弁護士

2019年04月01日


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お世話になります。
お忙しい中大変恐縮ですが、もう一つ質問させてください。
弁護士業界はこれから40年、どのようになると考えますか。

今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。
私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。

一方で弁護士はAIの台頭により、これから無くなる職業として挙げられています。晴れて弁護士になったとして、比較的高給であるが先が短いのではないかと考えてしまいます。若手から50代までのキャリアパスは一般的にどのようになりますか。弁護士は将来も需要があるのでしょうか。

学生時代からの夢。諦めるつもりはさらさらありませんが具体的なビジョンが欲しいです。
よろしくお願いします。
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弁護士の将来については,

(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか

という問題と

(2)弁護士数と人口のバランス

を考える必要があると思います。


(1)弁護士の仕事がAIに取って代わられるか



まず(1)の「弁護士の仕事がAIに取って代わられるか」という点については,「現時点での制度を前提にすると,交通事故等の一部の分野を除いて,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

以下理由を述べていきます。


・判例を集めるのが難しい,判例を集めたとしても画一的な方針を決めることが難しい

「弁護士の仕事がAIに取って代わられる」という論拠の根拠として,「AIは膨大な量の判例を記憶して,その中から適切な解決方法を選択し,書面等まで作成することができる。だから,弁護士の仕事がAIに取って代わられるんだ。」ということが言われていると思います。

しかし,AIが「膨大な量の判例」を記憶するためには,AIにインプットするための「膨大な量の判例」を用意しなければなりませんが,現在の制度では公表されている判決はごく一部だけであり,AIが必要とするだけの判例を用意することは困難だと思います。

我々が普段弁護士業務をしている中でも「判例システム」を使って似たような判例を探すということはやっていますが,似たような判例がデータ上存在しない,というケースが多々あります。

むしろ,全く同じ事例はないと言っても過言ではないですし,全く同じ事例がないからこそ弁護士という仕事が必要になっています。

そういった時は,弁護士が依頼者から良く話を聞いた上で,自分の頭で考えて最善の方針を立てる必要がありますが,こういった作業はAIが不得意な分野だと思います。



・日本では規範を立てなで結論を出している判決が多い

裁判官が判決を書くためには,裁判官が「規範」という基準を作って,それに事実を当てはめて結論を導く,というやり方をするのが本来の姿です。

このような本来の姿の判決が多くあればAIに情報をインプットすることで画一的な結論を導ける可能性はあると思うのですが・・・しかし実務では裁判官が「規範」と立てずに結論を出している裁判例がとても多いです。

特に最高裁の判決などを見ていると,なぜそのような結論になったのか,理由がはっきりしないものが少なくありません。

この「規範を立てない判決」は批判もされているところですが,なぜ判決がそのような結論になったのか理由がはっきりしない場合には,どのような事実が結論に影響を与えるのか,判例評釈などを大量に読んだ上で自分の頭で考えて推測を立てていくしかありません。

判決の結論に至る理由がはっきりしない以上,AIに大量の判決の情報をインプットしたとしても,AIが画一的な結論を導くということは難しいと思います。



・和解に関するデータを集めるのが難しい

また,民事訴訟の半数以上は,判決によらずに「和解」と言って話合いで解決されています。

依頼者の利益を最大化するためには,和解についても適切な判断をする必要があります。

AIが「和解をすべきか」「和解をするとしてどういう和解をすべきか」という判断をするためには,和解に関する大量のデータを集める必要があります。

しかし,成立した和解のデータは公表されていませんし,和解に至る過程についても裁判所の記録にはほとんど残っていませんので,AIにインプットするための和解のデータを集めるのも難しいと思います。

さらに,和解をするためには,相手方が何を考えているかを推測した上で,駆け引きをすることが必要なることもありますが,AIにそのような駆け引きがどこまで出来るかという問題もあります。



・まとめ

以上のように考えると,「日本において,弁護士の仕事がAIに取って代わられる可能性は低いだろう。」というのが個人的な見解です。

ただし,交通事故等の一部の分野については,裁判例のデータが大量にありますし,判決に至る基準も基本的に「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」や「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本などがあり,比較的しっかりしてます。

なので,交通事故等の分野に限って言えば,必要な情報を入力することで自動的に訴状を作る,といったシステムを作ることは可能ではないかと思います(比較的シンプルな事案であれば,今でもそういったシステムは作れるはず。)。

