仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

弁護士として東京都内で就職するか地元で就職するかについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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はじめまして。
いつも参考にさせていただいております。
先生の転職先として弁護士がお勧めという記事を読んで、一念発起して司法試験の勉強を始めました。

私は現在都庁で地方公務員として働いており、今年度32歳になります。
運良く昨年度に予備試験に合格することができ、今年度の司法試験に合格できれば、仕事を辞めて司法修習に入る予定です。

学歴が低く、元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えて街弁として働こうと考えおりますが、このまま都内で就職するか地元の名古屋で就職するかで迷っております。

都内では弁護士の人数が多く、街弁としてお金を稼いでいけるのかという心配がありますが、大学卒業後からずっと東京で生活しており、今更名古屋に戻るのもあまり気乗りがしません。
もっとも、稼がなくては元も子もないですし、地元だと人との関係もあるので、地方の弁護士が東京に比べると稼ぎやすいのであれば、名古屋に戻るほうが良いのかなと考えております。

司法試験の勉強は独学で行っており、周りに弁護士の知り合いもいないため、どうしたらいいのか迷っております。

先生のお立場からは、どちらのほうが良いかご意見頂ければ大変嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
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●どの法律事務所に就職するか、何をしたいのか

東京都内で就職するか地元で就職するかということで悩まれているとのことですが、「稼ぎやすさ」や「働きやすさ」という点では、どの地域で就職するかというだけでなく、どの事務所の就職するかということも大事だと思います。

東京にも素晴らしい事務所はたくさんありますし、地元の名古屋にも素晴らしい先生はたくさんいらっしゃると思います。

ですから、どこで就職をするか悩まれているのであれば、東京都内と地元の両方で就職活動をしてみて、自分の希望に合った事務所や、「この先生の下で働きたい」という弁護士が見つかれば、そこに就職する、というのが良いと思います。


また、弁護士になってどのような仕事をしたいのかという観点も大事だと思います。

「元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えている」ということですが、元公務員であっても、年齢が高くても、企業法務をやっている法律事務所の就職することは可能だと思います。

四大法律事務所のように、若い人を採用している超大規模事務所への就職は難しいと思いますが、中堅や小規模の事務所であれば、企業法務に携わっている法律事務所への就職は可能だと思います。

また、いわゆる「街弁」といっても、純粋に個人だけを相手にしている事務所は少なく、企業からの相談や事件の依頼を受けている事務所は多いです。

なので、自分が弁護士としてどのような仕事をしたいのかということを考えた上で、その仕事ができる法律事務所を探し、その法律事務所が見つかったら都内であれ地元であれそこに就職する、というほうが、就職した後に後悔する可能性は低いと思います。




●東京都内で就職する場合と地元で就職する場合のメリットとデメリット

一応、東京都内で就職する場合と、地元で就職する場合のメリットとデメリットを思いつく範囲で挙げてみたいと思います。

私は東京都内や名古屋で働いたことはなく、あくまで東京に就職した同期などの話を聞いた範囲や、地元で働いた範囲での認識なので、その点はご了承ください。


○弁護士として東京都内で就職するメリット

・就職先の選択肢が多い。扱う業務の幅も様々で特定の分野に特化した事務所も見つけやすい。

 ⇒東京は法律事務所の数が多いので、やはり就職先の選択肢は多いですし、法律事務所に限らずインハウスや任期付公務員の求人なども多いです。自分がやりたい分野を扱っている就職先を比較的見つけやすいと思います。


・就職に失敗しても就職先の事務所を変えやすい。

 ⇒東京は弁護士の数が多く弁護士の転職も珍しいことではないので、嫌な事務所を辞めて別の事務所に就職する、ということも比較的簡単にできます。


・弁護士会の会務をやらなくても済む場合が多い。

 ⇒東京には(派閥などの関係で)積極的に会務をやる弁護士がいるので、就職先の事務所が会務に積極的でなければ、弁護士会の会務の追われるということもあまりないようです。ただし、就職する事務所によっては、半強制的に会務をやらされている人もいます。(このあたりは面接の時に確認しておくと良いと思います。)


