仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

2024年04月

司法試験受験における定義や規範の覚え方について


質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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はじめまして、いつもブログを参考に勉強しています。
質問なのですが、
定義や用語についてはどう覚えていったらよいのでしょうか?論文を書くにあたって、定義は必須だと感じました。問題集や過去問で出てきた定義をその都度、必要な程度に暗記すればよいのでしょうか?
それとも、何か定義集のようなもので学習すればよいのでしょうか?
初歩的な質問で申し訳ないのですが、お答えいただければ幸いです。
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◆「定義」や「規範」の覚え方について


質問者の方が述べているとおり司法試験の対策として「定義」の暗記は大事なことです。

また有名な判例が示している「規範」や、多くの基本書に載っているような「規範」の暗記も大事です。


私も司法試験の勉強を始めた頃は予備校本の巻末に載っている「定義集」などをトイレの壁に貼ったりして暗記しようと努力したのですが、暗記が苦手であったためなかなか覚えられませんでした。

そのため、論文式の問題集にあるAランクの答案例や、司法試験の過去問集(ぶんせき本など)の優秀答案の論証をパソコンでワードに打ち込んでいき、学校の試験・答練・模擬試験の直前に読み込んで暗記するようにし、司法試験本番の直前期にも同じ方法で暗記しました。

「定義」や「規範」は単体で覚えるよりも「使い方」とセットで覚えたほうが効率は良いと思います。

というのも「定義」や「規範」は「使い方」も合わせて覚えておかないと試験本番で活用することはできないですし、「使い方」をイメージできない状況で暗記しようとすると苦痛な単純作業になりやすいからです。

また暗記できる量にも限度があるので、論文式試験で必要とされる可能性の高いものから暗記をしていったほうが消化不良に陥るリスクは低くなります。

そのため論文式の問題集の答案例や論証の流れの中で「定義」「規範」を暗記していったほうが個人的には効率が良いと思います。

英単語も単体で覚えていくよりも文章の中で覚えたり実際に書いたり話したりしたほうが記憶に残りやすいと思います。

司法試験受験の「定義」や「規範」も英単語と同じように、単体で覚えるよりも論文式の問題集の答案例の流れとセットで覚えたり、実際の論文式試験の問題を解きながら覚えていったほうが記憶に定着しやすいと思います。

ただ、一部の受験生の中には定義集、基本書、予備校本、択一六法など黙々と読み込んで大量の知識を暗記できるような超人的な精神力と暗記力を持っている人もいるので、そういった人であれば本を読みながら暗記をするという方法でも良いと思います。

基本書、予備校本を読む時には、趣旨、定義・規範、理由付け、結論など、要素毎にマーカーで色分けをしておくのもお勧めです。

例えば、私は黙々と基本書を読むのが苦手なので↓のように色分けをしていました。

・条文や制度の趣旨 ⇒ 黄色

・定義・規範 ⇒ 緑

・積極方向の理由付け ⇒ 水色

・積極方向の結論 ⇒ 青

・消極方向の理由付け ⇒ オレンジ

・消極方向の結論 ⇒ 赤


基本書や予備校本の文章をこのように色分けしておくと、例えば答練や本試験の直前に「定義と規範をチェックしておこう」という場合には、緑色の部分を中心に読み込んでいけば効率的に復習ができます。

またパソコンで自分用の論証集や定義集を作っている場合には

・絶対に暗記をしておきたい定義や規範には「★」のマークを付けておく

・なかなか暗記できない定義や規範には「●」のマークを付けておく

などというようにしておくと、答練や本試験の直前のワードの検索機能を使って「★」や「●」のある箇所を検索して効率的に復習ができるようになります。
(マークは自分が見やすいものであれば何でも良いと思います。)




◆趣旨規範ハンドブックなどの予備校本を活用する方法

論文式試験用の問題集は全ての論点を網羅しているとは限らず、また最新の裁判例や過去問に出てきた論点が載っていないこともあります。

そのため論文式の問題集の穴を塞ぐ目的で、定義や規範が網羅的に整理された予備校本を活用する受験生も多いです。

受験生が良く使っているのは辰已法律研究所の「趣旨・規範ハンドブック」だと思いますが、自分の使いやすい本を選べば良いと思います。

●趣旨・規範ハンドブック

注意点としては、最初から「趣旨・規範ハンドブック」を使って暗記しようとすると挫折する可能性が高いという点です。

「趣旨・規範ハンドブック」は司法試験の勉強がある程度進んできた受験生が知識の穴を確認したり、自分の頭の中に散らばっている知識を整理するのに有効な本です。

そのため司法試験受験に必要な知識だけが網羅的にコンパクトにまとめられているものの、解説などはほとんどないので、初学者がこの本を読みながら勉強・暗記しようとしても理解できずに挫折をしてしまう可能性が高いです。

