司法試験

2020年05月26日



今回は行政法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書などについてお話をしたいと思います。


■行政法の特徴


「行政法」は、文字通り「行政に関わる法律」のことです。

これまでご紹介した憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法は、それぞれ「憲法」などの名前の法律がありましたが、「行政法」という名前の法律はありません。

「行政事件訴訟法」「行政手続法」「国家賠償法」など、様々な法律をひとまとめにして「行政法」という「くくり」にしています。

なので、「行政法」を勉強する際には、いくつもの法律を広く勉強する必要があります。


司法試験の論文試験で出題される「行政法」にはいくつかの特徴があります。



1つ目は、市民側が行政側を訴えるパターンの問題が良く出ることです。

市民側が行政側を訴える場合には、主に「行政事件訴訟法」や「国家賠償法」や「地方自治法」などの法律を使うことが多いのですが、これらの法律の中には、「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「不作為の違法確認訴訟」「義務付け訴訟」「差止訴訟」「当事者訴訟」「国家賠償法」「住民訴訟」など、様々な訴訟類型(裁判の起こし方)が書かれています。

そして、司法試験や予備試験の論文試験試験を解く時にこの訴訟類型を間違えてしまうと、ほとんど点が付かず、それだけで不合格になってしまう可能性が高くなってしまいます。

そのため、「訴訟類型」を間違えないように十分な準備をしておく必要があります。

(会社法の対策と似ています。)

また、それぞれの「訴訟類型」ごとに、どんなことを書くと点が付くのかということも整理しておく必要があります。

この方法については、この記事の中で後でお話します。




行政法の論文試験の特徴の2つ目は、「ほとんど勉強をしたことがない法律」の解釈について聞かれることが多い、ということです。

先程お話ししたように「行政法」という「くくり」の中には、様々な法律があるのですが、最近の司法試験の論文試験の過去問をざっと見るだけでも、以下のようにマニアックな法律をからめた出題がされています。

令和元年
・土地収用法

平成30年
・墓地,埋葬等に関する法律、どっかの全く知らない市の「墓地等の経営の許可等に関する条例」

平成29年
・道路法

平成28年
・建築基準法、都市計画法、風営法

平成27年
・消防法

行政法の教科書を見てもらえれば分かると思うのですが、これらのマニアックな法律は、行政法の教科書にも詳しい解説は書いてありません。

なぜ司法試験でこのようなマニアックな法律が出題されるのかというと、それは

「知らない法律をその場で見て、その場で考えて問題を解いてね」

ということなんです。

決して、このようなマニアックな法律の「逐条解説」みたいな分厚い本を買ってきて勉強しろ、と言われている訳ではありません。

良く知らない法律をその場で読んで、自分の頭で考えて解けるようになれば良いんです。


では、どうすれば、「知らない法律をその場で読んで、自分の頭で考えて解ける」ようになるのかというと、行政法の基本的なことを勉強した上で、後は司法試験や予備試験の論文式試験の過去問や、予備校の問題集・答練を解いて練習するしかありません。

自転車の運転や、スポーツやゲームも、最初は上手くできなくても、何度もやっているうちに身体が覚えていきますよね。

それと同じような感じです。



行政法の論文試験の3つ目の特徴は、「誘導」が多いということです。

「誘導」というのは、問題を解くためのヒントとか指示のことです。

ちょっと分かりにくいと思いますので、実際の司法試験の過去問から「誘導」の一部を抜粋してみます。

試験問題そのものを見たいという人は以下の法務省のホームページから閲覧できます。

ざっと目を通してもらうだけで構いません。


(抜粋ここから)

【法律事務所の会議録】
弁護士D:Aさんは,本件事業認定は違法であると考えているとのことです。本件権利取得裁決には固有の違法事由はありませんので,本件では,本件事業認定の違法性についてのみ検討する
こととしましょう。もっとも,まずは,どのような訴訟を提起するかについて,検討しておく必要がありますね。

弁護士E:本件事業認定も本件権利取得裁決も,行訴法第3条第2項における「処分その他公権力の行使」に該当しますが,いずれも,既に出訴期間を徒過し,取消訴訟を提起することはでき
ないのではないでしょうか。

弁護士D:そうですね。もっとも,本件取消訴訟については,行訴法第14条第1項及び第2項における「正当な理由」が認められ,適法に提起することができるかもしれません。

弁護士E:仮に本件取消訴訟を適法に提起することができたとしても,本件権利取得裁決には固有の違法事由はありませんので,本件取消訴訟では専ら本件事業認定の違法性を主張することと
なりますね。

弁士D:では,E先生には,仮に本件取消訴訟を適法に提起することができるとした場合,本件事
業認定の違法性を主張することができるかについて検討をお願いします。ただし,「正当な
理由」が認められるかについては,検討する必要はありません。

弁護士E:承知しました。

弁護士D:とはいえ,「正当な理由」が認められない場合の対応も考えておく必要があります。本件取消訴訟を適法に提起することができないとすれば,どのような訴訟を提起することができ
ると考えられますか。

弁護士E:本件事業認定に無効の瑕疵があり,したがって,本件権利取得裁決も無効であるとして,
B県に対し,行訴法第3条第4項に基づいて,本件権利取得裁決の無効確認訴訟を提起する
ことが考えられます。また,本件権利取得裁決が無効であるなら,別途,C市に対する訴訟
も提起することができます。

弁護士D:では,B県に対する無効確認訴訟が訴訟要件を充足しているか,E先生に検討していただきましょう。無効確認訴訟の訴訟要件については,いくつかの考え方がありますが,E先生
は,行訴法第36条の訴訟要件である「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を
前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」につい
て検討してください。C市に対してどのような訴訟を提起することができるのか,また,C
市に対する訴訟を提起できる場合にも無効確認訴訟を適法に提起することができるのかとい
う点に絞って検討していただければ結構です。

弁護士E:承知しました。

(抜粋ここまで)

これは法律事務所の中の弁護士の会話ですが、この中に問題を解くための「ヒント」や「指示」が、盛り込まれています。

たとえば、

・「・・・ついて,検討しておく必要がありますね」

・「・・・については,検討する必要はありません。」

・「・・・かという点に絞って検討していただければ結構です。」

という部分は「指示」の部分にあたります。


「検討する必要がありますね」と書かれている部分を、答案の中で検討していないと、点を大きく失ってしまい、それだけ不合格の可能性が高まります。

他方、「・・・については検討する必要はありません」「という点に絞って検討していただければ結構です」と言われているのに、検討する必要がない部分まで答案に書くと、試験本番で時間を大きくロスしてしまいます。

司法試験の論文式試験は時間との勝負なので、検討する必要がない部分に時間をかけてしまうと、検討しなければならない部分にかける時間がなくなってしまい、他の受験生と大きな点数の差が付いてしまいます。

なので、このような「指示」を見落とすことは致命傷になります。


それから

「・・・訴訟を提起することが考えられます」

のような部分は、「ヒント」になっていたりします。


こういったヒントを見落とすと、それだけで不合格に繋がります。

司法試験に不合格になった受験生の相談を受けると、こういった「ヒント」を見落として、書くべきことを書かずに酷い点数になった、という人もいます。

なので「誘導」にきちんと従うということは、とても大事なことです。

この「誘導」を見落とさないようにするのも、基本的には問題演習をこなしていくうちにコツが分かってきます。


ちょっと長くなりましたが、まとめると行政法の論文式試験には、

① 「訴訟類型」について準備をしておかないと本試験で酷い目に合う可能性がある

② あまり見たことがない法律が出るので、自分の頭で考えて解く必要がある

③ 「誘導」にきちんと乗れるように、練習をおく必要がある

等の特徴があります。


ただ、行政法については基本的なことをきちんと勉強した上で、↑のような特徴を踏まえた上で対策をきちんととっておけば、本試験で合格点+αの点を取ることは、それほど難しくありません。

このような特徴を踏まえた上で、行政法をできるだけ短い勉強時間で合格レベルに持っていくための勉強方法と、おすすめの基本書や参考書について、お話していきたいと思います。









■行政法の入門書を読もう


行政法についても初学者の方は入門書を読むことをお勧めします。



はじめて行政法を勉強する場合には、他の科目と同様「伊藤真の行政法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521190 

基本書を読めない私のような人間でも、挫折することなく読めるサイズまで基本的な事項が凝縮されています。

カバンに入れておいてスキマ時間に読んでもいいと思いますしし、2~3時間かけて一気に読んでも良いと思います。

2~3回読めば十分だと思います。



その他に、予備校系の入門書としては柴田孝之先生の「S式生講義 入門行政法」も良いと思います。

柴田孝之先生は、かなり昔からLEC(東京リーガルマインド)で司法試験の講師をしている先生で、私の同期の合格者の中にも柴田先生の授業を受けていたという人が何人もいました。