ただ,こういったシステムを作ったとしても,個人が1件の交通事故だけのためにシステムを買うということはちょっと考えにくいので,法律事務所がシステムを購入して弁護士の業務の補助に使う,という形になるのではないかと思います。





(2)弁護士数と日本の人口のバランス


弁護士の将来を考える上では,AIの問題よりも「弁護士数と日本の人口のバランス」の影響のほうが大きいと思います。

現在は司法試験の合格者も1500人程度となり,就職難の状況も解消されたようですが,依然として弁護士の数は増え続けています。

日弁連の資料によれば「司法試験合格者1500人を維持していくと,法曹人口総数は,2062年に6万5324人となって,新規法曹資格者と法曹でなくなる者が均衡し,安定する。この時の弁護士人口は5万7464人と予想される。」とされています。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2016/1-3-7_tokei_2016.pdf

2018年の弁護士数は4万0066人で日本全体の人口が約1億2644人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約3156人です。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2018/1-1-1_tokei_2018.pdf

他方,前記のとおり2060年頃の弁護士数が5万7464人だとして,「平成30年版高齢社会白書」によると2060年頃の予想される日本の人口が9284万人ですから,弁護士1人あたりの日本人口は約1616人です。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html


仮に司法試験の合格者が1500人のままだとすると,単純計算で弁護士1人あたりの日本人口が半分程度になり,その結果,弁護士の平均収入も半分程度になってしまうかも知れない,ということが考えられます。

ただ,私はこの点についても少し楽観視をしていて,いずれ日本の人口が減り,学生の数が減るについて,司法試験の合格者数も減っていくと思いますし,弁護士の収入が半分程度になってしまう可能性も低いと思います。

弁護士の就職難が問題になった時も,国もさすがにまずいと思ったのか,司法試験の合格者数を絞っていますし,今後,仮にまた弁護士に就職難が問題になるようなことがあれば,司法試験の合格者数を減らす方向の議論が出てくると思います。

また,日本の人口が減るということは,企業においても労働力が減るということですので,元弁護士等,ある程度専門的な知識を持った人材を今よりも多く採用するという場面が出てくるかも知れません。

現在も,一部の自治体が弁護士を公務員として採用しようと募集をしていますが,なかなか弁護士からの応募が無くて弁護士を採用できないでいる,という状況があるようです。

したがって,弁護士の数が増え,日本の人口が減るにつれて,本来の弁護士業務以外の仕事をする弁護士(又は元弁護士)が増えていったり,司法試験の合格者数が減り,受給バランスがそれほど大きくは崩れないのではないかと思っています。

また,私の現在の収入を前提にすると,仮に収入が半分になったとしても食べていけないことはないかと思います。

個人的には,仮に弁護士としての仕事が大幅に減るようなことがあれば,人生1回しかない訳ですし,他にもやってみたい仕事がたくさんあるので,他の仕事に挑戦してみたいと思っています。




(3)弁護士の資格を取ることはキャリアの自由度が増えるということ


最後に。

質問者された方は「今後、少子高齢社会による財政逼迫が深刻化し、夕張市のように破綻する自治体が近い内に都内でも現れるでしょう。私の勤め先では、終身雇用とはいえ毎年ボーナスカットが進んでいます。アルバイトの雇止めも進み薄給激務の傾向が強まっています。非常に不安です。」という不安を抱えて,弁護士を目指されているということですが,私も公務員をしていた時,同じような不安を抱えていました。

今振り返ってみると,あの頃の自分の視野は狭かったなと思います。

司法試験に合格した今になって思うことは「人生は思ったよりも自由なんだ」ということです。

司法試験に合格した後のキャリアとしては,一般的には弁護士・裁判官・検察官等になる人が多いですが,司法試験に合格して法律の基本的な知識を身につけることで,仕事の幅はそれ以外の職業,例えば経営者,政治家,経営コンサルト,企業や官公庁のインハウス等,色々な職業に広がっていきます。

