質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います
――――――――――――――――――――――――――
LECはあまりブログに出てきませんが、あまり評判は良くないのでしょうか。
・・・
レビューを見ると過去問の分析や短答等、他社の書籍より解説が薄いようですが択一六法以外は余り良くないのか評判を知りたいです。
――――――――――――――――――――――――――
東京リーガルマインド(LEC)自体が評判が良くない、ということはないと思います。
旧司法試験時代から東京リーガルマインド(LEC)を利用したことのある受験生・合格者は相当な数だと思います。
私の同級生にもLECの入門講座を受けたことがある人が何人もいました。
弁護士に受験生時代の話を聞くと「司法試験予備校と言えばLEC」というような話をする人も未だに少なくないです。
伊藤塾の伊藤真先生がLECの講師をされていたのは有名な話ですし、他の予備校の有名な先生が実はLEC出身だった、ということもあります。
以前に比べると新興勢力の予備校が増えていることもあり、LECの勢いは落ちている感じはしますが、今でも大手の司法試験予備校であることに変わりはないと思います。
以前に比べると新興勢力の予備校が増えていることもあり、LECの勢いは落ちている感じはしますが、今でも大手の司法試験予備校であることに変わりはないと思います。
他の記事でも取り上げていると思いますが、私が受験生時代に使っていたLECの主な書籍は「C-Book」と「択一六法」です。
私が記事でお勧めしている書籍の多くは、基本的に私が受験生時代に使っていたもの、私の同級生の合格者の多くが使っていたもの、弁護士になった後に使ってみて良いと思ったものが中心です。
自分があまり使ったことがないものや、同級生などから使い勝手などの評判を聞いたことがないものをお勧めするのは無責任だと思うので、自分があまり知らない書籍はお勧めに挙げていないのですが、私がお勧めしていない書籍であっても、良い参考書や基本書は沢山あると思いますので、実際に本屋さんなどで手に取って自分の目で見てみて、自分に合いそうなものを選ぶのが良いと思います。
私が受験生の時は、「新」司法試験が始まって数年しかたっていなかったのですが、私の記憶では当時は新司法試験に対応した書籍の辰巳法律研究所が販売しているものが多かったと思います。
そのため、私がお勧めしている本の中では、辰巳法律研究所の本の紹介が多くなっています。
私が受験生時代にLECの問題集はほとんど使っていなかったので(「論文の森」という問題集を少し使ったことがあるくらい)、LECの問題集の紹介をしていませんが、LECの評判が悪いということはないと思います。
以下、私がLECの問題集に目をとおしてみた感想についてお話したいと思います。
- ●論文式試験用の過去問
現在、LECからは「司法試験&予備試験 論文5年過去問 再現答案から出題趣旨を読み解く」(以下「論文5年過去問」)という本が出版されています。
「過去問の分析」については、論文式試験に関しては、個人的には掲載されている再現答案の数の多さ(順位の幅)があったほうが、得られるものが多いと思っています。
論文式試験の過去問の資料として、私が各記事で辰巳法律研究所の「ぶんせき本」をお勧めしている理由1つは、(年度にもよりますが)「ぶんせき本」では超上位の合格答案から、そこそこの合格答案まで幅広い再現答案が掲載されているので、論文試験でどのような論述をすれば点が付きやすいのかという感覚を身につけやすいという点にあります。
先日、LECの「論文5年過去問」をざっと見てみましたが、内容はシンプルであるものの、科目ごとに5年分の過去問の再現答案に目を通すことができるという視認性の良さは、「論文5年過去問」のほうにメリットがあると感じました。
「ぶんせき本」は全科目・単年度ごとの購入になりますが、「論文5年過去問」は科目別・過去5年分が掲載されているので、科目ごとに過去問を周回・分析したい場合には便利だと思います。
「ぶんせき本」は全科目・単年度ごとの購入になりますが、「論文5年過去問」は科目別・過去5年分が掲載されているので、科目ごとに過去問を周回・分析したい場合には便利だと思います。
また、掲載されている再現答案については、「ぶんせき本」のほうが順位が高いものが多いものの、大きな差はないと感じました。
私が今の受験生であれば