そのため最初は入門書、論文式試験や短答式の問題集、基本書や解説が多めの予備校本などを活用して勉強をして、ある程度コアとなる部分の知識や理解が深まってきた後に使ったほうが効率が良いです。



◆法律用語集を活用する

定義の覚え方という質問の趣旨とは逸れてしまいますが、司法試験の勉強をする時には手元に六法とは別に「法律用語辞典」などがあると便利です。

勉強をしていて分からない用語が出てきた時には基本書や予備校本で調べるのがベターですが10冊以上ある基本書の中から用語が載っていそうな本を選んで・・・という作業をしていると面倒になってしまい結局調べずに分からないまま進めてしまうということもあると思います。

また最近はネットで定義や用語も調べることも出来ますが正確な情報にたどり着くのに時間がかかったり、スマホやパソコンを触ったついでにSNSを見て時間が過ぎてしまったり・・・ということもあると思います。

そういった時に全科目を網羅した用語集があると比較的簡単に定義や用語を調べることができるので、定義などの理解や暗記の作業が進みやすくなります。

●有斐閣法律用語辞典

●法律学小辞典

私が受験生の時にメインで使っていたのが有斐閣の「法律用語辞典」ですが、試験に合格した後は「法律学小辞典」を使っています。

本屋さんで実際に手に取ってみて自分の好みのものを選ぶと良いと思います。




◆定義や規範は試験本番までに覚えておけば良い


受験生が想像しているよりも司法試験で丸暗記が必要とされる量は実際にはそれほど多くはないと思います。

しかし、それでも定義や規範がなかなか覚えられなかったり、一度覚えたはずのものを次々と忘れたりして、勉強が嫌になってしまうこともあると思います。


私も受験生の時に暗記法の本を読んだり悩んだりしていたのですが、とある司法試験の講師(たぶん伊藤真先生)の本に

・定義や規範は試験本番までに覚えておけば良い

・試験本番までに覚えておくことを整理しておいて直前期に覚えるという方法でも良い

というようなことが書いてあったのが役に立ちました。

暗記は繰り返せば繰り返すほど定着しやすくなるため、学校の試験・答練・模擬試験の度に暗記をするという作業を繰り返しておくと、その後に忘れてしまっていたとしても本試験の直前期に暗記をするのが楽になります。

また何度も暗記をしようと努力をしているうちに、自分がなかなか覚えられない定義や、間違いやすい定義なども分かってきます。

暗記が苦手な人は、「覚えにくい定義」「間違えやすい定義」を自分の中で整理しておいて試験の直前期に一気に暗記するという方法を試してみても良いと思います。

司法試験の論文式試験の過去問が解けない場合の対策や考え方について


質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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4年前にこのブログに出会い、記事を参考にして勉強してきたものです。

このブログの勉強法を参考にして、ロースクール既習者入試、そして先月無事留年することなく卒業することができました。
ありがとうございます。

実は最近悩みがあってコメントさせていただいてます。
それは司法試験の問題が解けないということです。

特に伊藤塾の赤本に出てきていない分野や学説対立問題など、赤本上では取り扱いが薄い所になるとほとんど解けなくなります。

このような状況でも司法試験過去問に取り組むべきでしょうか。

それとも赤本に取り組む姿勢が間違っていたのでしょうか。
赤本には答案例を暗記しながら、基本書でわからない点等を確認したりしていました。
基本書での確認も甘かったのかもしれません。

百選はあまり使っていません。読んでもあまりわからないので、ほとんど読んでいません。

ロースクールの講義は難しかったので、講義は聞かずほとんど赤本の答案例を暗記する時間に費やしてました。

司法試験を解いたあとの事の復習でも悩んでいます。
問題を起案したり、答案構成をしたあとにはぶんせき本でC答案くらいの答案を読んでいます。
ただ、読んでいても書ける気がしません。
赤本に取り組んでいたときと同様に写経等暗記すべきか迷っています。