司法試験に合格すると,仮に他の仕事に挑戦をして失敗をしたとしても,また弁護士に戻れって頑張って働けば食べられないということはないだろう,という安心感があります。

なので,司法試験に合格するということは,弁護士という仕事を目指すというだけでなく,人生の選択肢を広げるという観点でも挑戦をする価値はあるかと思います。


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以下の質問をいただきましたので回答したいと思います。

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いつも記事を見ているものです。
私は4月から市役所の職員になるのですが管理人様の記事で弁護士もいいなと思いました。
そこで、前職が市役所の弁護士は就職は不利なのでしょうか?
ぜひお願いします。
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結論から言うと,

・基本的に元公務員(市役所職員)だからと言って,それだけで弁護士としての就職が不利になる,ということはない

・ただし弁護士になる年齢が遅くなると,一部の大手事務所への就職は難しくなることがある

というのが私の見解です。


私が就職活動をしていた時期はいわゆる就職氷河期で,司法修習が終わる直前になっても就職が決まらないという修習生も結構の割合でいました。

しかし,私は幸いにも何件かの事務所からお声をかけていただき,かなり早い段階で内定をいただくことができました。

内定をもらった後も,修習生の同期から「君が元公務員だという話を聞いて,会ってみたいと言っている弁護士がいる。」という話をもらったりしていましたので,元公務員を採用したいというニーズは一定割合であるのだと思います。

たとえば,顧問先に自治体を抱えている法律事務所であれば「うちの事務所には元公務員がいるので内情も分かっています。」というアピールにもなると思いますし,自治体から相談を受けた時に事務所に公務員の内情を分かっている弁護士がいたほうが便利,ということもあると思います。

また,私の知り合いの弁護士の中には「社会経験のない新人は,ビジネスマナーのイロハから教えなければいけないので面倒。」「社会経験があってビジネスマナー等がしっかりしている人のほうが,即戦力になるので,できれば元社会人を採用したい。」という人もいます。

そのため,元公務員ということが,弁護士としての就職において有利に働く場面はあると思います。


他方,大手の事務所では,年齢の若い人を優先して採用するという事務所もあります。

弁護士の数が多い事務所の場合,30代ないし40代の弁護士を採用すると,20代の先輩弁護士が30代ないし40代の後輩弁護士を部下として使うことになって,やりづらい,という配慮があるのだと思います。

そのため,「元公務員であるか」という問題とは別に,社会人経験を経たために弁護士になる年齢が遅くなると,一部の大手事務所への就職は難しくなると思います。



弁護士業界は数年前までは買手市場で就職状況も厳しかったですが,去年あたりからは売手市場に転じていて,修習生の話を聞いていても,さほど苦労することなく就職先が決まっているようです。

したがって,就職先に強いこだわりがある訳でなければ,公務員から弁護士に転職をしたとしても,就職活動で困るということはないと思います。


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2019年03月03日

質問をいただきましたので,私の分かる範囲でお答えしようと思います。

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管理人様
いつもお世話になっております。
度々の質問で大変恐縮です。

司法試験後の就職活動についてお伺いします。
私は司法予備試験を経て司法試験に合格し、M&Aに携わる弁護士を目指しております。
しかし、そういった内容の業務に携わる事務所に入るには法科大学院で専用の授業を履修していなければならないと聞きました。
予備試験合格者は結局のところ、個人相手やインハウスしか道がないのでしょうか。司法試験の成績が良くても4大事務所にはいることはできないのでしょうか。

長文大変失礼しました。
よろしくお願いします。
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私は四大法律事務所等の大手の事務所で就職活動をしたことはありませんが,修習の同じクラスの同期に何人か四大法律事務所に就職した人がいるので,私の知っている範囲でお答えしたいと思います。


○予備試験と四大法律事務所


四大法律事務所は,予備試験合格者だからといって就職できないということはありません。

私の知っている範囲の同期でも,予備試験合格者で四大法律事務所に就職した人は何人かいます。

司法試験合格者のための「ジュリナビ」というサイトがあるのですが,そこで五大法律事務所(西村あさひ,アンダーソン・毛利・友常,森・濱田,長島・大野,TMI)における,予備試験合格者を含めた法科大学院ごとの割合が記事になっていましたので,そちらを参考にしてみてください。

これを見ると四大法律事務所に入所した弁護士のうち,4~7%は予備試験合格者であることが分かります。






むしろ,予備試験は500人弱しか合格しないため,若くして予備試験と司法試験に合格すれば,優秀な人材であるというアピールになり,四大法律事務所への就職も有利に進められるとか,四大法律事務所は予備試験合格者の青田刈りをしている等と言われたりしています。

