質問をいただきましたので,回答したいと思います。
返事がかなり遅くなり申し訳ありません。
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こんにちわ。はじめまして。質問させていただきたいことがあります。
今となってはイソベンやノキベンという言葉さえ取り上げられることも減ってしまいましたが社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合、どのようなキャリアになるのでしょうか。
例えば地元が東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらいでといったような具体的なお話が聞きたいです。
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「社会人を経由して30過ぎぐらいに司法試験に受かった場合」のキャリアは様々ですが,ご質問があった「東京の人間は地方に居候先を探すか即独立が何割ぐらい」という点に関して言えば
・東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上)は東京に就職をする。
・地方で就職を希望している人の多数(感覚的に7~8割)は地方に就職するが,地方で就職先を見つけられなかった場合は首都圏や大阪近辺で就職先を探して就職する。
・即独(弁護士登録と同時に独立)は,かなり少ない(100人中1人か2人いるかいないかのレベル)。
という感じだと思います。
- ○東京で就職を希望している人
東京などの首都圏では,弁護士の数が増えていますが,東京の先生の話を聞くと,売り手市場になっているので,弁護士を採用するのが難しくなっているという話を聞きます。
弁護士が増え始めた60期(2006年修習開始組)くらいの弁護士が独立をし始めて,イソベンを募集している事務所が多いからではないか,という噂を聞いたりしますが,数年前に比べると就職氷河期という感じではありません。
そのため,30代であっても社会人経験があって,マナーや常識がある人であれば,東京で就職先を決めることは,現時点ではそれ程難しくないと思います。
ですから,東京で就職を希望している人のほとんど(感覚的に9割以上,自分の周囲に関して言えばほぼ100%)は東京に就職をしているというイメージです。
- ○地方で就職を希望している人
他方,地方で就職先を探している人の7~8割くらいはそのまま地方で就職をしますが,地方では表だって弁護士を募集している事務所が比較的少ないこともありますし,タイミングによってはその地方で弁護士を募集していないということもありますので,コネがなかったりすると自分が希望した地域で就職先を見つけられないことがあります。
地方で就職先を見つけられなかった人は,東京などの首都圏での就職活動に切り替えて,首都圏の事務所に就職をするというパターンが一般的かと思います。
- ○即独について
即独に関しては,就職氷河期と言われていた私の世代でもクラスに1人くらいしかいなかったので,年齢にかかわらず,割合は少ないんじゃないかと思います。
うちの弁護士会に来た修習生の中でも「即独をしました」という話は聞いたことがありません(私が知らないだけかも知れませんが。)。
即独はあまりお勧めしませんが,即独をするなら,東京などの首都圏よりも,弁護士の数が比較的少ない地方で,かつ即独に理解のありそうな弁護士会のある場所にしたほうが良いと思います。
- ○その他のキャリアについて
社会人を経由して30代で司法試験に受かった人のキャリアは様々で,
・もともと働いていた会社に戻ってインハウスロイヤーとして勤務した
・法テラスの養成事務所を経て法テラスのスタッフ弁護士として働いている
・元々特許関係の事務所で働いていたので戻って弁護士として勤務した
・元々司法書士事務所でアルバイトをしていたので,その司法書士事務所と連携する形で法律事務所を立ち上げた
という人もいました。
- ○30代で司法試験に合格することについて
就職先やキャリアに関しては,あまり20代でも30代でも変わらないかと思います。
今は若い修習生が若干増えているような気もしますが,大御所の先生でも「俺も30代でやっと司法試験に合格したんだよな」という人も結構いますし,30代~40代の修習生は珍しくないので,採用する側も年齢だけでなく,その人の経歴,ポテンシャル,人柄のほうを気にすることが多いかと思います。
私の同級生の中でも,就職先がなかなか決まらなかった人はむしろ20代後半くらいの年齢の人が多かったです。
社会人経験のある30代は就職活動も一度経験している人が多いですし,受け答えもしっかりしている人が多いので,意外にあっさりと内定を取ってくる人も多いです。
「30代だから仕事が見つからないかも知れない」という危機感がある人が多いことも,内定の取りやすさに繋がっているのかも知れません。
私の同級生の中でも,就職先がなかなか決まらなかった人はむしろ20代後半くらいの年齢の人が多かったです。
社会人経験のある30代は就職活動も一度経験している人が多いですし,受け答えもしっかりしている人が多いので,意外にあっさりと内定を取ってくる人も多いです。
「30代だから仕事が見つからないかも知れない」という危機感がある人が多いことも,内定の取りやすさに繋がっているのかも知れません。
20代と30代で変わる点があるとすれば
・四大事務所やそれに準じるような大手事務所は若い人材を採用する傾向があるので,30代だと大手事務所への就職が難しい(ただし,前職で特別な経験があれば例外もあるらしいです。)。
・20代から30代前半の弁護士は転職が容易だが(人によっては数年で4~5回事務所を変える人もいます。),30代後半になってくると,比較的転職は若干ハードルが高い。(けど,転職できない訳ではないし,独立をすればいいやという人もいる。)
・裁判官は基本的に若い人が任官するので,30代で司法試験に合格して裁判官を希望するのは難しい。(一度弁護士になってから,弁護士任官すればなれるかも知れません。)
・検察官は30代でも任官する人はいるが,若い人に比べるとハードルは高い。
というあたりでしょうか。
私は20代後半で司法試験の勉強を始めたのですが,なぜ司法試験を選んだかというと,司法試験の世界は,30代で合格しても他の資格に比べてハンデが少ないと思ったからです。
例えば公認会計士の場合,若くないと監査法人の就職は厳しいらしいですし(30代後半,40代での新採用は少ないので目立つらしいです。),公認会計士の友人の話を聞くと,監査法人に就職した後も,基本的にチームで仕事をするため,自分よりも全然若い上司からあれこれと指示をされたり,怒られたりするパターンがあるようです。
医師に関しても,一般的に医学部の高齢受験は大学によっては不利と言われていますし,30代で研修医になった友人の話を聞くと,やはり上下関係が厳しい世界であるため,年下の先輩から,あれこれと怒られたりするのが辛いと言っていました(医者になったのに,あまり嬉しくなさそう)。
他方,弁護士に関しては,司法修習中は指導教官(弁護士,裁判官,検察官)が年下というパターンはありますが,司法修習は監査法人や研修医に比べるとかなり緩いと思います。
こんなことを言ったら怒られるかも知れませんが,年齢関係なくあまり真面目に勉強をしていない修習生はあたり前にいるので,年下の先輩に怒られたり,怒鳴られたりするというパターンはかなり少ないと思います。むしろ,社会人経験があると,丁寧な接し方をされることが多いと思います。
私が弁護士になった後も,30代~50代の修習生が弁護士会にやってきますが,当たり前のことなので全く気になりません。
弁護士になった後も,基本的に個人で仕事をすることが多いので,年齢による上下関係を気にすることは,あまりありません。
弁護士の世界では相手方の先生が年上だから訴訟や交渉で気を遣うなんてことはあり得ないですし,年齢関係なく,主張したいことは主張できる世界だと思います。
なので,私は20代後半で転職を考えた時に司法試験を受けることにしたのですが,年齢を考えると結果的に正解だったなと思っています。
以上,あまり回答になっていないかもしれませんが,「絶対に四大事務所レベルの事務所への就職したい」とか,「裁判官になること以外は考えられない」などの特別な事情がないのであれば,年齢によって進路にそれほどの大きな違いはないと思います。
あまり年齢を気にせずに司法試験の勉強に専念するのが良いのではないかと思います。
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