刑法

条解刑法は,刑法の「辞書」です。

司法修習に入ると基本的に実務的な処理に従う必要があり,刑法各論の構成要件の定義も正確に覚える必要があります。

基本書だけだと何が実務的な考え方なのか分かりにくいですし,構成要件の定義を探すのも面倒だったり書いていなかったりすることがあります。

条解刑法は基本的に実務的な考え方に沿って記載されており,構成要件の定義も正確に整理されて書かれているので,必須とまでは言いませんが,手元にあると便利です。

値段がちょっと高めなので,合格祝いとして買ってもらうという人もいます。

私はお金を節約したかったので旧版を中古で買いました。

法律事務所に就職すればたぶん新版が置いてあると思いますので,1年使うだけと考えれば中古でも良いと思います。





★条解刑事訴訟法

条解刑事訴訟法は,刑事訴訟法の「辞書」です。

司法修習の刑事系では,刑事訴訟法の細かい実務的な知識が聞かれることがあるので,課題をこなしたりする際に,手元に条解刑事訴訟法があると便利です。

ただ条解刑法よりもさらに高いんですよね。2万て・・・。

条解刑法と条解刑事訴訟法どちらを買うか迷ったら,条解刑法のほうをおすすめします。

お金を節約したい人は,条解刑法同様中古でも良いと思いますし,大学図書館が近くにあって図書館に行くのが苦にならない人であれば調べ物をする都度図書館の本を使うという形でも良いと思います。





★実例刑事訴訟法

司法修習の出される課題の中で,この「実例刑事訴訟法」が参考資料として挙げられることがあると思います(少なくとも私が修習生の時はそうでした。)。

そして,課題が出て司法研修所の図書館に「実例刑事訴訟法」を借りに行くと既に「貸出中」になっていて,借りた人が全然返さないので「実例刑事訴訟法」を見られなくて困る,なんてことが何度かありました。

辞書的な本で,実務に入ってからも私は正直あんまり使っていないので,買うのはもったいない感じもしますが,司法修習に入ってから様子を見てみて,必要性を感じたら買ってみても良いと思います。(私は結局買いました。)




★刑事事実認定重要判決50選

こちらも「あれば便利な本」で必須という訳ではないです。

この本も司法修習中の講義の中で参考資料として挙げられることありましたが,持っている修習生の数が多いのか,図書館で借りられずに困ったということは少なかったように記憶しています。

こちらも司法修習に入ってから様子を見てみて,必要性を感じたら買ってみても良いと思います。(私はこれも結局買いました。)



★犯罪事実記載の実務

公訴事実の記載例がひたすら記載されているという本。通称「ピンク本」。

こちらもマストではありませんが,検察修習などの時に持っていると便利です。

検察官の机の上には必ずといって良いほどこのピンクの本が置かれていますし,弁護士も告訴状を作ったりするときに使いますので,買って損はしないとは思います。

就職先の事務所に置いている可能性もありますが。(私が就職した事務所にはありました。)

こちらも司法修習に入ってから様子を見てみて,必要性を感じたら買ってみれば良いと思います。




★書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究

この「書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究」は司法修習の同級生に「この本買っておいたほうが良いらしいから一緒に注文しておくよ」と言われて,半ば強制的に購入させられた本です。

ネットで買うことが出来ない本で同級生がどこに注文したのかもよく分からないのですが,司法研修所の売店で売っていたような気がします(たぶん)。


結果,便利でした。

この本は,和解条項の例がひたすら記載されているというこれまたマニアックな本なのですが,司法修習の民事弁護で和解条項に関する講義や起案があるんですよね(今もあるか分かりませんが)。

その時にこの本が活躍しました。

弁護士になった後も,裁判官から「じゃあ次回期日までの原告側から和解案出してください」なんて言われることが頻繁にあるので,今でもヘビーユースしてます。

和解条項に関する本は他にもありますし,こちらもすぐに買う必要ないと思いますが,司法修習に入ってから様子を見てみて,必要性を感じたら買ってみても良いと思います。


★刑事弁護ビギナーズ 

「刑事弁護ビギナーズ」は刑事弁護のマニュアル本です。書式のワードデータも付いてきます。

依頼者の前では絶対に使いたくないタイトルですが,刑事弁護において何をすれば良いのか順序立てて整理されていて分かりやすいです。

司法修習先の若手弁護士がこの「刑事弁護ビギナーズ」を使いながら刑事弁護をしていて,便利そうだったので買いました。

司法修習中は模擬裁判などの時に使えると思いますし,弁護士になった後も使える本です。

似たような本に「少年弁護ビギナーズ」という本があるので,買う時には間違わないように注意してください。「少年弁護ビギナーズ」も便利な本ですが,修習生の段階では不要だと思います。



他にも買った本はいろいろあるのですが,個人的に司法修習又は二回試験に役だった本だけ紹介しました。

以上,司法修習開始前の勉強・準備について,お話をさせていただきました。

参考になれば幸いです。



なお,質問者さんは検察官「も」考えているということですが,私の同期を見ていると,検察官に任官が決まった人は「どうしても検察官になりたいんだ!」というやる気がある人が多かったように思います。

検察教官によると思いますが,「検察官も考えているんです」という人と「検察官にどうじでもなりだいんでず!!!」という2人がいた場合,後者を推薦したくなるという人が多いと思います。

なので,検察官を目指しているのであれば,自分がどうして検察官になりたいのかを考えて,志望動機等についてきちんと熱く説明できるようにしておいたほうが良いと思います。

こんなことを言うと検察官の方に怒られるかも知れませんが,検察官は裁判官ほど成績が良くなくても任官を得られるケースはあると思います。

起案で少し失敗したものの任官できた人は,やっぱり検察官になりたいという志望動機がはっきりしていて,やる気のある人でした。

検察官を希望しているのであれば,勉強や起案で頑張るのはもちろんですが,検察教官には「検察官になりたい」という気持ちをきちんとアピールしておくと良いと思います。




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