四大法律事務所の中には,予備試験合格者のみを対象にしたクラーク・プログラム(ちょっとしたインターンのようなもの)を実施しているところもありますが,これは四大法律事務所としても予備試験合格者の採用にも力を入れているからだと思います。


ただ,予備試験合格者として四大法律事務所に入る場合であっても,出身学部は東大,慶応,早稲田,京大等の大学が有利だと思います。

私の同期で四大法律事務所に行った人も,確か東大と慶応だったはず。


また,予備試験合格者だけでなく法科大学院卒業生もそうですが,四大法律事務所に入るためには若いほうが有利です。

20代後半ないし30代でも四大法律事務所に就職した人がいるという噂は聞いたことがありますが,私の知り合いにはいません。

おそらく大手企業での社会人経験があるとか,語学に堪能であるといった特徴を持っていないと,20代後半ないし30代での四大法律事務所への就職は厳しいと思います。

また,司法試験に1回でも落ちると四大法律事務所への就職はかなり厳しいと思います(少なくとも私の同期で四大法律事務所に入った人は全て1発合格です。)。



○四大法律事務以外の法律事務所について


「M&Aに携わる弁護士を目指しております」とのことですが,四大法律事務所以外にもM&Aに携わっている法律事務所はありますし,四大法律事務所に入所したからといって,全員がM&Aをメインでやっている訳でもないと思います。

また,四大法律事務所以外の弁護士が,皆,個人の方を依頼者とする弁護士になったり,インハウスになっている訳ではありません。

むしろ,「個人の方のみを依頼者として,企業からの相談や依頼はほとんどない。」という事務所のほうが少ないのではないかと思いますし,四大法律事務所以外にも主に企業の顧問を多く抱えている事務所はたくさんあります。

M&Aは税理士法人が携わることも少なくありませんが,そういった税理士法人が弁護士を募集していることもあります。

したがって,M&Aに携わる弁護士になりたいのであれば,四大法律事務所を目指すことも良いことだと思いますが,他の事務所にも広く目を向けてみるのも良いのではないかと思います。



○法科大学院におけるM&Aの授業について


また,M&Aに携わるためには,法科大学院で専用の授業を履修しなければならない,ということもありません。

私も法科大学院の時にM&Aの授業を受け,成績もとても良かったのですが,実務ではほとんど役に立っていません・・・。

教授から西村あさひの「M&A法大全」という本を指定され(当時は2001版。今年新版が出たみたいです。),必死に読んだのですが,やはり本を読んだり授業を受けているだけでなく,実際に業務に携わってみないと分からないことだらけだと思います。税法の知識も必要ですし。

★M&A法大全


実際にM&Aの仕事に携わるのであれば,弁護士になった後に必死でまた勉強する必要があると思いますし,実際にM&Aに携わっている実務家の多くが日々努力をして知識や経験を積み重ねていると思います。



○四大法律事務所の就職活動


なお,四大法律事務所は,事実上司法試験に合格する前から就職活動が始まっています。


予備試験に合格した後,先程お話ししたクラーク・プログラム等に参加をする等して,司法試験を5月に受験し,翌月の6月頃からは内定が出始め,司法試験の合格発表がある9月には採用はほぼ終わっています。

なので,四大法律事務所への就職を考えているのであれば,事前に四大法律事務所のHP等を十分にチェックしておいたり,情報収集をしておいて,予備試験に合格した時点で,四大法律事務所でのクラーク・プログラムに申し込む等,早め早めに動いたほうが良いと思います。

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Comments(4) |  │   (21:25)

2017年07月29日

仕事を辞めて転職したい人におすすめの資格の中で,私が一番おすすめすしているのが「司法試験」です。

自分自身が司法試験に合格して人生が大きく変わって自由になった,というのもありますが,やはり他の資格に比べると合格のメリットが圧倒的に多すぎますし,司法試験に合格していれば仕事を辞めても食べるに困るということはほぼないでしょう。



■弁護士は食べていけるのか?


