仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

2020年06月

司法試験の入門書と論文式試験用の問題集などについて


質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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はじめまして。私は学部生2年生のもので、法曹を目指しております。司法試験の勉強の仕方や参考書などが詳しく解説されていて、大変参考になります。
質問なのですが、私は短答対策として、辰巳の短答過去問パーフェクトを使用し、数周回したところです。
次は論文対策なのですが、何を買えば良いかわかりません。
参考書を紹介されていた2017年の記事のものを現在買って、勉強しても、合格できるのでしょうか。
伊藤塾の入門書と問題集など買おうと思うのですが、学生の私としては少々それだけでも値段がかさみます…。
ですから、出来るだけ無駄なものは買わずに合格したいです。
いつもブログ参考にさせていただいております。
よろしくお願いします。
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いただいた質問を整理すると

・論文対策としてどの入門書・問題集を買えば良いか
・できるだけ無駄な書籍を買いたくない
・お勧めしている書籍を買って勉強して合格できるか

ということだと思います。

順番にお答えしたいと思います。



  • ●論文対策としてどの入門書・問題集を買えば良いか

これまで司法試験の参考書籍等を紹介した記事は以下のとおりですが、以下で紹介した勉強方法やおすすめの参考書は現時点では変更ありません。

司法試験や予備試験の傾向はほとんど変わっていないからです。

ただ改訂になっている参考書等もありますので、出来るだけ最新の版の書籍を購入していだだければです。




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それから、私が上記の記事でおすすめている書籍は「私がもし初学者の近い状態でこれから司法試験の勉強をするとしたら、どの書籍を買うだろうか?」という視点で紹介しているものです。

司法試験や予備試験の勉強をするにあたり「一番良い本」というのは、その人の好み・特性や、読解力、勉強の進み具合によっても異なります。

学者の先生が書いた本を愛用している人もいれば、予備校本しか読めないという人もいれば、私のように基本書も予備校本も読むのが苦手という人もいます。

そのため、上記の記事ではできるだけ複数の書籍を紹介した上で、その中から自分に合ったものを選んでいただくことを前提にお勧めの書籍を紹介しています。

私や他の人に紹介された本をそのまま買うのではなく、出来れば実際に本屋さんで立ち読みをしたり、図書館で借りて読んでみて、自分の目で確かめてみて、自分の納得したものを買ったほうが良いと思います。




  • ●できるだけ無駄な書籍を買いたくない

「できるだけ無駄な書籍を買いたくない」という点については気持ちは大変良く分かります。

私も司法試験を受験するにあたり、親からの援助を一切受けなかったため、なけなしのお金で司法試験の対策をしていました。

ただ、司法試験に合格をしたいのであれば、ある程度の書籍代は必要経費だと割り切ってそれなりの予算を組んでおくべきだと思います。

先程お話ししたとおり、司法試験や予備試験の勉強をするにあたり「一番良い本」というのは、勉強の進み具合によっても異なってくることがあります。

例えば、「自分には合わない」と思っていた基本書が勉強が進んでくるにつれて最高の本になってくることもありますし、初学者の頃には読みやすいと思っていた予備校本が勉強が進んでくるにつれて説明が回りくどく感じてしまったり、内容に一貫性がないとか、頭に入りにくいと感じてくる人もいると思います。

また、上記の記事でも触れていますが、司法試験や予備試験に合格するためには、単に基本書を読んだり、問題集をこなしていくだけでなく、論文試験の過去問の分析をすることが必須ですし、合格する可能性を高めたいのであれば予備校の答練や直前模試を受験しておくべきです。

そのため、書籍代だけでなく、できるだけ予備校の答練や直前模試を受験するための費用も確保しておきたいところです。

司法試験や予備試験は合格が1年遅れると、1年分の生活費が余計にかかってしまいますし、法曹になって得られるはずだった収入が1年分減ってしまいます。

司法試験用の書籍は高いですがそれでも1冊数千円ですから、書籍にかける費用は合格の必要経費だと割り切って、できるだけ早く司法試験に合格したほうが、長い目で見ればコストパフォーマンスは良いと思います。


それても、やはり「できるだけ無駄な書籍を買いたくない」ということだと思いますので、改めて司法試験や予備試験を必要最小限度の経費で合格するための参考書等について私なりの意見について書いていきたいと思います。



