憲法の勉強方法とおすすめの憲法の基本書や参考書など




■憲法の特徴

「憲法」は国の統治の基本を定めた法律です。

憲法98条1項に「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない!」と書いてあるように,憲法に違反する法律なんかは無効となるので,理論的には憲法はとても大事な法律なんですが・・・。

実は実務になると「憲法」ってあまり使うことがないんですよね。

ある弁護士がテレビで「弁護士になってから憲法は使わないんで忘れちゃいました」と言っていましたが,そういう弁護士も少なくないんじゃないかと思います。

訴訟の世界では「途中で憲法と権利濫用の主張をし始めたら負け筋」と言われることもあったりします。

そうは言っても,司法試験では,ガチガチの憲法訴訟(憲法問題が争点となる訴訟)をベースとした出題がされます。

これが多くの受験生を苦しめているんです。

民事系と刑法系は得意なのに,憲法の論文式試験でとてつもなく悪い点数を取ってしまって,不合格になってしまう,という受験生も少なくありません。

私も途中までは憲法な苦手科目で「とにかく憲法が危ない!」「答案の書き方が全くく分からない!」と悩んでいました。

しかし,司法試験に合格した後になって思ったことは「憲法は意外に覚えることが少ない」「コツさえ掴め少ない勉強時間で合格レベルに持っていくことができる科目」ということです。

以下,少ない勉強時間で,あまり無駄なく憲法を司法試験の合格レベルに持っていくための勉強方法とおすすめの基本書等についてお話したいと思います。


■憲法の入門書を読もう


これまで何度も言っていることですが,初学者の方は入門書を読むことをおすすめします。



憲法の入門書としては,「伊藤真の憲法入門」か柴田孝之先生の「S式生講義 入門憲法」をお勧めします。

●ISBN-10: 4535523045

●ISBN-10: 4426117607

どちらの本も予備校の入門講座を本にしたような内容ですが,「伊藤真の憲法入門」のほうが語り口としては優しい感じで,「S式生講義 入門憲法」はロジカルにビシッと言い切ってくれる感じなので,どちらを選ぶかは好みだと思います。

両方を読んだ私としての個人的な印象としては「伊藤真の憲法入門」のほうが分かりやすいが,「S式生講義 入門憲法」のほうが頭に残りやすい,という感じですかね。



難しい本でも良ければ高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」をおすすめします。

この「立憲主義と日本国憲法」は入門書ではなく基本書(普通の教科書)なのですが,放送大学の教材になっていたため,法律を勉強したことがない人でも読むことができるレベルの内容になっています。

しかも,この「立憲主義と日本国憲法」は司法試験の勉強をする上で,最後までメインで十分に使える内容になっています。

●ISBN-10: 464122725X



■憲法の論文問題集を読もう


憲法という科目が司法試験受験生を苦しめる理由の多くは「論文式試験の答案の書き方が分からない」というものです。

論文式試験の答案の書き方が分からない受験生の多くは「論文式試験の答案が書けないのは知識が足りないからだ」と考えて,基本書や判例集を読み込むという勉強法に走りがちなのですが,基本書や判例集を読み込んでも,論文式試験の答案をかけるようにはなりません

司法試験の憲法の論文式試験の過去問や優秀答案を見ると,法律的な知識はそれ程多くは問われておらず,むしろ憲法訴訟の主張反論の組立て方や,事実認定(何が重要な事実で結論にどのように影響を及ぼすのかという評価)の能力が大きく問われていることが分かります。

