弁護士

2019年11月28日


質問をいただきましたので,回答したいと思います。

返事がかなり遅くなり申し訳ありません。

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こんにちわ。はじめまして。質問させていただきたいことがあります。
今となってはイソベンやノキベンという言葉さえ取り上げられることも減ってしまいましたが社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合、どのようなキャリアになるのでしょうか。
例えば地元が東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらいでといったような具体的なお話が聞きたいです。
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「社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合」のキャリアは様々ですが,ご質問があった「東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらい」という点に関して言えば

・東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上)は東京に就職をする。

・地方で就職を希望している人の多数(感覚的に7~8割)は地方に就職するが,地方で就職先を見つけられなかった場合は首都圏や大阪近辺で就職先を探して就職する。

・即独(弁護士登録と同時に独立)は,かなり少ない(100人中1人か2人いるかいないかのレベル)。

という感じだと思います。



  • ○東京で就職を希望している人

東京などの首都圏では,弁護士の数が増えていますが,東京の先生の話を聞くと,売り手市場になっているので,弁護士を採用するのが難しくなっているという話を聞きます。

弁護士が増え始めた60期(2006年修習開始組)くらいの弁護士が独立をし始めて,イソベンを募集している事務所が多いからではないか,という噂を聞いたりしますが,数年前に比べると就職氷河期という感じではありません。

そのため,30代であっても社会人経験があって,マナーや常識がある人であれば,東京で就職先を決めることは,現時点ではそれ程難しくないと思います。

ですから,東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上,自分の周囲に関して言えばほぼ100%)は東京に就職をしているというイメージです。



  • ○地方で就職を希望している人

他方,地方で就職先を探している人の7~8割くらいはそのまま地方で就職をしますが,地方では表だって弁護士を募集している事務所が比較的少ないこともありますし,タイミングによってはその地方で弁護士を募集していないということもありますので,コネがなかったりすると自分が希望した地域で就職先を見つけられないことがあります。

地方で就職先を見つけられなかった人は,東京などの首都圏での就職活動に切り替えて,首都圏の事務所に就職をするというパターンが一般的かと思います。



  • ○即独について

即独に関しては,就職氷河期と言われていた私の世代でもクラスに1人くらいしかいなかったので,年齢にかかわらず,割合は少ないんじゃないかと思います。

うちの弁護士会に来た修習生の中でも「即独をしました」という話は聞いたことがありません(私が知らないだけかも知れませんが。)。

即独はあまりお勧めしませんが,即独をするなら,東京などの首都圏よりも,弁護士の数が比較的少ない地方で,かつ即独に理解のありそうな弁護士会のある場所にしたほうが良いと思います。



  • ○その他のキャリアについて

社会人を経由して30代で司法試験に受かった人のキャリアは様々で, 

・もともと働いていた会社に戻ってインハウスロイヤーとして勤務した

・法テラスの要請事務所を経て法テラスのスタッフ弁護士として働いている

・元々特許関係の事務所で働いていたので戻って弁護士として勤務した

・元々司法書士事務所でアルバイトをしていたので,その司法書士事務所と共同で法律事務所を立ち上げた

という人もいました。



  • ○30代で司法試験に合格することについて

就職先やキャリアに関しては,あまり20代でも30代でも変わらないかと思います。

今は若い修習生が若干増えているような気もしますが,大御所の先生でも「俺も30代でやっと司法試験に合格したんだよな」という人も結構いますし,30代~40代の修習生は珍しくないので,採用する側も年齢だけでなく,その人の経歴,ポテンシャル,人柄のほうを気にすることが多いかと思います。

私の同級生の中でも,就職先がなかなか決まらなかった人はむしろ20代後半くらいの年齢の人が多かったです。

社会人経験のある30代は就職活動も一度経験している人が多いですし,受け答えもしっかりしている人が多いので,意外にあっさりと内定を取ってくる人も多いです。

「30代だから仕事が見つからないかも知れない」という危機感がある人が多いことも,内定の取りやすさに繋がっているのかも知れません。



20代と30代で変わる点があるとすれば

・四大事務所やそれに準じるような大手事務所は若い人材を採用する傾向があるので,30代だと大手事務所への就職が難しい(ただし,前職で特別な経験があれば例外もあるらしいです。)。

・20代から30代前半の弁護士は転職が容易だが(人によっては数年で4~5回事務所を変える人もいます。),30代後半になってくると,比較的転職は若干ハードルが高い。(けど,転職できない訳ではないし,独立をすればいいやという人もいる。)

・裁判官は基本的に若い人が任官するので,30代で司法試験に合格して裁判官を希望するのは難しい。(一度弁護士になってから,弁護士任官すればなれるかも知れません。)

・検察官は30代でも任官する人はいるが,若い人に比べるとハードルは高い。

というあたりでしょうか。



私は20代後半で司法試験の勉強を始めたのですが,なぜ司法試験を選んだかというと,司法試験の世界は,30代で合格しても他の資格に比べてハンデが少ないと思ったからです。


例えば公認会計士の場合,若くないと監査法人の就職は厳しいらしいですし(30代後半,40代での新採用は少ないので目立つらしいです。),公認会計士の友人の話を聞くと,監査法人に就職した後も,基本的にチームで仕事をするため,自分よりも全然若い上司からあれこれと指示をされたり,怒られたりするパターンがあるようです。


医師に関しても,一般的に医学部の高齢受験は大学によっては不利と言われていますし,30代で研修医になった友人の話を聞くと,やはり上下関係が厳しい世界であるため,年下の先輩から,あれこれと怒られたりするのが辛いと言っていました(医者になったのに,あまり嬉しくなさそう)。



