質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。
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こんにちは。
勉強方法や参考書、問題集など、充実した内容なので、大変参考にさせていただいております。
実は私は50代半ばのサラリーマンなのですが、定年後に弁護士になれないかと思い、昨年秋から勉強を始めた者です。フルタイムで仕事もありますし、家族もいるので勉強漬けとは程遠い生活ですが、大学受験以来の前向きな気持ちで楽しみながら勉強しています。
さて、まずは勉強しなさい、と言われそうですが、1つ質問させてください。これから勉強して、予備試験に受かるか、定年(60歳)後に法科大学院に行くかして、司法試験に受かるのは早くても60代前半にはなってしまうと思うのですが、それからでも就職できるものでしょうか。
もともとは親族間の相続とか、不動産登記とか、そういった関係のトラブルを目の当たりにして、親族に限らず、そういう街のありふれたトラブル解決の役に立つ仕事を第二の人生ではしてみたい、というのが動機です。
よろしくお願い致します。
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質問者様は50代半ばということですので、人生の大先輩ですね。
年齢に関係なく勉強されているということで尊敬します。
私の周りでは高齢の司法試験合格者があまり多くないので、はっきりとしたことは言えないのですが、50代・60代で司法試験に合格した後に、就職をしやすいかどうかは、その方のこれまでのキャリアや人脈の多さなどによると思います。
法律事務所が欲しいと思うような経験や人脈、知名度などがあれば、当然ながら就職先の選択肢はそれなりあると思います。
私が知っている方の中では、大手企業を途中で退職して50代で司法試験に合格された方が1人いますが、その方は普通に法律事務所に就職をしていました。
大手企業で働いていたという経験などが考慮されて採用されたのかも知れません。
弁護士の就職活動では、自分の中では「アピールポイントにはならないだろう」と思っているような経歴が役に立つことがあります。
私も公務員を辞めてから司法試験に合格したのですが、一般的に転職活動では「公務員をやっていてもつぶしが効かない」と言われていたため、当初は就職活動では不利だろうと思っていました。
しかし、司法修習生になってみると同級生から「どこどこの先生が、役所で働いていた人が欲しいから、今度事務所に遊びに来てって言ってたよ」みたいな話をいただいたことがありました。
法律事務所によっては「知財が分かる人が欲しい・・・」とか、「経理や税に詳しい人がいたら助かるのにな・・・」みたいなニーズがあったりするので、そいういったニーズにぴったりと当てはまれば、声をかけてもらえることもあると思います。
アピールできるようなキャリア・経験がない場合には、それぞれの法律事務所の考え方や、就職のお願いの仕方によると思います。
一般的に自分よりも年上の方をアソシエイト(イソ弁)として雇用するというのは、抵抗がある場合が多いと思います。
私もサラリーマン時代に、非常勤職員の採用を担当することになり、面接をしたことがあるのですが、若い人の他に、大手企業で部長をされていた50代の方が面接にいらっしゃったことがありました。
その方は、いかにも仕事が出来そうで、社会経験も豊富そうで、面接のやり取りもとてもしっかりしている方だったのですが「こんな素晴らしい人に、年下の自分が上司として指示をすることは畏れ多すぎる・・・」ということで、悩んだ末に、その方ではなく若い人を採用することにしたということがありました。
弁護士の場合はボス弁が60代・70代という場合も多いので一般的なサラリーマンに比べると年配の方でも就職先の選択肢はあるほうなのですが、ボスが年上だったとしても指導役になる兄弁が年下になってしまうというパターンもあるので、そういった意味では、年齢が高くなればなる程、就職希望先の事務所が年配の方を採用するかどうかで悩むというケースは当然多くなってくると思います。
ただ、あまり無責任なことは言えないのですが、「給料はそれほど高くなくても良いので、修行のために事務所に置かせてください」的なスタンスであまり就職先に拘らずに何件もお願いをしていれば、「仕方ないなぁ。じゃあ1年だけね!」みたいな感じで修行をさせてくれる可能性はそれなりにあるのではないかな、、、と感覚的には思います。
