質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

前回の「①数ヶ月の勉強で法科大学院に入学できるか・②法科大学院か予備試験か」という回答に対し、質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。


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私は回答者さまよりもはるかに腰が重たく、尻を叩かれても気分がのらねば動かない、最終的に切羽詰まってやっとエンジンかけるか~といった人間でありますm(._.)m思い返せば大学受験も年末から慌てて始めたりとクズの中のクズである気がしてなりません…
ちなみに未修を今年受けてみることに関してはどう思われますか?簡易的なもので構いません、ご意見をいただけますと幸いです!
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未修者コースについては「司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」という記事でも書いたのですが、基本的には


とりあえず予備試験と法科大学院の既習者コースの両方を目指す
予備試験がだめだったら法科大学院の既習者コースに入学する
法科大学院の既習者コースに入学できなかった場合の最終手段として未修者コースに入学する


という考え方で望んだほうが良いと思います。



「未修者コース」を最終手段としている理由は

(1)「未修者コース」であっても多くの人が法律の勉強をしてから入学していること

(2)「未修者コース」の卒業者の司法試験合格率が低いこと

(3)初学者が「未修者コース」で法律の勉強をするのは非効率であることが多いこと

という点にあります。


以下、順番に説明をします。



  • (1)「未修者コース」であっても多くの人が法律の勉強をしてから入学していること

「未修者コース」には、法律を勉強したことがない人だけでなく、法律を勉強したことはあるけれども既修者コースに入学できずに仕方なく「未修者コース」に入学したという人が結構います。

むしろ「未修者コース」の入学者の中で、法律の勉強をしたことがないという人のほうが少ないと思います。

ですから、法律の勉強をあまりしたことがない人が未修者コースに入学すると、同級生とのレベルの差によって苦労をすることが多いと思います。

(私がロースクールいた時も、未修者の中に、法学部出身の人や、予備校で基礎講座を受けたことがある人が多くてビビりました。)



  • (2)「未修者コース」の卒業者の司法試験合格率が低いこと

法務省の発表している司法試験合格者の内訳のデータを見ていただければ分かると思いますが、「未修者コース」の卒業生は、「既修者コース」の卒業生よりも合格率がかなり低いです。



令和元年司法試験法科大学院別人員調(既修・未修別)」を見ると、既修者と未修者の内訳は以下のようになっています。


     受験者数 合格者数
既修者  2252   901
未修者  1829   286


既修者の合格率 約40%

未修者の合格率 約15.6%

↑は1年あたりの合格率ですが、5回受験した場合の合格率を単純計算すると

既修者の合格率 約92% (100%-(100%-40%)^5)

未修者の合格率 約57% (100%-(100%-15.6%)^5)

になると思います(計算が間違ってたら指摘してください。)。


既修者コースを卒業できればかなり高い確率で司法試験に合格できるのに対し、未修者コースを卒業しても司法試験に合格できない可能性がかなりあるということです。




  • (3)初学者が「未修者コース」で法律の勉強をするのは非効率であることが多いこと

大学や講師によりますが、一般的に「未修者コース」の授業で、予備校のように手取り足取りゼロから教えてもらえることは少ないです。

ある程度法律を知っている人であれば別ですが、初学者や、初学者に近い人が、基本書を片手に大学の超絶に凄い先生方の授業を聞いても、よく分からないというパターンが多いと多いと思います。

もちろん法科大学院には教え方が上手い先生はいますが、大学の先生は研究したり論文を書くのが主な仕事であり、学生に教えるということが上手い先生ばかりではありません。

ある程度法律を勉強した後に入学する「既修者コース」の学生であれば、大学の先生から難しい話をされても、ある程度理解できたり、上手に取捨選択をして「ここは司法試験にはあまり関係なさそうだから適当に流しとこ」という処理が出来たりします。

しかし、法律の初学者の状態で法科大学院に入った人は、消化不良になったり、挫折しがちです。

未修者コースの合格率が低い理由の1つは、この点にあると思います。

「未修者コース」で成績が伸びていく人は、もともと基本書を読みながら一人で勉強できるタイプの人が多いので、あえて「未修者コース」に入る必要性はそれほど大きくないと個人的には思います。

法科大学院の授業料は国立でも年間80万円程度かかりますが、これよりも低い金額で基礎講座を行っている予備校はありますし、同じ1年間と同じお金を使うのであれば、独学で勉強をするか、予備校の基礎講座を受けたほうが通常の人は効率は良いと思います。



  • ○自分を追い込むために未修者コースに入ることについて

ただ、とにかく「勉強しなければヤバい」という状況に自分を追い込みたい、ということであれば未修者コースに入学するという選択肢も「無くはない」と思います。

法科大学院は予備校とは違って定期試験で点を取らなけば留年をしてしまいますので、「勉強しなければヤバい」という切迫感は予備校よりも圧倒的に大きいです。

なので、① 追い詰めらないと勉強をあまりしないタイプで、かつ、②追い詰められたら3年以上(もしかすると4年以上)ガツガツと勉強をやり続けられる自信があるのであれば、自分を未修者コースに放り込むという考え方もありだと思います。


私の同級生の中にも、法律知識ゼロの状態で未修者コースに入学し、3年間勉強して、司法試験に超上位で合格した人がいます。

そういった例もあるので、未修者コースに入学することが絶対に誤りということではありません。


先程書いた未修者コースのデメリットは私の個人的な考えですので参考程度に見てもらった上で、未修者コースに進学するかご判断してもらえればと思います。

また不明な点があれば質問をしてください。

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