質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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はじめまして。
質問させてください!
初学者で現在無職の状態のものなのですが、今年の秋から冬にかけて何とか無理やり頑張って法科大学院(既習)を受験しようと思っています。流石に無謀すぎでしょうか?それともまずはローに行かず予備試験を目指すのがいいと思いますか?
大変お忙しいかと思うのですが、何かアドバイスを頂けますと幸いです。
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  • ①数ヶ月の勉強で法科大学院に入学できるか

「今年の秋から冬にかけて法科大学院(既習)を受験」となると、準備期間は数ヶ月程度しかないと思います。

初学者の方が数ヶ月で法科大学院の既修者コースに入学するのは、どこの大学院を受験するかにもよりますし、可能性はゼロではないと思いますが、一般的には厳しいと思います。

法科大学院によりますが、入学試験では5~7科目程度の科目の受験を課しているところが多いです。

そして、全ての科目について合格レベルの答案を書けるようになるためには、それなりの時間と慣れは必要です。

基本論点に絞って勉強をし、運良く全ての科目でヤマが当たれれば、合格の可能性はゼロではないかも知れませんが、一般論としては可能性は低いと思います。


また、もし運良く合格できたとしても、法科大学院に入学した後にかなり苦労することになると思います。


法科大学院によっては、司法試験の合格率を上げるために、成績の悪い学生を積極的に留年させているところもあり、運良く既修者コースに入学できたとしても、法科大学院の定期試験で点をとることができなければ留年することになります。

留年をすると、学費と生活費が1年分余計にかかってしまいますし、奨学金を利用している場合には奨学金の支給が停止するため、経済的に苦しくなります。

お金に余裕がある人であれば良いかもしれませんが、上記のような事情があるので、既修者コースに入る場合には、そこそこの時間をかけて勉強をし、基礎的な知識は身につけておきたいところです。



  • ②予備試験か法科大学院か

司法試験に合格するにあたり、まず予備試験を目指したほうが良いか、それとも法科大学院を目指したほうが良いかは、それぞれの人の事情によって異なりますが、一般的には予備試験合格を目指しつつ、予備試験に合格できなかった場合には法科大学院に入る、という人が多いと思います。

法科大学院ルートと予備試験ルートのそれぞれのメリット・デメリットは以下のとおりですので、これらと、ご自身の状況を踏まえた上で、どちらを選ぶかを判断する必要があると思います。



  • ○予備試験ルートのメリット

・最短で2年程度で司法試験に合格できる可能性がある(予備試験合格まで1年、司法試験合格まで1年で合計2年)。

・大学院の学費の負担がないので、お金がなくても挑戦しやすい

・就職活動において、予備試験という難しい試験に合格したことが評価されることが多い。

・仕事をしている人や、学部生でも挑戦できる。



  • ○予備試験ルートのデメリット

・法科大学院ルートに比べて、司法試験受験資格を得るためのハードルが高い(予備試験に合格するのは法科大学院に入学するよりも難しい)

・環境によっては勉強仲間が作りづらく、モチベーションを維持しにくい場合がある。

・短答式試験の負担が大きい(司法試験は憲法・民法・刑法の3科目だけであるのに対し、予備試験は民訴・刑訴・商法・行政法・一般教養を加えた8科目)。




  • ○法科大学院ルートのメリット

・予備試験ルートと違って司法試験の受験資格を得るハードルが低い(一般的には、予備試験に合格するよりも法科大学院に合格して卒業するほうが簡単)

・勉強仲間を作りやすく、成績の悪い人も良い仲間に恵まれれば引っ張られる形で一気に成長することがある。

・大学院の定期試験の勉強を必死でこなしているうちに、いつの間にか成績があがっていることがある(定期試験が勉強のペースメーカーになる)。

・各分野の著名な大学教授や裁判官・検察官・弁護士に直接質問等をできる環境がある。

・奨学金免除・学費免除の制度や大学の寮を利用できれば、予備試験を利用する場合よりも、経済的に楽になる場合がある(一種奨学金の免除を受けられれば年間100万円程度の収入があるのと同じ、法科大学院によっては成績優秀者に返還不要の奨学金を出しているところや、格安の寮を提供しているところがある。)。

・法科大学院の教授や先輩のコネで就職が決まったり、仕事が回ってきたりすることがある。




  • ○法科大学院ルートのデメリット

・学費と2年又は3年分の生活費が必要になり、通常は予備試験ルートと比べて経済的には負担が大きい。

・法科大学院の教員によっては、教え方がお世辞にも上手いとは言えない人がいる。

・法科大学院では司法試験にはあまり関係のない勉強もする必要があり、その点では若干効率が悪い。

・留年をすると司法試験を受験するまでの期間が増えてしまい、経済的負担も増える。

・大学を卒業しなければ入学できない。

・仕事をしながら法科大学院に通うのは至難の業。



上記のように、法科大学院ルートと予備試験ルートには、それぞれのメリット・デメリットがあります。




私が受験生の時は予備試験はなく当時の旧司法試験は合格者数が大幅に絞られていたため、旧司法試験に合格できる自信もありませんでした。

そのため、消去法で法科大学院に進学をしました。

私は基本的にダラダラとした性格で、誰かに尻を叩かれないと勉強ができないタイプだったのですが、法科大学院に入った瞬間に大量の課題を出されたり、優秀な同級生を目の当たりにしたり、留年の恐怖に常にさらされ続けたりすることで、法科大学院在学中は必死に勉強しました。


私が受験生の時にもし予備試験があって、予備試験ルートを選んでいた場合、相変わらずダラダラと勉強をしていたかも知れませんし、なかなか予備試験に合格できずに司法試験を諦めていたかも知れません。


他方で、私とは違って自己管理能力が高い人にとっては、予備試験ルートのほうが相性が良いと思います。



長々と書きましたが「法科大学院に行くのがよいか、予備試験を目指すのがよいか」という質問につきましては、上記のようなそれぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、判断されるのが良いと思います。



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