質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。
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こんばんは。こちらのブログを元に勉強を始めたものの、早速躓いております。
入門書を読んで論文問題集をやるという方法はとても理に適ってますし、最短距離だろうなと納得の上で勉強を進めているのですが、入門書→論文問題集のギャップにめまいがしています。
まるで算数の手引きから、いきなり模試とか大学入試問題の解説を読んでるような気分になりました。(私のような質問がなかったので、多くの方は優秀なのかも知れませんね…笑)
読んでて全く意味が分からないわけじゃ無いのですが、自分はこんな美しい文章書けない…よく思いついたな…とかそんなことばかり思ってしまいます。
今後よく続けていれば、いつか分かるようになるもんでしょうか?
アドバイスをよろしくお願い致します。
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  • ○論文式問題集の使い方など

入門書を読んだ後に論文式問題集を見て、最初のうちは「意味が分からない・・・」という状態になるのは普通のことだと思います。

私も最初に論文式問題集を読んだ時は「分からない・・・もう嫌・・・」と思うことが山ほどありました。

法律の学習は、語学の勉強に少し似ている部分があります。

ロースクールに入った後に、教授に「法律の勉強は、法律村の住民が使う独特の言語を学習するようなものである」ということを言われて、「なるほど」と思ったことがあります。

言葉を知らない赤ちゃんは親などが言った言葉を真似しているうちに少しずつ言葉を覚えていきますし、日本人が外国語を学習する時も最初は意味が良く分からなくても何度も書いたり言葉に出したりしているうちに、次第に言語が扱えるようになっていきます。

入門書を読んだ時点では、法律の独特の言い回しなどに触れている量が少ないので、問題集の設問や参考答案を見て、面食らうというのは当然のことです。


では、論文式問題集をどのようにこなしていけば良いかということですが、「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」などの記事でも書いたとおり

(1)論文式問題集の参考答案を何度も読んだり、書き写したりして、独特の言い回しに慣れ、似たような文章を書けるようにする。(ただし、全く同じ文章が書ける必要はなく、内容が同じようなものであれば、表現や言い回しが違っていてもOK。時間がなければ取りあえず「A」ランク以上の問題のみでOK。)

(2)論文式問題集を読んで分からないところが出てきた時は、「基本書」や「予備校本」(必要があれば判例集も)で該当箇所を探して、該当箇所を読んでみる。

基本的には、この2つです。


おそらく、この(1)と(2)の作業を地道に繰り返していけば、論文式問題集の参考答案と同じような文章が書けるようになるはずですし、論文式問題集と同様の論点が違う角度・視点から問われた時にも臨機応変に対応できる能力が身につくと思います。



私はロースクールに入る前は仕事をしていてあまり時間が無かったので、最初のうちは、基本的に上記の(1)の作業を繰り返し、取りあえず「似たような文章が書けるようになる」という状態を目指しました。

完璧に「似たような文章が書ける」という状態になるのはなかなか難しく、合格者の中でも参考答案と同じレベルの答案を書ける人は少ないので完璧を目指す必要ありません。

ただ、「似たような文章が書ける」ようになるための努力をすることが大事だと思います。


参考答案と似たような文書が書けるように努力をしていると(完璧に同じような文章を書けるようにならなくても)、「基本書」や「予備校本」に書いてあることも理解しやすくなってきます。

ある有名な司法試験予備校の講師が「理解とは頭の中に入っている(暗記している)複数の事柄を結びつけることだから、暗記していないことを理解することは難しい」ということを言っていていました。

私はこの講師の先生が言っていることはある意味正しいと思っていて、頭の中に残っている法律的なフレーズが多いと、予備校本や基本書に書いてあることも理解しやすくなります。




私はロースクールに入った後に、論文式問題集を読んで分からない部分や、ロースクールの授業で分からないところがあった時に、「基本書」や「予備校本」の該当箇所を読んで、理解を深めるようにしました。

漫然と「基本書」や「予備校本」を通読するよりも、論文式問題集を読んで分からない部分に絞って「基本書」や「予備校本」を読むことで、「何故なんだろう?」という問題意識を持って読むことができますので、読んだ内容が記憶に残りやすくなります。

そうすると、それまでただの「フレーズ」だった参考答案の文章が、「意味のあるもの」に変わってきて、文章を丸暗記しなくても、次第に自分の頭で考えて論点の問題点や理由付けの文章を書けるようになっていくと思います。




  • ○各作業のバランスについて

前記の「(1)参考答案と似たような文章を書けるよう努力する」という作業と、「(2)分からないところを「基本書」や「予備校本」で調べて理解を深める」という作業のバランス・順序は、ご自身がどれだけの勉強時間を確保できるかや、暗記が得意か・苦痛に感じるタイプか、によって判断されたほうが良いと思います。

一般的には、最初のうちは「(1)参考答案と似たような文章を書けるよう努力する」という作業を主に行って、次第に「(2)分からないところを「基本書」や「予備校本」で調べて理解を深める」という作業を増やしていったほうが、効率は良いと思います。

ただ、この順番が合わない人は、最初から「(2)分からないところを「基本書」や「予備校本」で調べて理解を深める」という作業をメインで行うのもアリだと思います。

私は社会人時代は時間がなかったので、「(1)参考答案と似たような文章を書けるようにする」という作業に専念し理解は後回しにしたのですが、暗記は得意ではなかったので苦痛でした。