・(就職する事務所や経営方針によるが)単価の高い事件が比較的多い。

 ⇒弁護士の報酬は事件の経済的利益や実際に稼働した時間によって決めることが多いですが、東京は企業の数が多いので、企業を相手とする事務所に就職すれば、弁護士の報酬も高くなることが多いです。顧問料も地方よりも東京都内のほうが高い傾向にあります。(弁護士が東京に集中している理由はこの点が大きいと思います。)



○弁護士として地元で就職するメリット

・地元のコネを使って就職できる場合がある。

 ⇒これは説明するまでもないと思いますが、親、親戚、友人のコネで地元の法律事務所に就職する人は少なくありません。運が良ければほとんど苦労せずに就職先が決まることがあります。

・知人や家族などのツテで仕事が入ってくることがある。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、地元で弁護士として働いていると同級生や同級生の知り合いなどから法律相談や事件の依頼があることが多いです。そのため、ある程度人間関係を持っている人であれば、事件が無くて生活に困る、という事態には比較的なりにくいと思います。出身校が進学校の場合、同窓会に出席すると、同級生が地元の会社の経営者になっていることもあったりしますし、同窓会の繋がりで事件の依頼があったり顧問契約に繋がることもあると思います。


・交渉や訴訟をなどをしていて、裁判官や相手方の弁護士がどのようなタイプなのか情報が比較的入りやすい。
 
 ⇒東京で事件をやると、担当の裁判官や相手方の弁護士は基本的に知らない人であることが多いので、どんな人か分かりにくいという側面があります。他方、裁判官や弁護士の数が比較的少ない地域であれば、裁判官や弁護士の情報が入ってきやすいので「あの裁判官は争点整理をああまりしてくれなくて事件が長引くことが多いらしいから、こちらから早めに準備書面で争点を整理しておこう」とか「相手方の弁護士は○○先生で人間的に信用できる人だから和解の話を早めにして良さそうだな」とか、そういった心構えや準備がしやすいという点で、精神的に良い部分はあると思います。(逆に「相手方の弁護士が○○先生だった・・あの先生すぐにキレるんだよな・・・」みたいなこともありますが、それはそれで心の準備ができます。)

・車で通勤できることがある。

 ⇒事務所の方針や事務所の場所によると思いますが、地方都市の場合は、車で通勤できることがあります。満員電車に乗ることなく、車で短時間で職場に行けるメリットは結構大きいと思います。私も車で通勤していますが通勤のストレスはゼロです。子供ができたときには通勤途中に子供を学校に送っていったりすることもできると思いますので、車が使えるのは便利だと思います。


○弁護士として東京都内で就職するデメリット

・事務所にもよるが長時間働いている弁護士が多い(と思う。)。

 ⇒東京都内に就職した私の同期のほとんどは、平日は深夜まで働いていますし、土日も片方又は両方出勤しているという人が多いです。「人の数倍働いて人の数倍稼ぐ」というような働き方が多いようなイメージです。東京の弁護士の話を聞くと「他の事務所は終電で帰れないところも多いけど、うちの事務所は基本的に終電で帰れるから恵まれている」みたいなことを言う人もいます・・・。他方、地方都市では事務所によると思いますが、比較的ワークライフバランスを保っている事務所が多いのではないかと思います。地方都市は場所にもよりますが、賃料や人件費が都内の比べると低いので、事務所経営がしやすいところが多いと思います。

・移動が電車になることが多い。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、やはり満員電車での通勤は苦痛です。ただし、弁護士は事務所によってはラッシュの時間に出勤しなくて良いので、サラリーマン時代よりは通勤は楽かも知れません。



○弁護士として地元で就職するデメリット

・地元の人間関係がかえって煩わしく感じることがある。

 ⇒これもケースバイケースなのですが、地元で働いていると、あまり仲の良くなかった同級生から夜中に電話が掛かってきて延々と法律相談される・・・なんてこともたあにありますし、家族や親戚から頼まれて、あまり筋の良くない事件を受けて欲しいと言われるなんてこともあります。このあたりは上手く断れるようになれば問題ないのですが、慣れるまでは煩わしいと感じることもあると思います。(もっとも、東京の場合も知人が増えてくると同様の問題があると思います。)