過去問を単年度ごとにじっくりと分析したい
⇒ 辰巳法律研究所の「ぶんせき本」
時間がないので短時間で科目ごとにとりあえず過去問と再現答案にざっと目を通したい
⇒LECの「論文5年過去問」
という基準で選ぶかな、と思います。
論文式試験の過去問の演習については、優秀な人とゼミを組めるのであれば、お互いに時間をはかって答案を書いて、お互いに答案を批評し合うという作業をすると、効率が良いです。
ゼミを組む場合には、同じゼミの人が使っている本と同じものを持っていたほうが批評をし合う場合に便利だと思うので、自分が受験生だったら勉強仲間が持っているものと同じほうを選ぶかも知れません。
- ●短答式の問題集
LECからは現在、短答式の問題集として「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」という本が出版されていますが、先日、目をとおした範囲では「バランスのとれた一般的な問題集」という印象を受けました。
●司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集
解説が特別詳細という訳ではないですが、無駄な記述がある訳でもなく、解説を読んで分からない部分だけ基本書や判例集を参考にする、という使い方をすれば特に問題はないと思いますし、この問題集をマスターすれば、短答式試験は余裕でクリアできるはずです。
短答式の問題集については、正直、どの予備校の問題集も一長一短で、「絶対にこれが良い」というものはないと思います。
どの問題集であっても、実際に使ってみると解説に納得できない等の場面に出くわすこともありますが、どの問題集を使っていても、不満に感じる部分は出てくると思います。
なので「どこの予備校か」で選ぶのではなく、以下の要素を考慮した上で、今の自分の状況にあった問題集を選ぶのが良いと思います。
・問題の量
⇒問題の量が多いほうがマスターできれば本番で高得点ととれる可能性が高くなりますが、問題の量が多いと消化不良で終わって全範囲を網羅できないまま本番を迎えることになるリスクがあります。なので、本番までに自分自身が費やせる勉強時間を考慮した上で消化可能な量の問題集を選ぶほうが良いと個人的には思っています。
・解説の量
⇒解説の量が多いほうが逐一基本書や判例集を参照する手間が省けるというメリットがありますが、長文の解説を読んでいると当然時間もかかります。また、長々と説明されるよりも、シンプルな解説のほうがかえって分かりやすいという場合もあります。これも自分の勉強の進捗具合、理解力の程度、逐一基本書で調べたほうが頭に入るタイプか等によって、解説の量が多いものか、シンプルな解説のものかを選ぶと良いです。
・解説の傾向
⇒判例の判旨などを引用した上で「条文・判例がこう言っているからこれが正解(正解に至る細かい理由の説明なし)」というシンプルな解説が中心の問題集がある一方で、「条文・判例はこう言っているけど、こういう理屈で考えればこれが正解」という形で自分の頭で考えて正解を導けるように攻めた解説の内容になっている問題集もあります。前者は万人に受け入れれやすく読みやすいものの、頭に残りにくいというデメリットがあります。後者は頭に残りやすく論文式試験への応用が利くものの、解説者の解説の内容が自分の考え方と合わないと「余計な解説を入れないで・・・」とイライラしたりしてしまう場合もあります。
・一問一答式か本試験形式か
⇒一問一答式は速く回せますが、肢切り・個数問題等の練習ができないのと、飽きやすいというデメリットがあります。本試験形式は、その逆で、肢切り・個数問題等の練習ができますが、時間がかかるというデメリットがあります。
・体系別か単年度版か
⇒一般的に体系別の問題集のほうが頭に残りやすく学習効率は良いですが、試験までに十分な時間がないと消化不良になる可能性があります。単年度版は学習効率は劣りますが、短期間でとりあえず全範囲を網羅するという作業を繰り返すので、「一部の分野だけ全く勉強していない」という状況になるリスクが少ないです。
上記の視点でLECの「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」を見ると、以下のような印象を受けました。
・問題の量
⇒問題集としては一般的な量だが、十分な勉強時間を確保できない人にとっては、消化不良になる可能性がある量。「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」には正答率の記載があるので、スケジュール的に厳しい場合には、正答率の高い基本的な問題を中心に回すか、問題数の少ない別の問題集を優先する等の工夫が必要と思われる。
