質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。
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論文試験が終わりました。
このところ仕事が忙しくて、金曜は9時まで残業があり、昨日は昼休みの間ずっと電話と携帯メールで職場とやりとりするという状況でしたが、何とか全科目受験することができました。
さて、試験の方ですが、やはり時間が足りないことを痛感しました。綺麗な字を書くことを諦めてかなり汚い字で書き殴りましたが、それでも時間内に答案を書き切るのがやっと、という感じでした。その上、商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました。
それでも全科目受験できて、論文の採点をしてもらえるということだけでも、約1年間(最後の4ヶ月は仕事の関係でほとんど勉強できなかったものの)それなりに一生懸命勉強してきた甲斐があったと、満足しています。
最後に一つだけ質問させて下さい。
さすがに論文試験に通っているとは思えないのですが、これから1月中旬の合格発表まで、どのように過ごしたらいいか教えて下さい。
具体的には、今から合格発表まで、試験のことは忘れて一切勉強から離れてもいいものか(万一受かっていても、2週間の準備で口述試験は何とかなるものなのか)、今から何かしら準備をしないと口述試験は通らないものか、仮にそうであれば、どんな準備をどのくらいすればいいのか、ご経験を踏まえてアドバイスをいただけたら、と思います。仕事は引き続き多忙ではありますが、週末のうち1日は休めるというのが最近のペースです。
よろしくお願い致します。
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論文試験おつかれさまでした。
私が受験生の時はまだ予備試験がなく、私自身は予備試験は経験していないので、そのことを踏まえた回答であることをご了承ください。
論文試験が終わった後の時間の過ごし方ですが、予備試験の場合には、論文試験が終わった後も勉強を継続する受験生が多いと思います。
予備試験の場合には、論文試験が終わっても合格すれば口述試験を受験しなければならない訳ですし、口述試験に合格すれば、翌年の5月には司法試験を受験することになるからです。
また、残念ながら予備試験に不合格になった場合にも、次の年もまた予備試験を受験することになる訳ですから、勉強を継続する受験生が多いと思います。
- ●口述試験について
ちなみに、過去3年間の予備試験の口述試験の合格率は、以下のとおりです。
令和元年 96.3%(受験者数494人、合格者数476人)
平成30年 94.9%(受験者数456人、合格者数433人)
平成29年 94.6%(受験者数469人、合格者数444人)
予備試験の口述試験の合格率は95%前後ですので、一見すると簡単な試験に感じるかも知れませんが、予備試験の口述試験の受験生は、短答式試験と論文式試験をくぐり抜けてきた猛者ばかりですので、その猛者の中で約5%が落ちる試験であると考えると、決して簡単な試験ではないと思います。
予備試験の口述試験で出題された具体的な問題は公開されていませんが、法務省のホームページで「予備試験口述試験における問題のテーマ」を閲覧することができます。
たとえば、令和元年度の口述試験のテーマは以下のとおりです。
民事
1日目
賃貸借契約の終了等に基づく不動産明渡請求事案における実体法ないし攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,
弁護士倫理上の諸問題
2日目
所有権に基づく不動産明渡請求訴訟における攻撃防御方法に関する諸問題,
民事保全,立証方法,訴訟手続,
弁護士倫理上の諸問題
刑事
1日目
遺棄罪,身分犯と共犯,不作為犯,
公判前整理手続,証人尋問
2日目
同時傷害の特例に関する諸問題(要件,適用範囲等),
承継的共同正犯,
訴因変更
こうして見ると、論文式試験で問われるような主要なテーマだけでなく、「民事保全」「公判前整理手続」「証人尋問」といった短答式試験で問われることがあるような比較的細かい手続的なテーマも出題されるので、それなりに準備が必要だと思います。
- 論文式試験が終わった後の過ごし方
もし私が予備試験の受験生であればですが、民法、要件事実、刑法を中心に勉強を継続すると思います。
これは予備試験の口述試験の過去のテーマを見ると、毎年、要件事実がからむ民法上の主要論点や、刑法の知識が問われていますし、他の受験生も時間をかけて勉強することが多い民法、要件事実、刑法に関する知識・理解の差で合否が決まる可能性が高いと思われるからです。
