仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

2020年04月

司法試験の勉強における論証集やノートの使い方について

質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。
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勉強の仕方について
勉強の時、ノートのとり方がうまく行かないことはありませんでしたか。
最近、ノートを取らず、予備校本を読んで、問題集や過去問をやってわからない所は又予備校本を読んでを繰り返しております。
そこで、論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?
それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。
勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。
基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。
説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。
――――――――――――――――――――――――――
伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。
他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。
あまりうまく説明できませんが、宜しくお願いします。
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  • ●論証集やノートを作る必要性について

司法試験の勉強における論証集やノートの使い方について質問がありましたので、お答えしたいと思います。

私も勉強を始めた頃は論証集(論証パターン)の扱いについて悩んだことがあるので、お気持ちは分かります。

結論としては、
(ア)自分で論証集・ノートを作る必要性があると感じていて、かつ時間があるのであれば論証集やノートを作れば良いと思いますし、
(イ)
現時点で論証集・ノートを作る必要性を感じていない場合や、論証集やノートを作る時間的余裕がない場合には、敢えて作る必要はないと思います。


参考として私が受験生の時にどうしていたかという話をしたいと思います。

私は、勉強を始めた頃は論証集やノートは作っていませんでした。必要性を感じていなかったからです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」など論文式試験用の問題集を読めば主要な論点の論証は載っていますので、論証を覚えたいのであれば、論文式試験用の問題集の問題と参考答案を何度も読みながら分からないこところを基本書や予備校本で調べるという作業を繰り返したり、参考答案を写経したりすれば良いと思います。

★ISBN-10: 433530370X

また、勉強を始めたばかりの頃や、自分の頭で考えて論証を作るよりも、出来の良い論証を丸暗記してしまったほうが学習効率が良いので、敢えて自分なりの論証集というものを作る必要性は低いと思います。(「守破離」の「守」、つまり、教わった型を守る)段階です。)



しかし、ある程度勉強が進んできて理解が深まってくると、「自分の頭で考えた論証」や「お気に入りの先生の基本書に書いてある論証」や「司法試験の優秀答案にあった論証」のほうを使いたいという場面出てくると思います。(「守破離」の「破離」、つまり、教わった型を自分なりに改善・改良できる段階になっていきます。)

こうなってくると「試験対策問題集 論文」などの論証を丸暗記するよりも、自分が理解したことや、腑に落ちたことをベースに論証を作って覚えたほうが、記憶に残りやすくなってくるんです。

また単に論点を学習する上で、過去の裁判例でどのような事案であったとか、どのような当てはめたがされたなどの情報を整理したくなってくることも出てきました。

そこで、私は「自分なりの論証を作ったほうが記憶に残りやすい」と感じた論点が出てきた時や、事案や当てはめを整理したい論証ができた時には、その論点について、ワードで自分なりの論証集を作るようにしていました。


たとえば、刑法の共同正犯の成立要件に関する論証ですが、一般的な予備校の問題集にある論証のままだと、事案への「当てはめ」がやりにくいと感じていたので、基本書や過去の判例を参考に以下のような論証を作っていました。


【ここから】

※C-book366、370、山口160、講義案318、ステップアップ101、終局起案手引25、

(1)
実行行為の一部を分担していないが
共謀に参加した者についても
共同正犯(60条)が成立しうるか
が問題となる

(2)
思うに、
「共同して犯罪を実行した」(60条)場合に
全員が正犯とされるという
共同正犯の正犯性の根拠は
各共謀者の
自らの犯罪を実現するために
共謀をなし
共謀に基づいて
相互に
他方の行為を利用・補充し合って
犯罪が実行された場合には
各関与者が
自ら事態の成り行きを操作して
直接的に
法益侵害またはその危険を惹起した
という意味で
各関与者が
自ら犯罪を実行したものと
規範的に評価できる点にある。
そこで、
①共同実行の事実
(共謀に基づいて
共謀者のいずれかが
実行行為を行ったこと)
②各被疑者が犯意を相互に認識したこと
(犯意の相互認識)
③各被疑者に
故意だけでなく
他の者と行為を利用・補充し合い
自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)があること
という要件を満たす場合には
実行行為の一部を分担しない者についても
共同正犯が成立しうると解する。
(最大決昭33.5.28:百選Ⅰ75))
(最決平15.5.1:百選Ⅰ76))