他方,弁護士に関しては,司法修習中は指導教官(弁護士,裁判官,検察官)が年下というパターンはありますが,司法修習は監査法人や研修医に比べるとかなり緩いと思います。

こんなことを言ったら怒られるかも知れませんが,年齢関係なくあまり真面目に勉強をしていない修習生はあたり前にいるので,年下の先輩に怒られたり,怒鳴られたりするというパターンはかなり少ないと思います。むしろ,社会人経験があると,丁寧な接し方をされることが多いと思います。

私が弁護士になった後も,30代~50代の修習生が弁護士会にやってきますが,当たり前のことなので全く気になりません。

弁護士になった後も,基本的に個人で仕事をすることが多いので,年齢による上下関係を気にすることは,あまりありません。

弁護士の世界では相手方の先生が年上だから訴訟や交渉で気を遣うなんてことはあり得ないですし,年齢関係なく,主張したいことは主張できる世界だと思います。


なので,私は20代後半で転職を考えた時に司法試験を受けることにしたのですが,年齢を考えると結果的に正解だったなと思っています。




以上,あまり回答になっていないかもしれませんが,「絶対に四大事務所レベルの事務所への就職したい」とか,「裁判官になること以外は考えられない」などの特別な事情がないのであれば,年齢によって進路にそれほどの大きな違いはないと思います。

あまり年齢を気にせずに司法試験の勉強に専念するのが良いのではないかと思います。



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2019年08月23日

コメント欄で質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

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突然のコメント失礼します。 
現在公務員として働いていますが、弁護士資格に挑戦したいと思い、法学初学者ですがこのブログを参考に勉強を進めております。 
弁護士としての働き方について質問なのですが 
在宅勤務で弁護士資格を生かすことができる仕事はあるのでしょうか? 
物理的な意味で(自宅でも仕事ができる、出社退社が縛られない等)自由度が高い仕事がしたいと思ってるのですが、例えば業務委託という形でメールでの質問に一つ返答するごとに報酬として5千円もらえるといった働き方をイメージしています。 

不明瞭な質問かもしれませんが、お時間あるときにご回答お願いいたします。
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  • ●自宅で仕事をする弁護士について

質問者さんは弁護士として在宅勤務をすることを考えているとのことですが,私の周りの特に年配の弁護士の中には,自宅兼事務所という形で自宅で仕事をしている人は少なからずいます。

ただ,メールだけで仕事をするという形ではなく,相談者や依頼者に自宅兼事務所に来てもらって打ち合わせをしたり,訴訟のために裁判所などに出頭したりしているので,質問者さんのイメージとはちょっと違うと思います。


それから,個人的には弁護士が自宅で仕事をすることにはリスクもあると思っています。

弁護士は事務所の住所を弁護士会に登録しなければならないことになっていて,登録した事務所の住所は弁護士会のホームページなどで公開されるんですよね。

つまり,自宅で仕事をするということは,自宅の住所を世間一般に公開するということになります。

そして,弁護士の事務所には,事件の相手方や関係者が突然事務所に押しかけてきたりすることもありますし,一度お断りをした相談者が何度もやってくることもあります。

また大きな事件に関わったりすると,マスコミの取材の電話が何度も来ることもあります。

自宅と事務所が同じ場所だと,自分が寝ている夜中や休みの日などにも事件の相手方や関係者などが来る可能性があり,身を休めることが出来なくなるリスクも無い訳ではありません。

個人的には弁護士は紛争に介入する仕事である以上,リスクを回避するためにも,出来れば自宅と事務所は分けておいたほうが精神上良いのではないかと思っています。






  • ●メールでの法律相談について

「メールでの質問に一つ返答するごとに報酬として5千円もらえるといった働き方」は私もモデルとして想像してみたことは一応あるのですが,不特定多数を相手方にするという形だと結構ハードルが高いような気がします。

メールのような文章の形で一般的な内容の法律相談をするサービスとしては既に「弁護士ドットコム」というサービスがあります。

また,メールで具体的な内容の法律相談を実施しようとすると,弁護士の側からも様々な質問をしなければならないので,メールでやり取りをすると何往復もやり取りをしなければならず,相談者としても弁護士としても手間がかかるケースが多いと思います。

例えば「離婚を考えているのですがどうしたら良いでしょうか。」という相談があった場合,弁護士としては

「いつ結婚しましたか。」「別居していますか。いつから別居しましたか。どのように別居がはじまったのですか。」「お子さんはいますか。何人いますか。それぞれ何歳ですか。貴方と相手方のどちらが主に面倒をみていますか。どのように面倒をみていますか。」「貴方と相手方の年収はそれぞれいくらですか。それぞれお仕事は何をしていますか。」「貴方と相手方の財産は何がありますか。マイホームはありますか。住宅ローンはありますか。残額はいくらですか。預金はありますか。保険には入っていますか。積立てしている年金はありますか。退職金の制度はありますか。」・・・のように質問をしなければならないことが山ほどあります。

上記の質問は一部で,質問に対する回答をもらうと,さらに質問をしなければならない事項が増えていくこともあります。

これをメールで全部やり取りするには,予め必要な情報を整理して送ってもらうなど,何らかの工夫が必要になると思います。




  • ●電話での法律相談について

上記のようにメールでの法律相談は大変な部分もあるので,在宅で相談を受けるとすると,メールよりも電話相談のほうが効率が良いと思うのですが,電話相談にも問題がない訳ではありません。