説明が論理的なので、理屈で理解したい人には相性が良いと思います。

「伊藤真の行政法入門」はどちらかというと教科書っぽい書き方ですが、「S式生講義 入門行政法」は講義を再現したような内容になっているので、どちらか好きなほうを読むと良いと思います。

●ISBN-10: 442612476X



「伊藤真の行政法入門」や「S式生講義 入門行政法」ではちょっと物足りなかったという人は、「伊藤真ファーストトラックシリーズ」もおすすめです。

「伊藤真ファーストトラックシリーズ」は、後述の「行政法 伊藤真試験対策講座」をぎゅっと圧縮したような内容になっています。

この「伊藤真ファーストトラックシリーズ」を何回か読んで内容が理解できるようになれば、他の基本書や予備校本も読みやすくなると思います。

●ISBN-10: 4335314574



学者の先生が書いた入門書のうち、私が読んだ中では藤田宙靖先生の「行政法」が分かりやすくて読みやすいと思います。

●ISBN-10: 4641131953

学者の先生の書いた本の中で、私が通読できた数少ない教科書のうちの1冊です。

藤田宙靖先生は、学者から最高裁判所の裁判官になったという凄い先生なのですが、この入門書を読んでいると初学者に対する配慮や愛情みたいなもの感じます。

内容はしっかりしていますが、文章が平易なので初学者でも読みやすいです。

新司法試験の制度ができるだいぶ前から出版されている本なので、ベースは昔ながらの行政法の本という感じで、今流行の司法試験に合わせたような流行の教科書という感じではありません。

しかし2016年に改訂されていて、行政不服審査法の改正にも対応しているので司法試験の入門書として使って困るということはないと思います。








■行政法の論文問題集を読もう


入門書を読んだら早めに行政法の論文問題集を読むと良いです。



読む論文問題集としては「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 4335303599

●ISBN-10: 433530367X

「試験対策問題集 司法試験論文」と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の使い分けについては「論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」を参照してください。

個人的には,「試験対策問題集 司法試験論文」のほうをおすすめしています。

この伊藤塾の問題集は、やはり他の科目と同様に参考答案の質が高いので、言い回しをそのまま真似して本試験で使うことができます。

この問題集の「ケース」以外の部分の問題文と参考答案を何度も読んでいると、行政法の問題の解き方の流れのようなものが分かってくると思います。

参考答案を読んでもよく理解できない部分も出てくると思いますので、その場合は、後述の基本書や判例集の該当箇所を読んで理解を深めていくと、力がついていくと思います。

時間がない人は、とりあえず「ケース」以外の部分の「A」ランクの問題に絞って回しても良いと思います。

行政法の勉強では、先程お話しした行政法の特徴を踏まえ、過去問や予備校の答練にもある程度時間をかけたいところなので、問題集の全部を完璧に仕上げることに拘りすぎて過去問や予備校の答練をこなす時間が無くなってしまうよりは、問題集の「A」ランクの部分だけでも良いので早めに仕上げて、過去問や予備校の答練の演習の時間を十分に確保したほうが良いと思います。








■おすすめの行政法の基本書と予備校本



行政法のおすすめの基本書などをいくつか紹介します。


私の周りの合格者で使っている人が多かったのが「櫻井敬子」先生と「橋本博之」先生の「行政法」です。

●ISBN-10: 4335357974

比較的コンパクトで読みやすいので、通読用に使っても時間不足になる可能性は低いと思います。

この本を使っている受験生が多いので「他の人と同じ本が良い」という人には無難な基本書だと思います。

私もこの基本書を持っているのですが・・・ほとんど読んだ記憶がありません。

この基本書の問題ではなく、私の問題ですが、合う合わないは相性があると思います。





私がメインで使っていた基本書は「行政法 (LEGAL QUEST)」です。

●ISBN-10: 4641179409

私は通読はしていませんが、調べ物をしたり法科大学院の課題をこなしたりするのに頻繁につまみ読みをしていたので、おそらく全体のうち7割くらいのページは読んだと思います。

この基本書は4人の共著ですが、著者の1人である稲葉馨先生は、(新)司法試験で新しく行政法が試験科目に含まれた時の考査委員をされていた先生です。

そのためか、伝統的な行政法の教科書と違って、(新)司法試験の出題形式を意識した内容になっているように思われます。

単に知識を詰め込むだけでなく、自分の頭で考えて問題を解くことができるように工夫がされていると思います。

先程お話したとおり、司法試験の行政法の問題は、自分の頭で現場で考えて処理しなければならない問題が出題されることが多いので、そういった意味では良い基本書だと思います。

この基本書のデメリットとしては、ちょっと先進的な内容が含まれていて難しいと思う人もいると思います。

他方で理屈でロジカルに考えたい人には相性が良い基本書だと思いますし、薄いので気合いを入れれば1日か2日で読めると思います。




その他、王道の基本書としては「宇賀克也」先生の「行政法概説Ⅰ」と「行政法概説II」が有名です。

●ISBN-10: 4641227837

●ISBN-10: 4641227446


「概説」(=だいたいの説明)とは名ばかりに、2冊合わせて1000頁を超えるボリュームです。

宇賀先生はとても優秀な先生なので、1000頁分くらいの知識は全体の知識量のごく一部に過ぎないのだと思いますが、司法試験受験生にとって1000頁というボリュームはちょっと多いです。

天才タイプ以外の人が通読しようとすると挫折する可能性が大きいです。

なので、通読用に使うことはおすすめしません。

ただ、判例が大量に掲載されており、論文試験の問題を解いたりしている時に、辞書として使うのには大変便利なので、お金に余裕のある人は2冊とも手元に置いておくとかなり便利です。

また内容が詳しいので司法修習や実務に入ってからも使えるので、そういった意味では最強の部類の基本書です。


私も受験生自体に2冊とも買って、今でも仕事で辞書的に使っています。

ちなみに「宇賀克也」先生は「行政法概説Ⅲ」という本も出してますが、こちらは司法試験ではほとんど出題されない範囲の本なので、司法試験・予備試験対策のために「行政法概説Ⅲ」を買う必要はほとんどありません。



その他、年配の弁護士におすすめの行政法の基本書を聞くと「塩野宏」先生の「行政法」をおすすめされるかも知れません。

●ISBN-10: 4641131864

●ISBN-10: 4641227713

「買いたい人だけ買ってください」とでも言うような、とてもシンプルな見た目の本。

塩野先生の「行政法」は、見た目と同様に説明も比較的シンプルなので、ある程度勉強が進んだ人であれば、「余計な説明がないので読みやすい」と思います。


塩野先生はかなりご高齢で、今後の改訂も無いかもしれないので、積極的にはおすすめしませんが、図書館などで読んでみて、「自分に合う」と思った人や、同級生に「渋い」って思われたい人は候補に入れても良いかも知れません。






予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「行政法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 行政法」が良いと思います。

●ISBN-10: 4335304900

●ISBN-10: 4844976125


私は法科大学院の入学試験の勉強のために伊藤塾の「行政法 伊藤真試験対策講座」を使っていました。

予備校本だけあって内容は分かりやすかったですが、ボリュームがそこそこあるので、通読をするのには気合いと根性が必要かも知れません。



「C-Book 行政法」は、法科大学院に入学した後、辞書として使っていました。

「調べ物をしたいけど、基本書で該当箇所を探すのはダルいな」という時に「C-Book」は便利です。

「C-Book目次が細分化されているので分からない事が出てきた時に調べたい内容を探しやすいですし、「C-Book」には基本書のどのページに書かれているかというインデックスのようなものがあって基本書の該当箇所にすぐに飛ぶことができるので便利です。

ただし、「C-Book」は量が多いので通読はあまりおすすめしません。







■行政法の判例集


行政法の判例集も様々なものが出版されていますが,「行政法判例百選Ⅰ」と「行政法判例百選Ⅱ」と直近数年分の「重要判例解説」があれば十分だと思います。

●ISBN-10: 4641115354

●ISBN-10: 4641115362

●464111594X

相変わらず字が小さいのがデメリットですが、パソコンがある人は自分で電子書籍化するか、Kindle版を買えば、「目が疲れる問題」は解決できると思います。

判例百選に掲載されている判例の数はかなり多いので、宇賀先生の基本書と併用すれば司法試験の勉強をするにあたって不足するということはまずないと思いますし、解説も充実しているので分からないことを理解しようとする時にも便利です。