(3) あてはめ
→別途、表を作って整理

※講義案318-
実行共同正犯・共謀共同正犯のいずれにおいても上記の要件となる。
∵共同正犯の正犯性の根拠は共謀へ参加した点にある
→共同正犯の成否という観点では,
実行共同正犯と共謀共同正犯との間には何ら本質的な差異はない
実行共同正犯・共謀共同正犯の区別は
刑事訴訟法の訴因の特定や訴因変更において問題となるにすぎない
【ここまで】


そして、この論証集には、参考にした基本書・予備校本・判例集の頁・番号を記載し、答練をやったり、過去問をやって気づいたことや、気に入った論証のフレーズを加えていき、答練や試験の直前期に見直すようにしていました。


このような自分なりの論証集は全ての論点について作っていた訳ではなく、あくまで論証を作る必要性を感じた論点(自分で論証を作ったほうが理解しやすい、記憶に残りやすいと感じた論点)に絞って作っていました。

自分なりの論証集を作っていない論点については、伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を直前期に読んで覚えたり、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を直前期に読んで、暗記するという作業をしていました。




その他、論証の他に、似て非なる知識が出てきた時に、主に択一対策用に表を作って知識を整理する、といこともやっていました。

たとえば、民法であれば「共有」「合有」「総有」の違いを整理するとか、「代理」と「使者」の違いを整理したりするというものです。


以上のやり方は、あくまで私のやり方ですので、上記のとおりにしなければならないということではありません。

前記のとおり、①自分で論証集やノートを作る必要性があると感じているという点と、②論証集やノートを作っている時間があるのか、という2点から、作るかどうかを判断したほうが良いと思います。

受験生の中には、論証集やノートの作成に時間をかけすぎて、本番に間に合わなくなってしまう人もいますので、時間がない場合には、論証集は全て論文問題集や趣旨規範ハンドブックで代用するとか、ノートは択一六法で代用する等の判断が必要になってくると思います。


私の同級生の中には、自分の論証集やノートを一切作らずに合格している人も多数います。

論証集・ノートを一切作らずに合格している人は、問題演習をたくさんこなしながら、演習の復習の際に知識をインプットしている人が多かったように思います。





  • ●「論文は趣旨規範ハンドブック(工藤の論証集でもよいらしいですが)にまとめると良いという事ですが、普段のノートと別にまとめるとよいのでしょうか?それとも、全て趣旨規範ハンドブックにまとめてしまうのですか。」


この点も人それぞれだと思います。

「普段のノート」について、どのようなものを作っていらっしゃるのか分からなかったのですが、私は趣旨規範ハンドブックをスキャンした上でOCRソフト(読取革命)で読み込んで、ワードに貼り付けて、そこに自分のメモを打ち込んでいくとう方法を取っていました。

「OCRソフト」とは以下のようなソフトです。

★ASIN: B0091L3FDS


しかし、OCRソフトを使っても、趣旨規範ハンドブックの内容をワードの貼り付けるという作業は結構時間がかかりますので(慣れている人でも丸1日くらいはかかると思います。)、私の方法は効率が良かったとは言えないとと思います。

私の同級生(合格者)は趣旨規範ハンドブックに手書きで、自分が必要だと思う情報をどんどん書き込んでいって、直前期に見直すという方法をとっていました。

ただ、この方法も、同級生曰く「趣旨規範ハンドブックが改訂される度に、手書きのメモを書き写さなければならないのが非常の面倒くさい」と言っていましたので(これも1日から数日かかるようです)、前記のようにワードにデータを貼り付けたりするのか、紙ベースで手書きで書き込んでいくかは、一長一短だと思います。



  • ●「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く、問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか。」

「勉強していてわからないところは基本書や論証集に載っているのでそれを見れば良いのであまりノートを取らなくても良く」という点については先程お話ししたとおりです。

自分なりの論証集や知識を整理したノートを作る必要性と時間があると思うのであれば作ればよいと思いますし、必要性を感じないとか、時間がないという場合にはノートを作る必要はないと思います。

「問題を解くときだけノートを使うと良いという事でしょうか」という点については、どのような形で問題演習をするかによると思います。

短答式の問題を解く場合であれば、事案図を書くためのメモ紙等があれば十分だと思いますし、肢別本をガンガン回す時にはノートは使わない人のほうが多いと思います。

論文式の問題集を使う時には、知識のインプットがメインであれば、ノートを使わずにとにかく読み込むというやり方でも良いと思いますし、実際に答案が書けるかチェックしたいということであればノートや答案用紙に実際に答案を書いてみるという作業をしたほうが良いと思います。