弁護士に関するルールを定めた「弁護士職務基本規程」には,同じ案件について一方の当事者から相談を受けた場合には,その相手方の相談は受けてはならないというルールがあり,弁護士が相談を受ける時には,過去に相談者の相手方から相談を受けたことがないかをチェックします。

そのため,法律相談を受ける時には,本人確認をすることも重要な作業になるのですが,電話相談の場合,相談者の素性が良く分からないことも多く,利益相反の確認がきちんと出来ない可能性もあります。

そのため,私は新規の相談者や面識のない相談者については,電話での法律相談はお断りするようにしています。

在宅で不特定多数の方から電話相談を受けるとなると,上記のような利益相反の確認や本人確認をどうやって行うのか,ということが問題なるかも知れません。


また,法律相談を受ける時には,資料を持ってきてもらうことも多いのですが,電話やメールのやり取りだと,「この資料のこの部分についてですが・・・」というような話をしても通じないことも多く,手間がかることは結構あります。

この点についてはスカイプのようなテレビ会議を使うと少し解決できるかも知れませんが。



  • ●企業との顧問契約に基づくメール・電話での法律相談について

上記のような問題をクリア出来る方法の1つとしては,企業と顧問契約を結び,顧問先の企業から日々,メールや電話でその企業がかかる問題について法律相談を受けたり,契約書のチェックをする等,在宅のインハウスローヤー的な仕事をするという方法が考えられると思います。

ベテランの弁護士の中には,企業との顧問契約が多くなるにつれて,訴訟案件等を扱っている時間よりも,顧問先の企業からの法律相談を受けている時間のほうが多い,という弁護士も少なからずいると思います。

IT企業を顧問先とする弁護士などであれば,メールで法律相談をやり取りすることも多いのではないかと思います。

もっとも,企業によっては「直接事務所に行って顔を見ながら相談をしたい」という場合もあると思いますし,弁護士としても「書類や図面を確認しながら話をしないと良く分からないので,事務所に来てもらうか,自分が顧問先の会社に行って直接話をしたい。」ということも出てくると思います。

また,企業と顧問契約を結んで法律相談を受けていると,訴訟をしなければ解決しない問題も出てきますし,逆に「訴訟を起こされた」という相談もあると思いますので,法律相談だけで業務が終わらないことも多々あります。

そして,訴訟になれば当然に裁判所に出頭しなければなりませんので(管轄の裁判所が遠方の場合には,電話会議が使えることもありますが),全てを在宅勤務で完結させるのは難しいと思います。

また,企業から顧問契約を獲得するためには,企業から弁護士としての信用を得ることも大事ですが,企業と多くの顧問契約を結んでいる法律事務所は,一等地に立派な事務所を構えていることも少なくありません。自宅で弁護士業務を行う場合,企業等からどのようにして信頼を得るかということも考えなければならないと思います。

リーハルハイというドラマでは,主人公の弁護士(古美門研介)は多くの企業と顧問契約を結んで,立派な自宅兼事務所でのんびりと生活してましたが,現実的にはあのような生活をするのはハードルが高いと思います。ただ,弁護士として企業の信頼を得られるような大きな実績があれば可能性があるかも知れません。



  • ●実際に訴訟等の実務を行うことの重要性について

それから,弁護士として法律相談を受けるためには,実際に裁判所に行って訴訟や調停などの実務を行うことも大事だと思います。

司法試験や司法修習では基本的なことは勉強しますが,実務の細かい部分については,実際に弁護士になってから身体を動かして汗をかいて経験しないと分からないことが多いです。

例えば,離婚の相談1つをとってみても,「離婚できそうかどうか」「親権はどうなりそうか」「養育費がいくらになりそうか」「財産分与はどのあたりが落としどころになりそうか」といった相談は,実際に離婚事件を何度も経験して得られる知識も多いです。

企業の相談であっても,実際に訴訟や調停を経験したり,企業の現場を多く見ることで法律相談に適切な回答が出来るようになるケースも少なくありません。

そのため,在宅勤務だけしかしたことがなく,訴訟等の実務をほとんどしていないという弁護士だと,法律相談を受けても形式的な回答しかすることができず,相談者が本当に求めていることについて答えてあげられない場面も出てくると思います。




  • ●まとめ

弁護士の働き方は様々な形があって良いと思いますが,「在宅勤務で法律相談」という相談者さんの希望を実行するには,個人的には上記のように解決しなければならない問題がいくつかあると思いますので,問題を解決していくためには新たな発想が必要になって来ると思います。

相談者さんが上記のような問題を解決する方法を見つけられれば,何らかの形で「在宅勤務で法律相談」というモデルも成立させることができるかも知れません。


その他,法律相談や従来型の弁護士業務の範囲に拘らなければ,在宅勤務の形は色々とあると思いますし,弁護士のイメージから離れて「法律に詳しいけど○○が出来る人」という立ち位置になれれば,在宅勤務の可能性ももっと広がっていくかも知れません。


たとえば,弁護士資格や司法試験合格という履歴を活かして在宅勤務をするとすれば,英語と英米法も勉強した上で,専門性の高い法律系の翻訳家になるという方法や,外国語の契約書を作成するサービスを立ち上げる等のモデルも考えられるかも知れません。

