判例集の要否等について質問がありましたので,お答えしたいと思います。
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判例集は買うのが当たり前と言われますが、判例は結構ネットに公開されています。
はじから読むものではないようなので買う必要はありますか。
go!シリーズのはしがきでも、民法改正前の物でもあるにもかかわらず紹介されていた「伊藤誠の判例シリーズの民法」は買いましたが、これは改正前の物でもあまり関係なくつかえそうで良かったです。
憲法はアマゾンのレビューでも結構良いからオススメと買いてありました。
判例集はどこまで必要か少し考えてしまいます。
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- ○判例集の要否等について
「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」等の記事でも書きましたが,個人的には判例集は全科目買っておくことをおすすめしています。
勉強を始めたばかりの最初のうちは判例集に目をとおしても何が書いてあるのか理解できないことも多いので,初期段階では判例集は無くても良いかも知れません。
私も判例集を買い始めたのは勉強がある程度進んできてその必要性を感じるようになってからでしたし,最初のうちは「判例百選なんて無くてよいだろう」と思ってました。
しかし,ある程度勉強が進んでくると判例集(特に判例百選)が手元にあったほうが便利な場面が増えてくると思います。
司法試験・予備試験では論文式試験・短答式試験ともに,判例をもとに作られた問題が出題されることが多いため,判例の理解は不可欠です。
ここでいう「判例の理解」とは,(1)事案がどのようなものであったかということと,(2)裁判所がどのような理由を述べて,(3)どのような規範を立てて(あるいは規範を立てないで),どのような(4)結論を出したか,という点に関する理解です。
もちろん判例集に載っている全ての判例を理解することは不可能ですので過去問で問われたような判例や,有名な判例に絞って理解をすれば良いのですが,いずれにせよ判例の勉強は必要になってきますし,その時に判例集があったほうが勉強の効率が良いと思います。
判例については,基本書や予備校本にも記載はありますが,基本書・予備校本は判例の結論しか記載していないことも多く,先程お話した「(1)事案(2)理由(3)規範(4)結論」のうち,「「(1)事案(2)理由(3)規範」の全部または一部が分からないということが多々あります。
そういう時に判例の「(1)事案(2)理由(3)規範(4)結論」がコンパクトに整理された判例集があると便利なのです。
また特に最高裁の判例などでは,判例の理由や規範がはっきりしないものも多いのですが,そういった判例については判例集に付いている判例評釈で詳しい説明がなされていたり,関連する下級審判例に関する情報が記載されていることが多いので,そういった点でも判例集があると便利です。
そのため,ある程度勉強が進んできた後は判例集を手元に置いておくことをおすすめしています。
そして,論文式試験・短答式試験の過去問を解いたり,答練や問題演習をしていて,「この問題の元になっている判例良く分かってないな・・・」と思った時に,判例集で該当する判例とその解説を読むと理解が深まり,試験での対応能力も上がっていきますし,試験であさっての方向の結論を導いて不合格になってしまうリスクも減らすことが出来ると思います。
ただし,受験生の中には,判例集をほとんど使わずに合格出来る人もいると思います。
私が受験生のとき,周りの受験生は(知っている範囲では)全員判例集を持っていましたが,個人的な感覚としては判例集をほとんど使わずに司法試験に合格することも不可能ではないと思います。
判例集をほとんど使わずに試験に合格するのであれば,過去問をきちんと分析し,答練などを大量に受けて,判例の知識は問題集・答練の解説で全てインプットするくらいの気持ちで復習をし,本試験で答練等と同じような判例を元にした問題が出題されれば,判例集を使わなくても本試験に合格できる可能性は十分にあると思います。
もっとも,判例集がないと,問題演習をしたり,基本書等を読んでいて,分からないことが出てきた時に疑問が残ったままモヤモヤする場面が増えてくると思いますので(答練の解説等にも細かいことまでは書いていないので),個人的にはあまりケチらずに判例集は手元に置いておいたほうが精神衛生上も良いだろうと思いますし,勉強も効率的に進められると思います。
