仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

司法試験の勉強において全科目を1周するペースについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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もう一つ質問です。
勉強を初めて約1年10ヶ月たちましたが、ようやく行政法まで来ました。
基本書読みすぎなのか問題集もやりすぎなのか流石に遅すぎると思います。
普通というのが何かという事もありますが、普通はどのくらいで一周する物でしょうか。やはり、半年か遅くても一年くらいにしないと問題だと思ってきました。
アガルートで、インプットは300時間で一周を目指すようですが、これは一日3時間の勉強で約3ヶ月位ですし、流石に一度で覚えられないでしょうから3周を目安にしているようですが、それでも9ヶ月です。
アウトプット入れても一年位で一周しないと2年目に進めないと思います。
私のようなのは予備校のペースにのったほうが独学より良いかもしれないと思ってきました。
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勉強のペースは自分に合った形で良いと思いますが、全科目を1周するのに1年10ヶ月以上かかっているというのは、時間がかかり過ぎだと思います。

法律の勉強は前半で学んだことが後半の理解に必要だったり、後半で学ぶことが前半の理解に必要だったりするので、最初のうちは浅くて良いので、全体を短期間で何度かぐるぐると回すことが大事だと思います。

これまでの記事で最初に入門書を読むことや、問題集を中心にした勉強法をおすすめしているのも同じ理由によるものです。


もし「伊藤塾試験対策問題集」を使っているのであれば、まずケース以外の「A」ランクの問題のみを、読んでみるのが良いと思います。

「伊藤塾試験対策問題集」の「B」ランクや「C」ランクの問題については、合格者レベルでもまともな答案をかけないような論点が含まれているのに対し、「A」ランクの問題の論点については合格レベルの受験生であれば当然に理解をしておくべきものがほとんどだからです。

「A」ランクの問題だけであれば、科目にもよりますが1科目あたり30問程度ですので、数日から2週間程度で1科目を回せるはずですし(1日じっくりと2問ずつやっても15日)、全科目を3ヶ月~4ヶ月程度で回せるはずです。

もしかしたら分からない部分を基本書等で調べるのに時間がかかっているのかも知れませんが、例えば1日2問は必ずやると決めて、その日のうちに調べきれなかった部分は、後回しにする、という割り切りも必要だと思います。

何度か回しているうちに「いつもこの論点はよく分からないんだよな」という部分が出てくると思いますので、その時にじっくりと当該論点について基本書を読み込んだり、判例集を読めば良いと思います。


「伊藤塾試験対策問題集」以外の本を使う場合でも、たとえば辰巳法律研究所の「えんしゅう本」であれば数日で一周することは可能だと思います。

読んでいるうちに分からない部分もあると思いますが、最初のうちは取りあえず全体を読み切ることを目標にして、分からない部分は「この部分が分からない」という発見をしたことが収穫だと割り切るのが良いと思います。