3ヶ月後に司法試験を控えていますが、最近では諦めて就活に切り替えたほうがいいのか悩んでいます。

ただ弁護士は子供の頃からの夢なので、まだ諦められないという状況です。

お忙しい状況かとは思いますが、是非コメントをお願いします。
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ロースクール卒業おめでとうございます。

質問者さんのお話を要約をすると

論文式問題集を回してきたものの、司法試験の論文式試験の過去問を解いてみても解けない問題があって悩んでいる

というご相談だと思います。



◆最初のうちは過去問に歯が立たないのは当然であるということ


司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」などでも書いていますが、最初のうちは「論文式試験の過去問を実際に解いてみても、全く歯が立たなくてショックを受ける」というのはほとんどの受験生が経験することです。

私も過去問を始めて回しはじめた頃は「こんなに難しい問題を解けるようになる訳がない・・・」と愕然とした記憶があります。

しかし、同級生とゼミを組んで皆で過去問を解いてお互いの答案を見せ合ってみたところ、(司法試験に最終的に100位以内で合格した人や、ロースクールで成績優秀者として表彰された人もいましたが)、ほとんどの同級生は過去問に取り組みはじめた最初の時期は、まともな答案は書けていませんでした。

そして何度も何度も過去問や答練にチャレンジしていくうちに、次第に本試験の傾向、取り組み方、考え方が分かってきて「落ちにくい答案」を書けるようになっていった人が合格する、というイメージです。

なので最初のうちは過去問が解けなくてもめげずに何度も繰り返し取り組んでいき、解けない原因を分析した上で、何をすれば本番までに本試験の問題が解けるようになるのか対策を立てていくということが大事です。

1人で過去問を解くのが辛いという場合には仲間を集めて皆で時間を計って過去問を解いてお互いの答案を見せ合うようにすると、自分以外の受験生が何を解けて、何が解けないのかということも分かってくるのでおすすめです。



◆司法試験の論文式試験の設問を難易度に分けて考える

質問者さんの質問の中に「伊藤塾の赤本に出てきていない分野や学説対立問題など、赤本上では取り扱いが薄い所になるとほとんど解けなくなります」というコメントがありますが、そもそも司法試験の論文式試験では、例年のように受験生の多くにとって「知らない問題」や「解いたことがない問題」が出ます。

受験生の中には「知らない問題」や「解いたことがない問題」に出会った時に「自分が知識不足だったから解けなかったんだ」と考えて、挫折してしまったり、問題集を何冊も買ってきたりして消化不良になってしまう人もいます。

しかし、過去問や答練で解けない問題に出会った時には、まずは冷静に最初にその問題が以下の分類のどれに当てはまるかを考えた上で対策を考える必要があると思います。


① 基本的な問題
⇒論文問題集のAランク、自分の勉強不足で解けなかった問題

② 細かい知識を問う問題
⇒論文問題集のB・Cランクの問題や、短答式試験で問われるレベルの知識を使って解く問題

③ 現場で考えて解くことを要求されている問題
⇒論文問題集にはあまり載っていない問題、基本書等にもあまり書いれていない論点に関する問題



① 基本的な問題

「① 基本的な問題」(問題集のAランク)は合格者のほとんどが解ける問題で配点も大きくなる傾向があるため、この問題が解けないとそれだけで不合格の可能性が高くなりますし、数年おきに似たような論点が繰り返し出題されることもあります。

そのため過去問や答練などで「① 基本的な問題」が上手く書けなかったという場合には、基本書などに立ち返って徹底的に復習をして、似たような問題が出題された時に確実に解けるようにしてくおく必要があります。



② 細かい知識を問う問題

「② 細かい知識を問う問題」(論文問題集のB・Cランクの問題や、短答式試験で問われるレベルの知識を使って解く問題)は、他の受験生もきちんとした答案が書けていないことも多いため、「理由付けをした上で、規範をきちんと立てて、あてはめをする」という三段論法を守った形の答案が書けていれば合格ラインの到達できる場合が多いです。

そのため「② 細かい知識を問う問題」に出会った時には「他の受験生もちゃんと書けない人も多いだろうから、自分は落ち着いて答案を書こう」と気持ちを切り替えることが大事です。

