刑事訴訟法の勉強方法とおすすめの刑事訴訟法の基本書や参考書など


遅くなりましたが,今回は刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書などについてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の特徴


「刑事訴訟法」は,刑事手続(犯罪の捜査,処分,刑事訴訟の手続など)について定めた法律です。

「刑事訴訟法」と「民事訴訟法」は名前が似ているので,初学者の方は似たような科目だろうと思われるかも知れませんが,両者の性質はかなり違います。

「刑事訴訟法は苦手だけど民事訴訟法は得意」という受験生もいますし,「民事訴訟法は苦手だけど刑事訴訟法は得意」という受験生もいますので,同じ「訴訟法」という名前は付いていますが,得意不得意が分かれやすい科目です。

ただし,司法試験の受験科目の中でも,刑事訴訟法(その他,刑法,憲法)という刑事系科目は,少ない勉強時間で高得点を取れる可能性が高い科目ですので,「短期間」で司法試験に合格したい人にとっては,この刑事訴訟法という科目を素早く仕上げて得意科目に出来れば,あとは勉強時間の必要な民事系さえ守り切れれば意外とあっさりと司法試験に合格することも可能になります。


私も司法試験の勉強時間は少ないほうですが,少ない勉強時間で司法試験に合格出来たのも,刑事訴訟法,刑法,憲法という,比較的短期間で仕上げることが可能な科目で安定して高得点が取れるようになったから,という部分が大きいです。


なぜ,刑事訴訟法は短期間で高得点を取れる可能性があるかというと,それは法律知識だけでなく「事実の評価」という常識論で書くことができる部分に点が多く振られているからです(これは刑法,憲法も共通です)。


たとえば,放火事件が起きた現場で犯人を捕まえるために,ビデオで録画をするという捜査が適法かという問題が出た時に,その捜査にどのくらいの必要性があるのか,ということを論じる必要があります。

そして,たとえば問題文に

「過去に放火事件が起きた現場にも,今回ビデオ録画をする現場にも管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられている」
「現場は住宅密集地で道路も狭い」
「現場は人通りが少ない」
「これまでの犯行時刻はいずれも深夜である」

というような事情が書かれていた場合,

「本件でビデオ録画が行われた現場は,過去に放火事件が起きた現場と同様に管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられているという共通点があり,犯人が当該現場において犯行に及ぶ可能性は高い。また,現場は住宅密集地であり放火事件が発生すれば延焼によって大きな被害が発生する可能性があるだけでなく,当該現場は人通りが少なく,これまでの犯行時刻がいずれも深夜であったことを考慮すると,警察官が現場に張り込んで捜査を行うことは困難である。したがって,本件現場においてビデオ録画の方法を用いて捜査を行う必要性が高い。」

みたいな答案を書くことになります。

上記の答案の箇所は,事実を結論につなげるために「評価」する部分になるのですが,上記の例を見てもらえれば分かるとおり,法律的な知識がなくても書ける部分で,「名探偵コナン」とか「金田一少年の事件簿」のような推理漫画に出てきそうな発想が役立つ場面です。

そして,この法律的な知識がなくても書ける「評価」の部分は,論文式の問題をこなしたり,過去問を解いて慣れていけば,比較的短期間で高得点を稼げる部分になる部分です。


そのため,刑事訴訟法の論文式試験において短期間で高得点を取れるようになるためには

・基本的な論点知識を正確にインプットする(量はそれほど多くない)

・論文式の問題集や過去問をこなして「事実の評価」に慣れる

ということが大事です。


この点を踏まえた上で,刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書についてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の入門書を読もう


刑事訴訟法の入門書としては,初学者の方には他の科目と同様「伊藤真の刑事訴訟法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521638 