  • ○入門書について

入門書はこれまでの記事でおすすめしているとおり、初学者の方には「伊藤真の○○入門」をおすすめしています。

理由は文章が平易で分かりやすく薄いので、初学者の方でも途中で挫折する可能性は低いですし、「読んだけど結局何も頭に残らなかった」ということが起きにくいからです。

●ASIN: B076J1HQ84

もう少し詳しい入門書が良いという阿合には、「伊藤真ファーストトラックシリーズ」がおすすめです。

●ISBN-10: 4335314612


ただ、今回の質問者の方は「辰巳の短答過去問パーフェクトを使用し、数周回した」ということですので、それであれば「伊藤真の○○入門」や「伊藤真ファーストトラックシリーズ」に書いてあるレベルの知識・理解は既に頭に入っている可能性が高いと思います。

ある程度、基本的な知識が入っているのであれば、入門書を読まずに論文式試験の問題集に手をつけてみて、分からないところは基本書を読んで理解を深める、という方法にすれば時間もお金も節約できると思います。

あと入門書は基本的には勉強の初期しか使わないことが多いので、お金を節約したいのであれば、学校や地域の図書館にある入門書を買って読むという方法でも良いと思います。

法学部の学生であれば入門書は先輩から譲ってもらえることもあると思います。


なお、これまでの記事で初学者の時期から試験直前期まで使える便利な入門書として「伊藤真新ステップアップシリーズ」という本を紹介していますが、金銭的な余裕がないのであれば現時点では無理をして買う必要はないと思います。

「伊藤真新ステップアップシリーズ」は、「知識が大量にあるのに論文式試験の点が安定しない」という受験生が、基本事項の正確な知識を整理して安定した点を取ることができるようにするために便利な本ですので、もし勉強が進んできた後に必要性を感じた時に購入するかどうかを検討すれば良いと思います(個人的に便利な本だと思いますが、万人に必須という訳ではありません。)。

●ISBN-10: 4335301863






  • ●論文式問題集

論文式試験用の問題集としては、どれか1冊を買うということであれば、個人的にはこれまで通り「伊藤塾試験対策問題集」をおすすめします。

この問題集に掲載されている問題は簡単すぎず、かといって難しすぎる訳でもないので、初学者でも取り組みやすいレベルですし、試験の直前期まで基礎固めに使えます。

参考答案の文章もレベルが高く、この問題集の参考答案の書き方を真似することで、論文式試験の答案の基本的な「型」を身につけることができます。

(あと、他の問題集に比べると若干安いと思います。)

旧司法試験形式の問題が多いですが、この問題集のAランクレベルの問題をスラスラと解けるようにならないと、新司法試験形式の問題を解くことは困難です。

伊藤塾の論文試験用問題集は「予備試験」と書いてあるものと、「予備試験」と書いていないものがありますが、どちらかだけ買うのであれば「予備試験と書いていないもの」をおすすめします。

理由は「●論文問題集の使い分けと論文式試験の対策について」という記事に書いていますので参考にしてください。


●ISBN-10: 433530370X


論文式試験の問題集は他にも色々とあり、私は辰已法律研究所の 「えんしゅう本」 、旧早稲田セミナーの「スタンダード100」、LECの「論文の森」など、多数の問題集を買って散財しまくりましたが、この中では実際に使ったのはほとんど「伊藤塾試験対策問題集」だけでした。

今受験生に戻って1冊だけ買うとなればやはり「伊藤塾試験対策問題集」と買うと思います。

ただ、先程お話したとおり好みの問題もあると思いますので、実際に本屋さんなどで、自分の目で見て納得したものを買うと良いと思います。


一応、各問題集の良い点と、いまいちな点を挙げていきたいと思います。



○「伊藤塾試験対策問題集」


「伊藤塾試験対策問題集」の良い点は前記のとおりですが、問題にA、B、Cなどのランクがふされており、時間がない受験生でも優先度の高い問題から取り組めるのも便利です。

いまいちな点としては、他の問題集に比べると問題数が若干少ないですが、1つの問題に複数の論点が盛り込まれているものが多いため、問題数の割には基本的な論点は網羅できるように工夫されていますし、個人的にはこのくらいの問題数が消化不良にならなくて良いと思います。

受験生の答案を採点すると、この「伊藤塾試験対策問題集」のAランクの基本問題(各科目30問くらいしかない)のレベルの論点すら正確に記述できていない人がとても多いので、問題数の多い問題集に手をつけるよりも、まずはこの問題数の少ない問題集で基礎固めをしたほうが合格には近くなると思います。


