論文式試験問題集の使い方や勉強の進め方について質問をいただきましたので私見についてお答えしたいと思います。


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私は1年で予備試験合格を目指しているものです。質問が2つありご教授いただけたら幸いです。
まず1つ目、試験対策問題集予備試験論文を読んだり、参考答案を写したりする際に、問題集の中で出てきた問題は解けるようにした方がいいのか、それとも知識のインプットができればいいのかどちらでしょうか?
2つ目に、1年で予備試験、その来年に司法試験があるとするとどのようなスケジュールを立てればいいでしょうか?短答対策はその科目の論文対策が終わった後すぐにやる方がいいのか、それとも年明けからまとめてやる方がいいのか、論文問題集の読み込み・過去問分析・短答対策にどれくらいをかければいいのかなどを迷っています。個人差があることや勉強の進み具合によって変わるのは承知していますが、あくまで理想的なスケジュールということでいいので教えて頂けると嬉しいです。
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  • ●論文式試験問題集の使い方について

論文式試験問題集を使う場合,重要論点については参考答案と同じような内容の文章を書けるようにしておいたほうが良いです。

というのも,少なくとも重要論点について参考答案と同じような内容の文章をスラスラと書くことが出来ない程度のレベルだと,本試験で合格点を取れない可能性が大きいからです。

「予備論文問題集」に関して言えば問題数が少ないので,全ての問題についてて参考答案と同じような内容の文章を書けるように訓練をしておいたほうが良いと思います。

丸暗記をする必要まではありませんが,参考答案に出てきた「規範」と「定義」は本試験までに正確に書けるようにしておくべきです。暗記に自信がない場合には答練や試験直前の1週間~2週間程度で正確に暗記できるように予め準備をしておくべきです。

私は暗記が苦手だったので,覚える事項をパソコンでまとめたり,電子書籍化した書籍のうち覚える箇所に印を付けておいて,答練の直前と本試験の直前に一気に暗記をするようにしていました。









  • ●勉強のスケジュールについて

今から1年後の予備試験合格を目指すとすれば,時間的に厳しいので私であれば以下のようなスケジュールを組むと思います。

スケジュールはあくまで予定なので,勉強の進み具合によって適宜調整をしていきます。


  • ○論文式試験対策

  • 《今から7月頃まで》

・「試験対策問題集 予備試験論文」(憲・民・刑・商法・民訴・刑訴・行政7科目)を何回か読む。あるいは,「試験対策問題集 司法試験論文」のAランクの問題(それぞれ30問程度)を何回か読む。

・法律実務基礎科目対策として,「伊藤塾試験対策問題集 予備試験論文」の「刑事実務基礎」と「民事実務基礎」を何回か読む。

・7科目については出来ればこの時点で参考答案と同じような内容の文章を書けるようにする(結構大変ですが)。

・法律実務基礎科目については,この時点では完成度が低くてもあまり気にしない。



  • 《8月から9月頃まで》

・少なくとも過去5年分程度の予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いて答案を作成し(最初はまともな答案が書けなくても気にしない),辰巳法律研究所の「ぶんせき本」を読んで,自分の書いた答案の良い箇所,ダメな箇所をピックアップする作業を繰り返す。全く答案が書けない場合には基本書や問題集等を参照しても良いのでとにかく自分で答案を作るという作業をしてみる。

・余裕があれば予備校の答練を受けて復習をする。ただし普通の人であれば「試験対策問題集 予備試験論文」又は「試験対策問題集 司法試験論文」の理解度がまだ低いと思うので,その場合は「試験対策問題集 予備試験論文」又は「試験対策問題集 司法試験論文」を読みながら分からない部分について基本書や予備校本などを読んで,論点に関する理解を深めていったほうが良いと思います。


  • 《10月から1月頃まで》

・余裕があれば予備校の答練を受けて復習をする。ただし,過去5年分程度の予備試験の論文式試験をやり終わっていない場合や,「試験対策問題集 予備試験論文」又は「試験対策問題集 司法試験論文」の理解度がまだ低いと感じる場合には,答練を敢えて受験せずに,過去問の分析や,論文問題集を分からない部分について基本書や予備校本などを読むという勉強をしても良いと思います。


  • 《2月頃から6月頃まで》

・勉強が多少遅れていても遅くともこの頃には予備校の答練を受験して復習するという勉強を開始する(司法試験予備試験用六法だけを使って基本書などを見ずに時間内に答案を作成できるように訓練をする)。点数が悪くても復習をすることが大事なので,答練を通じて知識や理解に穴があると感じた部分は基本書や予備校本を読む等してきちんと復習をしておく。