「伊藤真の判例シリーズ」も便利で分かりやすいのですが、改訂が少ないのと、掲載判例が少なめなのと、その割にボリュームがあるのがネックです。

私は「伊藤真の判例シリーズ」も買いましたが結局ほとんど使ってません。

●4335304102 






■「訴訟類型」の整理など


先程お話ししたとおり、行政法の論文試験では、「訴訟類型」を整理して実戦で使えるようにする、ことが大事です。

そのため、予め「訴訟類型」を整理しておくと良いです。


「訴訟類型」は、ある程度勉強をしていればどのようなものがあるか分かってくると思いますが、整理をしておかないと本番で間違える可能性が出てきます。

「行政法の論文試験が苦手」という受験生の中には、この「訴訟類型の整理」をきちんとしていない人が多いように思われます。

自分で「訴訟類型」を整理しても良いのですが、それが面倒な人は辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック 公法系」に、「訴訟類型」の整理や本試験の解き方が詳しく書かれています。

「訴訟類型を整理しろと言われても、やり方が分からないよ」という人は「趣旨規範ハンドブック」の力を借りると良いと思います。

私も最初は自分で整理していたのですが、量が増えるにつれて次第に訳が分からなくなって面倒になったので、最終的には「趣旨規範ハンドブック」の力を借りて頭を整理しました。

●ISBN-10: 4864664218


「趣旨規範ハンドブック」はシンプルなのが売りですが、その分「勉強がそれなりに進んでいる人」向けなので、勉強の進み具合によっては「何が書いてあるのか良く分からない」という人もいると思います。


その場合には「受験新報」のノートのほうが分かりやすいかも知れません。

「受験新報」は定期的に「訴訟類型」や行政法の問題の解き方を綺麗に整理した「行政法答案構成ノート」を出しています。


こちらのノートもかなり使いやすいので、同期の合格者の中には受験新報のノートを使っている人も結構いました。

「趣旨規範ハンドブック」を使っても「受験新報のノート」を使ってもどちらでも問題ありませんので、見比べてみて自分が使いやすいほうを使うと良いでしょう。

●ASIN: B07K14BNBL






■論文式試験の過去問の分析


先程お話ししたとおり、司法試験(予備試験も)では論文式試験の過去問の分析は大事です。


先程お話ししたように

① 「訴訟類型」を整理して実戦で使えるようにする

② あまり勉強したことがない法律について、自分の頭で考えて解けるようにする

③ 「誘導」にきちんと乗れるようにする

という技術を身につけるためには、司法試験の論文試験の過去問を最低でも5年分はやっておくべきです。

過去問を5年分くらいやると、次第に「なんだか毎年同じようなことが聞かれているな」という感覚になってくると思います。

聞かれている論点は違っても、求めれている考え方や、誘導の仕方は、パターンがある程度決まっているので、過去問をこなしてくと「はいはい。こういうパターンね。前に見たことあるよ。」と落ち着いて問題を処理できるようになっていくと思います。


過去問を解く時には、できれば自分よりも優秀な人とゼミを組んで、毎週何曜日の何時までに全員が答案を書き上げるという約束をして、答案が出来上がったらお互いに答案を批評しあうと、過去問から得られるモノの量と質が大幅にあがると思います。


自分や他の人が書いた答案を分析する時は、辰已法律研究所の「ぶんせき本」の優秀答案や予備校のコメント、法務省の採点実感等を読みながらやると良いです。

●ISBN-10: 4864664668

●ISBN-10: 4864664676



過去問を何度も回しているのに、解き方が分からない、という人は、主に2つのパターンに分けられると思います。


1つ目は、基本的な知識や理解が足りていないパターン。

この場合は、

「伊藤塾試験対策問題集」のAランクの問題などを解く
分からない部分を基本書などで復習する

をループしたりして、基本的な知識をインプットし理解を深めるしかないと思います。



2つ目は、司法試験の問題との相性が悪く解き方のコツがなかなか掴めないタイプ。

このパターンは、知識や理解は十分にあるのに、論文試験は苦手というパターンで、優秀な人の中にもこういう人がたまにいます。

論文試験の解き方のコツや誘導の乗り方がどうしても掴めない人は、論文試験が得意な人に方法を聞いて回るという方法もあるのですが、「誘導」に乗るのが苦手な人は、辰巳法律研究所の福田俊彦先生の「絶対にすべらない答案の書き方」という講座を個人的におすすめします。

この「絶対にすべらない答案の書き方」は、司法試験の論文試験の各科目の問題文の読み方、時間配分の仕方、答案構成の仕方、答案の書き方、誘導の乗り方などを一定のルールに従ってやることで、論文試験で酷い点数を取るリスクをゼロに近づける、みたいな内容です(私の理解が間違っていたらすみません)。

私も「論文試験の解き方がよく分からないな」と思っていた時に同級生に福田先生の講座を勧められて受講したのですが、講義の内容を全部文字に起こして、福田先生の言っているルールを守ように徹底したところ、点数が安定するようになりました。

DVDの講座で2万5000円くらいしたと思うので、購入するのはちょっと勇気がいる価格だと思いますし、同級生の中では「あまり響かなかった」という人もいたので相性みたいなものがあると思います。

あと、この講座は司法試験でもの凄い高得点を取る的な内容ではなく、タイトルどおり「すべらない」=「落ちない」ことをメインにしている内容なので、「合格点を取る自信は十分にあるけど、10番以内で合格したい」みたいな人向けの内容ではありません。

いきなり講座を買う勇気がない人は、本も出ているので、そっちを読んでみてから講座を受けるか判断しても良いかもしれません。

●ISBN-10: 4864661596

ただ、本は講座に比べると内容は薄めです(価格が違うので仕方ないのですが)。









■答練・直前模試を受けよう


司法試験・予備試験ともに遅くとも年明け頃から予備校の答練を受けたほうが良いです。

予備校の答練は、司法試験も予備試験も、10月頃から第1クールが始まり、年明けの1月か2月頃から第2クールが始まります。

「第1クール」「第2クール」という名前は予備校によって若干違いますが、1セット目、2セット目みたいな意味です。

勉強のスケジュールがある程度進んでいて、お金に余裕がある人は第1クールも第2クールも両方受けて良いと思いますが、私は第2クールだけ受けました。

第1クールは受講しない受験生も多いので、第1クールで出題されたものと同じような問題が本試験で出たとしても、それ程差が付かないことが多いと思います。

また、過去問の検討が不十分な場合には、無理をして第1クールの答練を受けるよりは、過去問の検討を十分にしたほうが力が付く可能性が高いと思います。

予備校の答練も良く練られていますが、やはり質的な意味では過去問のほうが得られるものが多いです。



過去問を5年分くらいこなしてから答練を受けると、自分の苦手な部分や、弱点が分かってくると思います。

たとえば、いつも時間内に書き終わらないとか、訴訟類型の判断に時間がかかるとか、実体法的な論点が弱いなど。

弱点が分かれば、その原因を探った上で、復習をすることで本試験までの間に補強をしていくことができます。


どの予備校の答練を受けるか迷った場合には,「予備校の答練について」という記事を参考にしてください。

個人的には受講生の多い予備校の答練を受けることをおすすめしています。







■短答式試験(行政法)の勉強方法


現在の司法試験の短答式試験では,行政法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,行政法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。


それに対して,予備試験の短答式試験では,行政法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。

他の科目の記事でお話したとおり、短答式試験の勉強方法は基本的に短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べるという単純作業です。



短答式試験の過去問集は,私は当初は辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」を使っていましたが、途中からスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」をメインで使っていました。


●ISBN-10: 4864664536

●ASIN: B083SRMJPH


辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」は以前に比べると解説が若干コンパクトになったような気がします。

ただ、解説は以前と同様、条文の内容や判例の判旨をそのまま記載しているだけのものも多く、「条文や判決にはそう書いてあるんだろうけど、なんでそうなるの?」という部分がよく分からなかったりします。


スクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」は、解説はコンパクトですが、条文の制度趣旨などまでに遡って説明してくれているので、ある程度勉強が進んできた人であれば頭に残りやすく、早く回せると思います。

ただ、最近のスクール東京の問題集の解説は言い回しが独特になってきたので読みづらいと感じる人もいると思いますし、他の問題集に比べると改訂が遅めです。

スクール東京の成川先生は、以前に早稲田セミナーという司法試験予備校を経営していた方で、長年司法試験の講師をされていただけあって著書もインパクトのあるものが多いのですが、個性的な方なので相性が合わない人は合わないかも知れません。