・弁護士の関係が密接である分、会務などの仕事に追われることがある。

 ⇒これは単位会の規模によると思いますが、東京に比べると地方のほうが、弁護士会の会務や委員会活動などが回ってくる可能性が高いです。私の単位会では、会務や委員会活動を積極的にやっている先生が多く、本当に頭が下がります。会務や委員会活動をあまりやりたくない人にとっては大変かも知れません。(このあたりは合格後に地元の先生聞いてみると正確な情報が得られると思います。)


・就職に失敗した場合に、同じ単位会の中で転職しにくい場合がある。

⇒これも単位会の規模によると思いますが、地方都市では顔見知りの弁護士が比較的多いので、法律事務所を辞めた後に同じ単位会の中で就職活動をしようとすると、「○○先生のところ辞めたんだね。○○先生とは面識があるから採用すると○○先生に申し訳ないので・・・。」みたいな感じで、採用を躊躇される場合があります。そういった意味では、東京に比べると就職先の事務所を変えるハードルはやや高めです。

・人口規模にもよるが、事件の相手方の関係者が、知り合いだったりするという場面が増える。

 ⇒名古屋は人口が多いのでこのような問題は少ないかも知れませんが、地元に就職すると事件の相手方の関係者が、自分の知人だった、という場面に出くわすことはあると思います。


●司法修習でどこに配属されるかにもよる

余談ですが、司法修習の配属先との関係で自分では想像もしていなかったような場所に就職する人が結構います。

現在東京都内に住んでいて地元が名古屋ということであれば、第1希望と第2希望に東京と名古屋を記載するという人が多いと思うのですが、司法修習地の配属先は希望が通るとは限りません。

司法修習の配属先の希望は

第1群(東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、大阪、名古屋、その他の政令指定都市などの大都会)から2箇所まで選べる

第2群(水戸、前橋、金沢、高松などの、そこそこの都会)は第1希望から第4希望の好きなところに書けるが、第3希望と第4希望に書くことになるパターンが多い

第5希望と第6希望を書く時は、第3群(その他の地方都市・山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほうなど)から選ばないといけない

といったルールになっています。


第1希望と第2希望を東京と名古屋などの激戦区にすると、第1希望と第2希望の抽選に外れた場合、第3希望と第4希望の争いでも敗れてしまい、第5希望か第6希望の場所に飛ばされる、というケースが結構あります。

じゃあ第5希望か第6希望を書かなければ良いのかというと、そういうことでもなくて、第5希望か第6希望を何も書いていないとさらに人気の少ない北海道の地方都市に飛ばされたりします。

なので何をどう頑張っても、現在東京に住んでいる方が、司法修習で地方都市(山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほう)に飛ばされるというケースが結構あるんです。

司法修習で地方都市に配属された場合、地方都市から頑張って東京や地元に通って就職活動をする人が多いのですが、地方都市の生活が気に入る人も一定割合いて、中には修習先の弁護士にも気に入られてさらに居心地が良くなり、そのまま修習先に就職してしまうというパターンも結構あります。

なので、今から就職先を考えておくことは大事なことですが、実際に司法修習が始まってみないと、どこに就職することになるか分からない、ということも多いと思います。



●東京か地元が迷った場合には

東京に就職するか地元に就職するか迷った場合には、家族(や交際相手)の意見を聞いてみるのも良いと思います。

現在結婚されているか分かりませんが、結婚の予定があるのであればいずれかの実家に近いほうが子育てはしやすいと思いますし、長男であれば将来両親が高齢になった場合には、実家が近いほうが何かと都合が良い、ということもあると思います。

家族などの意見を聞いても決まらないという場合には、私だったら取りあえず東京都内で就職先を見つけて、東京が合わないと思った場合や、家族の都合で地元に戻る必要が生じた時点で、地元に戻ると思います。