私が司法試験に合格する前に不安に感じたのは「司法試験に合格して食べていけるのか?」ということでした。

というのも,インターネッを見ると「年収100万円以下の弁護士が増えてきた」といったような記事を目にすることがあるからです。

しかし,実際に司法試験に合格して弁護士になってみると,「弁護士になって食べていけないという人はほとんどいないのではないか」というのが実感です。

私の法科大学院の同級生,司法修習の同期,同じ弁護士会の弁護士を見ても「弁護士になったけど食べていけなくて困っている」という人を見たことがありません。

就職活動に失敗したり,ボスに事務所を追い出されたりして,数ヶ月間収入があまりないという弁護士に時々出会うことはありますが,そういった弁護士もほぼ半年以内には次の就職先(法律事務所や一般企業)を無事に見つけて,給料をもらっています。

就職活動に失敗したり,クビになっても,半年以内にまともな就職先が見つかる職業って,弁護士と医者以外にはそうそうないんじゃないでしょうか。


「でも,ネットの情報では年収100万円以下の弁護士や,年収300万円程度の弁護士がいるみたいじゃないか」と思われる方もいると思います。

私の周囲でも年収100万円以下の弁護士はいますが,それは弁護士をほぼ引退した高齢の先生か,先ほどお話ししたような就職活動に失敗したり,ボスに事務所を追い出されたりして,一時的に就職活動をしている弁護士です。


前者の高齢の先生ですが,弁護士には定年がないので70代や80代でも現役で弁護士をしている人がいます。

その中には「年金ももらっているし,貯金もあるし,住宅ローンもないから,弁護士の仕事をしなくても食べていけるけど,無職という肩書きになるのが嫌だから,弁護士登録はしている」という高齢の先生が少なからずします。

裁判所ではほとんど見かけないのですが,弁護士会の忘年会なんかには出席するような先生ですね。

弁護士会のルールでは,高齢の先生は弁護士会費が免除される制度もあるので,「仕事はしていないけど取りあえず弁護士登録をしたままにしている」という先生もいます。

弁護士としての収入は100万円以下でも,年金をもらっているので,別に生活に困っていないんですよね。


後者の「就職活動に失敗したり,ボスに事務所を追い出されたりして,一時的に就職活動をしている弁護士」については先ほどお話ししたとおり,ほぼ半年以内に次の就職先が決まります。

なので高齢の「年収100万円以下の弁護士」は生活に困っていないし,若手の「年収100万円以下の弁護士」はずっと年収100万以下な訳ではなくて一時的なもの,というパターンが多いと思います。


それから「仕事がない」と言っている弁護士のほとんどは東京の弁護士です。

東京で弁護士をやるメリットは「成功すれば年収3000万は余裕,年収1億も可能」という点ですが,東京で弁護士をやるデメリットは「競争が激しいため,客が付かないと売上があがらない」というところにあります。

他方,地方で弁護士をやっていると,大手企業の本社が少ないため年収1億は厳しいですが,競争がそれほど激しいわけではないので,食べていけないということはありません。


しかも,司法試験に合格した後の進路は弁護士だけではありません。

後にお話するように,司法試験に合格した後に,弁護士にならずに大企業に就職する人,自治体や官公庁で働く人,大学教員になる人,会社役員になる人,裁判官・検察官になる人など,司法試験合格後の進路は弁護士だけではありません。

しかも司法試験に合格すると,行政書士,税理士等の仕事もできますし,公認会計士,中小企業診断士等の試験でも科目免除を受けられるのでダブルライセンスを狙いやすくなります。

司法試験のメリットは,合格することで職業選択の幅が一気に広がるという点にあります。


■弁護士は自由


司法試験に合格するメリットは「仕事の幅が広くて自由」という点でしょう。

司法試験に合格して弁護士になるにしても様々なタイプの仕事の仕方がありますし,司法試験に合格すると弁護士以外にも様々な仕事があります。


1 渉外弁護士,企業法務専門の弁護士


弁護士の中でも「花形」といえば渉外弁護士や企業法務専門の弁護士でしょう。

弁護士を数百人抱える大手法律事務所に就職して,国際性のあるビジネス案件を取り扱ったり,大企業の顧問となって大規模なM&A事案に携わったりする,そんな弁護士に憧れて司法試験を目指す人も少なくありません。