翻訳の仕事をしている人の中には,在宅勤務をしている人も多く,私の知人でも翻訳家として自宅で働いている人がいますので。



その他「弁護士資格があり,法律に詳しくて,話が上手い人。勉強を教えるのが上手な人」という立ち位置であれば,自宅でYoutubeを活用しながら,法律系のネタをメインにしたユーチューバー,などというモデルもあるかも知れません。Youtubeで安定した収入を得るのは結構ハードルが高いですけどね。

その他,インターネットを活用した司法試験予備校なども増えてきていますので,自宅でネットを使って司法試験受験生向けの講義を行う,というモデルなどもあるかも知れません。

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2019年08月05日


質問をいただきましたので私見についてお答えしたいと思います。

※※※※※※※※※※※※※※※※
はじめまして。
いつもブログを拝見させていただいているものです。
いきなりで恐縮なのですが1つ質問させていただきます。

それは弁護士事務所の労働環境についてです。もちろん事務所の大きさ等によって変わるのは重々承知なのですが、一般的な弁護士の一週間、一月あたりの業務量(残業時間)はどれくらいなのでしょうか?

お忙しいところ恐縮ですが、ご返答頂けますと幸いです。
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弁護士の労働時間(残業時間)についてですが,やはり法律事務所のスタイルや,弁護士の仕事に対する考え方によって変わってきます。


  • ●出勤・退勤の時間

私はだいたい9時頃に事務所に行き,夜の8時前後に事務所を出ています。

忙しい時期は夜10時頃まで働くこともありますが,逆に事件が落ち着いている時には午後6時ないし7時頃に家に帰ることもあります。


朝は裁判所の期日がだいたい10時頃から入ることが多いので,9時から10時の間頃に事務所に行く弁護士が多いように思います。

朝方の弁護士だと朝の7時頃に出勤して,期日前に書面を1通仕上げてしまう,なんて人もいます。


夜は事務所のスタイルによると思いますが,夜でないと連絡が取れない依頼者(昼間仕事をしていて夜でないと電話に出られない等)が多いと,必然的に帰りは遅くなります。

また,首都圏の忙しい事務所の就職したりすると,毎日午前0時頃まで働いて,土日のいずれかは事務所に行く,という弁護士も少なくないと思います。東京の事務所に就職した私の同期の多くは忙しそうですね。

他方,私の同期の中には,午後5時前にボス弁から「飲みに行くぞ」と言われて毎日飲みにつれて行ってもらっていた弁護士がいて,「羨ましいな」と思っていたのですが,間もなくその事務所を辞めてしまいましたね。収入が少なかったのかも知れません。


  • ●場所による違い

あくまでも私の同期や周りの弁護士の話ですが,一般的に東京のの弁護士は夜や土日も働いている弁護士が多いように思います。

他方,そこそこの地方都市では,18時とか19時という比較的早めに時間に帰る弁護士が多いような印象を受けます。

ただし,地方中の地方というような弁護士過疎地になると,抱えている事件が多くなって(自分以外に受ける人が少ないので仕事を断りにくい),忙しく働いている弁護士も少なからずいるように思います。



  • ●弁護士の考え方による違い

何時まで働くかはやはりボス弁や弁護士の考え方によっても変わってきます。

ワーカホリック的な仕事が趣味みたいな弁護士は夜も土日も事務所にいて何かしていますし(仕事をしているとは限らないけど),労働事件を扱う弁護士なのに自分は過労死ラインを超えて働いている,なんてこともあります。

また事務所に来た事件を上手く断れない人は労働時間が長くなりやすいと思います。



他方,せっかく自由業の弁護士になったのだからと言ってワークライフバランスを大事にしている弁護士もいますし,子供が小さいので早く帰らなければいけないという弁護士もいます。

珍しいですが,私の知っている弁護士の中には午前中は仕事はしないという弁護士や,おおむね週休3日にしている弁護士もいますね。

弁護士は医師と違って依頼があっても必ず受けなければならない訳ではなく,業務が多忙であれば断ることが出来ますので,そういった意味では仕事の量の調節がしやすい仕事です。


それから,弁護士によっては事務所にいると言っても仕事しているとは限らないです。

事務所に漫画を置いておいて仕事の合間に気分転換のために漫画を読んでいる弁護士もいますし,自分の机周りに高級なスピーカーを置いて音楽を楽しんでいる弁護士なんかもいます。


なので,弁護士の労働時間(残業時間)は本当に様々です。


裏を返せば,沢山働いて多めの収入を得るのか,ワークライフバランスを大事にしてそこそこの収入を得るのかという選択をしやすいという点は,弁護士の仕事の魅力だとと思います。

質問の答えになっているか分かりませんが,やはり弁護士の労働時間は様々だという結論でご容赦いただければと思います。



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Comments(2) |  │   (19:29)

2019年07月23日

就職活動について質問を受けましたのでお答えしたいと思います。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※
はじめてコメントさせていただきます。 
突然申し訳ありません。 

弁護士事務所への就職活動について教えてください。 
私は、公務員として約3年働いており、予備試験に受かって、今年司法試験を受けました。 

現在就職活動をしているのですが、実際にどのようにすればいいのかわからない部分が多々あります。 
説明会すら参加させていただけないことも多々あります。 
私の年齢が悪いのか、出身大学、LSのランクが低いのか、ESの内容が悪いのか、わからない部分があります。 

先生は、比較的すぐに内定をいただいたとブログで拝見させていただきましたが、どのように就職活動をされていたのでしょうか。 
ご経験など教えていただけると幸いです。 

よろしくお願いいたします。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※


司法試験の受験おつかれさまでした。

今年司法試験を受験されたということは,まだ司法試験の合格発表前ということですね。

私が就職活動を開始したのは司法試験の合格発表後なので参考になるか分かりませんが,私の経験も踏まえてお話したいと思います。



  • ●司法試験受験後から合格発表までの就職活動について

司法試験の合格発表前に採用を行っている法律事務所はありますが,司法試験の合格発表前に採用を行っている法律事務所は大手の法律事務所がほとんどなので,競争倍率も激しいです。