- ○おすすめの判例集について
私は判例集をいろいろ買いましたかが,最終的に判例百選があれば十分だと思っています。
「伊藤真の判例シリーズ」は分かりやすくて便利なので私もほぼ全科目持っていましたし,初学者にはおすめですが,私は判例百選ほどは使っていません。
「伊藤真の判例シリーズ」の解説は平易なので初学者にとっては便利なのですが,勉強を始めた頃は判例集を読むことはそれほど多くないですし,勉強が進んでくると「伊藤真の判例シリーズ」の解説だけでは物足りなくなる場面も出てきました。
また「伊藤真の判例シリーズ」は掲載されている判例数が判例百選よりも圧倒的に少なく,「判例を調べようと思ったが載っていなかった」という場面が出てくると思います。
司法試験の問題を作成する際,出題者は判例百選及び重要判例解説に載っている判例か否かを意識しているという話を良く聞きますので,分からない判例が出てきても判例百選・重要判例解説に載っていない判例であれば「試験でメインで問われる可能性は低いだろうから,取りあえず結論だけ押さえておこう」という方針を立てることができます。
なので,勉強の範囲を適切に絞るという意味でも判例百選のほうが便利かと思います。
ただし「伊藤真の判例シリーズ」は,百選レベルの判例のうち,特に重要なものを厳選して掲載していますので,重要判例に絞って理解を深めていきたいという場合には,「伊藤真の判例シリーズ」は便利だと思います。
また,判例百選は解説をしている人がバラバラなので,解説に「当たり外れ」があります。判例百選の解説の質が悪いという意味ではないのですが,司法試験向きの解説でないものもあるので,そういった意味では司法試験向きの解説のみが記載されている「伊藤真の判例シリーズ」のほうが便利です。
また,判例百選は解説をしている人がバラバラなので,解説に「当たり外れ」があります。判例百選の解説の質が悪いという意味ではないのですが,司法試験向きの解説でないものもあるので,そういった意味では司法試験向きの解説のみが記載されている「伊藤真の判例シリーズ」のほうが便利です。
判例百選以外の判例集としては「判例インデックス」が使いやすいと思います。
「判例インデックス」は,判例百選よりも事案・判旨・解説がコンパクトで読みやすく,しかも事案図が付いているので,自分でわざわざ事案図を書く必要がありません。
そのため高速で判例を把握することができます。
デメリットとしては解説が短いので,疑問解消のために使おうとしても「判例インデックス」だけでは疑問が解消しないことがあります。
判例百選は字が小さく生理的に受け付けない人もいると思いますので,そういう人は「判例インデックス」を候補に入れても良いと思います。
それから買う必要はありませんが,「最高裁判所判例解説」の存在も知っておいたほうが良いとと思います。
「最高裁判所判例解説」は,最高裁判例のうち特に重要な判例について,最高裁判所の調査官(裁判官のエリート)が解説をしているもので,解説は詳細で分かりやすいものが多いです。
判例が関連する論点について理解が出来ずにモヤモヤしている時に「最高裁判所判例解説」を読むと疑問が解消することが良くあります。
裁判官が書いているものなので解説も回りくどくありませんし,「裁判官はそう考えているんだ」という納得が出来ます。
なので,私は判例が関連する論点について調べ物をする時は,
(ア)調査官解説がある判例については調査官解説を読み,それで疑問が解消しなかった時には判例百選の解説を読む
(イ)調査官解説がない判例については判例百選の解説を読む
というようにしていました。
ただし「最高裁判所判例解説」は解説が長いものが多いので(短いのもありますが),自分が必要としている解説に行き着くまで時間がかかります。
「最高裁判所判例解説」が肌に合わない人は,受験生の段階では判例百選があれば十分でしょう。
「最高裁判所判例解説」は価格が高く冊数も膨大なので,大学の図書館などに置いてあるもの(DVD版もあります)を利用すると良いと思います。
ロースクールによっては判例システムで「最高裁判所判例解説」を見ることが出来るところもあると思います。
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