短答式の過去問集は各予備校から出ていますが、一長一短で好みが分かれるところなので、試し読みしてみて、気に入ったものを買うと良いと思います。

解説だけで言うと伊藤塾の問題集も良いと思いますが、伊藤塾の問題集は問題数が少ないのがネックです。


●ASIN: B07XK14931

●ISBN-10: 4847146085

●ISBN-10: 4587226971


迷った場合には、スクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」を試し読みしてみて、「合わないな」と感じた方は、辰巳法律研究所の「短答過去問パーフェクト」を使うのが無難かな、と思います。


単純作業が苦痛でない人は「肢別本」が効率的です。

●ISBN-10: 4864664145

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトな問題集なので、速く回せます。

同級生が「1日で肢別本1冊読む」という人もいたので、気合いと根性がある人であれば、肢別本を選択肢に入れても良いと思います。

肢別本はアプリも出ています。




短答式の勉強のために「択一六法」を買う受験生もいます。

●ISBN-10: 4844974726

「択一六法」は先程紹介した東京リーガルマインド(LEC)の「C-BOOK」をコンパクトにまとめたような本です。

短答式対策の勉強をしていると、知識を整理するためにノートを作りたくなる衝動に駆られることがあるのですが、自分でノートを作るのは時間がかかるので、択一六法で代用できないか検討する価値はあると思います。

ロースクールの授業に重い基本書や六法を持っていくのが面倒なので、択一六法だけ持って授業を受ける猛者もいたりします。


以上、行政法のおすすめの勉強方法と基本書でした。

勉強の進め方は人それぞれなので、必ずしも上記のとおり進めなければならないという訳ではありません。

予備校に通っている方は、予備校の講義をペースメーカーにして進めていくと良いでしょう。

質問がありましたらコメント欄に記入してください。


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2020年04月01日

質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。
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勉強の仕方について
勉強の時、ノートのとり方がうまく行かないことはありませんでしたか。
最近、ノートを取らず、予備校本を読んで、問題集や過去問をやってわからない所は又予備校本を読んでを繰り返しております。
そこで、論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?
それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。
勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。
基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。
説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。
――――――――――――――――――――――――――
伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。
他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。
あまりうまく説明できませんが、宜しくお願いします。
――――――――――――――――――――――――――


  • ●論証集やノートを作る必要性について

司法試験の勉強における論証集やノートの使い方について質問がありましたので、お答えしたいと思います。

私も勉強を始めた頃は論証集(論証パターン)の扱いについて悩んだことがあるので、お気持ちは分かります。

結論としては、
(ア)自分で論証集・ノートを作る必要性があると感じていて、かつ時間があるのであれば論証集やノートを作れば良いと思いますし、
(イ)
現時点で論証集・ノートを作る必要性を感じていない場合や、論証集やノートを作る時間的余裕がない場合には、敢えて作る必要はないと思います。


参考として私が受験生の時にどうしていたかという話をしたいと思います。

私は、勉強を始めた頃は論証集やノートは作っていませんでした。必要性を感じていなかったからです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」など論文式試験用の問題集を読めば主要な論点の論証は載っていますので、論証を覚えたいのであれば、論文式試験用の問題集の問題と参考答案を何度も読みながら分からないこところを基本書や予備校本で調べるという作業を繰り返したり、参考答案を写経したりすれば良いと思います。

★ISBN-10: 433530370X

また、勉強を始めたばかりの頃や、自分の頭で考えて論証を作るよりも、出来の良い論証を丸暗記してしまったほうが学習効率が良いので、敢えて自分なりの論証集というものを作る必要性は低いと思います。(「守破離」の「守」、つまり、教わった型を守る)段階です。)



しかし、ある程度勉強が進んできて理解が深まってくると、「自分の頭で考えた論証」や「お気に入りの先生の基本書に書いてある論証」や「司法試験の優秀答案にあった論証」のほうを使いたいという場面出てくると思います。(「守破離」の「破離」、つまり、教わった型を自分なりに改善・改良できる段階になっていきます。)

こうなってくると「試験対策問題集 論文」などの論証を丸暗記するよりも、自分が理解したことや、腑に落ちたことをベースに論証を作って覚えたほうが、記憶に残りやすくなってくるんです。

また単に論点を学習する上で、過去の裁判例でどのような事案であったとか、どのような当てはめたがされたなどの情報を整理したくなってくることも出てきました。

そこで、私は「自分なりの論証を作ったほうが記憶に残りやすい」と感じた論点が出てきた時や、事案や当てはめを整理したい論証ができた時には、その論点について、ワードで自分なりの論証集を作るようにしていました。


たとえば、刑法の共同正犯の成立要件に関する論証ですが、一般的な予備校の問題集にある論証のままだと、事案への「当てはめ」がやりにくいと感じていたので、基本書や過去の判例を参考に以下のような論証を作っていました。


【ここから】

※C-book366、370、山口160、講義案318、ステップアップ101、終局起案手引25、

(1)
実行行為の一部を分担していないが
共謀に参加した者についても
共同正犯(60条)が成立しうるか
が問題となる

(2)
思うに、
「共同して犯罪を実行した」(60条)場合に
全員が正犯とされるという
共同正犯の正犯性の根拠は
各共謀者の
自らの犯罪を実現するために
共謀をなし
共謀に基づいて
相互に
他方の行為を利用・補充し合って
犯罪が実行された場合には
各関与者が
自ら事態の成り行きを操作して
直接的に
法益侵害またはその危険を惹起した
という意味で
各関与者が
自ら犯罪を実行したものと
規範的に評価できる点にある。
そこで、
①共同実行の事実
(共謀に基づいて
共謀者のいずれかが
実行行為を行ったこと)
②各被疑者が犯意を相互に認識したこと
(犯意の相互認識)
③各被疑者に
故意だけでなく
他の者と行為を利用・補充し合い
自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)があること
という要件を満たす場合には
実行行為の一部を分担しない者についても
共同正犯が成立しうると解する。
(最大決昭33.5.28:百選Ⅰ75))
(最決平15.5.1:百選Ⅰ76))

(3) あてはめ
→別途、表を作って整理

※講義案318-
実行共同正犯・共謀共同正犯のいずれにおいても上記の要件となる。
∵共同正犯の正犯性の根拠は共謀へ参加した点にある
→共同正犯の成否という観点では,
実行共同正犯と共謀共同正犯との間には何ら本質的な差異はない
実行共同正犯・共謀共同正犯の区別は
刑事訴訟法の訴因の特定や訴因変更において問題となるにすぎない
【ここまで】


そして、この論証集には、参考にした基本書・予備校本・判例集の頁・番号を記載し、答練をやったり、過去問をやって気づいたことや、気に入った論証のフレーズを加えていき、答練や試験の直前期に見直すようにしていました。


このような自分なりの論証集は全ての論点について作っていた訳ではなく、あくまで論証を作る必要性を感じた論点(自分で論証を作ったほうが理解しやすい、記憶に残りやすいと感じた論点)に絞って作っていました。

自分なりの論証集を作っていない論点については、伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を直前期に読んで覚えたり、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を直前期に読んで、暗記するという作業をしていました。




その他、論証の他に、似て非なる知識が出てきた時に、主に択一対策用に表を作って知識を整理する、といこともやっていました。

たとえば、民法であれば「共有」「合有」「総有」の違いを整理するとか、「代理」と「使者」の違いを整理したりするというものです。


以上のやり方は、あくまで私のやり方ですので、上記のとおりにしなければならないということではありません。

前記のとおり、①自分で論証集やノートを作る必要性があると感じているという点と、②論証集やノートを作っている時間があるのか、という2点から、作るかどうかを判断したほうが良いと思います。

受験生の中には、論証集やノートの作成に時間をかけすぎて、本番に間に合わなくなってしまう人もいますので、時間がない場合には、論証集は全て論文問題集や趣旨規範ハンドブックで代用するとか、ノートは択一六法で代用する等の判断が必要になってくると思います。


私の同級生の中には、自分の論証集やノートを一切作らずに合格している人も多数います。

論証集・ノートを一切作らずに合格している人は、問題演習をたくさんこなしながら、演習の復習の際に知識をインプットしている人が多かったように思います。





  • ●「論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。」


この点も人それぞれだと思います。

「普段のノート」について、どのようなものを作っていらっしゃるのか分からなかったのですが、私は趣旨規範ハンドブックをスキャンした上でOCRソフト(読取革命)で読み込んで、ワードに貼り付けて、そこに自分のメモを打ち込んでいくとう方法を取っていました。

「OCRソフト」とは以下のようなソフトです。

★ASIN: B0091L3FDS


しかし、OCRソフトを使っても、趣旨規範ハンドブックの内容をワードの貼り付けるという作業は結構時間がかかりますので(慣れている人でも丸1日くらいはかかると思います。)、私の方法は効率が良かったとは言えないとと思います。