そのため,司法試験の合格発表前に内定をとれる受験生は一部だけであり,司法試験の合格発表前に内定をとれなかったとしても悲観する必要はないと思います。

いわゆる四大法律事務所(アンダーソン,長島大野,西村あさひ,森濱田)は,司法試験の合格発表前に司法試験受験生の採用を行っていることは有名ですし,四大以外にも合格発表前に採用活動を行っている事務所はあります。

司法試験の合格発表前に採用活動を行っている法律事務所は,司法試験の成績では採用の可否を判断できないので,「出身大学がどこか」「ロースクールがどこか」「ロースクールの成績」「予備試験の成績」等で判断することが多いです。

私の修習同期で司法試験の合格発表前に就職が決まっていた人は,主に東大ロー,慶応ローの出身者や,予備試験で成績が良かった人などです。

私と同じ地方のロースクールの出身者でも合格発表前に採用が決まっていた人はいましたが,その人はロースクールで首席だったので,地元の有力な法律事務所に引き抜かれたというケースでした。


こんな感じで見てみると,合格発表前に内定が取れる人は

・主に東大ロー,慶応ローの出身者(その他京大,一橋,中央,早稲田ロー等の出身者など)

・予備試験合格者で成績が良かった人

・その他ロースクールで成績がとてもよかった人(首席・次席レベル)

というケースが多いように思います。


私は地方ロースクールの出身ですし,ロースクールの成績も悪くなかったものの首席・次席レベルには至らなかったので「合格発表前に就職活動しても内定は取れないだろう」と開き直って,就職活動もせずにダラダラ(ネット見たり遊びに行ったり)していました。

質問者さんは合格発表前から就職活動をされているということですので,意識が高い方だと思います。

どの事務所に入りたいかにもよりますが,大手の事務所・有名な中堅の事務所に入りたいのであれば,諦めずに面接の申込みや,サマークラークの申込みなどをしてみて頑張ってみるしかないと思います。(四大などは時期的にもう内定が出揃う頃なので,ちょっと厳しいかも知れませんが。)

大手の事務所・有名な中堅の事務所以外でも良いということであれば,合格発表後にいくらでもチャンスはあります。というか,後述のとおり大手の事務所・有名な中堅の事務所以外は,合格発表後でないと内定をくれないところも多いです。




  • ●合格発表後の就職活動について

司法試験の合格発表の後,就職活動を始める人が増えてきます。

合格発表前は「自分が合格しているか分からない」と思って就職活動をしない人も多いですし,私みたいに「合格発表前に就職活動しても内定は取れないだろう」と思っている人も多いので,合格発表を機に就職活動を始める人が増えてくるのです。


そして,この頃から「●ひまわり求人求職ナビ」というサイトや,「●ジュリナビ」というサイトで,説明会や求人に関する情報が増えてくると思います。

そういったサイトを利用したり,各法律事務所の求人ページを見ながら,面接の申し込みをすると良いと思います。

また主に首都圏で合同説明会が行われますので,首都圏での就職を希望するのであれば説明会にも参加しておくと良いと思います。

特に弁護士の就職活動はボスとの相性の問題もあり,「数うち当たる」的な要素があるため,「お祈り」され続けても諦めずに淡々と続けることが大事だと思います。



それから,司法試験に合格したことが分かったら,お世話になった方々にお礼・合格報告の手紙やメールを出してコネを作っておくこともお勧めです(SNSを使った報告等もあり)。

就職先の法律事務所の規模にもよりますが,弁護士の就職はコネがあったほうが断然就職しやすいと思います。

私が早期に就職が決まったのは,このお礼・合格報告の手紙・メールのおかげです。

私は司法試験に合格したことが分かった後,地方で就職活動をしようとしたのですが,地方では法律事務所の求人情報が少なくて困りました。

お世話になった人にお礼をしたいという気持ちもあったので,「何か良い情報をもらえればラッキー」くらいの気持ちで,お世話になった方々(大学・ロースクールの先生,前の職場の上司・同僚,同級生,友人など)にお礼の手紙やメールを出したりしていたところ,何人の方から「就職決まったの?」とか「知り合いに弁護士いるけど採用出来るか聞いてみる?」という連絡をもらうことが出来ました。

そして,何人かの方に弁護士を紹介してもらい,事務所を訪問したり,弁護士に飲みに連れていってもらっているうちに,何人かの先生から就職のお誘いをいただき(就職活動らしい就職活動もしないまま)司法修習が始まって間もなく就職が決まりました。