なお「●会社法・商法の勉強方法とおすすめの商法・会社法の基本書や参考書など」に書きましたが、「伊藤塾試験対策問題集」の商法については、問題演習量として物足りないと思います。

「伊藤塾試験対策問題集」を使う場合に、知識の穴を埋める方法は「●会社法・商法の勉強方法とおすすめの商法・会社法の基本書や参考書など」という記事の「会社法・商法の知識の穴を埋めよう」という項目に私見をまとめていますので、参考にしていただければです。





  • ○えんしゅう本


私の周囲では「えんしゅう本」を持っている同級生もそれなりに多かったです。

良い点は問題が基本的でシンプルな問題が多く、解答例も答案構成のような形式になっているので、速く何度も回せる点です。

(論証集を問題集にしたようなイメージの問題が多いです。)

いまいちな点は、解答例の文章が分かりにくいものがあるところと、踏み込んだ問題が少ないので問題演習としては若干心許ないような気がします。

事実認定(当てはめ)も、問題によってはちょっと物足りない感じがします。

お金に余裕があって予備校の答練を沢山受けられる人であれば、「えんしゅう本」で基本的な論点を早めに押さえて、実践的な感覚は答練で身につけていくという方法もアリだと思いますが、相談者の方はお金を節約したいということですので、そういう使い方も難しいかなと思います。

なお「伊藤塾試験対策問題集」に飽きた時に「えんしゅう本」を高速でぐるぐると回すと論点知識が整理できると思いますが、お金を節約したい人は敢えて両方買う必要はないかなと思います。



旧司法試験の時代には人気があった問題集だと思います。

良い点としては問題数が多いです。

ただ、問題数が多いという点はいまいちな点でもあります。

全科目についてこの量をこなして確実に知識やテクニックを身につけられる受験生はかなり少ないと思います。

少なくとも私は何回か「スタンダート100」の圧倒的な量に挫折しています。

問題の中には「今の司法試験では、このような問題が出される可能性は低いのでは?」と思われるようなものも混ざっているような気がします。

いずれも解答例の質は悪くはありませんが、個人的には「伊藤塾試験対策問題集」のほうが分かりやすいと思います。

数多くの解答例があるので答案の書き方に悩んだ時に辞書として使うには便利な本ですが、お金に余裕がなければ敢えて買う必要性は低いかなと個人的には思います。



  • ●基本書・判例集について

基本書等と判例集については、以下の記事を参考にしていただければと思います。

お金がないのであれば、基本書については各科目とも他の受験生も使っていそうなメジャーな基本書を購入し、判例集は「判例百選」で統一するのがコストパフォーマンスが良いと思います。

質問者の方は学部の2年生とのことですので、大学で指定されている基本書があるのであれば、その基本書をそのまま使えば、お金の節約にはなると思います。

ただ、刑法や民事訴訟法は、大学からあまり司法試験向きではない基本書(実務では実際には使われていない考え方を厚く解説したものなど)を指定されることもあるので、必要に応じて買い足す必要があるかも知れません。

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  • ●お勧めしている書籍を買って勉強して合格できるか

「お勧めしている書籍を買って勉強して合格できるか」という点については、(当然のことですが)本を買った後に「どのような勉強を、どの程度するかによる」というのが答えになると思います。



司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」等の記事でも書いているとおり、司法試験や予備試験に合格する可能性を上げるためには、市販の論文式試験の問題集をこなすだけでなく、

(1)理解できないところは基本書や予備校本で調べて復習する

(2)司法試験・予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いてみて分析をする

(3)できれば予備校の答練・直前模試を受験してしっかり復習する

という作業が大事です。


(この他に、科目別にやったほうが良い勉強方法もありますが、その点については科目ごとの以下の記事を参考にしていただければです。)

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市販の問題集をこなすだけでも合格できる可能性はないとは言い切れませんが、通常はそれだけでは難しいと思います。


(1)の「理解できないところは基本書や予備校本で調べて復習する」というのは、問題集の参考答案に書いてある内容を表面的に理解するだけでなく、根本的な原則や制度趣旨などから論点等を理解することで、似たような問題が違う角度から出題された場合や、見たこともないような問題が出題された時に対応できる力を身につけるためには、やっておくべき事項です。