大手法律事務所に就職すれば,弁護士1年目から年収1000万円は超えます。

ただしその分だけ仕事は忙しく,睡眠時間が1日3時間なんてことも珍しくないようですので,体力に自信がない人には,あまりおすすめできません。

また大手法律事務所の中でも四大法律事務所では,事務所内の競争が激しく,競争に敗れて事務所を辞める弁護士もいます。

ただ,競争に敗れて大手法律事務所を辞めた弁護士の中にも「元四大法律事務所に勤めていた弁護士」ということで箔が付けて,独立して活躍をしている弁護士もいます。



2 町弁(マチ弁)


大手法律事務所の弁護士と対義語のような形で使われる言葉が「町弁(マチ弁)」です。

「町弁(マチ弁)」という言葉は,主に離婚,相続,債務整理,消費者事件,交通事故・・・等々といった,個人の事件を主に扱う弁護士を意味する言葉として使われることもありますが,「町弁(マチ弁)」の中には中小企業の法務を扱っている弁護士もいますし,非常に幅広い意味を持っている言葉でもあります。

主に1人から10人程度の法律事務所で働いている弁護士を「町弁(マチ弁)」と呼ぶことが多いと思います。

弁護士のメリットは,いわゆる「町弁(マチ弁)」として,自由に仕事をして,食べていけるという点にあると思います。

サラリーマンをやっていると,仕事をクビになったら再就職するのも大変です。

公務員の場合は仕事をクビになることはほとんどありませんが,嫌な上司にあたってしまったり,激務に追われて精神的に病んで仕事を辞めてしまう人も少なくありません。

でも弁護士は「職場が嫌になったら辞めればいいや」って思えるのが強みです。

嫌な上司にあたったら辞めれば良いし,その職場が合わないなって思えば辞めれば良いんです。

私は幸い上司や先輩に恵まれているので今の事務所を辞めようとは思っていませんが,知り合いの弁護士の中には上司とそりが合わなくて,他の事務所に移ったり,独立している弁護士が少なからずいます。

「独立したら収入も休みも増えて,海外旅行にも気軽に行けるようになった」なんて話を聞くと,少し羨ましいなって思います。




3 インハウスローヤー


最近では企業でインハウスローヤーとして勤務する弁護士も増えてきました。

インハウスローヤーの魅力は,弁護士資格を持っていると比較的容易に大企業・有名企業の法務に就職できること,年収もまずます良いこと,ワークライフバランスが取りやすい事などでしょう。

一般の法律事務所の場合,夜遅くまで働くということも珍しくありませんが,インハウスローヤーの場合,企業によっては残業も少なく,土日も休めて,しかも有給休暇や夏期休暇も取りやすい職場もあります。

知り合いの弁護士の中にも,法律事務所の就職活動に失敗した後に,有名企業にインハウスローヤーとして就職した人がいます。

一般企業って法律をきちんと分かっている人は意外に少ないんですよね。

そんな中に法律を一通り学んだ弁護士がいると重宝されます。

もともとサラリーマンだった人が仕事を一度辞めて法科大学院に進学して司法試験に合格し,その後に元の会社に戻って役職を得る,という人もいますね。


4 地方自治体や中央官庁で働く弁護士


インハウスローヤーと同様に最近増えてきたのが,地方自治体や中央官庁に勤務する弁護士です。

自治体の場合は500万円から1000万円程度,中央官庁の場合は600万円から1000万円強くらいの年収で,弁護士を募集しているところが多いようです。

公務員としての安定性もありますし,公益のために働くというやり甲斐もあるので,弁護士が働く場所としては魅力的な1つの選択肢になってきています。

私の知り合いは,法律事務所を辞めて地方自治体に弁護士として就職したのですが「いろいろと頼られて,毎日仕事が楽しくて仕方がない」と言っています。


5 ひまわり基金法律事務所


「独立開業してみたいけど,生活ができるか不安だ」という人もいると思います。

そんな人に魅力的なのが「ひまわり基金法律事務所」の弁護士です。

「ひまわり基金法律事務所」は,弁護士が不足している地域に設置される法律事務所(弁護士事務所)で,なんと事務所の開設費用として最大500万円が援助されます。

しかも,なんと収入が少ない場合には運営費用も援助されます。

弁護士会のホームページの言葉を引用すると

運営費援助は、公設事務所の運営経費に720万円(公設事務所弁護士の年間保障所 得額)を加えた額に実際の収入が満たない場合に、その不足分の範囲内で援助されます。

運営費援助の上限は原則1000万円ですが、事情により1200万円まで認められます。こ の他、支援委員会に出席する際の交通費・宿泊費や、研修に参加する際の交通費・宿泊費も援助されます。