採用する側からすると,採用される側の人間が「どんな人か?」というのは一番心配するところだと思います。


そして,「どんな人か?」は履歴書やエントリーシートを見ても良く分かりません。

そんな時に知り合いから「この子は悪い子じゃないよ」「変な子ではないよ」「ヤバイやつじゃないよ」という話を聞ければ,安心して採用しやすくなるのだと思います。

なので,司法試験に合格したことが分かったら,色々な人に手紙を出したり,メールを送ったり,SNSを活用したりして,コネを作っておくと良いと思います。




  • ●司法修習開始後の就職活動について

司法試験に合格すると,最高裁から「実務修習の希望地を出して」という連絡が届きます。

就職活動を楽に進めるという観点からは,実務修習地は就職を希望している場所にしたほうが良いです(希望が必ず通る訳ではありませんが)。

というのも,実務修習の中で就職が自然に決まっていく人が結構いるからです。


良くあるのが弁護修習をした法律事務所にそのまま就職するケース。

採用する側としては,司法修習生がどのような人か見極めてから採用をしたいものです。

そんな時に弁護修習で「こいつ仕事出来そうだな!」「悪い奴じゃないな!」と思われれば,弁護修習先のボスから「うちに来る?」と声をかけてもらえる可能性があります。

私は弁護修習の時,指導担当(弁護士)に頻繁に指導・注意をされていたので「嫌われてるのかな・・・」と思っていたのですが,ある日,修習先の事務所の別の弁護士から「就職決まってるの?ボス(指導担当)がウチで君の面倒みてあげると言っているけどどう?」と声をかけてもらいました。

既に就職先が決まっていたので丁重にお断りしましたが,こんな風に弁護修習先に声をかけてもらえるケースは良くあります。

また,弁護修習先が就職を希望する場所でなかったとしても,修習を一生懸命やっていれば,弁護修習先の弁護士から,他の法律事務所を紹介してもらえることもあります。

ですから,実務修習はあまり手を抜かずに一生懸命やりましょう。







  • ●和光に戻ってからの就職活動について

今は弁護士の就職状況は売り手市場なので,普通に就職活動をしていれば和光(司法研修所)に戻る頃(二回試験の2~4ヶ月前)には就職先は決まっていることが多いと思います。

もっとも,就職活動をサボっていたり,運が悪かったりすると和光に戻る時期になっても内定をもらえていない,というケースがあります。

就職活動をサボっていた人も,さすがにこの頃になると焦って就職活動を頑張りはじめます。

「周りの同級生の多くが就職先も決まって二回試験に向けて勉強をしているのに,自分はまだ就職活動をしているなんて・・・」と悲観的になりがちなのがこの時期です。


しかし,この和光に戻った時期,二回試験の直前の時期は,実は内定をもらいやすい時期でもあります。

なぜかというと,大手以外の法律事務所の場合,すぐに来てくれる弁護士を採用したいことが多いからです。

特に比較的弁護士の数が少ない法律事務所の場合,1年後の事務所経営や仕事の状況がどうなっているか良く分からないのに,1年後のためにわざわざ司法修習生に内定を出したりするのは勇気がいることです。

そして,急にイソベンが辞めたりして「今すぐ来てくれる弁護士が欲しい」となって,採用をするパターンが結構あるのです。

二回試験の直前の時期になると,司法修習生であっても「あと数ヶ月すれば就職できます」「すぐ働けます」という状況になるので,大手以外の法律事務所にとっても,司法修習生に内定を出した後の見通しが立てやすく,採用を決めやすい状況になっているのです。

二回試験の直前の時期や二回試験が終わった頃に時期に,評判や条件の良い法律事務所が突然求人情報を出すこともあります。

そのため,二回試験の直前期になると,それまで内定をもらえていなかった人も,どんどん就職先が決まっていきます。

なので,運悪く二回試験の時期までに就職先が決まらなかった場合でも,悲観的にならずに淡々と就職活動を続けると,(よっぽど運やマナーが悪くない限り)就職先は見つかると思います。


私のロースクールの同期の中に司法修習が終わっても就職が決まらなかった人がいましたが,その人は年明けにある有名な中堅事務所へ就職が決まりました。

事情を聞くと,その中堅事務所では突然弁護士が辞めて人手不足になって困っており,すぐに働ける若い弁護士を探していたようです。そして,すぐに働ける申込者は司法修習が終わっても就職が決まっていなかった同期くらいしかいなかったため,即採用となったとのことでした。

同期は「就職が決まらなかったことでもの凄く凹んでいたが,司法修習が終わってライバルの数が減ったことで逆に有名な事務所に入れて運が良かった。」「先に就職が決まった他の同期よりも待遇も良くて恵まれていると思う。」というようなことを言ってました。

なので,就職がなかなか決まらなくても諦めずに就職活動を続けていれば良い事務所に就職できる可能性はあります。



  • ●就職先がなかなか決まらない人の特徴

質問者さんは社会人経験があり,既に就職活動もされているようですので,就職活動を続けていれば就職先は見つかると思います。

ですから,あまり心配をされる必要はないかと思います。


他方,なかなか就職先が見つからない人には,特徴があります。

一つは就職活動らしい就職活動をしていないケース。

一般的な大学生であれば就職活動の時期になると,本を買ったり説明会に参加して就職活動に関する情報を仕入れて,いくつもの会社に申込みをして,面接をいくつも受けて内定を取る,ということを当たり前のようにしています。

しかし,司法試験の合格者の中には就職活動らしい就職活動をしない人が結構いるんです。

私の同期にも飲みに行ってばかりで,あまり勉強も就職活動もしていない人がいました。

そういう人は二回試験の直前になっても就職先が決まらないことがあります。

就職活動を真面目にやっていないので,就職先が決まらないのは当然と言えば当然です。

(ただし,そんな人でも最終的に就職出来てしまうのが,この業界の良いところだと思います。)

一般的な大学生向けの本でも良いので,就職活動対策用の本を何冊か読んで,面接での注意点,エントリーシートの書き方等について考えて実行すると良いと思います。

私は「内定勝者」という本を何冊か読みました。

●ISBN-10: 4569841627





なかなか就職先が見つからない人の2つ目のケースが,マナーや社会常識を身につけていないケース。

質問者さんは社会人経験があるとのことなので問題はないと思いますが,司法試験合格者の多くは社会人経験がないので,社会常識やマナーを勉強したことがない人が結構います。