なお、司法試験の論文式の過去問を解く時は、下書き用紙に答案構成をした上で、本番と同じ答案用紙に答案を実際に書くという作業をするべきです。

答案用紙は法務省のHPからダウンロードできます。

http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00165.html





  • ●「基本書を7回読めとかいいますがノート取りより読み込みと演習書や過去問のやりこみが良いでしょうか。説明がうまくないですが、勉強の範囲が膨大なので、自分でわからない所の整理をどうやっていくのか、そこがうまく行かないです。」

「基本書を7回読めとかいいますが」という点については、これも人それぞれだと思います。

以前の記事で書いていると思いますが、私は基本書を通読する必要性を感じなかったので、通読した基本書はほとんどありません(通読したのは入門書のみ。)。


他方で、問題演習をして腑に落ちない部分が出てきた時は、基本書や予備校本の該当箇所を何度も読んでいましたので、重要な論点に限って言えば、10回以上基本書を読んでいる部分もあると思います。

基本書を何回読むかが問題なのでなく、予備試験・司法試験の本番で実際に答案を書くことができるのか、合格点が取れるかどうかが問題です。

基本書を何度も読んで合格点が取れるようになるタイプであれば別ですが、そのような人は一部の天才だけなので、普通の受験生であれば、問題演習を中心に勉強をしていったほうが効率が良いと思います。

また、普通の受験生は基本書を7回も読んでいる時間はないと思います。

試しに基本書を1頁読むのにどのくらいの時間がかかるか計った上で、全8科目(憲・民・刑・民訴・刑訴・商法・行政・選択)の基本書の合計の頁数を掛けるみると、基本書の通読には膨大な時間がかかることが分かると思います。

実際に基本書を何度も通読して合格している受験生も少なくありませんので、基本書を通読するな、とは言いませんが、本当に基本書を7回も読む時間があるのかという点と、基本書を7回読んで試験本番で使える知識・技術がどれだけ得られるのかということを良く考えた上で、自分の必要な勉強方法が何なのかを選別していったほうが良いと思います。


なお、特殊な例として、基本書を論証集のように使っている人もいます。

基本書を読む時に、問題提起の部分、規範の部分、理由付けの部分、あてはめの部分をそれぞれマーカー色分けをして、基本書を読む時に、自分の頭の中で論証(もし論文式試験で問われたたらどういう答案になるのか)を構成しながら読むという高度な方法なのですが、地頭が良い方であればこういう方法もあると思います。

江頭先生や伊藤眞先生のような重厚な基本書でこれをやろうとするとかなりキツイと思いますが、最近は予備校本的な初心者にも優しい基本書も増えてきていますし、このような使い方が出来るのであれば、基本書を何度も読むというのもありではないかと思います。




  • ●「伊藤塾の予備試験論文にも論証一覧は載っていますし、予備試験論文のはじめにも、論証一覧はつけたが、巷の論証集は少し量が多いとかかれています。他にあるものをノートに書いてもあまり意味がなさそうですから、こういうのを使い復習するか。」

論証集は色々なものがありますが、個人的には主要論点を抑えるという点で伊藤塾の「試験対策問題集 論文」を使いつつ、細かい論点を押さえるために辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使うというのがお勧めです。

予備校本の巻末にも論証集は載っていますが、これらの論証集は基本的に事案が書いておらず、あてはめの記載もないため、使い勝手はあまり良くないです。

伊藤塾の「試験対策問題集 論文」は、重要論点はほぼ網羅していて、答案例の質も良いのですし、あてはめもシンプルながら要点が押さえられています。

他方、「試験対策問題集 論文」は改訂が数年に1回しかないため、最新判例に関する論点や、近時の本試験で出題されたような先進的な論点については掲載されていないことあります。

そのため、辰巳法律研究所の「趣旨規範ハンドブック」を補助的に使って、論点に漏れがないようにカバーをしておくのが安全かと思います。







以上が私の意見ですが、分からないことがありましたらまた質問をいただければと思います。


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不動産や相続に関係する案件の量と、弁護士が特定の分野に特化することについて

質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

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はじめまして。
いつも貴重な情報をありがとうございます。
質問させて下さい。

不動産、相続に関係した案件はどの程度あるのでしょうか?
弁護士業は特定の分野に特化して成り立つのでしょうか?
東京と地方、所属事務所によって様々だと思いますが、少しでも教えていただけるとありがたいです。

※当方地方在住の30代の男で.現在不動産鑑定士として働いています。司法試験に挑戦し、不動産、相続問題を扱う弁護士になりたいと思っています。
――――――――――――――――――――――――――