ですから,憲法の論文式試験の勉強では,とにかく問題を解きまくって,憲法訴訟の主張反論の組立て方や,事実認定のコツを掴むことが大事です。


そのため,民法や刑法と同様に,入門書を読み終わったら論文式試験の問題集を何回か読んで,問題集から知識やテクニックを学んだほうが効率が良いです。

憲法の論文式試験の問題集としては,やはり「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。

●ISBN-10: 4335303688

●ISBN-10: 4335303564

最初のうちはSランクとAランクの問題だけを何回か読み回してみると良いです。

3回読んでも理解できないところは,基本書,予備校本,判例集の解説などを読んでみて,知識を補充していくと良いです。

SランクとAランクの問題がある程度理解できたら,「ケース」とBランクの問題を同じように回していくと良いです。


憲法の問題集には,他にも色々な問題集が出ていますが,多くの受験生にとっては,憲法の問題集を何冊も回しているような時間的余裕はないでしょう。

「伊藤塾試験対策問題集」をある程度回したら,新司法試験の過去問(平成18年以降)や予備校の答練の問題をこなしていったほうが効率が良いと思います。


時間的に余裕がある人には,「事例研究 憲法」をおすすめします。

学者の先生が書いた本ですが,司法試験を意識して作られた本で,司法試験で問われる憲法訴訟の考え方を身につけやすい問題集です。

●ISBN-10: 4535519447




■おすすめの憲法の基本書と予備校本


おすすめの憲法の基本書と予備校本を紹介する前に言っておくべきことがあるのですが,私は受験生時代に憲法の基本書や予備校本で通読した(最初から最後まで読んだ)本はありません。

ただし,論文式試験の問題集や司法試験の過去問をやっていて,分からなかった箇所,しっくり来なかった箇所については,穴が空くほど基本書を何度も何度も読み込みました。

時間的に余裕がある人は,基本書や予備校本を通読したほうが良いと思いますが,短期合格を目指している人や,私のように1日の勉強時間が極端に短い人にとっては,なかなか基本書や予備校本で通読する時間はないと思います。


敢えて通読するなら,入門書のところでお勧めした高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」が良いと思います。

私は違憲審査基準の考え方がどうしても分からなくて,色々な基本書や予備校本を虫食い的に読みましたが,この「立憲主義と日本国憲法」の違憲審査基準の考え方を読んで理解が進みました。

●ISBN-10: 464122725X



「立憲主義と日本国憲法」については「内容が薄くて短答式試験の範囲をカバー出来ていない」という人もいますが,憲法の短答式試験で点が取れない人は,基本書の読みこみが足りないのではなく,過去問の演習が足りない場合が多いです。

「立憲主義と日本国憲法」よりも分厚い教科書はいくらでもありますが,分厚い教科書を何度も読み込むよりも,憲法の短答式試験の過去問を繰り返したり,論文式試験の演習を繰り返したほうが,司法試験の合格に必要な知識だけを効率的にインプットできると思います。



憲法の有名な教科書として芦部信喜先生(高橋和之先生)の「憲法」という本がありますが,私はあまり司法試験の受験生,特に初学者には芦部信喜先生の「憲法」はおすすめしません。

●ISBN-10: 4000227998

芦部信喜先生は,日本の憲法学の基礎を築いたスゴイ先生で,芦部信喜先生の「憲法」も司法試験の合格レベルくらいの知識や理解が身についてから読むと,そのクオリティの高さに身震いするほど素晴らしい本です。

ただ,芦部信喜先生の「憲法」はシンプル過ぎて,通常の初学者が読んでも何が何だか理解できないと思います。

私も受験生時代に「芦部憲法は行間を読むんだよ!」と宗教的な事を言われて何度か芦部先生の「憲法」を読もうとチャレンジしましたが挫折しました。行間には何も書いてないんですよね。当たり前なんですけど。


芦部信喜先生の「憲法」を使うよりも,野中俊彦先生,‎中村睦男先生,‎高橋和之先生,高見勝利先生の「憲法」という教科書(通称「四人本」)をおすすめすます。

私もこの四人本を買って辞書として使っていました。

●ISBN-10: 464113118X

●ISBN-10: 4641131198

この四人本は,芦部先生の「憲法」の「行間」を追加してくれたような親切な基本書で,分からないことがあれば四人本を調べると良いと思います。

四人本と判例百選を調べても分からないことは「司法試験では不要」と考えて問題ないでしょう。




予備校本を使いたい人は,「伊藤真試験対策講座」か,東京リーガルマインドの「C-Book」を使うことになると思いますが,憲法に関しては予備校本をメインで使うことは,あまりおすすめしません。