とあります。

ようするに「赤字になりそうになったら生活できるように援助してあげますよ」というシステムなんですよ。

そして開業してみて運営が軌道に乗った場合には,そのまま定着することも可能です。

「ひまわり基金法律事務所」は「弁護士が不足している地域で頑張ってみたいけど,独立するのは心配だ」という人には魅力的な選択肢です。




6 法テラスのスタッフ弁護士


「法テラス(日本司法支援センター)」とは,「法的なサービスをだれでも身近に受けられるように」という理念の元で国によって設置された機関なのですが,その法テラスで働く弁護士が「スタッフ弁護士」です。

スタッフ弁護士は普通の弁護士と同じように,個人から事件を受任して訴訟等を行うという仕事もありますし,最近では「司法ソーシャルワーク」と言って高齢者,障がい者,生活困窮者,外国人,DV・ストーカーの被害者、虐待を受けている子供など,自分から弁護士などにアクセスすることが難しい人達に対して,自治体,福祉機関,医療関係者などと連携して,支援を行っていく,という仕事をしている人もいます。

スタッフ弁護士は,法テラスから同期の裁判官・検察官とほぼ同等の給与(月給)が支給され,しかも厚生年金,健康保険,雇用保険,労災保険も付けてもらえるという好待遇です。

普通の弁護士も公益的な活動を熱心にしている人が多いのですが,スタッフ弁護士は給料をもらいながら公益的な活動に携わることができる,というところが魅力だと思います。



7 大学教授,大学教員,法学者


最近では司法試験に合格した後に大学教授・大学教員になる人が増えてきました。

以前は弁護士を目指す人は司法試験を受験し,学者を目指す人は研究大学院に進学する,という棲み分けがあったのですが,最近では司法試験合格者が研究大学院の後期課程(博士課程)に進学して学者になるというパターンが増えてきています。

むしろ,最近では大学教授・大学教員を目指すためには,司法試験に合格するほうが近道だ,と言われることもあるようです。

実際に大学院の後期課程(博士課程)の入学試験を見ると,司法試験合格者には別枠が用意されていて,入学しやすいように配慮がなされているんですよね。

最近,ある法学部の准教授にお会いしたのですが,その先生は「僕の時は司法試験に合格しなくても大学教員になれたから運が良かった。今から大学教員を目指す学生は大変だよね。」って言っていました。

裏を返せば,司法試験に合格すれば,大学教授・大学教員への道も見えてくるということです。


8 裁判官・検察官


司法試験に合格した後の進路として,弁護士以外に多いのが裁判官・検察官になるというパターンです。

そもそも,司法試験は裁判官・検察官・弁護士になる者を選別するための国家試験なので,裁判官や検察官を目指して司法試験を受験する人も多いです。

私の司法修習の同期でも,将来を希望を聞くと,弁護士になりたい人5割,検察官になりたい人3割,裁判官になりたい人2割といった感じでした。

裁判官の魅力は,自分で判決を書くことができる,すなわち事件に決着を付けることができるという点でしょうか。

もっとも民事訴訟の場合には和解(話合い)で事件が解決することも多く,裁判官が間に入って紛争を解決する,ということも裁判官の仕事の醍醐味だと思います。


検察官は悪いことをした人を調べて裁判にかけて罪を償わせるという点で,正義感のある人にとっては魅力的な仕事だと思います。

他方,間違って無罪の人を処罰することは絶対に許されませんから,責任も重く,大変な仕事ではあります。


裁判官や検察官は最初の給料は若干少なめですが,少ないと言っても一般的な公務員よりは多く給料をもらっています。

そして,給料はどんどん上がっていき,裁判官・検察官になって約10年目で年収は1000万,約20年目で年収1700万円くらいになります。


なお,弁護士になった後に裁判官になるという「任官制度」というものもあります。

なので,弁護士になった後に「やっぱり裁判官が向いていたな」と思った場合にも,裁判官になるチャンスはあります。




9 法律の仕事に拘る必要もない


司法試験に合格した後に,弁護士や裁判官,検察官になる必要はありません。

司法試験に合格すれば最低限度の法律知識は身につきますし,経歴にも箔が付きますので,司法試験をステップにして全く別の仕事につくという選択肢もあります。

法律家以外の職業で多いのは例えば政治家です。

橋下徹,高村正彦,仙谷由人,枝野幸男等,司法試験に合格した後に政治家になった人は少なくありません。


また,企業の経営者になる人もいます。

例えばライフネット生命の岩瀬大輔社長は東京大学在学中に司法試験に合格したものの法律家にはならずに海外企業に入社し,ハーバードビジネススクールに留学した後に,ライフネット生命を設立しました。