私の同級生(合格者)は趣旨規範ハンドブックに手書きで、自分が必要だと思う情報をどんどん書き込んでいって、直前期に見直すという方法をとっていました。

ただ、この方法も、同級生曰く「趣旨規範ハンドブックが改訂される度に、手書きのメモを書き写さなければならないのが非常の面倒くさい」と言っていましたので(これも1日から数日かかるようです)、前記のようにワードにデータを貼り付けたりするのか、紙ベースで手書きで書き込んでいくかは、一長一短だと思います。



  • ●「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。」

「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く」という点については先程お話ししたとおりです。

自分なりの論証集や知識を整理したノートを作る必要性と時間があると思うのであれば作ればよいと思いますし、必要性を感じないとか、時間がないという場合にはノートを作る必要はないと思います。

「問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか」という点については、どのような形で問題演習をするかによると思います。

短答式の問題を解く場合であれば、事案図を書くためのメモ紙等があれば十分だと思いますし、肢別本をガンガン回す時にはノートは使わない人のほうが多いと思います。

論文式の問題集を使う時には、知識のインプットがメインであれば、ノートを使わずにとにかく読み込むというやり方でも良いと思いますし、実際に答案が書けるかチェックしたいということであればノートや答案用紙に実際に答案を書いてみるという作業をしたほうが良いと思います。

なお、司法試験の論文式の過去問を解く時は、下書き用紙に答案構成をした上で、本番と同じ答案用紙に答案を実際に書くという作業をするべきです。

答案用紙は法務省のHPからダウンロードできます。

http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00165.html





  • ●「基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。」

「基本書を7回読めとかいいますが」という点については、これも人それぞれだと思います。

以前の記事で書いていると思いますが、私は基本書を通読する必要性を感じなかったので、通読した基本書はほとんどありません(通読したのは入門書のみ。)。


他方で、問題演習をして腑に落ちない部分が出てきた時は、基本書や予備校本の該当箇所を何度も読んでいましたので、重要な論点に限って言えば、10回以上基本書を読んでいる部分もあると思います。

基本書を何回読むかが問題なのでなく、予備試験・司法試験の本番で実際に答案を書くことができるのか、合格点が取れるかどうかが問題です。

基本書を何度も読んで合格点が取れるようになるタイプであれば別ですが、そのような人は一部の天才だけなので、普通の受験生であれば、問題演習を中心に勉強をしていったほうが効率が良いと思います。

また、普通の受験生は基本書を7回も読んでいる時間はないと思います。

試しに基本書を1頁読むのにどのくらいの時間がかかるか計った上で、全8科目(憲・民・刑・民訴・刑訴・商法・行政・選択)の基本書の合計の頁数を掛けるみると、基本書の通読には膨大な時間がかかることが分かると思います。

実際に基本書を何度も通読して合格している受験生も少なくありませんので、基本書を通読するな、とは言いませんが、本当に基本書を7回も読む時間があるのかという点と、基本書を7回読んで試験本番で使える知識・技術がどれだけ得られるのかということを良く考えた上で、自分の必要な勉強方法が何なのかを選別していったほうが良いと思います。


なお、特殊な例として、基本書を論証集のように使っている人もいます。

基本書を読む時に、問題提起の部分、規範の部分、理由付けの部分、あてはめの部分をそれぞれマーカー色分けをして、基本書を読む時に、自分の頭の中で論証(もし論文式試験で問われたたらどういう答案になるのか)を構成しながら読むという高度な方法なのですが、地頭が良い方であればこういう方法もあると思います。

江頭先生や伊藤眞先生のような重厚な基本書でこれをやろうとするとかなりキツイと思いますが、最近は予備校本的な初心者にも優しい基本書も増えてきていますし、このような使い方が出来るのであれば、基本書を何度も読むというのもありではないかと思います。




  • ●「伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。」

論証集は色々なものがありますが、個人的には主要論点を抑えるという点で伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を使いつつ、細かい論点を押さえるために辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使うというのがお勧めです。

予備校本の巻末にも論証集は載っていますが、これらの論証集は基本的に事案が書いておらず、あてはめの記載もないため、使い勝手はあまり良くないです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」は、重要論点はほぼ網羅していて、答案例の質も良いのですし、あてはめもシンプルながら要点が押さえられています。

他方、「試験対策問題集 論文」は改訂が数年に1回しかないため、最新判例に関する論点や、近時の本試験で出題されたような先進的な論点については掲載されていないことあります。

そのため、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使って、論点に漏れがないようにカバーをしておくのが安全かと思います。







以上が私の意見ですが、分からないことがありましたらまた質問をいただければと思います。


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Comments(3) |  │   (22:00)


質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

――――――――――――――――――――――――――
いつも拝見させて頂いております。
先生の記事を見て司法試験の勉強を始めようかと迷っているところです。
特に、頑張り次第で億単位の収入が目指せ、青天井であるという世界に憧れております。

現在、26歳であり予備試験・司法試験を見据えると弁護士資格が取得できるのは30歳前後かと思います。
年齢を考えますと四大事務所に入所することは難しいです。
弁護士で億稼ぐというと、やはり四大事務所のパートナー先生というイメージor四大事務所出身で独立された先生というイメージがあります。
私のように社会人経験を経ている者でも資格取得後に経済的に成功されている方も周りにいらっしゃいますでしょうか?
もしくは、そうした金銭的成功を目指す場合は起業等別の手段をとるほうが良いのでしょうか。
先生の率直なご意見をお聞かせいただけると幸いです。
――――――――――――――――――――――――――


返事がとても遅くなってしまい申し訳ありません。

コメントをいただいた時にメールが来るように設定をしているのですが、メールを見逃してしまったようです。


私のような地方都市の一弁護士の意見が参考になるか分かりませんが、質問いただいた「社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは可能か」という点について、結論として不可能ではないと思います。

ただし、実力と努力と運次第だと思いますし、一般論として弁護士で1億円以上の額を稼ぐのはかなり大変なことですので、弁護士という職業に思い入れがないのであれば、敢えて弁護士という仕事に拘る必要もないと思います。




私が弁護士をしている地域は地方都市ですが、大御所の先生の2人から「昔は億を稼いでいた」という話を聞いたことがあります。

その先生は2人とも優秀な方ですが、四大事務所の出身ではありませんので、四大事務所所属の弁護士や、四大事務所出身の弁護士でなくても、1億円を超える収入を得る弁護士がいない訳ではありません。


ただ「億を稼いだ」と言っても、「収入」が1億を超えたという話であって、経費等を差し引いた「所得」の額が1億円を超えるかどうかは別の話です。

弁護士白書2015年版」によると、日本弁護士連合会が2014年に行った調査では、回答者3724人中のなかで、「年収」が1億円を超える弁護士は88人であり、「所得」が1億円を超える弁護士は7人であったとされています。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/4-1_jissei_2015.pdf

サラリーマンの「年収1億」と自営業者の「年収1億」は意味合いが違うので注意が必要です。




また、現在は地方都市の人口は減っていますし、企業も減ってきていますので、今から1億円を超える収入を目指すのであれば、首都圏で激しい競争を勝ち抜いていく必要があると思います。



昔はアメリカに留学してアメリカのどこかの州の弁護士資格を取るということが流行っていましたが、「そういう時代ではなくなったよね」という先生も増えてきたような気がします。

四大事務所に入るという方法は弁護士として成功するための1つの手段であるとは思いますが、四大事務所のような大規模事務所に入れたとしても、同じ事務所で働き続けて1億円を超えるような収入を得られる人はごく一部に限られています。


また独立して1億円の収入を得るためには、時代の流れに乗っていく必要もあります。

例えば、過払いが多かった時期は、過払いに特化することで大きな収入を得た弁護士がいましたが(過払いに特化していなくても昔は年収6000万円を超えたという話を先輩から聞いたことがあります。うらやましい。。。)今では過払いに特化して安定した収入を得ることは困難です。

現在は交通事故事件に特化して収入を得ている弁護士も多いですが、最近では自動車の安全機能が進化して交通事故の件数が減ってきていますし、自動運転が発達すれば交通事故はほとんど無くなるかも知れません。

このように、一口に大きな収入を得ると言っても、どのような手法で、何を目指して収入を得るのかは、時代の流れを読みながら自分の頭で考えていく必要があると思います。



その他、弁護士の中には、弁護士をしながら投資をしたり、他の事業を立ち上げて、そこから多額の収入を得ているという人もいます。(他方で投資や事業に手を出して失敗をする弁護士も少なくないと聞きますが・・・)


このように考えていくと、弁護士で1億円以上の収入を得るためには、企業の経営者や投資家と同様にもの凄い努力をする必要があるので、単に「お金を稼ぎたい」という目的なのであれば、敢えて目標を弁護士に絞る必要はないのではないかと思います。