その他、短答式の勉強であれば一問一答式の問題集を1冊2~3日のペースで読み切る、という勉強法もあります。


苦行に近い勉強法であるため根性のない私は成功したことは1度もないのですが、同級生では、この肢別本を短期間で読み切る、という勉強法をしている人は何人もいました。


いずれどの方法を使うにせよ、短期間で全体を回す勉強法はいくつもありますので、自分に合いそうな方法から試してみるのが良いと思います。

自分でペースを掴むのがどうしても難しい場合には、ご指摘のように予備校をペースメーカーにするという方法もあると思います。


なお、基本書を読むという勉強法は大事なのですが、私の知り合いの中には、基本書をほとんど読まずに合格した人は何人もいます。

それに対し、問題演習をせずに合格した人は私が知る限りはいません。

時間がかかり過ぎるようであれば、基本書を読む時間よりも、問題演習をする時間を優先した方が、全体を早く回せるようになると思います。

また不明な点があれば質問してくだささい。



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伊藤塾試験対策問題集が古い件について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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行政法の予備ではないシケタイ問題集は10年前の発行ですが、今の時代にこれは使えるのでしょうか?
代わりに、物としては大変価値があるらしい「事例研究行政法第3版」を購入したら、答えがないので失敗した感じです。はしがきに書いてあるように、わかってくると答えを推測する事が出来るようになりますが、「分からないから問題集を解いているんだ」と思いますから答えがあったほうが絶対に使えると思います。
余計なことも書きましたが、気になるのは「10年前の問題集は今でも使えるのか」という事です。
予備論文やえんしゅう本等の他を買えば良いと言われればそれまでですが、LECのも古いのです。
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伊藤塾の書籍は良書が多いのですが、改訂をなかなかしないという特徴があります。

そのため、問題集にせよ、入門書にせよ、他の予備校本などの比べて古くなっていく、ということが良くあります。

「行政法の予備ではないシケタイ問題集は10年前の発行ですが、今の時代にこれは使えるのでしょうか?」という点については、私がもし現時点でこれから司法試験の勉強を始めるという立場だった場合には、やはり「伊藤塾試験対策問題集」を使うと思います。

その理由は、これまでの記事でも書いているとおり「伊藤塾試験対策問題集」は答案の質が比較的良いのと、本当に重要な部分をコンパクトに勉強できるからです。


ただ、ご指摘のとおり「伊藤塾試験対策問題集」の出版年が古いため、注意すべき点もあります。

主に注意すべき点は行政不服審査法の改正があったという点ですが、行政不服審査法の改正の内容については新しい基本書や予備校本を読めば書いてありますし、Googleで検索すれば改正の内容を分かりやすく説明しているサイトは沢山ありますから、そちらを参考にすれば良いと思います。

その他、新しい判例については、答練をこなしたり、(予備試験受験生の場合には)短答式の勉強をしているうちに、新しい判例の知識が身についていくはずですので、そこまで心配する必要はないんじゃないかと思います。



なお、私の勉強法の中での「伊藤塾試験対策問題集」の立ち位置は、あくまで基本的な答案の書き方を学ぶという点と、特に重要な論点を知るということが主な点なので、読みやすくてコンパクトに使えれば、どの問題集でも良いと思います。

私の同級生が使っていた問題集も、伊藤塾のものだったり、辰巳のものだったり、早稲田セミナーのものだったりと様々でした。

もし私が「伊藤塾試験対策問題集」以外の本を使うとすれば、辰已法律研究所の「えんしゅう本」を使うと思いますが(実際に受験生の時は「えんしゅう本」も持っていました。)、個人的には「えんしゅう本」の答案は、良いものと、そうでないものの落差が激しく、あまり好きではありません。

とはいえ、「えんしゅう本」の答案も、真似をしたら不合格になるというものではなく、「えんしゅう本」を使って合格することは当然可能ですので、結局は2冊を見比べてみて好みで選べば良いと思います。

私が受験生の時は、色々な問題集に手を出して途中で辞めて、また別の問題集に手を出して・・・と時間をロスしたこともあり、最終的に「伊藤塾試験対策問題集」が使い勝手が良かったため、それならば最初から「伊藤塾試験対策問題集」を使えば良かったな・・・と思ったということです。


結局いただいたコメントと同じような内容になってしまいますが、結論としては

・私だったら今でも「伊藤塾試験対策問題集」をメインで使う

・「伊藤塾試験対策問題集」の古さが気になるなら「えんしゅう本」など他の問題集を使ってみる

ということです。


司法試験の勉強の中では、どういう勉強方法が自分に合うか色々と試行錯誤してみることも大事ですので、迷った場合には、取りあえず「えい」と決めてやってみて、合わなかったらすっぱりと軌道修正をしていくというほうが、ずっと悩んでいるよりも効率は良いと思います。