内容は基本中の基本のみ記載されていますが,コンパクトで分かりやすいので,読むのに挫折するということはまずないはずです。

図書館や喫茶店に2~3時間程籠もれば読み切ることができるでしょう。



他に最近出てきた入門書としては「入門刑事手続法」も良書だと思います。

●ISBN-10: 4641139245

ただし,「入門」という名前が付いてますが,入門書というよりもコンパクトな基本書に近いですね。

「伊藤真の刑事訴訟法入門」と同じ感覚で読み進めようとすると結構しんどいと思いますので,初学者の方は無理して読む必要はないと思います。






■刑事訴訟法の論文問題集を読もう


入門書を読んだら早めに刑事訴訟法の論文問題集を読むと良いです。



読む論文問題集としては他の科目と同様「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 433530353X

●ISBN-10: 4335303637

「試験対策問題集 司法試験論文」と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の使い分けについては「●論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」を参照してください。

個人的には,「試験対策問題集 司法試験論文」のほうをおすすめします。

論文式試験に必要な法律知識としては,「試験対策問題集 司法試験論文」の「ケース」以外の部分をマスターすれば,9割は完成といって過言ではないと思います。

あとは答練などを利用して最新判例を押さえて,過去問をこなせばほぼ完璧でしょう。


実際,司法試験の受験生を見ていると,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ているような基本的な論点を落としている人も沢山います。

司法試験の受験生の刑事訴訟法のレベルはそれ程高くないと思いますので,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ている論点さえしっかり押さえておけば,合格者平均を超える法律知識はインプット出来ると思います。

実際,私も法科大学院に入った1年目の夏休みに,ひたすら刑事訴訟法と刑法の「試験対策問題集 司法試験論文」を繰り返したのですが,刑事訴訟法と刑法の成績が一気に上がり,刑事訴訟法に関しては学年1位になりました。

もちろん成績があがったのは法科大学院の授業の復習をやったからという面もありますが,基本的な論文式試験の答案を書けるようになったことで,一気に実力が付いたことを実感できました。


周りの受験生を見ていると「試験対策問題集司法試験論文よりも遙かに問題数の多い(100問以上)問題集をこなしている」という人もいるのですが,そういった人がきちんと基本問題の答案を書けるようなっているかというと,そうでもないんですよね。

普通の人間は,100問以上の答案の書き方を覚えるなんてなかなか出来ません。

せいぜい,1科目30問~50問程度が限度でしょう。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題は「ケース」を除くと約50問,Aランクの問題に絞ると30問程度ですので,答案の書き方を覚えるという点ではちょうど良い量だと思います。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題と参考答案を何度か読んだら,実際に自分で書いてみると良いです。

最初のうちは思うように書けないと思いますが,繰り返すうちに参考答案と似たような答案が書けるようになってくるはずです。

最終的に「規範」や「定義」の部分については,正確に書けるようにしましょう。




論文式試験の問題集としては他にも色々ありますが,個人的には「試験対策問題集 司法試験論文」の基本問題(ケース以外の部分)をやって,後述の答練,過去問をやれば問題演習としては十分だと思います。




■おすすめの刑事訴訟法の基本書と予備校本


刑事訴訟法の基本書は良書が多いです。

私が受験生時代にメインで使っていたのが有斐閣アルマの「刑事訴訟法」です。

最初にお話したとおり,司法試験・予備試験の刑事訴訟法の論文式試験で要求される法律的知識はそれほど多くはないので,コンパクトな基本書を使ったほうが勉強に無駄が生じにくく,効率的だと思います。

内容も実務寄りで,司法試験の基本書として使いづらいということもありません。

●ISBN-10: 4641220506

ただ,この本は私が受験生の時にある事件がきっかけで,一時出版停止になってしまったことがあり,それ以来ちょっと人気がないんですよね。



「アルマはちょっと使いたくない」という人は,最近の基本書の中ではLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」が比較的使いやすいと思います。

個人的にはもうちょっとコンパクトなほうが好みですが,数ある刑事訴訟法の基本書の中では,このLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」はコンパクトなほうで,読みやすいと思います。

●ISBN-10: 4641179336



最近の受験生の中には酒巻匡先生の「刑事訴訟法」という基本書を使っている人も少なくないと思います。

●ISBN-10: 4641139067

酒巻匡先生は以前に法学教室で「刑事手続法を学ぶ」という連載を担当されていて,その連載をもとに作られたと言われているのがこの「刑事訴訟法」という基本書です。

法科大学院の授業でも酒巻匡先生の文献が参考資料として指定されることが多く,受験生の間では神様みたいな存在なのですが,酒巻匡先生の「刑事訴訟法」は司法試験に合格するという観点から言えば,オーバースペックかなと思います。