●ISBN-10: 4335302711

●ISBN-10: 4844916076

●ISBN-10: 4844916084


「伊藤真試験対策講座」の「憲法」は分かりやすいのですが,改訂される度に厚くなっていて,今では学者の先生が書いた基本書よりも厚くなっています。

「伊藤真試験対策講座」も「C-Book」,分からないことを調べるための辞書として使うには良いと思いますが,最初から最後まで読み込むにはあまり効率的ではないと思います。

「C-Book」は体系的に整理されていて,調べ物をしたり,自分の論証を作ったりするのに便利なので,私は「C-Book」を買って四人本と共に辞書として使っていました。



■論文式試験の過去問の分析


先程もお話しましたが,「伊藤塾試験対策問題集」をある程度回したら,新司法試験の過去問(平成18年以降)や予備校の答練の問題をガンガン解いていきましょう。

最初は1行も書けずに途方に暮れることもあると思いますが,たくさんの問題を解いて優秀答案を読んでいるうちに,憲法の解き方のパターンみたいなものが分かってくると思います。

民法や刑法でもお話したように,司法試験や予備試験の過去問を解いた後には,辰已法律研究所の「ぶんせき本」などを使って,優秀答案と自分の答案の何が違うかを研究してみると良いです。

●ISBN-10: 4864663211

●ISBN-10: 4864663246

ゼミ形式で喧嘩にならない程度にお互いの答案の悪いところを指摘し合うと,自分が気づかなかった欠点に気づくことが出来ます。

司法試験は「他の人が書けないような素晴らしい答案を書こう」と考えていると,酷い点になることが多いです。

それよりも「普通の合格者が書くような当たり前の普通の答案を書こう」と意識したほうが,高得点を取れることが多いです。

司法試験は実務家を選ぶための試験ですが「他の人が書けないような答案」というものは,往々にして「実務家の感覚から遠く離れた的外れな答案」であることが多いのです。

「的外れな答案」を書かないようにするためには,司法試験の過去問について,自分で実際に答案を書いてみて,合格者(=実務家と同じ考え方を持っている人)と考え方がズレているところを修正していく,という作業が必要になっていきます。



■憲法の答案の書き方


司法試験の憲法の答案の書き方は独特で,苦手な人はいつまでも苦手にしています。

私も憲法の論文式試験は,法科大学院の1年目くらいまで,何をどのように書けばよいのか分からず苦手だったのですが,辰巳法律研究所の福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」という講座を受講したところ,憲法の苦手意識がだいぶ無くなりました。

その後に,憲法の答案の書き方の本を色々読んで,自分なりに答案の作成方法の手順をノートにまとめる,という作業を繰り返したところ,答練で安定的に高得点が取れるようになり,得意科目になりました。

憲法は合格に必要な知識が少ない科目なので,一度得意科目になると放置していてもあまり成績が下がりません

ですから,憲法については早めに過去問を解くなどして,答案の書き方を研究しておき,早めに得意科目にしておくと,他の科目に勉強時間を割くことが出来るようになり,合格も近付きます。


「憲法の答案の書き方が分からなくて困っている」という人は,とりあえず先程お話したの福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」をおすすめします。

私が受験生だった時は1万6000円くらいする講座だったと思いますが,先日,本屋で2500円くらいで売っているのを見かけました。

●ISBN-10: 4864661596

「絶対にすべらない答案の書き方」については,受験生の中でも賛否両論あるところですが,個人的には非常に役に立ちました。

憲法以外にも,司法試験の本番で失敗をしないためのコツを丁寧に解説してくれていますので,読んで実際に答練などで実践してみることをお勧めします。



憲法の答案の書き方に関する本としては,木村草太先生の「憲法の急所―権利論を組み立てる」をおすすめします。

この本は私が受験生の時に出版されたのですが,私の周りの受験生の中では大人気でした。

下手に基本書や予備校本を読み込むよりも「憲法の急所」を読んだほうが,論文式試験に必要な考え方が身につくはずです。

●ISBN-10: 4904702263




その他に小山剛先生の「憲法上の権利の作法」も手元にあると便利です。

ちょっと難しめの本ですが,「絶対にすべらない答案の書き方」では対応できない問題について,どのように答案を作成すれば良いのかを考える際に参考になります。

●ISBN-10: 4860310888





■短答式試験(憲法)の勉強方法


憲法については短答式試験も苦手にしている受験生が多いと思います。

判例百選に載っていないような判旨が問題に出たり,○か×か微妙なニュアンスの言い回しに振り回されたりと,憲法の短答式試験は他の科目とちょっと雰囲気が違うんですよね。