弁護士を目指す人は、どちらからというと「弁護士という仕事を通じて人や社会の役に立ちたい」という気持ちを持っている人が多いと思います。

それなりの収入を目指すとなれば、とんでもない激務やストレスを覚悟する必要がありますから、お金以外に「なぜこの仕事を選んだのか」という明確な理由がないと、結果を残しつつ続けていくこと難しいと思います。

ですから、それなりの収入を得たいというのであれば、自分がどういう形で他人や社会に貢献したいと思うのかを良く考えて、辛いことがあっても信念を持って続けられるような仕事を選ぶことが重要ではないかと思います。






ちなみに弁護士に限らず、仕事をしてお金を得た場合には所得税という税金がかかります。

ご存じだと思いますが所得税は累進課税で、「所得」が4000万円を超えると45%もの税金がかかります。

そして、住民税が10%なので、お金をいっぱい稼いだとしても、結局半分以上は税金で持っていかれます。




他方、株式投資等で得た収入については、日本では税率は約20%しかかかりません。

お金持ちになりたいのであれば、弁護士よりも投資のほうが効率が良いかも知れません。

アメリカの有名な投資家チャーリー・マンガーも元弁護士ですし。

★ISBN-10: 4822255360



ちなみに、最近ですと弁護士の福永活也さんという方が大きな収益を上げて本を出しているようです。

この方も昔は一般企業で働いていたようですので、私の話よりもずっと参考になるのではないかと思います。


★ISBN-10: 4295403156







以上、

・社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは不可能ではないが、実力と努力と運次第

・収入だけに着目するのであれば、敢えて弁護士という職業に拘る必要はないと思います

というのが私の意見でした。


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Comments(1) |  │   (19:19)

2019年11月28日


質問をいただきましたので,回答したいと思います。

返事がかなり遅くなり申し訳ありません。

――――――――――――――――――――――――――
こんにちわ。はじめまして。質問させていただきたいことがあります。
今となってはイソベンやノキベンという言葉さえ取り上げられることも減ってしまいましたが社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合、どのようなキャリアになるのでしょうか。
例えば地元が東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらいでといったような具体的なお話が聞きたいです。
――――――――――――――――――――――――――


「社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合」のキャリアは様々ですが,ご質問があった「東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらい」という点に関して言えば

・東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上)は東京に就職をする。

・地方で就職を希望している人の多数(感覚的に7~8割)は地方に就職するが,地方で就職先を見つけられなかった場合は首都圏や大阪近辺で就職先を探して就職する。

・即独(弁護士登録と同時に独立)は,かなり少ない(100人中1人か2人いるかいないかのレベル)。

という感じだと思います。



  • ○東京で就職を希望している人

東京などの首都圏では,弁護士の数が増えていますが,東京の先生の話を聞くと,売り手市場になっているので,弁護士を採用するのが難しくなっているという話を聞きます。

弁護士が増え始めた60期(2006年修習開始組)くらいの弁護士が独立をし始めて,イソベンを募集している事務所が多いからではないか,という噂を聞いたりしますが,数年前に比べると就職氷河期という感じではありません。

そのため,30代であっても社会人経験があって,マナーや常識がある人であれば,東京で就職先を決めることは,現時点ではそれ程難しくないと思います。

ですから,東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上,自分の周囲に関して言えばほぼ100%)は東京に就職をしているというイメージです。



  • ○地方で就職を希望している人

他方,地方で就職先を探している人の7~8割くらいはそのまま地方で就職をしますが,地方では表だって弁護士を募集している事務所が比較的少ないこともありますし,タイミングによってはその地方で弁護士を募集していないということもありますので,コネがなかったりすると自分が希望した地域で就職先を見つけられないことがあります。

地方で就職先を見つけられなかった人は,東京などの首都圏での就職活動に切り替えて,首都圏の事務所に就職をするというパターンが一般的かと思います。



  • ○即独について

即独に関しては,就職氷河期と言われていた私の世代でもクラスに1人くらいしかいなかったので,年齢にかかわらず,割合は少ないんじゃないかと思います。

うちの弁護士会に来た修習生の中でも「即独をしました」という話は聞いたことがありません(私が知らないだけかも知れませんが。)。

即独はあまりお勧めしませんが,即独をするなら,東京などの首都圏よりも,弁護士の数が比較的少ない地方で,かつ即独に理解のありそうな弁護士会のある場所にしたほうが良いと思います。



  • ○その他のキャリアについて

社会人を経由して30代で司法試験に受かった人のキャリアは様々で, 

・もともと働いていた会社に戻ってインハウスロイヤーとして勤務した

・法テラスの要請事務所を経て法テラスのスタッフ弁護士として働いている

・元々特許関係の事務所で働いていたので戻って弁護士として勤務した

・元々司法書士事務所でアルバイトをしていたので,その司法書士事務所と共同で法律事務所を立ち上げた

という人もいました。



  • ○30代で司法試験に合格することについて

就職先やキャリアに関しては,あまり20代でも30代でも変わらないかと思います。

今は若い修習生が若干増えているような気もしますが,大御所の先生でも「俺も30代でやっと司法試験に合格したんだよな」という人も結構いますし,30代~40代の修習生は珍しくないので,採用する側も年齢だけでなく,その人の経歴,ポテンシャル,人柄のほうを気にすることが多いかと思います。

私の同級生の中でも,就職先がなかなか決まらなかった人はむしろ20代後半くらいの年齢の人が多かったです。

社会人経験のある30代は就職活動も一度経験している人が多いですし,受け答えもしっかりしている人が多いので,意外にあっさりと内定を取ってくる人も多いです。

「30代だから仕事が見つからないかも知れない」という危機感がある人が多いことも,内定の取りやすさに繋がっているのかも知れません。



20代と30代で変わる点があるとすれば

・四大事務所やそれに準じるような大手事務所は若い人材を採用する傾向があるので,30代だと大手事務所への就職が難しい(ただし,前職で特別な経験があれば例外もあるらしいです。)。

・20代から30代前半の弁護士は転職が容易だが(人によっては数年で4~5回事務所を変える人もいます。),30代後半になってくると,比較的転職は若干ハードルが高い。(けど,転職できない訳ではないし,独立をすればいいやという人もいる。)

・裁判官は基本的に若い人が任官するので,30代で司法試験に合格して裁判官を希望するのは難しい。(一度弁護士になってから,弁護士任官すればなれるかも知れません。)

・検察官は30代でも任官する人はいるが,若い人に比べるとハードルは高い。

というあたりでしょうか。



私は20代後半で司法試験の勉強を始めたのですが,なぜ司法試験を選んだかというと,司法試験の世界は,30代で合格しても他の資格に比べてハンデが少ないと思ったからです。


例えば公認会計士の場合,若くないと監査法人の就職は厳しいらしいですし(30代後半,40代での新採用は少ないので目立つらしいです。),公認会計士の友人の話を聞くと,監査法人に就職した後も,基本的にチームで仕事をするため,自分よりも全然若い上司からあれこれと指示をされたり,怒られたりするパターンがあるようです。


医師に関しても,一般的に医学部の高齢受験は大学によっては不利と言われていますし,30代で研修医になった友人の話を聞くと,やはり上下関係が厳しい世界であるため,年下の先輩から,あれこれと怒られたりするのが辛いと言っていました(医者になったのに,あまり嬉しくなさそう)。



他方,弁護士に関しては,司法修習中は指導教官(弁護士,裁判官,検察官)が年下というパターンはありますが,司法修習は監査法人や研修医に比べるとかなり緩いと思います。

こんなことを言ったら怒られるかも知れませんが,年齢関係なくあまり真面目に勉強をしていない修習生はあたり前にいるので,年下の先輩に怒られたり,怒鳴られたりするというパターンはかなり少ないと思います。むしろ,社会人経験があると,丁寧な接し方をされることが多いと思います。

私が弁護士になった後も,30代~50代の修習生が弁護士会にやってきますが,当たり前のことなので全く気になりません。

弁護士になった後も,基本的に個人で仕事をすることが多いので,年齢による上下関係を気にすることは,あまりありません。

弁護士の世界では相手方の先生が年上だから訴訟や交渉で気を遣うなんてことはあり得ないですし,年齢関係なく,主張したいことは主張できる世界だと思います。


なので,私は20代後半で転職を考えた時に司法試験を受けることにしたのですが,年齢を考えると結果的に正解だったなと思っています。




以上,あまり回答になっていないかもしれませんが,「絶対に四大事務所レベルの事務所への就職したい」とか,「裁判官になること以外は考えられない」などの特別な事情がないのであれば,年齢によって進路にそれほどの大きな違いはないと思います。

