質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。
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まとめて質問させて下さい。
論文を中心に勉強するのが基本だと思いますが、論文・短答・基本書はどのくらいの割合でやるのが基本ですか。
6・3・1位というのは適当ですが、論文中心で短答もやりながら分からない所は基本書で確認でしょうか。
ある程度分かるまでというのが基本だと思いますが、どういう基準でやっていたでしょうか。
刑法は短答はやらずに論文だけで殆ど問題なしですか。
短答は脚別本アプリでやろうと思います。
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私は、行政法まで一周していますが、まだ予備試験は受けておりません。
短答をやれば基本書はわからないところを確認すれば良いだけなのか、一度は通読するべきか悩んでいます。
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- ●論文式・短答式の勉強時間の配分について
私が受験生の時は予備試験がまだなかったので参考にならないかも知れませんが、私は論文式と短答式について、おおよそ以下のような割合で勉強していたと思います。
(1)法科大学院の受験勉強の時
⇒論文式の勉強100%(法科大学院の入学試験に短答式がなかったため)
(2)法科大学院1年目
⇒論文式の勉強約90%、短答式の勉強約10%(法科大学院の定期試験が論文式のため)
(3)法科大学院2年目
⇒論文式の勉強約60%、短答式の勉強約40%
私がもし予備試験の受験生であれば、おそらく1年目は論文式7割:短答式3割、又は論文式6割:短答式4割くらいで勉強することになるだろうと思います。
そして、1年目で予備試験の短答式にまずまずの成績で受かった場合には、2年目以降は短答式の割合を1割から2割程度に減らすと思います。
論文式の勉強と短答式の勉強をどのくらいの割合でやるべきかは人それぞれだと思いますが、「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」という考え方で計画を立てるよりも、「論文式について合格レベルに到達できるまでどのくらいの時間が必要そうか、短答式について合格レベルに到達できるまでどのくらいの時間が必要そうか」という観点から計画を立てたほうが時間切れになるリスクは小さいと思います。
短答式のほうが比較的勉強時間を管理しやすいと思いますので、先に短答式の勉強時間の管理方法の案についてお話します。
短答式に関しては、私の周りでは
「過去問集(や肢別本)についてだいたい8~9割以上を正解できるようになるまで繰り返しやる」
という受験生が多かったです。
予備試験に関しては、短答式の勉強をする目的は大きく分けて以下の2点にあると思います。
①短答式の試験で合格できるだけの知識を身につけること
②各科目について知識を身につけて論文式試験に活かせるようにすること
過去問集(又は肢別本)の9割を解ける状態にならなくても①の目的を達成することはできると思いますが、②のように知識の穴をできるだけ埋めるということまでを考えると、過去問集等の9割くらいは正解できるレベルに持っていければ理想的です。
「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」という考え方よりも、以下のように計画を立てたほうが、時間切れになるリスクは小さいと思います。
(1)短答式の試験本番まで勉強のために費やせる日数・時間を計算する
(2)短答式の過去問集(又は肢別本)の問題数(頁数)を数える
(3)短答式の過去問集を何回くらい繰り返せば、8~9割解けそうか見込みを立てる
(4)(1)~(3)の数値をもとに、1日何問(あるいは何頁、何時間)短答式の勉強をする必要があるか計算する
(5)上記の計算をもとに実際に勉強をしてみて、計画にずれが生じた場合には適宜(1)~(4)の作業を行い計画を修正する
たとえば、
(1)試験本番まで360日ある
(2)全科目合わせて10,000肢ある
(3)自分の理解力なら4回くらい繰り返せば8~9割くらいは解けるようになりそう
(4)90日(360日÷4回)で1周する必要があるので、1日111肢(10,000肢÷90日)こなす必要がある
みたいな感じです。
上記の例の場合、1日に肢別本を111肢こなすのに4時間かかるということであれば、残りの時間を論文式試験などの勉強にあてることができるということになります。
肢別本は回せば回すほど早く読めるようになっていきますし、確実の解ける問題は次からは飛ばせば良いので、だんだんと回せるスピードは上がってくると思います。
論文式試験の勉強についても似たような考え方で計画を立てていくと良いです。
例えば、論文式試験の勉強として、試験本番までに以下の勉強をするという計画を立てたとします。
① 各科目について、○月までに論文式問題集を最低3回やる
② ○月から本試験の論文式の過去問を過去5年分やる
③ ○月から予備校の答練を受ける(各科目全3回)
④ 直前期には弱点の補強、予想論点の復習、規範や定義の暗記をする
そして、例えば、上記の①の作業を6ヶ月間(180日)で終わらせるという計画を立てた場合、各問題集の問題数の総数を数えた上で、180日以内の終わるよう、1日に処理すべき問題数を割り当てていくことになります。
計画を立てて実際にやってみると「時間が足りない」という場合が出てくることがあると思いますので、その時は例えば「論文式の問題集はとりあえずAランクの問題だけをやる」等、どこかを妥協してくしかありません。