実際にロースクール入試を受験した時点で、「参考答案と似たような文章を書けるようになった」問題は、各科目10個あるかないか、くらいだったと思います。

ただし、参考答案と似たような文章を書けるよう努力をしていたおかげで、問題文を見て「この手の問題はこの条文が問題になっていたような気がする・・・」とか、「確かこんな論点があったな・・・」というような感じで、参考答案と同じような答案を書けなくても、合格ラインギリギリ程度の答案はなんとか書けるようになっていたと思います。


その後、ロースクールに入った後に「(2)分からないところを「基本書」や「予備校本」で調べて理解を深める」という作業を始めたとおろ、暗記しなければならない文章の量が少しずつ減っていき、自分の頭で考えて書ける部分が増えていったので、勉強が少し楽になったと思います。


なお、中堅程度(司法試験の合格率が平均程度)のロースクールの入試であれば、参考答案の解答例を暗記できる根性があれば、多少理解が不足していても合格できるパターンは多いと思います。

予備試験・司法試験の本番の論文式試験は、暗記だけで乗り越えられる程甘くはなく「理解」が試される試験ですので、「(2)分からないところを「基本書」や「予備校本」で調べて理解を深める」という作業を怠っていると、予備試験・司法試験の本番で大怪我をする可能性が高いと思います。



  • ○文章の書き方のコツについて

ご質問の中に「自分はこんな美しい文章書けない」という話がありましたが、論文試験の答案の書き方には「作法」みたいなものがあって、基本的にはその作法に従えば、参考答案と似たような文章が書けるようになります。

司法試験の答案を書くためには、センスや才能は全く不要です。

書き方を知ることと、実際に何度も書いて慣れれば、誰でも書けるようになるはずです。


私が主におすすめしている「伊藤塾試験対策問題集」の「はしがき」の「答案例について」という部分には、司法試験の論文試験の答案の書き方が丁寧に解説されています。

問題提起の書き方、原則論の書き方、理由付けの書き方、規範の立て方、あてはめの仕方・・・と、一通り解説されていますので、答案の書き方が分からない場合には、この「はしがき」の「答案例について」という部分を何度も読んでみると良いです。

私もこの「はしがき」の部分は何度も読み込みました。

答案の書き方の基本が分かると、参考答案と同じような文章が書きやすくなると思います。




その他、とても古い本ですが、司法試験の答案の書き方に悩んでいる人は、柴田孝之先生の「司法試験合格論文機械的作成法」もおすすめです。

旧司法試験用の古い本ですが、この本で書かれていることは新司法試験でもあてはまる部分が多いです。

私は社会人の時の昼休みや就業時間前などに、この本を何回か読んでいました。

答案に何を書けば良いのか、ロジカルに説明されているので、直感よりも理屈で理解した人には分かりやすいと思います。

(絶版になっているようですがAmazonなどで古本がまだあるようです。)

●ISBN-10 : 4534033818


「そんな古い本ではなく、もっと新しい本が良い」という方は、本屋に「司法試験論文試験答案の書き方」みたいな本がいくつもあると思いますので、何冊か立ち読みしてみて、自分に合っていそうなものを1冊買って読んでみるのも良いと思います。



  • ○論文式試験問題集から勉強をする方法がどうしても合わない場合には

私は早い段階から論文式試験問題集を読むことをおすすめしていますが、これは少ない勉強時間での合格を目指すための方法なので、決して楽な方法という訳ではないですし、苦痛を感じることもあると思います。

早い段階から論文式試験問題集を読むという作業がどうしても合わないという場合には、予備校の講座などを利用して、授業を受けたり、予備校のスケジュールをペースメーカーにして勉強を進めていくという方法を検討するのも良いと思います。

どの勉強方法が良いかは人によっても異なりますし、自分にとってどの勉強方法が良いか常に考えながら勉強を進めていくことが大事ですので、私がおすすめしている勉強方法が合わないという場合には、色々な人の合格体験記を読んだりして、他の勉強方法を試してみるのも良いと思います。



  • ○論文式試験の過去問に早めに取り組むことについて

私は「●司法試験の勉強方法,おすすめの参考書や問題集(総論)」という記事などで、論文式試験の過去問に早めに取り組むことをおすすめしています。

おそらく、論文式試験の問題集を回した後に、過去問を解こうとすると「こんなの難しくて解ける訳がない・・・」と、また「面食らう」と思います。

受験生の中には「まだ実力が足りないんだ」と考えて、論文式試験の過去問を後回しにしてしまう人がいますが、そういう人は合格の時期が遅くなりがちです。

最初のうちは、基本書や予備校本を見ながら解いても良いですし、制限時間をオーバーしても良いので、できるだけ早く過去問には触れておいたほうが良いです。

過去問も、難しいと思いながらも、何度も解く努力を繰り返して、優秀答案や出題趣旨などを読んだり、分からない部分を予備校本や基本書で調べているうちに、解き方のコツやパターンが少しずつ身についていきます。

論文式試験の問題集も過去問も最初のうちは「難しい」と感じると思いますが、司法試験や予備試験の本番に近い素材に出来るだけ早い段階から触れることが合格の近道ですから、臆することなく出来るだけ早い段階で挑戦して欲しいと思います。




またご不明な点がありましたら質問してください。


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