そこで,分厚い判例集を読み込んだりする受験生が出てくるのですが,受験勉強としては非効率だと思います。

司法試験の短答式試験対策の基本は,やはり「過去問」です。

「過去問」を繰り返し解いていると,同じようなことが,手を変え品を変え繰り返し出題されていることが分かります。

私も憲法の短答式試験は苦手でしたが,過去問を繰り返し解いているうちに,自然に点が伸びていきました。


短答式試験の過去問集は,自分が使いやすくて網羅性があるものであれば,何でも良いと思います。

個人的にはこれまでお話しているとおり,スクール東京の「体系別 司法試験・予備試験 短答 過去問集 憲法」が,解説が分かりやくシンプルで,速く回せるのでおすすめです。

●ASIN: B01N981IDE



詳細な解説が欲しい人は辰巳法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が無難だと思います。

特に憲法の短答式試験では判例百選に載っていないような判旨が出題されることがありますが,「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」は解説で判旨を長く引用してくれているので,いちいち判例集に戻る必要がなく,便利です。

●ISBN-10: 4864663386


時間がない人は,肢別本を根性でぐるぐると回しましょう。

司法試験の憲法であれば,気合いを入れて肢別本を何度も回せば,本番で落ちないくらいの点数は取れるはずです。

●ISBN-10: 4864663599



■判例集


先程もお話したとおり,憲法の択一式試験では,判例百選に載っていないような判旨が問題に出ます。

そのため,司法試験の受験生の間では,判旨が長く引用されている判例集が人気になったりします。

判旨が長く引用されているメジャーな判例集として「憲法判例」などがあります。

●ISBN-10: 4641131635


「憲法判例」のような判旨が長く引用されている判例集は手元にあると便利なのですが,法科大学院生の場合,判例検索システムを無料で使えるので「憲法判例」のような本が必須という訳ではありません。

私は「憲法判例」のような本を使わずに,判例検索システムで判例の判旨などをパソコンを使ってWORDに貼り付けて整理し,判旨のうち短答式試験で問われた箇所にパソコン上で線を引いておき,出題された年度をメモしておく,という作業をしていました。

そうしたところ,司法試験の短答式試験では,繰り返し同じような箇所が聞かれていることが分かってきて,「何も頑張って判例集を読み込まなくても,同じようなことが手を変え品を変え繰り返し聞かれているのだから,過去問を繰り返し解いていけば,合格に必要な知識はインプット出来る」ということが分かりました。

ですから,「憲法判例」のような判旨が長く引用されている判例集は,必ず必要という訳ではありません。



ただし,判例百選は買っておいたほうが良いです。

●ISBN-10: 4641115176

●ISBN-10: 4641115184


判例百選は,判旨の引用は短いですが,日本を代表する学者の先生方が解説を書いていて,その解説が試験問題を解くためのヒントになることもあります。

解説も自分に合うものも合わないものもあると思いますが,勉強をしていてしっくり来ない時に判例百選の解説を読むと,すっと知識が頭に入っていくことがあります。

また,憲法の勉強では,判例の細かい判旨まで全て暗記する必要はありませんが,重要な判例の基本的な考え方や規範については覚えておく必要があります。

重要な判例の基本的な考え方や規範は,短答式試験の過去問を解いたり,論文式試験の問題をこなしているうちに覚えていくと思いますが,問題集の解説を読んでも納得がいかなかった時に,判例を調べるためには判例百選が便利です。



なお,多くの受験生は,試験直前期に話題の最新判例をチェックするために重要判例も買います。

私も重要判例は買いましたが,時間がなかったためほとんど見ていません。

●ISBN-10: 4641115915

直近の重要判例については,予備校の直前模試を受験すると,付録で付いてきたりしますし,「ハイローヤー」といった受験雑誌で特集が組まれることもありますので,時間のない人は,予備校の力を借りてインプットしても良いと思います。

●ASIN: B072RBY412

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