あまり年齢を気にせずに司法試験の勉強に専念するのが良いのではないかと思います。



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Comments(4) |  │   (12:28)

2019年10月24日


遅くなりましたが,今回は刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書などについてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の特徴


「刑事訴訟法」は,刑事手続(犯罪の捜査,処分,刑事訴訟の手続など)について定めた法律です。

「刑事訴訟法」と「民事訴訟法」は名前が似ているので,初学者の方は似たような科目だろうと思われるかも知れませんが,両者の性質はかなり違います。

「刑事訴訟法は苦手だけど民事訴訟法は得意」という受験生もいますし,「民事訴訟法は苦手だけど刑事訴訟法は得意」という受験生もいますので,同じ「訴訟法」という名前は付いていますが,得意不得意が分かれやすい科目です。

ただし,司法試験の受験科目の中でも,刑事訴訟法(その他,刑法,憲法)という刑事系科目は,少ない勉強時間で高得点を取れる可能性が高い科目ですので,「短期間」で司法試験に合格したい人にとっては,この刑事訴訟法という科目を素早く仕上げて得意科目に出来れば,あとは勉強時間の必要な民事系さえ守り切れれば意外とあっさりと司法試験に合格することも可能になります。


私も地頭は良くないほうですし,司法試験の勉強時間は少ないほうですが,少ない勉強時間で司法試験に合格出来たのも,刑事訴訟法,刑法,憲法という,比較的短期間で仕上げることが可能な科目で安定して高得点が取れるようになったから,という部分が大きいです。


なぜ,刑事訴訟法は短期間で高得点を取れる可能性があるかというと,それは法律知識だけでなく「事実の評価」という常識論で書くことができる部分に点が多く振られているからです(これは刑法,憲法も共通です)。


たとえば,放火事件が起きた現場で犯人を捕まえるために,ビデオで録画をするという捜査が適法かという問題が出た時に,その捜査にどのくらいの必要性があるのか,ということを論じる必要があります。

そして,たとえば問題文に

「過去に放火事件が起きた現場にも,今回ビデオ録画をする現場にも管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられている」
「現場は住宅密集地で道路も狭い」
「現場は人通りが少ない」
「これまでの犯行時刻はいずれも深夜である」

というような事情が書かれていた場合,

「本件でビデオ録画が行われた現場は,過去に放火事件が起きた現場と同様に管理人が常駐していない,誰でも出入りできる,同じような高級車がとめられているという共通点があり,犯人が当該現場において犯行に及ぶ可能性は高い。また,現場は住宅密集地であり放火事件が発生すれば延焼によって大きな被害が発生する可能性があるだけでなく,当該現場は人通りが少なく,これまでの犯行時刻がいずれも深夜であったことを考慮すると,警察官が現場に張り込んで捜査を行うことは困難である。したがって,本件現場においてビデオ録画の方法を用いて捜査を行う必要性が高い。」

みたいな答案を書くことになります。

上記の答案の箇所は,事実を結論につなげるために「評価」する部分になるのですが,上記の例を見てもらえれば分かるとおり,法律的な知識がなくても書ける部分なので,「名探偵コナン」とか「金田一少年の事件簿」のような推理漫画に出てきそうな発想が役立つ場面です。

そして,この法律的な知識がなくても書ける「評価」の部分は,論文式の問題をこなしたり,過去問を解いて慣れていけば,比較的短期間で高得点を稼げる部分になる部分です。


そのため,刑事訴訟法の論文式試験において短期間で高得点を取れるようになるためには

・基本的な論点知識を正確にインプットする(量はそれほど多くない)

・論文式の問題集や過去問をこなして「事実の評価」に慣れる

ということが大事です。


この点を踏まえた上で,刑事訴訟法の勉強方法とおすすめ基本書や参考書についてお話をしたいと思います。



■刑事訴訟法の入門書を読もう


刑事訴訟法の入門書としては,初学者の方には他の科目と同様「伊藤真の刑事訴訟法入門」をおすすめします。

●ISBN-10: 4535521638 

内容は基本中の基本のみ記載されていますが,コンパクトで分かりやすいので,読むのに挫折するということはまずないはずです。

図書館や喫茶店に2~3時間程籠もれば読み切ることができるでしょう。



他に最近出てきた入門書としては「入門刑事手続法」も良書だと思います。

●ISBN-10: 4641139245

ただし,「入門」という名前が付いてますが,入門書というよりもコンパクトな基本書に近いです。

「伊藤真の刑事訴訟法入門」と同じ感覚で読み進めようとすると結構しんどいと思いますので,初学者の方は無理して読む必要はないと思います。






■刑事訴訟法の論文問題集を読もう


入門書を読んだら早めに刑事訴訟法の論文問題集を読むと良いと思います。



読む論文問題集としては他の科目と同様「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。


●ISBN-10: 433530353X

●ISBN-10: 4335303637

「試験対策問題集 司法試験論文」と 「 伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」 の使い分けについては「●論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」を参照してください。

個人的には,「試験対策問題集 司法試験論文」のほうをおすすめします。

論文式試験に必要な法律知識としては,「試験対策問題集 司法試験論文」の「ケース」以外の部分をマスターすれば,9割は完成といって過言ではないと思います。

あとは答練などを利用して最新判例を押さえて,過去問をこなせばほぼ完璧でしょう。


実際,司法試験の受験生を見ていると,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ているような基本的な論点を落としている人も沢山います。

司法試験の受験生の刑事訴訟法のレベルはそれ程高くないと思いますので,この「試験対策問題集 司法試験論文」に出ている論点さえしっかり押さえておけば,合格者平均を超える法律知識はインプット出来ると思います。

実際,私も法科大学院に入った1年目の夏休みに,ひたすら刑事訴訟法と刑法の「試験対策問題集 司法試験論文」を繰り返したのですが,刑事訴訟法と刑法の成績が一気に上がり,刑事訴訟法に関しては学年1位になりました。

もちろん成績があがったのは法科大学院の授業の復習をやったからという面もありますが,基本的な論文式試験の答案を書けるようになったことで,一気に実力が付いたことを実感できました。


周りの受験生を見ていると「試験対策問題集司法試験論文よりも遙かに問題数の多い(100問以上)問題集をこなしている」という人もいるのですが,そういった人がきちんと基本問題の答案を書けるようなっているかというと,そういう訳でもありません。

普通の人間は,100問以上の答案の書き方を覚えるなんてなかなか出来ません。

せいぜい,1科目30問~50問程度が限度でしょう。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題は「ケース」を除くと約50問,Aランクの問題に絞ると30問程度ですので,答案の書き方を覚えるという点ではちょうど良い量だと思います。

「試験対策問題集 司法試験論文」の問題と参考答案を何度か読んだら,実際に自分で書いてみると良いです。

最初のうちは思うように書けないと思いますが,繰り返すうちに参考答案と似たような答案が書けるようになってくるはずです。

最終的に「規範」や「定義」の部分については,正確に書けるようにしましょう。




論文式試験の問題集としては他にも色々ありますが,個人的には「試験対策問題集 司法試験論文」の基本問題(ケース以外の部分)をやって,後述の答練,過去問をやれば問題演習としては十分だと思います。




■おすすめの刑事訴訟法の基本書と予備校本


刑事訴訟法の基本書は良書が多いです。

私が受験生時代にメインで使っていたのが有斐閣アルマの「刑事訴訟法」です。

最初にお話したとおり,司法試験・予備試験の刑事訴訟法の論文式試験で要求される法律的知識はそれほど多くはないので,コンパクトな基本書を使ったほうが勉強に無駄が生じにくく,効率的だと思います。

内容も実務寄りで,司法試験の基本書として使いづらいということもありません。

●ISBN-10: 4641220506

ただ,この本は私が受験生の時にある事件がきっかけで,一時出版停止になってしまったことがあり,それ以来ちょっと人気がないです。



「アルマはちょっと使いたくない」という人は,最近の基本書の中ではLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」が比較的使いやすいと思います。

個人的にはもうちょっとコンパクトなほうが好みですが,数ある刑事訴訟法の基本書の中では,このLEGAL QUESTの「刑事訴訟法」はコンパクトなほうで,読みやすいと思います。

●ISBN-10: 4641179336



最近の受験生の中には酒巻匡先生の「刑事訴訟法」という基本書を使っている人も少なくないと思います。

●ISBN-10: 4641139067

酒巻匡先生は以前に法学教室で「刑事手続法を学ぶ」という連載を担当されていて,その連載をもとに作られたと言われているのがこの「刑事訴訟法」という基本書です。

法科大学院の授業でも酒巻匡先生の文献が参考資料として指定されることが多く,受験生の間では神様みたいな存在なのですが,酒巻匡先生の「刑事訴訟法」は司法試験に合格するという観点から言えば,オーバースペックかなと思います。