(2)の「司法試験・予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いてみて分析をする」については、論文式問題集を回しているだけでは身につけることが難しい能力=①本番の出題趣旨や誘導に沿って解答する能力、②事実認定能力(必要な事実を拾い上げる能力、当てはめの能力)、③時間内に無難な答案を仕上げる能力、④見たことがない問題に直面した時に慌てないメンタル、などを身につけるために必要です。

論文式問題集をある程度回した後に、司法試験・予備試験に論文式試験の過去問を実際に解いてみると、普通の人は「何て難しいんだ・・・」と絶望すると思います。

しかし、論文式問題集で基本的な知識や理解をきちんと身につけていれば、最初は司法試験・予備試験に論文式試験の過去問が難しく感じたとしても、過去問を数年分回すことで、次第に本試験形式の問題を解くためのコツやパターンなどが分かってくると思います。

実際の合格者の答案を読んでみると、法律論の部分についてはそれほど難しいことを答案に書いている訳ではなく、論文式問題集の参考答案にあるような基本的で当たり前のことを正確に書いてあるだけ、というパターンが多いことが分かると思います。

最初は論点に気が付かなくても、過去問を数年分回しているうちに、問題文の中にヒントがあることが分かってくると思います。

事実認定については得意不得意の個人差が大きいところですが、通常は論文式試験の過去問を数年分こなして、優秀答案の真似をしているうちに、どのような事実認定をすれば点が付くのかはやり方が分かってくると思います。

時間内に無難な答案を仕上げる能力については、本番と同様の問題を何度も時間を計って、時間が足りなくなった理由を分析しつつ試行錯誤をすることで、能力が上がっていきます。




(3)の「できれば予備校の答練・直前模試を受験してしっかり復習する」という点は、必須ということではありませんが、効率的に合格をしたいのであれば予備校の答練・直前模試は受験しておいたほうが時間的な効率は良いですし、合格の確率も確実に上がります。

市販の論文式試験問題集は、どの本を使ったとしても、最新の判例を題材にした問題や、その年の司法試験委員が好きそうな分野に関するちょっと特殊な問題というものは載っていないことが多いです。

自力で最新の判例を題材にした問題に対応する能力を身につけるためには、直近数年分の重要判例解説を買ってきて、出題される可能性のある判例をピックアップして、自分なりに予想問題と回答案を作成するという方法もありますが、非常に手間です。

また、その年の司法試験委員が好きな分野については、自分で司法試験委員の論文を分析するという方法がない訳ではないですが、これも非効率です。

他方、予備校の答練や直前模試では、本試験で出題される可能性の高い判例を題材にした問題や、司法試験委員が好きな分野を絡めた問題が出題されることが多いです。

ですから、市販の論文式試験問題集ではカバーしきれないような最新の傾向の問題については、予備校の答練や直前模試を使って対策するのが効率的です。

また、試験直前期には、自分の苦手な科目や欠けている能力を把握した上で、苦手な科目を重点的に学習するとか、欠けている能力を向上させるという作業が必要になってきますが、苦手科目や欠けている能力を客観的に把握するためにも、試験直前期に予備校の答練や直前模試を受験して、他の受験生との間の相対的な位置を把握しておくことは大事です。

たとえば、自分の中では「民法は得意だけど、選択科目は勉強が追いついていない」と考えていても、予備校の答練や直前模試を受験すると、「民法の点はいつも悪いが、選択科目はそここそ良い点数が取れている?!」というようなことがあります。

これは民法などの主要科目は他の受験生も短答式試験の勉強などを通じてそれなりに時間をかけて勉強しているのに対し、選択科目は他の受験生も勉強が追いついていないことが多く、自分の中の主観的な評価と、他の受験生との客観的な相対評価にズレが生じてることによるものです。

このズレを把握できていないと、客観的には既に合格レベルにある選択科目の勉強に力を注ぐ一方で、勉強が足りていない民法の勉強が不十分なまま本試験に突入してしまい、不合格になる、みたいな失敗をしてしまう可能性があります。

このように市販の論文式試験問題集をこなしているだけでは、他の受験生と比較した場合の自分の相対的な位置を把握できないため、試験直前期に勉強の時間配分を誤り、そのことが本試験での敗因になる可能性があります。