私が本試験を受けた時も「② 細かい知識を問う問題」がいくつか出題され、私自身は規範もきちんと暗記していないという状況でした。

しかし「論文問題集のBランクかCランクに区分されていた論点だったな」ということが分かったので「他の受験生もちゃんとした答案を書ける人は少ないだろう」と思い、落ち着いて六法で条文を引いて、条文の趣旨から自分なりの理由付けを考えて、規範も自分の頭で考えて立てて、あてはめをきちんとする、という方法で答案を作成して無事合格をしていますし、その科目の点数は合格者の平均は超えていました。

また論文式試験では(短答式試験と異なり)六法を見ることが許されていますので、自分の知らない問題が出たとしても「全く何も書けない」ということは(条文以外の知識が問われている問題でなければ)無いはずです。

なので「② 細かい知識を問う問題」に出会って、何を書いたら良いのか分からないという場合には「落ち着いて六法を開いて考える」ということを心がけることも大事です。




③ 現場で考えて解くことを要求されている問題

「③ 現場で考えて解くことを要求されている問題」(論文問題集にはあまり載っていない問題、基本書等にもあまり書いれていない論点に関する問題)は、「誘導」がある場合が多いです。

「誘導」がある場合には「誘導に素直に乗って求められる答案を書けるか」ということが大事で、誘導に上手く載ることが出来れば「全く知らない知識」に関する問題であっても解けるようになっていることが多いです。

逆に「誘導」がある問題で「誘導」を無視してしまうと即死クラスのダメージを負うリスクがあるので、過去問で「誘導」のある問題が出てきて誘導に上手く乗れなかった場合には、何度も復習をする必要があります。



「③ 現場で考えて解くことを要求されている問題」は、とにかく「慣れること」が大事で、過去問を回すことでしか身につきにくい技術でもあります。


なお「③ 現場で考えて解くことを要求されている問題」なのに「誘導」がないというケースもあります。

このような問題は他の受験生も対応に苦慮することも多く、あまり時間を掛けすぎずには短めに書いて、割り切って次の問題に進むということが大事です。

私も本試験でどうしても分からない小問があり、その問題は諦めて思いついたことを短めに書きましたが、結果的には出題趣旨と全く違う内容の答案を書いていました。

その小問はおそらく1点も取れていないと思いますが、それでも合格しています。

それでも論文式試験の点数は合格者の平均点を超えていたので、仮に他にも論点を落とした問題があったとしても合格していた可能性があります。

大事なのは「分からない問題」に出会った時に「分からない問題」に時間をかけすぎないようにして、一般的な合格者の多くが解けるような「基本的な問題」できちんと点数を取っておくということです。

「分からない問題」に時間をかけすぎて「解けるはずだった基本的な問題」が途中答案になってしまうと不合格の確立が一気に跳ね上がりますので、「他の受験生が解ける問題か」を見極められるようにすることが大事です。




◆司法試験の過去問が解けない理由を分析する

司法試験の過去問を解いてみて「書けない問題」があった場合には、その原因を分析することが大事です。


「① 基本的な問題」(論文問題集のAランク、自分の勉強不足で解けなかった問題)が解けない場合、その原因は

(ア)基本的な知識の理解不足、暗記不足

(イ)知識や理解は合ったが違う角度から聞かれたので分からなかった

(ウ)そもそも答案の書き方のフォーマットが定まっていない

等にあると思います。


「(ア)基本的な知識の理解不足、暗記不足」の場合には、基本書、予備校本、問題集等なども使って徹底的に復習するしかないです。

「(イ)知識や理解は合ったが違う角度から聞かれたので分からなかった」は演習の経験不足が原因であることが考えられますので、過去問や答練を繰り返し受けて慣れていくことが大事だと思います。

「(ウ)そもそも答案の書き方のフォーマットが定まっていない」場合には、出来るだけ早い時期に答案の書き方を自分の中で整理しておく必要があります。

特に憲法や行政法は、答案のフォーマットが頭の中に入っていないと答案が書けないパターンが多いので、問題集や予備校本などを使ってフォーマットを頭に叩き込み、過去問や答練を繰り返し解いてフォーマットを自分の中で使えるようにすることが大事になってきます。