例を挙げると

・目上の人よりも先にタクシーに乗ってしまう,目上の人より先をスタスタと歩いてしまう。

・目上の人にエレベーターのボタンを押させる。

・初対面の目上の人に名刺を渡さない。というか,名刺も名刺入れも持っていない。

・目上の人にごちそうになったのに「いただきます」「ごちそうさまでした」を言わない。お礼状を出さない。

・就職活動の面接に行くのに,見た目がロック過ぎる(髪型つんつん,シルバーアクセだらけ等)。

こんな修習生が意外といます。


こういう修習生でも就職先が決まったりするのですが,顧問先を多く抱えている弁護士などは「この子が就職した後に,顧問先の社長に合わせて失礼にならないか」「この修習生にゼロからマナーや社会常識を教えるのは大変そうだな・・・」ということ等を気にします。

なので,早めに内定を取りたいのであれば1冊で良いのでマナー本を買って読んでマナーや社会常識を身につけておくと良いです。

私は「図解 マナー以前の社会人常識」という本を買って読みましたが,社会人経験があったにもかかわらず,マナーが全然出来ていなかったことに気付きました。エレベーターに乗るときの振る舞いや,名刺のやり取りのマナーなどは,知らないと出来ないことも多いですからね。(公務員って営業活動をしないので,意外とマナーに疎いこともありますし。)。

弁護士は接客業ですし,偉い人と飲みに行くことも多いので,マナー本を1冊で良いので読んでおくと,その後の弁護士の仕事でも役立つと思います。

●ISBN-10: 4062569639


裏を返せば,きちんと就職活動への対策を立てておき,マナーなども覚えて,早い段階から就職活動をしておけば,司法修習の後半になっても就職先が決まらない,などと言う事態は(運が悪くない限り)起こらないと思います。

私が就職した時は司法試験合格者が2000人を超えていて,今よりも景気も悪かったので就職氷河期と言われていましたが,それでもきちんと就職活動をしていた同期のほとんどが司法修習が終了するまでに就職先が決まっています。(司法修習が終わっても就職先が決まらなかった人達は,前記のようにまともに就職活動をしていなかった人や,あまりにロックすぎる人達などです。)

今は合格者数も減り売り手市場になってきており,最近の司法修習生を見てものんびりとしていても就職先が決まっている人が多いので,きちんと就職活動の対策を考えて就職活動する,マナーを覚えるということを心がけていただければ,就職についてそれほど心配することはないのではないかと思います。


もしまた不明な点などあればコメントしていただければ分かる範囲でお答えしたいと思います。


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Comments(8) |  │   (16:55)

2019年04月01日


※※※※※※※※※※※※※※※
お世話になります。
お忙しい中大変恐縮ですが、もう一つ質問させてください。
弁護士業界はこれから40年、どのようになると考えますか。

今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。
私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。

一方で弁護士はAIの台頭により、これから無くなる職業として挙げられています。晴れて弁護士になったとして、比較的高給であるが先が短いのではないかと考えてしまいます。若手から50代までのキャリアパスは一般的にどのようになりますか。弁護士は将来も需要があるのでしょうか。

学生時代からの夢。諦めるつもりはさらさらありませんが具体的なビジョンが欲しいです。
よろしくお願いします。
※※※※※※※※※※※※※※※



弁護士の将来については,

(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか

という問題と

(2)弁護士数と人口のバランス

を考える必要があると思います。


(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか



まず(1)の「弁護士の仕事がAIに取って代わられるか」という点については,「現時点での制度を前提にすると,交通事故等の一部の分野を除いて,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

以下理由を述べていきます。


・判例を集めるのが難しい,判例を集めたとしても画一的な方針を決めることが難しい

「弁護士の仕事がAIに取って代わられる」という論拠の根拠として,「AIは膨大な量の判例を記憶して,その中から適切な解決方法を選択し,書面等まで作成することができる。だから,弁護士の仕事がAIに取って代わられるんだ。」ということが言われていると思います。

しかし,AIが「膨大な量の判例」を記憶するためには,AIにインプットするための「膨大な量の判例」を用意しなければなりませんが,現在の制度では公表されている判決はごく一部だけであり,AIが必要とするだけの判例を用意することは困難だと思います。

我々が普段弁護士業務をしている中でも「判例システム」を使って似たような判例を探すということはやっていますが,似たような判例がデータ上存在しない,というケースが多々あります。

むしろ,全く同じ事例はないと言っても過言ではないですし,全く同じ事例がないからこそ弁護士という仕事が必要になっています。

そういった時は,弁護士が依頼者から良く話を聞いた上で,自分の頭で考えて最善の方針を立てる必要がありますが,こういった作業はAIが不得意な分野だと思います。



・日本では規範を立てずに結論を出している判決が多い

裁判官が判決を書くためには,裁判官が「規範」という基準を作って,それに事実を当てはめて結論を導く,というやり方をするのが本来の姿です。

このような本来の姿の判決が多くあればAIに情報をインプットすることで画一的な結論を導ける可能性はあると思うのですが・・・しかし実務では裁判官が「規範」と立てずに結論を出している裁判例がとても多いです。