一度地元に就職した後に東京で就職し直すよりも、東京で就職した後に地元に戻るほうが、一般的にはハードルが低いからです。

司法修習地の希望が通るかわかりませんが、取りあえず名古屋で司法修習をして地元の先生とのコネを作りつつ、東京に通って就職活動をして東京に就職し、地元に戻りたくなったら地元の先生のコネを頼って地元に戻る・・・私だったらそういう計画を立てるかもな・・・と思います。

またご不明な点がありましたらコメント欄に記載してください。



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論文式試験が終わった後の過ごし方について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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論文試験が終わりました。
このところ仕事が忙しくて、金曜は9時まで残業があり、昨日は昼休みの間ずっと電話と携帯メールで職場とやりとりするという状況でしたが、何とか全科目受験することができました。
さて、試験の方ですが、やはり時間が足りないことを痛感しました。綺麗な字を書くことを諦めてかなり汚い字で書き殴りましたが、それでも時間内に答案を書き切るのがやっと、という感じでした。その上、商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました。
それでも全科目受験できて、論文の採点をしてもらえるということだけでも、約1年間(最後の4ヶ月は仕事の関係でほとんど勉強できなかったものの)それなりに一生懸命勉強してきた甲斐があったと、満足しています。
最後に一つだけ質問させて下さい。
さすがに論文試験に通っているとは思えないのですが、これから1月中旬の合格発表まで、どのように過ごしたらいいか教えて下さい。
具体的には、今から合格発表まで、試験のことは忘れて一切勉強から離れてもいいものか(万一受かっていても、2週間の準備で口述試験は何とかなるものなのか)、今から何かしら準備をしないと口述試験は通らないものか、仮にそうであれば、どんな準備をどのくらいすればいいのか、ご経験を踏まえてアドバイスをいただけたら、と思います。仕事は引き続き多忙ではありますが、週末のうち1日は休めるというのが最近のペースです。
よろしくお願い致します。
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論文試験おつかれさまでした。


私が受験生の時はまだ予備試験がなく、私自身は予備試験は経験していないので、そのことを踏まえた回答であることをご了承ください。


論文試験が終わった後の時間の過ごし方ですが、予備試験の場合には、論文試験が終わった後も勉強を継続する受験生が多いと思います。

予備試験の場合には、論文試験が終わっても合格すれば口述試験を受験しなければならない訳ですし、口述試験に合格すれば、翌年の5月には司法試験を受験することになるからです。

また、残念ながら予備試験に不合格になった場合にも、次の年もまた予備試験を受験することになる訳ですから、勉強を継続する受験生が多いと思います。


  • ●口述試験について

ちなみに、過去3年間の予備試験の口述試験の合格率は、以下のとおりです。

令和元年 96.3%(受験者数494人、合格者数476人)

平成30年 94.9%(受験者数456人、合格者数433人)

平成29年 94.6%(受験者数469人、合格者数444人)


予備試験の口述試験の合格率は95%前後ですので、一見すると簡単な試験に感じるかも知れませんが、予備試験の口述試験の受験生は、短答式試験と論文式試験をくぐり抜けてきた猛者ばかりですので、その猛者の中で約5%が落ちる試験であると考えると、決して簡単な試験ではないと思います。

予備試験の口述試験で出題された具体的な問題は公開されていませんが、法務省のホームページで「予備試験口述試験における問題のテーマ」を閲覧することができます。


たとえば、令和元年度の口述試験のテーマは以下のとおりです。

民事

1日目
賃貸借契約の終了等に基づく不動産明渡請求事案における実体法ないし攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,
弁護士倫理上の諸問題

2日目
所有権に基づく不動産明渡請求訴訟における攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,立証方法,訴訟手続,
弁護士倫理上の諸問題