また不明な点があれば質問してください。


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弁護士の就職活動と良い事務所の見極め方について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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就活についての具体的な進め方についてご質問させていただきたく思います。
合格発表後にひまわり等のサイトから事務所へ応募して、通常の就活と同様に履歴書や面接を行なっていくかと思いますが、いわゆる優良事務所の見極め方として、何か参考になることがありましたら教えていただきたく思います。
私個人としては、将来の独立なども見据えて、全般的な法律相談の他に、不動産取引について専門性を高められる事務所へ就職を希望しておりますので、こうした事務所をどう探すかについて悩んでいるところでございます。
お多忙かと存じますので、お時間ある時にお答えしていただければ、大変参考となりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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就職にあたり、どうやって「優良」な事務所を探すかという質問ですが、何をもって「良い」な事務所というのかが難しいところです。

就職先を決める際には

(1)勤務時間の長さ(何時頃に帰れそうか、休みはどのくらいあるか)

(2)給与、個人事件の受任の可否、個人事件の収入を事務所に何割入れるか

(3)ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄・相性

(4)業務内容

などの事情を確認して、自分にとって「良い」と思えるか判断することになると思います。


(1)の「勤務時間」は、「早く帰れるほうが嬉しい」という人もいると思いますが、短い期間で多くの経験を積みたいので「勤務時間が長くても多数の事件の関われるほうが嬉しい」という人もいると思いますし、「勤務時間が長くても収入が多い方が良い」という人もいると思います。

(3)の「ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄」についても、穏やかな人のほうが合う人もいれば、体育会系のノリのほうが肌に合う人もいると思いますし、ある程度厳しい人が上司じゃないとだらけてしまうという人もいると思うので、人それぞれかなと思います。


なので、最終的には直接確認しないと分からない部分も多い、というのが正直なところです。


(1)の勤務時間と(2)の給与等の条件については、普通の事務所であれば、面接の時等に聞くと教えてくれるはずです。

もし面接の時に勤務時間や給与の条件等をきちんと説明してくれないような場合には、その事務所は、ちょっと怖いなという気がします。


(3)の「ボス、兄弁、事務員さんなどの人柄」については、採用の手続がある程度進んでくると「一緒に飲みに行こう」という言われることがありますので、一緒に会食などをして話をしていれば、事務所の方々の人柄や、職場の雰囲気がある程度分かる場合があると思います。(今はコロナの関係でオンラインのみで採用を決定しているところもあると思いますが。)

ただ、弁護士によっては、仕事以外の場面では温厚だけれども、仕事のことになると人が変わったように厳しくなるという人もいるので、会食の場だけでは人柄は分からないことも結構あります。


最終的には、司法修習中の情報収集で、いろんな事務所の評判を聞いて判断することも必要だと思います。

東京の場合は事務所が無数にあるので、あらゆる事務所の評判を聞くことは難しいと思いますが、
修習中に裁判官、検察官、弁護士などと話をしていると「あそこの事務所の先生は優秀だし人柄も良いよ」という話が出てくることがあり、その中で一般的に「良い」と言われている事務所や先生が分かってくることがあると思います。

また弁護士に「絶対に行かないほうが良い事務所」を聞くと、知っている範囲で教えてくれることが多いと思います。



(4)の「業務内容」については、事前に事務所のホームページなどで調べておいて、分からなかった部分を面接や会食の際に質問し確認していく、という方法が一般的だと思います。



その他、事務所の規模と比較して毎年多くの弁護士を採用しているにもかかわらず、弁護士の数が増えていない事務所は注意が必要です。

毎年のように弁護士を採用していてその分事務所の弁護士の数が増えているのであれば、成長している法律事務所ということで問題はないと思いますが、毎年のように弁護士を採用しているにも関わらず事務所の弁護士の数が増えていない事務所は、入所した弁護士が毎年のように辞めている可能性が高く、職場環境に何らかの問題がある可能性があるからです。


また質問がありましたらコメント欄に記載してください。



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