ですから、合格したいのであれば、市販の問題集をこなすだけではなく、

(1)理解できないところは基本書や予備校本で調べて復習する

(2)司法試験・予備試験の論文式試験の過去問を実際に解いてみて分析をする

(3)できれば予備校の答練・直前模試を受験してしっかり復習する

という作業をしておくことが大事です。


したがって、「お勧めしている書籍を買って勉強して合格できるか」という点については、本を買った後に「どのような勉強を、どの程度するかによる」というのが答えです。


私の同期の合格者を見ていると、異端と言われるような問題集や基本書を使っていても合格する人は合格しますし、参考書マニアのように多数の本を持っていて膨大な知識を持っていても、勉強の方向性がずれてしまうと合格しません。


なお、おすすめしている問題集や基本書を一切買わなかったとしても、お金と時間に余裕がある人であれば、予備校の基礎講座から受講して、予備校の答練を数多く受験して、毎回復習をきちんとすれば十分に合格できると思います。

何をどう勉強して良いのかさっぱり分からないという人の場合や、自分でスケジュール管理をするのが苦手な人は、予備校の基礎講座から受講したほうが結果的に費用的にも時間的にもコストパフォーマンスが良かったという場合はあると思います。

ただ、予備校の基礎講座はそれなりの価格がしますし、基礎講座の受講はそれなりの時間が必要ですので、お金と時間を節約しつつ合格したいという方で、自分の頭で常に自分に何の勉強が必要かを考えつつスケジュールを管理できる人であれば、やはり市販の書籍を使いつつ、予備校の答練・直前模試を活用するというやり方が良いかと思います。


以上、長々とした回答になってしまいましたが、またご不明な点があればご質問をいただければと思います。





50代・60代で司法試験に合格した後の就職について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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こんにちは。
勉強方法や参考書、問題集など、充実した内容なので、大変参考にさせていただいております。
実は私は50代半ばのサラリーマンなのですが、定年後に弁護士になれないかと思い、昨年秋から勉強を始めた者です。フルタイムで仕事もありますし、家族もいるので勉強漬けとは程遠い生活ですが、大学受験以来の前向きな気持ちで楽しみながら勉強しています。
さて、まずは勉強しなさい、と言われそうですが、1つ質問させてください。これから勉強して、予備試験に受かるか、定年(60歳)後に法科大学院に行くかして、司法試験に受かるのは早くても60代前半にはなってしまうと思うのですが、それからでも就職できるものでしょうか。
もともとは親族間の相続とか、不動産登記とか、そういった関係のトラブルを目の当たりにして、親族に限らず、そういう街のありふれたトラブル解決の役に立つ仕事を第二の人生ではしてみたい、というのが動機です。
よろしくお願い致します。
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質問者様は50代半ばということですので、人生の大先輩ですね。

年齢に関係なく勉強されているということで尊敬します。



私の周りでは高齢の司法試験合格者があまり多くないので、はっきりとしたことは言えないのですが、50代・60代で司法試験に合格した後に、就職をしやすいかどうかは、その方のこれまでのキャリアや人脈の多さなどによると思います。

法律事務所が欲しいと思うような経験や人脈、知名度などがあれば、当然ながら就職先の選択肢はそれなりあると思います。

私が知っている方の中では、大手企業を途中で退職して50代で司法試験に合格された方が1人いますが、その方は普通に法律事務所に就職をしていました。

大手企業で働いていたという経験などが考慮されて採用されたのかも知れません。




弁護士の就職活動では、自分の中では「アピールポイントにはならないだろう」と思っているような経歴が役に立つことがあります。

私も公務員を辞めてから司法試験に合格したのですが、一般的に転職活動では「公務員をやっていてもつぶしが効かない」と言われていたため、当初は就職活動では不利だろうと思っていました。

しかし、司法修習生になってみると同級生から「どこどこの先生が、役所で働いていた人が欲しいから、今度事務所に遊びに来てって言ってたよ」みたいな話をいただいたことがありました。

法律事務所によっては「知財が分かる人が欲しい・・・」とか、「経理や税に詳しい人がいたら助かるのにな・・・」みたいなニーズがあったりするので、そいういったニーズにぴったりと当てはまれば、声をかけてもらえることもあると思います。



アピールできるようなキャリア・経験がない場合には、それぞれの法律事務所の考え方や、就職のお願いの仕方によると思います。

一般的に自分よりも年上の方をアソシエイト(イソ弁)として雇用するというのは、抵抗がある場合が多いと思います。

私もサラリーマン時代に、非常勤職員の採用を担当することになり、面接をしたことがあるのですが、若い人の他に、大手企業で部長をされていた50代の方が面接にいらっしゃったことがありました。