・この頃に全国模試があるので受験する。

・答練や全国模試の結果を見ると,自分の不得意な科目や分野がはっきりしてくると思うので,苦手分野を中心に復習をしていく。

・論文プロパーの基本的な知識に不安を感じたら,伊藤塾の「新ステップアップシリーズ」等,薄めの参考書を読んで知識に穴や不十分な点がないか確認し,穴等があれば補充する(この時期になって勉強の範囲を広げすぎると逆に基本的な部分が疎かになってしまう可能性があるので,勉強の範囲を基本的な事項に絞っていったほうが合格出来る可能性が上がることが多いです。)。

・余裕があれば予想答練を受験して復習をしておく。


  • 《6月中旬から本番まで》

・規範や定義を正確に覚えていない場合には,伊藤塾の「試験対策問題集 予備試験論文」「試験対策問題集 司法試験論文」の復習をしたり,辰巳法律研究所の「趣旨・規範ハンドブック」などを使うなどして規範や定義を出来るだけ正確に暗記していく。ただし,「趣旨・規範ハンドブック」の中には出題頻度が低いものも含まれているため,時間的な余裕がない場合には「★」マークがついている箇所など,重要なものを中心に暗記をしていく。

・例年,辰巳法律研究所の「ハイローヤー」という雑誌で「予備試験論文試験直前期『ヤマ当て』」という特集が組まれるので,買って読んで準備不足の論点がないかチェックをし,不足があれば知識・理解の補充をしておく(公法系と刑事系はヤマが当たることが結構あります。)。

・その他は「6月以降」と同じ。


  • 《本番が終わったら》

・本番が終わったら自分が何を書いたのか忘れる前に必ず再現答案を作っておく(もし不幸にも不合格となった場合,再現答案を作っていないと何故不合格となったのかという分析が出来ず,次年度も不合格となってしまう可能性が高くなってしまうからです。)。


  • ○短答式試験対策

  • 《今から3月頃まで》

・辰巳法律研究所の「肢別本」か「司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト」,スクール東京の「司法試験・予備試験 短答 過去問集」などから,自分の好みの問題集を買い(取りあえず1種類で良い),3月頃まで少なくとも3回,できれば5回は回せるようなスケジュールを組み,1日に解く問題数を決めて解いていく(余裕を持って解けた問題には印を付けておいて次回以降は飛ばすようにして時間を節約する。)。

・最初のうちは,1日目に「第1問から第50問まで」をやったとしたら,2日目に1日目の復習として「第1問から第50問まで」をやり,さらに「第51問から第100問まで」やるというふうに,短期間で復習を入れると記憶に残りやすいと思います(短答式試験対策はとにかく反復をして覚えていくという「作業」です。)。



・余裕があれば答練を受ける。ただし,短答式に関しては過去問が解けるようになれば合格点は取れるので無理をして答練を受験する必要はないと思います。短答式の答練を受験する主なメリットは受験生の中の自分の立ち位置を把握して,スケジュールを修正していく(苦手科目に多く時間を配分する等)点にあります。

・短答式試験対策はとにかく反復をして覚えていくという「作業」です。

・なお,時間不足に陥る可能性がある場合には,体系別の問題集ではなく,年度別の問題集を買っ た上で「30年度を解けるようになったら29年度をやる。29年度が解けるようになったら28年度をやる・・・。」という方法を取ると,途中で終わってしまったとしても全範囲を網羅的に勉強することが出来ますが,体系的に知識を入れることが出来ないので効率はあまり良くありません。

・「肢別本」で短答式の知識をインプットした場合,肢の切り方の訓練が出来ていないので,答練を受けるか,年度別の短答式問題集を買って数年度分の過去問を解いてみて,肢の切り方に慣れておく。



  • 《4月以降》

・4月頃から5月頃にに全国公開模試があるので受験し,きちんと復習し,模試と同じ問題が出た際に対応できるようにしておく。




  • ○一般教養

・一般教養については過去問を解いてみてそれなりの点が取れそうであれば対策をしなくても良いと思いますが,点が全く取れないような場合には予備校の一般教養対策講座を受ける等をして対策をしておいたほうが良いと思います。ただし,時間をかけすぎても時間に見合った効果は上がらないと思いますので,法律分野の勉強とのバランスに注意をしたほうが良いと思います。



以上が私が考えるスケジュールですが,おそらく実際にやってみた際には,進捗に応じてスケジュールを変えていくと思います。

私は受験生時代にエクセルで本試験までの総勉強時間と,各科目及び分野毎の勉強の進み具合を整理していて「短答式対策が遅れがちなので勉強時間を増やそう」とか「刑法と刑訴の論文については答練で毎回それなりの点が取れているので勉強時間を減らして他の科目に充てよう」とか常に時間配分を調整していました。

自分でスケジュールを管理するのが苦手な人は予備校のパックになっている講座を受けるとペースメーカーになると思います。ただし,集中力がない人が何も考えずに予備校のパック講座を受けるとダラダラと講義を受けるだけになってしまい逆に効率が悪くなってしまうことがありますので,全てを予備校任せにするよりも,自分の頭で考えてスケジュールを組んだり臨機応変に変更していったほうが効率的に勉強が出来ると思います。

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