刑事
1日目
遺棄罪,身分犯と共犯,不作為犯,
公判前整理手続,証人尋問

2日目
同時傷害の特例に関する諸問題(要件,適用範囲等),
承継的共同正犯,
訴因変更


こうして見ると、論文式試験で問われるような主要なテーマだけでなく、「民事保全」「公判前整理手続」「証人尋問」といった短答式試験で問われることがあるような比較的細かい手続的なテーマも出題されるので、それなりに準備が必要だと思います。



  • 論文式試験が終わった後の過ごし方

もし私が予備試験の受験生であればですが、民法、要件事実、刑法を中心に勉強を継続すると思います。

これは予備試験の口述試験の過去のテーマを見ると、毎年、要件事実がからむ民法上の主要論点や、刑法の知識が問われていますし、他の受験生も時間をかけて勉強することが多い民法、要件事実、刑法に関する知識・理解の差で合否が決まる可能性が高いと思われるからです。

要件事実については、他の記事でも書きましたが、予備試験・司法試験レベルでは、「新問題研究要件事実」「紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造」の2冊を抑えておけば十分です。(司法修習や二回試験もこの2冊を抑えておけば十分に対応できます。)

厚い本を使って消化不良になるよりも、この薄い2冊をきちんとマスターして、後はこの本で学んだことを試験本番で応用しながら対応するほうが効率が良いはずです。

口述試験の過去のテーマを見ても、ほぼこの2冊に書いてある論点が出されていると思います。

●ISBN-10 : 486684048X

●ISBN-10 : 4908108226



執行・保全、刑事訴訟法の手続に不安があれば、それに関する本をざっくりと読んでおくと思います。

執行・保全は他の受験生も苦手であることが多く、基本的なことさえ分かっていれば良いので、薄めの本で十分です。

個人的には「基礎からわかる民事執行法・民事保全法」か有斐閣アルマの「民事執行・保全法」が良いと思います。

●ISBN-10 : 4335354754

●ISBN-13 : 978-4641220850



刑事訴訟手続については、司法研修所の「刑事第一審公判手続の概要」が薄くて使いやすいと思います。

●ISBN-10 : 4908108447

刑事訴訟手続に関しては、この本に書いていないことが聞かれる可能性は低いと思いますし、仮にこの本に書いていないことが聞かれたとしても、他の受験生も分からない人が多いと思うので、あまり差はつかないと思います。



また、予備試験の論文式試験に合格している可能性があると感じた場合には、予備校の口述試験も受けたおいたほうがベターだと思います。

口述試験に限りませんが、模試を受けておいたほうが、落ち着いて本番を受けられる可能性が高くなりますし、模試と似たような問題が出題される可能性もあるからです。



なお、「商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました」とのことですが、私も法科大学院の入学試験で商法の2問目の問題がほとんど分からず5行くらい書いて終わってしまったのですが、それでも合格していました。

論文試験の合格発表から口述試験までの期間は短いので、「どうせ不合格だろう」と思っていて何も対策をしていないと、予想外に合格の通知を受けた時に慌てることになるかも知れません。



  • ●再現答案の作成

それから、論文試験が終わってからできるだけ早い時期に、論文試験の再現答案を作っておくことを強くお勧めします。

論文試験の再現答案を作っておけば、論文試験に不合格となってしまった場合でも、次の試験に向けた方針を立てやすくなるからです。

論文試験で何度も不合格になる人の中には、再現答案を作っていない人が結構いますが、非常にもったいないと思います。

予備校の講師や合格者に「なぜ論文試験に落ちてしまったのか?」とか「これからどんな勉強をしたら良いか?」という相談をする時にも、論文試験の再現答案があったほうが具体的なアドバイスがしやすいです。

また、自分の中で勉強の方針を立てる時にも、論文試験の再現答案と、合格者の再現答案を比較することで、自分の弱い部分を見つけやすくなり、より効率的な勉強方針を立てやすくなるので、合格に近付きやすくなります。