ただ,刑事訴訟法の問題を解いたり,他の基本書を読んでいて,分からないことやスッキリしないことがあった場合に,酒巻匡先生の本を調べると鋭い切れ味の解説があることも多いので,ある程度勉強が進んできた後に辞書として使う分には理解が深り,知識の定着にも役立って良いと思います。




その他,基本書ではないのですが,手元にあると便利なのが「条解刑事訴訟法」。

●ISBN-10: 4335356544

1300頁を超え価格も約2万円とまさに「条解」の名にふさわしいモンスターですが,私は司法修習以降,弁護士になった今でもこの「条解刑事訴訟法」をメインで使っています。

何が便利かというと,分からないことを調ると大抵答え書いてあるということ,そして内容が実務向けなので学説の対立に振り回され時間を費やすことがない,という点です。

この本は「辞書」なので,間違っても司法試験のためにこの本を最初から最後まで通読するということはやってはいけませんが,手元にあると便利です。

高い本なので無理して買う必要はないと思います。大学の図書館に1冊はあると思うので,司法試験に合格するまでは,調べたいことがあった時に図書館で使う,でも良いと思います。

司法修習生になると買う人が多いです。合格祝いに刑法と刑事訴訟法の「条解」を買ってもらうという人も。





予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「刑事訴訟法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 刑事訴訟法」が良いと思います。

●ISBN-10: 4335304919

●ISBN-10: 4844966057

●ISBN-10: 4844966065


私の同級生が基本書を一切読まずに「伊藤真試験対策講座」を使って司法試験に2桁で合格しているので,「伊藤真試験対策講座」を使って失敗するということはないでしょう。

説明が丁寧な分,勉強が進んでくると,丁寧な説明が冗長に感じてしまうこともあるかも知れませんが,ポイントにマーカーを引くなど工夫することで,高速で何度も回せるようになるようです。


「C-Book」は私は2冊とも買って辞書として使っていました。

「C-Book」は学説や判例が整理されていて分かりやすいのですが,量が多いので通読をしようとすると時間不足になる可能性があります。









■刑事訴訟法の判例集


刑事訴訟法の判例集は様々なものが出版されていますが,「刑事訴訟法判例百選」1冊で十分だと思います。

●ISBN-10: 464111532X

私も刑事訴訟法の判例集を何冊か買いましたが,最終的に使っていたのは「刑事訴訟法判例百選」です。

問題を解いたり,基本書を読んでいて,分からないことが出てきた時や,判例の詳しい事案を把握したい時などに使っていました。

通読をする必要はないと思います。

判例百選のデメリットは字が小さいことですが,他の科目と同様に裁断・スキャンして電子書籍化することで字が小さいという問題は解決できます。

電子書籍化の方法は「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」という記事に書いてますので,そちらを参考にしてみてください。



■論文式試験の過去問の分析


刑事訴訟法は特に,司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問の分析は大事です。

最初にお話したとおり,刑事訴訟法は「事実の評価」の部分に点が多く振られています。

「事実の評価」は法律的な知識が無くても書ける部分ですが,慣れていないと,どのように「評価」すれば良いのかさっぱり分かりません。

私も初学者の頃「事実を評価しろって言うけど,評価って何だよ?」って思っていましたし,とても悩みました。

しかし,事実をどう「評価」すれば良いのかは,過去の司法試験(予備試験)の論文式試験の優秀答案を見れば一目瞭然です。

実際に司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解き,辰已法律研究所の「ぶんせき本」の優秀答案や予備校のコメントを読んだ上で,優秀答案の答案の書き方を真似してみましょう。


「評価」の仕方について,1人で悩むよりも,優秀答案を読んだり,書き方を真似をした上達するスピードは速いです。



なお,本試験形式の問題において,問題文にある重要な事実を答案で書かない受験生がいます。

事実に気づいていないか,事実に気づいていたものの答案に書きそびれてしまったかだと思いますが,問題文にある重要な事実は答案できちんと指摘して評価をしないと,点が伸びません。