回答が遅くなり本当に申し訳ありません。

.現在不動産鑑定士さんとして働いていらっしゃるんですね。

不動産鑑定士試験は今でも相当難しいと思いますが、そこから今度は司法試験に挑戦しようと考えておられるのは凄いモチベーションのある方ですね。


ご質問をいただいた点についてお答えします。




  • ●不動産に関係する案件について

私は地方都市で働いていますが、不動産に関する事件は良くあります。

ただし、不動産関係の事案は飛び込みで来ることは比較的少なくて、不動産業者の紹介や司法書士さんの紹介で来ることが多いです。

ですから、不動産に関する事案を得意分野とすることを希望しているのであれば、不動産業者や司法書士さんとのコネクションを作っておくと良いと思います(不動産鑑定士さんであればすでにコネクションはあると思いますが)。

また現在不動産鑑定士として働いていらっしゃるようですので、不動産鑑定士としての知識や経験を活かして不動産業者や大家さんを相手にしたセミナー等を定期的に開催して、顔を売っていくのも良いかもしれません。

その他、全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)や、全日(全日本不動産協会)の役員の方々と知り合いになると、そこから紹介で不動産関係に事件や講師の依頼などの仕事が来ることもあると思います。




  • ●相続案件について

現在は超高齢化社会ですので、相続案件は今でも多いですし、これからも無くならないと思います。

弁護士会や法テラスの法律相談に行くと、2割から4割くらいは相続関係の相談という感じです。


相続関係で多いのは以下のようような相談や事件です。

(ア)遺産分割(亡くなった人の遺産を相続人でどうやって分けるかの問題)

(イ)遺留分請求(遺言で財産をもらえなかった相続人が財産をもらった人に法律で定められた割合を請求)

(ウ)相続放棄(借金を持っている人が亡くなった場合に相続人が借金を相続しないように放棄をする等の手続)

(エ)遺言作成(自分が亡くなった後の財産の分け方などについて遺言で残しておきたい)


このうち、「(ア)遺産分割」と「(イ)遺留分請求」の事件は、遺産の額によって弁護士の報酬の額が変わってくることが多いのですが、最近の傾向としては取り扱う事件の遺産の額が少しずつ減っているような気がしますが、件数自体はそれ程減っている感じはしません(感覚的な話なのでデータを取ると違うかもしれませんが。)。





  • ●弁護士業は特定の分野に特化して成り立つか

「弁護士業は特定の分野に特化して成り立つか」は、(1)特化する分野と、(2)どこで弁護士業をやるかによると思います。

不動産事件と相続事件に特化するという場合であれば、ある程度人口が多い都市部であれば、分野を絞っても、業務として成り立たせることは十分に可能だと思います。

他方、地方だと、分野を絞り過ぎると業務として成り立たせるだけの十分な需要が見込めないことも考えられます。

「地方在住」とのことですと、不動産事件と相続事件だけに絞るのはちょっと厳しい可能性がありますので、もう少し範囲を広げたほうが良いのではないかと思います。



私の見解は以上ですが、不明な点がありましたらまた質問をいただければです。

頑張ってください。


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30歳から弁護士になって億単位の収入を得ることは可能か


質問をいただきましたのでお答えしたいと思います。

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いつも拝見させて頂いております。
先生の記事を見て司法試験の勉強を始めようかと迷っているところです。
特に、頑張り次第で億単位の収入が目指せ、青天井であるという世界に憧れております。

現在、26歳であり予備試験・司法試験を見据えると弁護士資格が取得できるのは30歳前後かと思います。
年齢を考えますと四大事務所に入所することは難しいです。
弁護士で億稼ぐというと、やはり四大事務所のパートナー先生というイメージor四大事務所出身で独立された先生というイメージがあります。
私のように社会人経験を経ている者でも資格取得後に経済的に成功されている方も周りにいらっしゃいますでしょうか?
もしくは、そうした金銭的成功を目指す場合は起業等別の手段をとるほうが良いのでしょうか。
先生の率直なご意見をお聞かせいただけると幸いです。
――――――――――――――――――――――――――


返事がとても遅くなってしまい申し訳ありません。

コメントをいただいた時にメールが来るように設定をしているのですが、メールを見逃してしまったようです。


私のような地方都市の一弁護士の意見が参考になるか分かりませんが、質問いただいた「社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは可能か」という点について、結論として不可能ではないと思います。

ただし、実力と努力と運次第だと思いますし、一般論として弁護士で1億円以上の額を稼ぐのはかなり大変なことですので、弁護士という職業に思い入れがないのであれば、敢えて弁護士という仕事に拘る必要もないと思います。