  • ●勉強を継続した人と継続しなかった人の違いなど

最後に蛇足ですが、私の同級生や先輩の中には、司法試験を初めて受験した年に、短答式試験で不合格になった人と、論文式試験で不合格になった人がいるのですが、

(ア)短答式試験の不合格の通知を受けてすぐに(6月から)受験勉強を再開した人と

(イ)短答式試験に合格はしたものの、最終の合格発表まで勉強をしておらず、論文式試験で不合格になったことが分かった後に(9月から)受験勉強を再開した人

の2つを比べると、次の年は(ア)のほうが、合格する人が多かったような気がします。(正確にデータをとった訳ではないですが。)


1年目の受験時の能力で比較すると、短答式試験に合格した(イ)の人のほうが能力が高く合格に近いはずなのですが、6月から9月のたった3ヶ月間の間に、短答式試験で不合格になった(ア)の人が、短答式試験に合格した(イ)の人を追い越したのだと思います。

(あるいは、短答式試験で不合格になったために、死に物狂いで勉強したというのもあるのかも知れません。)

お仕事で忙しいとは思いますが、これから1月中旬までは2ヶ月半程度ありますので、その間、全く勉強をしないとなると、勉強を続けている他の受験生に差を付けられてしまうということになると思います。


なので、個人的には少しずつでも勉強を継続されたほうがよいのではないかと思います。


またご不明な点がありましたら質問してください。


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論文式試験本番での時間配分の管理方法について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。
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いよいよ試験まであと1週間ですが、あれからますます仕事が忙しくなり、先週も今日も週末に仕事が入ってしまいました。
この1ヶ月で伊藤塾の予備試験論文問題集をザッと読み、ハイローヤー のヤマ当て部分を基本書と100選で復習するのがやっとで、一昨日から1日1問ずつ過去問に挑戦しています。
実際に時間を計って書いてみると、時間が足りないのと、綺麗な字で書くだけで大変だということが今更ながらわかりました。
切羽詰まったタイミングでの質問なのですが、論文試験本番での時間配分のマネージメントで、何かアドバイスがあればお願いします。
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  • ●論文式試験本番での時間配分の管理方法について

私が司法試験の受験生だった時に論文式試験で気をつけるべき事項をまとめたノートみたいなものがありましたので、その中から時間配分に関する注意事項の部分を抜き出して説明したいと思います。



  • ○意識について

まず、論文試験に対する意識として完璧主義はある程度捨てて、完璧な答案でなくて良いので、とにかく時間内に書ききるということを意識することが大事だと思います。

完璧な答案を書ける受験生はいませんし、時間内に書ききれなかったり、実質的途中答案になると、それだけで不合格の確率が高まるからです。


  • ○時間設定について

論文試験が開始した時点で、それぞれの設問ごとに、答案の枚数と時間を決めて、それを守るようにしたほうがよいです。

あらかじめ、書く量と時間を決めておかないと、1つの設問に時間を使い過ぎてしまって、途中答案になってしまう可能性が高くなるからです。

決めた枚数と時間は、問題文の設問の横あたりか、答案構成用紙に書いておき、いつでも確認できるようにしておくと良いでしょう。

また、時間設定をする時に、最後の見直し時間として5分程度余るようにしておくと良いと思います。

5分程度余裕を持っておくことで途中答案になるリスクを減らせますし、実際に5分程度の時間が余った際には、条文の記載漏れや、重大な書き落とし等がないか等、見直しの時間として使えば良いからです。



  • ○答案構成

答案構成の時間は人によって違うと思いますたが、私は基本的に試験時間の25%(4分の1)程度を目安として、多くても試験時間の33%(3分の1)以内に収めるようにしていました。

答案構成の時間が試験時間の3分の1を超えると途中答案になる可能性が高くなると思います。

答案構成の際に、自分の知らない箇所や、未知の問題に時間をあまりかけすぎないようにしたほうが良いです。

自分の知らない箇所や未知の問題は他の受験生も知らない可能性あり、時間をかけてもそれほど差がつかないことも少なくないですし、分からない問題にいたずらに時間をかけるよりも基本的な部分をきちんと書いたほうが点数は上がりやすいからです。