特に最高裁の判決などを見ていると,なぜそのような結論になったのか,理由がはっきりしないものが少なくありません。

この「規範を立てない判決」は批判もされているところですが,なぜ判決がそのような結論になったのか理由がはっきりしない場合には,どのような事実が結論に影響を与えるのか,判例評釈などを大量に読んだ上で自分の頭で考えて推測を立てていくしかありません。

判決の結論に至る理由がはっきりしない以上,AIに大量の判決の情報をインプットしたとしても,AIが画一的な結論を導くということは難しいと思います。



・和解に関するデータを集めるのが難しい

また,民事訴訟の半数以上は,判決によらずに「和解」と言って話合いで解決されています。

依頼者の利益を最大化するためには,和解についても適切な判断をする必要があります。

AIが「和解をすべきか」「和解をするとしてどういう和解をすべきか」という判断をするためには,和解に関する大量のデータを集める必要があります。

しかし,成立した和解のデータは公表されていませんし,和解に至る過程についても裁判所の記録にはほとんど残っていませんので,AIにインプットするための和解のデータを集めるのも難しいと思います。

さらに,和解をするためには,相手方が何を考えているかを推測した上で,駆け引きをすることが必要なることもありますが,AIにそのような駆け引きがどこまで出来るかという問題もあります。



・まとめ

以上のように考えると,「日本において,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

ただし,交通事故等の一部の分野については,裁判例のデータが大量にありますし,判決に至る基準も基本的に「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」や「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本などがあり,比較的しっかりしてます。

なので,交通事故等の分野に限って言えば,必要な情報を入力することで自動的に訴状を作る,といったシステムを作ることは可能ではないかと思います(比較的シンプルな事案であれば,今でもそういったシステムは作れると思います。)。

ただ,こういったシステムを作ったとしても,個人が1件の交通事故だけのためにシステムを買うということはちょっと考えにくいので,法律事務所がシステムを購入して弁護士の業務の補助に使う,という形になるのではないかと思います。





(2)弁護士数と日本の人口のバランス


弁護士の将来を考える上では,AIの問題よりも「弁護士数と日本の人口のバランス」の影響のほうが大きいと思います。

現在は司法試験の合格者も1500人程度となり,就職難の状況も解消されたようですが,依然として弁護士の数は増え続けています。

日弁連の資料によれば「司法試験合格者1500人を維持していくと,法曹人口総数は,2062年に6万5324人となって,新規法曹資格者と法曹でなくなる者が均衡し,安定する。この時の弁護士人口は5万7464人と予想される。」とされています。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2016/1-3-7_tokei_2016.pdf

2018年の弁護士数は4万0066人で日本全体の人口が約1億2644人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約3156人です。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2018/1-1-1_tokei_2018.pdf

他方,前記のとおり2060年頃の弁護士数が5万7464人だとして,「平成30年版高齢社会白書」によると2060年頃の予想される日本の人口が9284万人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約1616人です。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html


仮に司法試験の合格者が1500人のままだとすると,単純計算で弁護士1人あたりの日本人口が半分程度になり,その結果,弁護士の平均収入も半分程度になってしまうかも知れない,ということが考えられます。

ただ,私はこの点についても少し楽観視をしていて,いずれ日本の人口が減り,学生の数が減るについて,司法試験の合格者数も減っていくと思いますし,弁護士の収入が半分程度になってしまう可能性も低いと思います。

弁護士の就職難が問題になった時も,国もさすがにまずいと思ったのか,司法試験の合格者数を絞っていますし,今後,仮にまた弁護士に就職難が問題になるようなことがあれば,司法試験の合格者数を減らす方向の議論が出てくると思います。

また,日本の人口が減るということは,企業においても労働力が減るということですので,元弁護士等,ある程度専門的な知識を持った人材を今よりも多く採用するという場面が出てくるかも知れません。

現在も,一部の自治体が弁護士を公務員として採用しようと募集をしていますが,なかなか弁護士からの応募が無くて弁護士を採用できないでいる,という状況があるようです。

したがって,弁護士の数が増え,日本の人口が減るにつれて,本来の弁護士業務以外の仕事をする弁護士(又は元弁護士)が増えていったり,司法試験の合格者数が減り,受給バランスがそれほど大きくは崩れないのではないかと思っています。

また,私の現在の収入を前提にすると,仮に収入が半分になったとしても食べていけないことはないかと思います。

個人的には,仮に弁護士としての仕事が大幅に減るようなことがあれば,人生1回しかない訳ですし,他にもやってみたい仕事がたくさんあるので,他の仕事に挑戦してみたいと思っています。




(3)弁護士の資格を取ることはキャリアの自由度が増えるということ


最後に。

質問者された方は「今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。」という不安を抱えて,弁護士を目指されているということですが,私も公務員をしていた時,同じような不安を抱えていました。

今振り返ってみると,あの頃の自分の視野は狭かったなと思います。

司法試験に合格した今になって思うことは「人生は思ったよりも自由なんだ」ということです。

司法試験に合格した後のキャリアとしては,一般的には弁護士・裁判官・検察官等になる人が多いですが,司法試験に合格して法律の基本的な知識を身につけることで,仕事の幅はそれ以外の職業,例えば経営者,政治家,経営コンサルト,企業や官公庁のインハウス等,色々な職業に広がっていきます。

司法試験に合格すると,仮に他の仕事に挑戦をして失敗をしたとしても,また弁護士に戻れって頑張って働けば食べられないということはないだろう,という安心感があります。

なので,司法試験に合格するということは,弁護士という仕事を目指すというだけでなく,人生の選択肢を広げるという観点でも挑戦をする価値はあるかと思います。


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