私が弁護士をしている地域は地方都市ですが、大御所の先生の2人から「昔は億を稼いでいた」という話を聞いたことがあります。

その先生は2人とも優秀な方ですが、四大事務所の出身ではありませんので、四大事務所所属の弁護士や、四大事務所出身の弁護士でなくても、1億円を超える収入を得る弁護士がいない訳ではありません。


ただ「億を稼いだ」と言っても、「収入」が1億を超えたという話であって、経費等を差し引いた「所得」の額が1億円を超えるかどうかは別の話です。

弁護士白書2015年版」によると、日本弁護士連合会が2014年に行った調査では、回答者3724人中のなかで、「年収」が1億円を超える弁護士は88人であり、「所得」が1億円を超える弁護士は7人であったとされています。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/4-1_jissei_2015.pdf

サラリーマンの「年収1億」と自営業者の「年収1億」は意味合いが違うので注意が必要です。




また、現在は地方都市の人口は減っていますし、企業も減ってきていますので、今から1億円を超える収入を目指すのであれば、首都圏で激しい競争を勝ち抜いていく必要があると思います。



昔はアメリカに留学してアメリカのどこかの州の弁護士資格を取るということが流行っていましたが、「そういう時代ではなくなったよね」という先生も増えてきたような気がします。

四大事務所に入るという方法は弁護士として成功するための1つの手段であるとは思いますが、四大事務所のような大規模事務所に入れたとしても、同じ事務所で働き続けて1億円を超えるような収入を得られる人はごく一部に限られています。


また独立して1億円の収入を得るためには、時代の流れに乗っていく必要もあります。

例えば、過払いが多かった時期は、過払いに特化することで大きな収入を得た弁護士がいましたが(過払いに特化していなくても昔は年収6000万円を超えたという話を先輩から聞いたことがあります。うらやましい。。。)今では過払いに特化して安定した収入を得ることは困難です。

現在は交通事故事件に特化して収入を得ている弁護士も多いですが、最近では自動車の安全機能が進化して交通事故の件数が減ってきていますし、自動運転が発達すれば交通事故はほとんど無くなるかも知れません。

このように、一口に大きな収入を得ると言っても、どのような手法で、何を目指して収入を得るのかは、時代の流れを読みながら自分の頭で考えていく必要があると思います。



その他、弁護士の中には、弁護士をしながら投資をしたり、他の事業を立ち上げて、そこから多額の収入を得ているという人もいます。(他方で投資や事業に手を出して失敗をする弁護士も少なくないと聞きますが・・・)


このように考えていくと、弁護士で1億円以上の収入を得るためには、企業の経営者や投資家と同様にもの凄い努力をする必要があるので、単に「お金を稼ぎたい」という目的なのであれば、敢えて目標を弁護士に絞る必要はないのではないかと思います。

弁護士を目指す人は、どちらからというと「弁護士という仕事を通じて人や社会の役に立ちたい」という気持ちを持っている人が多いと思います。

それなりの収入を目指すとなれば、とんでもない激務やストレスを覚悟する必要がありますから、お金以外に「なぜこの仕事を選んだのか」という明確な理由がないと、結果を残しつつ続けていくこと難しいと思います。

ですから、それなりの収入を得たいというのであれば、自分がどういう形で他人や社会に貢献したいと思うのかを良く考えて、辛いことがあっても信念を持って続けられるような仕事を選ぶことが重要ではないかと思います。






ちなみに弁護士に限らず、仕事をしてお金を得た場合には所得税という税金がかかります。

ご存じだと思いますが所得税は累進課税で、「所得」が4000万円を超えると45%もの税金がかかります。

そして、住民税が10%なので、お金をいっぱい稼いだとしても、結局半分以上は税金で持っていかれます。




他方、株式投資等で得た収入については、日本では税率は約20%しかかかりません。

お金持ちになりたいのであれば、弁護士よりも投資のほうが効率が良いかも知れません。

アメリカの有名な投資家チャーリー・マンガーも元弁護士ですし。

★ISBN-10: 4822255360



ちなみに、最近ですと弁護士の福永活也さんという方が大きな収益を上げて本を出しているようです。

この方も昔は一般企業で働いていたようですので、私の話よりもずっと参考になるのではないかと思います。


★ISBN-10: 4295403156







以上、

・社会人経験のある人が30歳前後で弁護士になって億単位の収入を得ることは不可能ではないが、実力と努力と運次第

・収入だけに着目するのであれば、敢えて弁護士という職業に拘る必要はないと思います

というのが私の意見でした。


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