その方は、いかにも仕事が出来そうで、社会経験も豊富そうで、面接のやり取りもとてもしっかりしている方だったのですが「こんな素晴らしい人に、年下の自分が上司として指示をすることは畏れ多すぎる・・・」ということで、悩んだ末に、その方ではなく若い人を採用することにしたということがありました。

弁護士の場合はボス弁が60代・70代という場合も多いので一般的なサラリーマンに比べると年配の方でも就職先の選択肢はあるほうなのですが、ボスが年上だったとしても指導役になる兄弁が年下になってしまうというパターンもあるので、そういった意味では、年齢が高くなればなる程、就職希望先の事務所が年配の方を採用するかどうかで悩むというケースは当然多くなってくると思います。



ただ、あまり無責任なことは言えないのですが、「給料はそれほど高くなくても良いので、修行のために事務所に置かせてください」的なスタンスであまり就職先に拘らずに何件もお願いをしていれば、「仕方ないなぁ。じゃあ1年だけね!」みたいな感じで修行をさせてくれる可能性はそれなりにあるのではないかな、、、と感覚的には思います。

地域にもよると思いますが、「1年くらいなら面倒を見てあげるか」という心の広い大御所の先生はまだ絶滅しておらず、点在的にいらっしゃると思います。

なので、数打ちあたるというスタンスで、辛抱強く就職活動をしていれば、高齢の方でも採用をしてもらえる可能性はあると思います。



それでも、万が一、就職先が決まらなかった場合には、即独という選択肢も考えておいたほうが良いかも知れません。

私は弁護士という職業の良いところは、会費さえ払っていれば自分1人でも仕事ができることだと思っています。

私が司法試験に合格したのは30代半ばでしたが、弁護士の就職が厳しいと言われていた時期でしたので「就職先が決まらなかった時のために即独立も選択肢に入れておこう」と腹をくくっていました。

弁護士の場合は一応司法修習という研修が用意されているので、司法修習中に吸収できることは全て吸収するつもりで真剣に多くの事件に触れ、どんどんと質問をするなど主体的に勉強をしていれば、業務的には即独でもやってやれないことはありません。

就職をしてもボス弁や兄弁が丁寧に教えてくれるとは限らないですし。。。就職したけど、ボス弁も兄弁も忙しくて、結局全部自分で調べて仕事をこなしている、なんて話もたまに聞きます。

弁護士が独立する際のマニュアルなどもそれなりにあるので、覚悟があれば即独も十分に選択肢に入れて良いと思います。

ただ、即独の場合には、事務所経営のことを事前に慎重に考えておく必要があります。

営業やマーケティングが得意な方や、人脈が広い方で、資金もそれなりある方であれば、最初から都市部で勝負するという方法もあると思います。

他方、営業に自信がないという方や、大きな資金がないという場合には、国選や後見や管財事件などが定期的に回ってくるような地方で独立をして定期収入を得つつ、少しずつ顧客を増やしていって経営を拡大していくという選択肢もあると思います。

即独をする場合には、弁護士会の委員会活動などのも適度に顔を出して、困った時に相談できるような人脈を作っておくのも良いと思います。


なお、もし即独をした場合には非弁提携にも気をつけていただきたいです。

非弁提携については、二弁の「本当に怖い非弁提携」という記事が分かりやすいです。




以上、あまりはっきりとした回答になっていなくて恐縮ですが、

・50代・60代の方が就職できるかは、その方のキャリア・経験・人脈などに左右される部分が大きいと思われる

・特別なキャリアがなくてもお願いの仕方を工夫して数打ちあたれば就職できる可能性はあるような気がする

・就職できなくても資格さえあれば独立できるのが弁護士の良いところ

というのが私見です。

もしご不明な点があればまた質問をいただければです。



最後に、50代半ばで司法試験に挑戦するというのは夢があって素敵なことだと思います。

私の知っている先輩方では定年退職した後に、行政書士として独立をしたり、不動産の勉強をして不動産業をしている方などがいます。

今では60歳はまだまだバリバリ現役で働ける方が多いので、50代・60代から新しいことに挑戦するというのはワクワクしますよね。

頑張ってください。

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