以上のように、「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」というのは、本試験までの日数と自分がやろうとしている勉強内容から逆算して1日にやるべき作業の内容を決めて結果的に出てくる割合であって、「他の人が論文式と短答式の勉強の割合を何対何にしているから、自分もそうする」という形で決めるべきものではないと思います。
また、自分の勉強の進捗具合によっても割合は変わってきます。
例えば、試験が近づいてくると「短答式については合格点は取れそうだが、論文式の答練の順位が低い」という場合には計画を見直した上で論文式の勉強時間を増やす必要がありますし、逆に「論文式の答練の順位は悪くないが、短答式の模試を受けてみたら合格点に届かなかった」という場合には、当然短答式の勉強の割合を増やしていく必要があります。
- ●基本書について
基本書については、私は論文式の問題集、予備校の答練、論文式の過去問などを解いていて、参考答案や解説を見ても理解できない時に読むようにしていました。
また私は論文式の問題集などに書いてある論証が覚えにくいと思った際には、頻出の論点については自分なりの論証集のようなものを作るようにしていたので、論証集を作る材料(事案、問題点、理由付け、制度趣旨、規範、あてはめの仕方等)を探すために基本書や判例集を参照していました。
一方で、短答式の勉強をしながら分からないところを基本書で調べるという人もいると思いますが、個人的には短答式の問題集をやりながら、逐一分からないところを基本書で読んでいると時間が足りなくなる可能性が高いと思います。
短答式の勉強をする時は、六法は引くようにはしたほうが良いと思いますが、最初のうちは解説を読んでも分からない部分が出てきても「そういうものなんだ」と割り切って先に進んでいったほうが効率が良いと思います。
そして、短答式の問題集(又は肢別本)を何度も繰り返すなかで、何度解説を読んでも分からないという問題に絞って基本書でじっくりと調べる、というのが良いと思います。
なお、辰巳法律研究所から「短答過去問パーフェクト」という問題集が出版されていますが、この問題集の解説はかなり詳しいです。
●ISBN-10 : 4864664544
確かこの問題集の説明の中に「逐一基本書などを参照しなくとも解説を読むだけで理解できるように解説を詳しく書いている」というような記載があったと思います(うろ覚えなので間違っているかも知れませんが)。
短答式の問題をこなすうえで「分からないところがあると気になるけど、逐一基本書で調べるのは面倒くさい」という人や、「肢別本の解説がシンプルすぎて全然頭に入ってこない」という人は、こういった解説が詳しい問題集を使うのもありだとは思います。
ただ、以前の記事でも書いたとおり「短答過去問パーフェクト」は解説が詳しい分、自分にとって必要のない解説は読み飛ばす等の工夫をしないと、短答式の勉強にかなり時間をとられてしまうので注意をしてください。
以上のように基本書については、私は主に論文式の問題などをこなす際に使っていて、基本書を通読するための時間というのはほとんど設けていませんでした(ただし、入門書的な薄い本は隙間時間、移動時間、食事の時間などを使って何冊か通読しています)。
基本書を通読するべきかどうかは意見が分かれるところだとは思いますが、論文式の問題をこなしたり答練の復習をするときに基本書の該当箇所を読んでいるだけでも基本書の大事な部分はカバーできると思いますので、自分にとって基本書をどのように使うのが効率が良いかを考えた上で基本書を使うようにしたほうが良いと思います。
なお、もし基本書を通読する場合には、通読する前に、通読をするためにどのくらいの時間がかかるか計算をしてみてください。
どの基本書を読むかにもよりますが、全科目の基本書を通読するとなると、膨大な時間がかかると思います。
そして、基本書は1回読むだけでは理解できないため何度も読むとなると、読むスピードがよほど速い人でない限り、基本書を繰り返し読むという作業だけで試験本番までの勉強時間の大半を使うことになる、という計算結果になるはずです。
なので、個人的には最初のうちから基本書を通読するという勉強方法はあまりおすすめはしません。
基本書を通読するとしても、ある程度勉強が進んだ後に、目的意識を持って読んだほうが得られる知識・理解度は大きいと思います。
- ●刑法の短答式の勉強について
「刑法は短答はやらずに論文だけで殆ど問題なしですか。」という質問についてですが、以前の「●忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について」という記事で私が「刑事系に関しては、論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でも足切りにならない程度の点数は取れる可能性が高いと思います」という説明をしたために、このような質問をされたのだと思います。
しかし、この記載は、上記の記事の質問者さんが
① 予備試験の短答式試験に一度通過した実績がある
② 仕事が忙しくて勉強時間があまり取れない
ということを前提とした説明であって、一般論ではありません。
確かに、刑事系の短答式で出題される問題は、論文式試験の論点と同じような論点が出題されることも多いため、論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でもある程度の点数を取れる可能性は高いです。
しかし、一度も刑法の短答式の勉強をせずに本試験の望むというのはかなりリスクが高いですし、上記の質問者さんと違ってある程度勉強時間を確保できる人であれば、刑法の短答式の勉強も当然にやっておくべきです。
論文式試験の受験において知識・理解の穴を埋めておくという観点からも、やはり刑法の短答式の勉強はきちんとやっておいたほうが無難だと思います。
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