  • ○実際の答案の作成

実際に答案を書き始めた後、予め設定した時間を過ぎても次の設問に移れていない場合、当初の予定から端折る個所を即座に決定して端折りながら答案を書き、できるだけ早くに次の設問に移れるようにしたほうが良いと思います。

ミスを取り返そうとするよりも、ミスを認めた上で被害を最小限度にするための方法を考えて、途中答案を避けるようにすることが大事です。


  • ○途中答案になる理由

以下は私自身が受験生時代に途中答案になった際の理由を分析したものです。


・原因①:余計なことまで答案構成用紙に書いてしまう。

答案構成は最低限のメモ程度にとどめておくという意識が大事です。

あてはめに必要な事実は答案構成用紙に書き写すのではなく、蛍光ペンなどで線を引いておいて、答案構成用紙には「ピンク(の蛍光ペンで線を引いた部分)」「緑(の蛍光ペンで線を引いた部分)」などと書いておくと時間の節約になります。


・原因②:問題の処理方法が頭に入っていない

問題の処理方法を頭に叩きこんでおかないと試験本番で「次は何をするんだっけ・・・」と考えて時間がかかってしまいますので、問題の処理方法は頭にきちんと入れておくことが大事です。

自分が使ってきた問題集で処理方法を整理したり、自分で作ったノートがあればそういったものを使って本番で処理方法で迷わないようにしておいたほうが良いです。


・原因③:基本的な知識・理解が不足しているために、答案構成で悩む

これはすぐに解決する問題ではありませんが、やはり基本的な知識・理解が欠けていると、答案構成で悩む場面が多くなり、時間がかかりやすくなります。

この問題を解決するためには、基本的な知識・理解(伊藤塾の論文問題集でAランク以上の問題)をインプットするしかありません。


・原因④:短い論証を暗記していない・書けない

論証を常に自分の頭で考えて書いていると論証が長くなったり時間がかかりがちです。

基本的な論点(伊藤塾の論文問題集でAランク以上の問題に出てくるような論点)の論証は、可能な限りすらすらと書けるように準備しておくことが大事です。



・原因⑤:コンパクトなあてはめができない

これもなかなか一朝一夕で解決する問題ではないのですが、あてはめも工夫によって短くすることができます。

例えば「事実①を書いて評価する。事実②を書いて評価する。事実③を書いて評価する。」というよりも、「事実①②③を書いて評価する」としたほうが、短くできます。

事実をまとめて評価して良いかどうかはその事実によるのですが、まとめて評価してよい事実の固まりについては、まとめて評価するようにしたほうが途中答案のリスクは小さくなります。


・原因⑥:丁寧に書こうとする意識が強すぎる


論文式試験で丁寧に論述しようとすることは大事ですが、丁寧に書きすぎてしまって途中答案になると、それだけで不合格のリスクが高くなってしまいます。

「途中答案にならない利益」>>>「丁寧に書く利益」

なので、時間がないと思ったら丁寧に書くことを「あきらめる」ことも大事です。

時間が無くなった場合には、適宜文章を短くして、重要だと思った部分に絞って書くと良いです。



  • ●論文式試験では綺麗な字で書く必要はないこと

ご質問の中に「綺麗な字で書くだけで大変」という話がありましたが、司法試験や予備試験は字の綺麗さを争う試験ではないので、綺麗に書く必要はありません。

綺麗に書くよりも「読める(判別できる)」字を書くことが大事です。

子供のような汚い字で書いても、判別できれば落とされるということはないと思います。

私自身は司法試験の答案の字はかなり「汚い」字で書いていましたが無事に合格しましたし、ゼミの仲間もみんな字は綺麗ではありませんでしたが合格しています。

綺麗に書くという意識よりも、字は多少崩れても良いから頭の中にあることをそのままとにかく速く書く、という意識のほうが大事ではないかと思います。



それから、論文試験は長丁場なので、字を書く時にはあまり力を入れすぎて書くと最後のほうで握力が無くなって字が速く書けなくなることがあります。

なので論文試験で字を書くときは少し力を抜くくらいのイメージで書くと良いのではないかと思います。




またご不明な点がありましたら質問してください。


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