要件事実については、他の記事でも書きましたが、予備試験・司法試験レベルでは、「新問題研究要件事実」「紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造」の2冊を抑えておけば十分です。(司法修習や二回試験もこの2冊を抑えておけば十分に対応できます。)
厚い本を使って消化不良になるよりも、この薄い2冊をきちんとマスターして、後はこの本で学んだことを試験本番で応用しながら対応するほうが効率が良いはずです。
口述試験の過去のテーマを見ても、ほぼこの2冊に書いてある論点が出されていると思います。
●ISBN-10 : 486684048X
●ISBN-10 : 4908108226
執行・保全、刑事訴訟法の手続に不安があれば、それに関する本をざっくりと読んでおくと思います。
執行・保全は他の受験生も苦手であることが多く、基本的なことさえ分かっていれば良いので、薄めの本で十分です。
個人的には「基礎からわかる民事執行法・民事保全法」か有斐閣アルマの「民事執行・保全法」が良いと思います。
●ISBN-10 : 4335354754
●ISBN-13 : 978-4641220850
刑事訴訟手続については、司法研修所の「刑事第一審公判手続の概要」が薄くて使いやすいと思います。
●ISBN-10 : 4908108447
刑事訴訟手続に関しては、この本に書いていないことが聞かれる可能性は低いと思いますし、仮にこの本に書いていないことが聞かれたとしても、他の受験生も分からない人が多いと思うので、あまり差はつかないと思います。
また、予備試験の論文式試験に合格している可能性があると感じた場合には、予備校の口述試験も受けたおいたほうがベターだと思います。
口述試験に限りませんが、模試を受けておいたほうが、落ち着いて本番を受けられる可能性が高くなりますし、模試と似たような問題が出題される可能性もあるからです。
なお、「商法と民法では書くべき論点が全く分からない問いがあり、特に商法は後半の設問はほぼ白紙のような答案になってしまいました」とのことですが、私も法科大学院の入学試験で商法の2問目の問題がほとんど分からず5行くらい書いて終わってしまったのですが、それでも合格していました。
論文試験の合格発表から口述試験までの期間は短いので、「どうせ不合格だろう」と思っていて何も対策をしていないと、予想外に合格の通知を受けた時に慌てることになるかも知れません。
- ●再現答案の作成
それから、論文試験が終わってからできるだけ早い時期に、論文試験の再現答案を作っておくことを強くお勧めします。
論文試験の再現答案を作っておけば、論文試験に不合格となってしまった場合でも、次の試験に向けた方針を立てやすくなるからです。
論文試験で何度も不合格になる人の中には、再現答案を作っていない人が結構いますが、非常にもったいないと思います。
予備校の講師や合格者に「なぜ論文試験に落ちてしまったのか?」とか「これからどんな勉強をしたら良いか?」という相談をする時にも、論文試験の再現答案があったほうが具体的なアドバイスがしやすいです。
また、自分の中で勉強の方針を立てる時にも、論文試験の再現答案と、合格者の再現答案を比較することで、自分の弱い部分を見つけやすくなり、より効率的な勉強方針を立てやすくなるので、合格に近付きやすくなります。
- ●勉強を継続した人と継続しなかった人の違いなど
最後に蛇足ですが、私の同級生や先輩の中には、司法試験を初めて受験した年に、短答式試験で不合格になった人と、論文式試験で不合格になった人がいるのですが、
(ア)短答式試験の不合格の通知を受けてすぐに(6月から)受験勉強を再開した人と
(イ)短答式試験に合格はしたものの、最終の合格発表まで勉強をしておらず、論文式試験で不合格になったことが分かった後に(9月から)受験勉強を再開した人
の2つを比べると、次の年は(ア)のほうが、合格する人が多かったような気がします。(正確にデータをとった訳ではないですが。)
1年目の受験時の能力で比較すると、短答式試験に合格した(イ)の人のほうが能力が高く合格に近いはずなのですが、6月から9月のたった3ヶ月間の間に、短答式試験で不合格になった(ア)の人が、短答式試験に合格した(イ)の人を追い越したのだと思います。
(あるいは、短答式試験で不合格になったために、死に物狂いで勉強したというのもあるのかも知れません。)
お仕事で忙しいとは思いますが、これから1月中旬までは2ヶ月半程度ありますので、その間、全く勉強をしないとなると、勉強を続けている他の受験生に差を付けられてしまうということになると思います。
なので、個人的には少しずつでも勉強を継続されたほうがよいのではないかと思います。
またご不明な点がありましたら質問してください。
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