② 細かい知識を問う問題(論文問題集のB・Cランクの問題や、短答式試験で問われる知識を使って解く問題)が解けないという場合の原因は

(ア)細かい知識が頭に入っていない

(イ)六法の使い方に慣れていない(そもそも六法を活用するという意識が薄い)

(ウ)細かい知識を問われた時に解けないものだと思って諦めてしまっている

等にあると思います。


「(ア)細かい知識が頭に入っていない」は最近のロースクール卒業生に多い問題だと思います。

というのも以前は司法試験においても、「憲法・民法・刑法」だけでなく「行政法・民事訴訟法・商法・刑事訴訟法」についても7科目の短答式試験が課されていました。

また現在も予備試験においては7科目の短答式試験が課されています。

そのため昔の司法試験受験生や現在の予備試験経験者は、論文式試験で細かい知識を問われる問題が出てきたとしても、短答式試験の勉強で得た断片的な薄い知識を絞り出して、論文式試験の答案を書くことが出来ていました。

しかし現在の司法試験では短答式試験は「憲法・民法・刑法」の3科目だけになったため、予備試験を経験していないロースクール卒業生の中には「行政法・民事訴訟法・商法・刑事訴訟法」の細かい知識があまり頭に入っていない、という傾向があると思います。

この「(ア)細かい知識が頭に入っていない」の対策としては

・薄めの基本書や択一六法を通読する

・答練を数多く受けて復習する

・予備試験や法学検定などの短答式の問題集を回す

・論文式試験のBランク・Cランクの答案例や「趣旨・規範ハンドブック」の規範の部分だけを暗記しておく


などが考えられます。

「薄めの基本書や択一六法を通読する」は、基本書等を読んで頭に入るタイプの人であれば良いと思いますが、本を読んでも上滑りする感じで頭に入ってこないという人にとっては相性が悪い方法です。
(私も受験生の時は基本書の通読はほとんどしていませんでしたが、短答式試験のない選択科目については電車に乗っている時間などを利用して薄めの入門書を一冊通読しました)




「答練を複数受けて復習する」は旧司法試験から存在した作戦です。

というのも旧司法試験も短答式試験は「憲法・民法・刑法」の3科目だけで、しかも短答式試験の数ヶ月後に論文式試験が行われるという受験日程であったため、受験生の多くは短答式試験までは「憲法・民法・刑法」を徹底的に勉強し、短答式試験が終わった後の僅か2ヶ月程度の間に下三法(商法・民事訴訟法・民事訴訟法)の論文式試験を慌てて勉強する、という傾向がありました。

そのため短答式試験がなく知識の少ない下三法(商法・民事訴訟法・民事訴訟法)については予備校の答練を受けて、ある意味「ヤマを張る」という形で受験していた人も多かったようです。


「予備試験や法学検定などの短答式の問題集を回す」は、予備試験受験生と同じような方法で「行政法・民事訴訟法・商法・刑事訴訟法」の細かい知識をインプットするという方法で、基本書等を読んでも知識が定着しないタイプの人のとっては向いていると思います。
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ただ短答式試験の問題集には論文式試験では問われる可能性の低い知識も多数あるので効率が良いとは言えず、質問者さんの場合には本試験まで3ヶ月しかないということですので時期的にはこの方法はおすすめ出来ないかと思います。


「論文式試験のBランク・Cランクの答案例や「趣旨・規範ハンドブック」の規範の部分だけを暗記しておく」は、今からでも十分に対応できる方法だと思います。



論文式試験の「細かい知識を問う問題」は他の受験生の出来が悪いと配点が低くなる傾向があり、理由付けを丁寧に書いたとしても思ったよりも点数が上がりにくい傾向があるため、とりあえず「規範」の部分だけ暗記しておき、理由付けについては条文の趣旨などから現場で考えて書く、という作戦であれば今からでも間に合う可能性はあると思います。





③ 現場で考えて解くことを要求されている問題(論文問題集にはあまり載っていない問題、基本書等にもあまり書いれていない論点に関する問題)が解けないという場合、その原因は

・「誘導」に乗れることに慣れていない

・そもそも問題が難し過ぎて合格者の多くも解けなかった問題である

が考えられます。


「誘導に乗れることに慣れていない」という場合には、過去問や答練をいくつも解いて、誘導に乗ることに慣れていくしかないです。

「知らない問題」が出ても、とにかく焦らずに「知らない問題」である「認識」することが大事です。

そして「誘導」を探し、誘導がある場合にはそれに丁寧に乗る、誘導がない場合にはあまり時間をかけずに短めの答案を書いて終わらせる、ということが当たり前にできるようになるまで、本試験形式の問題に慣れていくことが大事です。