このように司法試験に合格したとしても,弁護士や裁判官,検察官以外にも道はあります。


「せっかく司法試験に合格したのに,法律家にならないのは意味がないんじゃないか?」と思われる人もいるかも知れませんが,法律家以外の仕事であってもほとんどの仕事は法律の知識があったほうが優位に仕事をすすめることができます。

法律の知識がないまま仕事をするのは,ルールが分からないままスポーツをしているようなものです。

特に政治家は法律を作るのが仕事ですから,現行の法律を知らないと何も出来ません。

ですから,司法試験に合格した後に法律の知識を活かして法律家以外の仕事につけば,法律の知識がないライバル達に大きな差を付けることがきます。





■司法試験に合格すると他の資格もついてくる


あまり知られていないことですが,司法試験に合格して弁護士資格を得ると,弁護士以外の士業などの仕事もできるようになります。

司法試験は他の士業の仕事も扱えるオールマイティーな資格なんです。

たとえば,弁護士の資格を持っていると,司法書士,行政書士,社会保険労務などの仕事をすることができます。

また,弁護士の資格を持っていると,税理士,弁理士,行政書士,社会保険労務士の登録をすることができます。

司法試験に合格した後に,弁護士と税理士の両方に登録する人は結構います。


また,国会議員の「政策秘書」になるためには,原則として「国会議員政策担当秘書資格試験」に合格する必要がありますが,司法試験の合格者は無試験で政策秘書になることができます。


司法試験は合格すると,他の様々な士業などの仕事が扱える最高峰の試験なんです。



■司法試験に合格すると他の資格試験で有利になる


その他にも司法試験に合格すると,他の資格試験で有利になります。

たとえば,公認会計士試験に合格するためには,本来であれば以下の科目の全てを受験する必要があります。

○短答式試験
(1)財務会計論
(2)管理会計論
(3)監査論
(4)企業法


○論文式試験
(1)財務会計論
(2)管理会計論
(3)監査論
(4)企業法
(5)租税法
(6)選択科目(経営学,経済学,民法,統計学のいずれか1つ)


しかし,司法試験に合格していれば,公認会計士試験の短答式試験が全て免除になり,論文式試験も,企業法と民法が免除になります。

したがって,財務会計論,管理会計論,監査論,租税法だけ受験すれば良いんです。

これの免除の多さはもはや反則レベルです。

○短答式試験
→全て免除

○論文式試験
(1)財務会計論
(2)管理会計論
(3)監査論
(4)企業法→免除
(5)租税法
(6)選択科目(民法)→免除

このように司法試験に合格すると,公認会計士試験も免除制度を利用して合格しやすくなるため,法律系最高峰の司法試験と,会計系最高峰の公認会計士試験の両方を受験して合格,ダブルライセンスを取る人も少なからずいます。


司法試験に合格していると,公認会計士試験の他にも中小企業診断士試験,不動産鑑定士試験などでも一部科目の免除を受けられます。

そのため司法試験に合格すると,文系の国家資格のうち,かなりの範囲の業務が出来るようになります。

司法試験合格者は様々なところで優遇をされ,特権とも言える地位を与えてられているんです。


■まとめ


以上,司法試験をおすすめする理由についてお話をしてきましたが,やはり他の資格に比べると合格のメリットが圧倒的に多すぎますし,司法試験合格後の仕事の選択肢も弁護士以外にも数多くありますから,司法試験に合格していれば仕事を辞めても食べるに困るということはほぼありません。

ということで「何の資格を目指そう?」と迷っている人には取りあえず司法試験をおすすめします。

ただ,いきなり司法試験の勉強をするのは大変だと思います。

そこで,司法試験の勉強方法についてお話したいと思います。


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