地域にもよると思いますが、「1年くらいなら面倒を見てあげるか」という心の広い大御所の先生はまだ絶滅しておらず、点在的にいらっしゃると思います。
なので、数打ちあたるというスタンスで、辛抱強く就職活動をしていれば、高齢の方でも採用をしてもらえる可能性はあると思います。
なので、数打ちあたるというスタンスで、辛抱強く就職活動をしていれば、高齢の方でも採用をしてもらえる可能性はあると思います。
それでも、万が一、就職先が決まらなかった場合には、即独という選択肢も考えておいたほうが良いかも知れません。
私は弁護士という職業の良いところは、会費さえ払っていれば自分1人でも仕事ができることだと思っています。
私が司法試験に合格したのは30代半ばでしたが、弁護士の就職が厳しいと言われていた時期でしたので「就職先が決まらなかった時のために即独立も選択肢に入れておこう」と腹をくくっていました。
弁護士の場合は一応司法修習という研修が用意されているので、司法修習中に吸収できることは全て吸収するつもりで真剣に多くの事件に触れ、どんどんと質問をするなど主体的に勉強をしていれば、業務的には即独でもやってやれないことはありません。
就職をしてもボス弁や兄弁が丁寧に教えてくれるとは限らないですし。。。就職したけど、ボス弁も兄弁も忙しくて、結局全部自分で調べて仕事をこなしている、なんて話もたまに聞きます。
弁護士が独立する際のマニュアルなどもそれなりにあるので、覚悟があれば即独も十分に選択肢に入れて良いと思います。
ただ、即独の場合には、事務所経営のことを事前に慎重に考えておく必要があります。
営業やマーケティングが得意な方や、人脈が広い方で、資金もそれなりある方であれば、最初から都市部で勝負するという方法もあると思います。
他方、営業に自信がないという方や、大きな資金がないという場合には、国選や後見や管財事件などが定期的に回ってくるような地方で独立をして定期収入を得つつ、少しずつ顧客を増やしていって経営を拡大していくという選択肢もあると思います。
即独をする場合には、弁護士会の委員会活動などのも適度に顔を出して、困った時に相談できるような人脈を作っておくのも良いと思います。
なお、もし即独をした場合には非弁提携にも気をつけていただきたいです。
非弁提携については、二弁の「本当に怖い非弁提携」という記事が分かりやすいです。
以上、あまりはっきりとした回答になっていなくて恐縮ですが、
・50代・60代の方が就職できるかは、その方のキャリア・経験・人脈などに左右される部分が大きいと思われる
・特別なキャリアがなくてもお願いの仕方を工夫して数打ちあたれば就職できる可能性はあるような気がする
・就職できなくても資格さえあれば独立できるのが弁護士の良いところ
というのが私見です。
もしご不明な点があればまた質問をいただければです。
最後に、50代半ばで司法試験に挑戦するというのは夢があって素敵なことだと思います。
私の知っている先輩方では定年退職した後に、行政書士として独立をしたり、不動産の勉強をして不動産業をしている方などがいます。
今では60歳はまだまだバリバリ現役で働ける方が多いので、50代・60代から新しいことに挑戦するというのはワクワクしますよね。
頑張ってください。
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私は40代からは総務・管理部門の仕事しかしてこなかった、言ってみれば典型的な「潰しの効かない」タイプのサラリーマンなので、アピールできる特技などはほとんどないです。強いて言えば、年齢の割に見た目が若く見えるので、部下として使うことには抵抗を感じないかも知れません(笑)。
また、非弁提携の記事は興味深く読みました。独立するなら、こういう面にも気をつけなければいけないのですね。実務科目の論文試験のために職務規程も少し勉強しましたが、実際にもあり得ることなのかと、ちょっと意外でした。
以前は営業の仕事をしていた経験もあるので、人に頭を下げたり、年下の上司に叱られることに抵抗はありません。その辺りをアピールして、どこかに雇っていただいて勉強させてもらえれば、というところでしょうか。
贅沢するつもりもないので、年金と退職金で生活自体は成り立つ見込みですから、収入よりも仕事のやり甲斐とか、気持ち良く仕事ができる環境を追求したいとは思っています。
今年はコロナ禍のせいで、試験日程が3ヶ月後ろ倒しになりました。勉強の仕方など、また質問させていただくこともあるかと思いますが、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。