「問題が難し過ぎて合格者の多くも解けなかった問題かどうか」については、「ぶんせき本」などで下位合格者の再現答案を見てみると、問題の難易度が分かると思います。

下位合格者がまともな答案を書けていなかったような問題については、自分が解けなかったとしてもあまり気にする必要はありません。
(似たような問題が出題される可能性があるので復習をしておく必要はあります。)

それよりも過去問をいくつも解いて「他の受験生が確実に解けるであろう基本的な問題」と「他の受験生もまともな答案は書けないであろう問題」を見極めることができるようにして、「他の受験生が確実に解けるであろう基本的な問題」は途中答案にならないようにきちんと書く、「他の受験生もまともな答案は書けないであろう問題」はあまり時間を掛けないようにする、という判断を本番までになるべく正確に出来るようにしておくことが大事だと思います。


◆まとめ

「司法試験の論文式試験の過去問が解けない場合の対策や考え方について」は以上のとおりです。

個人的には質問者さんの以下のコメントが少しひっかかっています。

「赤本に出てきていない分野や学説対立問題など、赤本上では取り扱いが薄い所になるとほとんど解けなくなります」

「・・・ぶんせき本でC答案くらいの答案を読んでいます。ただ、読んでいても書ける気がしません。」


前記のように論文式試験では六法を見ることが許されるため、知らない問題が出てきたとしても「全く何も書くことが無い」というケースは少ないはずですし、合格者の中には本番で「知らない問題が出たけど自分の頭で考えて書いて合格した」という人も多いです。

質問者さんはもしかしたら「司法試験の合格者の多くは論文式試験で出題された問題の知識を網羅的にきちんと暗記していた」と思い込んでいてらっしゃるかも知れません。

しかし、実際にはそうではなく「知らない問題」が出てきても「知らない問題」として六法、誘導、断片的な知識などの手がかりを元に何とか答案を作り上げて合格しているという人も多いです。

例えば(例えとして適切か分かりませんが)論文式試験の過去問を解き始めた最初の頃の時期は「自転車・自動車の乗り方は教わったけども、自転車・自動車の運転には慣れていない状態」や「英語は教室で習ったけれども英語でほとんど会話をしたことがない状態」に近いと思います。

自転車・自動車に始めて挑戦した頃は思うように運転できず、転んだり、教習所の道路から脱輪したりして「運転できるようになる日」をイメージしにくいこともあると思いますが、何度も繰り返し練習・訓練をすることで鼻歌を歌いながら自転車・自動車の運転ができるようになります。

英語も机の上で習っているだけでは会話ができるようにならないですが、英語を使って何度も会話しているうちに自然と言葉が口から出てくるようになったりします。

司法試験も最終的には実務家として適切な判断をして実務家にとって読みやすい文章を書くための訓練なので、何度も繰り返し挑戦しないと上手くなりません。

そして「見たことがない問題だから解けない」「解き方が分からないから解けない」というスタンスで過去問に取り組んでいると、なかなか成長しません。

「見たこともない問題でも」「解き方が分からなくても」いいので、とにかく六法を引いて、誘導を探して、断片的な知識、基本原則や条文の趣旨を活用して、自分の頭で考えて答案を作ってみる、ということが大事です。


最初のうちは酷い答案しか書けないと思いますが、何度も答案を書いて前記のような分析を繰り返して復習をしているうちに、少しずつ答案が書けるようになってくると思います。


なので過去問を解いてみて分からない問題があったからといって司法試験受験を諦めるというのは早計ではないかなと思います。

受験の直前の時期は不安になったり諦めの気持ちが出てくることもあると多いと思います。

それは他の受験生も同じですし、同級生や後輩の中には試験の直前に「もうダメだ」と泣いていたけれども、諦めずに受験して合格した人は何人もいます。

また実際に実務家になってみると基本書や判例集を見ても解決できない難しい問題に出会うこともありますが、それでも自分の頭で考えて事件を処理していかなければなりません。

「弁護士は子供の頃からの夢なので、まだ諦められない」ということですので、諦めずに是非とも頑張っていただきたいと思います。