例えば,事実を漏らさないようにする方法ですが,問題文を読む時に

必要性に関係がありそうな事実 ⇒ 赤の蛍光ペンを引く

緊急性に関係がありそうな事実 ⇒ オレンジの蛍光ペンを引く

相当性に関係がありそうな事実 ⇒ 緑の蛍光ペンを引く

というようにルールを決めて蛍光ペンを引いておき,答案を作成する時に,必要性について論じる時には赤の蛍光ペンが引かれている事実を書き写した上で評価する,というようにしておくと事実の書き漏らしが格段に減ると思います。


このように司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解く時には,自分の中でルールを作ってみて,それを試してみる,ということも大事です。


■答練・直前模試を受けよう


遅くとも本試験の5ヶ月くらい前には予備校の答練を受けるべきです。

刑事訴訟法は特に新しい判例が次々と出ますが,本試験で最新判例を意識した出題がなされることが良くあります。

私が受験した年も最新判例を意識したと思われる出題がなされたのですが,予備校の答練で同じような問題が出題されており,直前模試の付録でも「この最新判例出題されるかも」としつこく注意をしてくれたため,本番は万全な体制で臨むことが出来ました。

最新判例に対する対策としては「重要判例解説」を読むという方法もあるのですが,判例集を読んでいるだけでは答案は書けるようにはなりません。

●ISBN-10: 4641115931

実際に最新判例を題材とした問題を解き,優秀答案を参考にしたりすることで,高得点の答案を書けるようになります。

特に刑事系に関しては予備校の答練・模試と似た問題が本試験で出題されることも多いので,出来るだけ予備校の答練・模試を受けた上で,きちんと復習をしておきましょう。

どの予備校の答練を受けるか迷った場合には,「●予備校の答練について」という記事を参考にしてください。

個人的には受講生の多い予備校の答練を受けることをおすすめしています。



なお,本番で答練と同じような問題が出た時にには「思い込み」に注意してください。

本試験では「答練と同じように見えるけど,実は違う問題」が出ることがあります。

ヤマが当たったと思った時には一度深呼吸をして,落ち着いて本当に同じ論点で間違いないのかきちんと見極めるようにしましょう。






■短答式試験(刑事訴訟法)の勉強方法


司法試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,刑事訴訟法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。

他方,予備試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。


これまでお話しているとおり,短答式試験の勉強方法は,比較的単純で,短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べる,という単純作業の繰り返しだけで,成績が伸びていきます。



短答式試験の過去問集は,個人的にはスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」が,解説がコンパクトで速くまわせるのでおすすめです。

解説も「考えて答えが出せるように」となかなか攻めた内容になっているので,人によっては「頭に残りやすい」と感じる人もいると思いますし,他方で「もう少し客観的な解説が欲しい」と感じる人もいるかも知れません。

●ISBN-10: 4905444284

●ISBN-10: 4905444276




詳細な解説があったほうが良いという人には,辰已法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が良いと思います。

これを使う場合には時間不足にならないようにスケジュール管理に注意してください。

●ISBN-10: 4864663874



時間がない人は,「肢別本」が速く回せるのでおすすめです。

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトなので早く回せるのがメリットです。

気合いと根性がある人は,肢別本が一番効率が良いと思いますが,苦行っぽくなりがちで,私のように意思が弱い人間にとっては挫折しやすいのがデメリットです。


●ISBN-10: 486466420X


その他,短答式の勉強として,他に「択一六法を何度も読み込む」という方法がありますが,刑事訴訟法に関してはおすすめしません。

短答式の問題を解きながら,自分用のノートを作る代わりに択一六法にマーカーを引いていき,直前に見直せるノートとして使う,という方法であれば択一六法を使うにもアリだと思います。

また,択一六法は予備校本をコンパクトにしたような本なので,コンパクトな辞書が欲しいという時には便利だったりします。

●ISBN-10: 4844964712



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