・解説の量
⇒前記のとおり、解説は多くもなく少なくもない、というバランスの取れた量。逐一基本書や判例集を参照したくないという人にとっては物足りないと感じるかも知れないが、「解説はそこそこシンプルで良いからサクサクと進めたい」という人にとっては適度な量だと思われる。少なくとも「解説を読むのに時間がかかってなかなか前に進まない」ということはないはず。
・解説の傾向
⇒あまり攻めた詳しい解説はない。正解・不正解の理由として条文を内容を引用しているだけのものも多いが、それがかえって「余計な記述がなく読みやすい」と感じる人もいると思うので、好みの問題。
・一問一答式か本試験形式か
⇒本試験形式なので肢切り・個数問題の練習ができるが、前記のとおりタイムリミットには注意が必要。
・体系別か単年度版か
⇒体系別なので一般論としては頭に残りやすく学習効率は良いと思われるが、前記のとおりタイムリミットには注意が必要。
実際に自分の目で読んでみて、自分のスケジュール、勉強方法、性格に合いそうかチェックしてみるのが良いと思います。
ネットのレビューなども参考にするのも1つの考えですが、実際に自分の目で見て、自分の目的に合致した本か、読んでみてやる気がでそうか、といった観点から選んだほうが、後悔は少ないと思います。
結局、どの問題集・参考書を使っても合格する人は合格しますので、どの問題集・参考書を使うか悩んだ場合には、とりあえず使ってみて「違うな」と思ったら別の参考書に乗り換えるか検討する、というように、「走りながら考える」ほうが長期的に見ると無駄が少ない場合もあります。
それでも決められないという場合には、周りの受験生(できれば成績が良い人)にどの問題集・参考書を使っているか聞いてみて、一番シェア率が高かった本を使うというのも考え方の1つです。
「この問題集・参考書を使っていて大丈夫だろうか」と心配になった場合に、「他の多くの受験生もこの本を使っているから特に問題はないだろう」「優秀なアイツが使っているから間違いない」と自分に安心感を与えることができるので、勉強に集中しやすくなると思います。
- ○柴田孝之先生の本など
その他、LECの講師である柴田孝之先生の本は個人的におすすめです。
柴田先生の本は、LECから出版されているものと、他社から出版されているものがあります。
柴田孝之先生の本は、このブログよりも数百倍、読む価値はあると思います(個人的な感想ですが)。
私は司法試験の勉強がある程度進んだ後に「試験勉強の技術」という本を読みましたが、柴田孝之先生の試験勉強に関する考え方やノウハウが凝縮されたような本で、勉強方法や勉強の進め方に悩んでいる人にとっては参考になると思います。
●試験勉強の技術
その他、私は司法試験の勉強を始めた頃に、隙間時間(仕事の昼休みなど)に「S式1問1答法律用語問題集」を読んでいました。
「基本書や学部ではちゃんと教えてくれないけど、法律を勉強する上では最初から知っておいたほうが良い知識」なども含めて、一問一答の形で整理されています。
細切れの時間を効率的に使って基本的な知識をインプットしたい場合にはおすすめです。
●S式1問1答法律用語問題集
その他に柴田孝之先生は様々な本を出しています。
かなり古い本ですが、個人的には「司法試験合格論文機械的作成法」という本なども参考になりました。
本屋さんなどで中身を見てみて、自分に合うと思った場合には活用すると良いと思います。
【アクセスの多い記事】
司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)
民法の勉強方法とおすすめの民法の基本書や参考書など(その1)
民法の勉強方法とおすすめの民法の基本書や参考書など(その2)
刑法の勉強方法とおすすめの刑法の基本書や参考書など
憲法の勉強方法とおすすめの憲法の基本書や参考書など
会社法・商法の勉強方法とおすすめの商法・会社法の基本書や参考書など
民事訴訟法の勉強方法とおすすめの民事訴訟法の基本書や参考書など
刑事訴訟法の勉強方法とおすすめの刑事訴訟法の基本書や参考書など
行政法の勉強方法とおすすめの行政法の基本書や参考書など
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////