ただ,刑事訴訟法の問題を解いたり,他の基本書を読んでいて,分からないことやスッキリしないことがあった場合に,酒巻匡先生の本を調べると鋭い切れ味の解説があることも多いので,ある程度勉強が進んできた後に辞書として使う分には理解が深り,知識の定着にも役立って良いと思います。




その他,基本書ではないのですが,手元にあると便利なのが「条解刑事訴訟法」です。

●ISBN-10: 4335356544

1300頁を超え価格も約2万円とまさに「条解」の名にふさわしいモンスターですが,私は司法修習以降,弁護士になった今でもこの「条解刑事訴訟法」をメインで使っています。

何が便利かというと,分からないことを調ると大抵答え書いてあるということ,そして内容が実務向けなので学説の対立に振り回され時間を費やすことがない,という点です。

この本は「辞書」なので,間違っても司法試験のためにこの本を最初から最後まで通読するということはやってはいけませんが,手元にあると便利です。

高い本なので無理して買う必要はないと思います。大学の図書館に1冊はあると思うので,司法試験に合格するまでは,調べたいことがあった時に図書館で使う,でも良いと思います。

司法修習生になると買う人が多いです。合格祝いに刑法と刑事訴訟法の「条解」を買ってもらうという人も。





予備校本については,通読用に使うのであれば伊藤塾の「刑事訴訟法 伊藤真試験対策講座」が良いと思いますし,辞書的に使うのであればLECの「C-Book 刑事訴訟法」が良いと思います。

●ISBN-10: 4335304919

●ISBN-10: 4844966057

●ISBN-10: 4844966065


私の同級生が基本書を一切読まずに「伊藤真試験対策講座」を使って司法試験に2桁で合格しているので,「伊藤真試験対策講座」を使って失敗するということはないと思います。

説明が丁寧な分,勉強が進んでくると,丁寧な説明が冗長に感じてしまうこともあるかも知れませんが,ポイントにマーカーを引くなど工夫することで,高速で何度も回せるようになるようです。



「C-Book」は私は2冊とも買って辞書として使っていました。

「C-Book」は学説や判例が整理されていて分かりやすいのですが,量が多いので通読をしようとすると時間不足になる可能性があるので注意してください。









■刑事訴訟法の判例集


刑事訴訟法の判例集は様々なものが出版されていますが,「刑事訴訟法判例百選」1冊で十分だと思います。

●ISBN-10: 464111532X

私も刑事訴訟法の判例集を何冊か買いましたが,最終的に使っていたのは「刑事訴訟法判例百選」です。

問題を解いたり,基本書を読んでいて,分からないことが出てきた時や,判例の詳しい事案を把握したい時などに使っていました。

通読すべきかという点については賛否両論あると思いますが,個人的には通読をする必要はないと思います。

判例百選のデメリットは字が小さいことですが,他の科目と同様に裁断・スキャンして電子書籍化することで字が小さいという問題は解決できます。

電子書籍化の方法は「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」という記事に書いてますので,そちらを参考にしてみてください。



■論文式試験の過去問の分析


刑事訴訟法は特に,司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問の分析は大事です。

最初にお話したとおり,刑事訴訟法は「事実の評価」の部分に点が多く振られています。

「事実の評価」は法律的な知識が無くても書ける部分ですが,慣れていないと,どのように「評価」すれば良いのかさっぱり分かりません。

私も初学者の頃「事実を評価しろって言うけど,評価って何だよ?」って思っていましたし,とても悩みました。

しかし,事実をどう「評価」すれば良いのかは,過去の司法試験(予備試験)の論文式試験の優秀答案を見れば一目瞭然です。

実際に司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解き,辰已法律研究所の「ぶんせき本」の優秀答案や予備校のコメントを読んだ上で,優秀答案の答案の書き方を真似してみましょう。


「評価」の仕方について,1人で悩むよりも,優秀答案を読んだり,書き方を真似をした上達するスピードは速いです。



なお,本試験形式の問題において,問題文にある重要な事実を答案で書かない受験生がいます。

事実に気づいていないか,事実に気づいていたものの答案に書きそびれてしまったかだと思いますが,問題文にある重要な事実は答案できちんと指摘して評価をしないと,点が伸びません。


例えば,事実を漏らさないようにする方法ですが,問題文を読む時に

必要性に関係がありそうな事実 ⇒ 赤の蛍光ペンを引く

緊急性に関係がありそうな事実 ⇒ オレンジの蛍光ペンを引く

相当性に関係がありそうな事実 ⇒ 緑の蛍光ペンを引く

というようにルールを決めて蛍光ペンを引いておき,答案を作成する時に,必要性について論じる時には赤の蛍光ペンが引かれている事実を書き写した上で評価する,というようにしておくと事実の書き漏らしが格段に減ると思います。


このように司法試験(予備試験)の論文式試験の過去問を解く時には,自分の中でルールを作ってみて,それを試してみる,ということも大事です。


■答練・直前模試を受けよう


遅くとも本試験の5ヶ月くらい前には予備校の答練を受けるべきです。

刑事訴訟法は特に新しい判例が次々と出ますが,本試験で最新判例を意識した出題がなされることが良くあります。

私が受験した年も最新判例を意識したと思われる出題がなされたのですが,予備校の答練で同じような問題が出題されており,直前模試の付録でも「この最新判例出題されるかも」としつこく注意をしてくれたため,本番は万全な体制で臨むことが出来ました。

最新判例に対する対策としては「重要判例解説」を読むという方法もあるのですが,判例集を読んでいるだけでは答案は書けるようにはなりません。

●ISBN-10: 4641115931

実際に最新判例を題材とした問題を解き,優秀答案を参考にしたりすることで,高得点の答案を書けるようになります。

特に刑事系に関しては予備校の答練・模試と似た問題が本試験で出題されることも多いので,出来るだけ予備校の答練・模試を受けた上で,きちんと復習をしておきましょう。

どの予備校の答練を受けるか迷った場合には,「●予備校の答練について」という記事を参考にしてください。

個人的には受講生の多い予備校の答練を受けることをおすすめしています。



なお,本番で答練と同じような問題が出た時にには「思い込み」に注意してください。

本試験では「答練と同じように見えるけど,実は違う問題」が出ることがあります。

ヤマが当たったと思った時には一度深呼吸をして,落ち着いて本当に同じ論点で間違いないのかきちんと見極めるようにしましょう。






■短答式試験(刑事訴訟法)の勉強方法


司法試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野は出題されません。

そのため,予備試験を受験せずに,法科大学院に進学して司法試験を受験する人は,刑事訴訟法の分野については短答式試験の勉強をする必要はありません。

他方,予備試験の短答式試験では,刑事訴訟法の分野も出題されるので,予備試験の受験を考えている人は,短答式試験対策もしておく必要があります。


これまでお話しているとおり,短答式試験の勉強方法は,比較的単純で,短答式試験の過去問集を買ってきて読んだり解いたりしてみて,分からないところがあれば,基本書や予備校本,判例集で調べる,という単純作業の繰り返しだけで,成績が伸びていきます。



短答式試験の過去問集は,個人的にはスクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」が,解説がコンパクトで速くまわせるのでおすすめです。

解説も「考えて答えが出せるように」となかなか攻めた内容になっているので,人によっては「頭に残りやすい」と感じる人もいると思いますし,他方で「もう少し客観的な解説が欲しい」と感じる人もいるかも知れません。

●ISBN-10: 4905444284

●ISBN-10: 4905444276




詳細な解説があったほうが良いという人には,辰已法律研究所の「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」が良いと思います。

これを使う場合には時間不足にならないようにスケジュール管理に注意してください。

●ISBN-10: 4864663874



時間がない人は,「肢別本」が速く回せるのでおすすめです。

肢別本は,1問1答になっていて解説がコンパクトなので早く回せるのがメリットです。

気合いと根性がある人は,肢別本が一番効率が良いと思いますが,苦行っぽくなりがちで,私のように意思が弱い人間にとっては挫折しやすいのがデメリットです。


●ISBN-10: 486466420X


その他,短答式の勉強として,他に「択一六法を何度も読み込む」という方法がありますが,刑事訴訟法に関してはおすすめしません。

短答式の問題を解きながら,自分用のノートを作る代わりに択一六法にマーカーを引いていき,直前に見直せるノートとして使う,という方法であれば択一六法を使うにもアリだと思います。

また,択一六法は予備校本をコンパクトにしたような本なので,コンパクトな辞書が欲しいという時には便利だったりします。

●ISBN-10: 4844964712



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