質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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はじめまして。
いつも参考にさせていただいております。
先生の転職先として弁護士がお勧めという記事を読んで、一念発起して司法試験の勉強を始めました。

私は現在都庁で地方公務員として働いており、今年度32歳になります。
運良く昨年度に予備試験に合格することができ、今年度の司法試験に合格できれば、仕事を辞めて司法修習に入る予定です。

学歴が低く、元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えて街弁として働こうと考えおりますが、このまま都内で就職するか地元の名古屋で就職するかで迷っております。

都内では弁護士の人数が多く、街弁としてお金を稼いでいけるのかという心配がありますが、大学卒業後からずっと東京で生活しており、今更名古屋に戻るのもあまり気乗りがしません。
もっとも、稼がなくては元も子もないですし、地元だと人との関係もあるので、地方の弁護士が東京に比べると稼ぎやすいのであれば、名古屋に戻るほうが良いのかなと考えております。

司法試験の勉強は独学で行っており、周りに弁護士の知り合いもいないため、どうしたらいいのか迷っております。

先生のお立場からは、どちらのほうが良いかご意見頂ければ大変嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
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●どの法律事務所に就職するか、何をしたいのか

東京都内で就職するか地元で就職するかということで悩まれているとのことですが、「稼ぎやすさ」や「働きやすさ」という点では、どの地域で就職するかというだけでなく、どの事務所の就職するかということも大事だと思います。

東京にも素晴らしい事務所はたくさんありますし、地元の名古屋にも素晴らしい先生はたくさんいらっしゃると思います。

ですから、どこで就職をするか悩まれているのであれば、東京都内と地元の両方で就職活動をしてみて、自分の希望に合った事務所や、「この先生の下で働きたい」という弁護士が見つかれば、そこに就職する、というのが良いと思います。


また、弁護士になってどのような仕事をしたいのかという観点も大事だと思います。

「元公務員という経歴や年齢が高いことを踏まえ、企業法務は難しいと考えている」ということですが、元公務員であっても、年齢が高くても、企業法務をやっている法律事務所の就職することは可能だと思います。

四大法律事務所のように、若い人を採用している超大規模事務所への就職は難しいと思いますが、中堅や小規模の事務所であれば、企業法務に携わっている法律事務所への就職は可能だと思います。

また、いわゆる「街弁」といっても、純粋に個人だけを相手にしている事務所は少なく、企業からの相談や事件の依頼を受けている事務所は多いです。

なので、自分が弁護士としてどのような仕事をしたいのかということを考えた上で、その仕事ができる法律事務所を探し、その法律事務所が見つかったら都内であれ地元であれそこに就職する、というほうが、就職した後に後悔する可能性は低いと思います。




●東京都内で就職する場合と地元で就職する場合のメリットとデメリット

一応、東京都内で就職する場合と、地元で就職する場合のメリットとデメリットを思いつく範囲で挙げてみたいと思います。

私は東京都内や名古屋で働いたことはなく、あくまで東京に就職した同期などの話を聞いた範囲や、地元で働いた範囲での認識なので、その点はご了承ください。


○弁護士として東京都内で就職するメリット

・就職先の選択肢が多い。扱う業務の幅も様々で特定の分野に特化した事務所も見つけやすい。

 ⇒東京は法律事務所の数が多いので、やはり就職先の選択肢は多いですし、法律事務所に限らずインハウスや任期付公務員の求人なども多いです。自分がやりたい分野を扱っている就職先を比較的見つけやすいと思います。


・就職に失敗しても就職先の事務所を変えやすい。

 ⇒東京は弁護士の数が多く弁護士の転職も珍しいことではないので、嫌な事務所を辞めて別の事務所に就職する、ということも比較的簡単にできます。


・弁護士会の会務をやらなくても済む場合が多い。

 ⇒東京には(派閥などの関係で)積極的に会務をやる弁護士がいるので、就職先の事務所が会務に積極的でなければ、弁護士会の会務の追われるということもあまりないようです。ただし、就職する事務所によっては、半強制的に会務をやらされている人もいます。(このあたりは面接の時に確認しておくと良いと思います。)


・(就職する事務所や経営方針によるが)単価の高い事件が比較的多い。

 ⇒弁護士の報酬は事件の経済的利益や実際に稼働した時間によって決めることが多いですが、東京は企業の数が多いので、企業を相手とする事務所に就職すれば、弁護士の報酬も高くなることが多いです。顧問料も地方よりも東京都内のほうが高い傾向にあります。(弁護士が東京に集中している理由はこの点が大きいと思います。)



○弁護士として地元で就職するメリット

・地元のコネを使って就職できる場合がある。

 ⇒これは説明するまでもないと思いますが、親、親戚、友人のコネで地元の法律事務所に就職する人は少なくありません。運が良ければほとんど苦労せずに就職先が決まることがあります。

・知人や家族などのツテで仕事が入ってくることがある。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、地元で弁護士として働いていると同級生や同級生の知り合いなどから法律相談や事件の依頼があることが多いです。そのため、ある程度人間関係を持っている人であれば、事件が無くて生活に困る、という事態には比較的なりにくいと思います。出身校が進学校の場合、同窓会に出席すると、同級生が地元の会社の経営者になっていることもあったりしますし、同窓会の繋がりで事件の依頼があったり顧問契約に繋がることもあると思います。


・交渉や訴訟をなどをしていて、裁判官や相手方の弁護士がどのようなタイプなのか情報が比較的入りやすい。
 
 ⇒東京で事件をやると、担当の裁判官や相手方の弁護士は基本的に知らない人であることが多いので、どんな人か分かりにくいという側面があります。他方、裁判官や弁護士の数が比較的少ない地域であれば、裁判官や弁護士の情報が入ってきやすいので「あの裁判官は争点整理をああまりしてくれなくて事件が長引くことが多いらしいから、こちらから早めに準備書面で争点を整理しておこう」とか「相手方の弁護士は○○先生で人間的に信用できる人だから和解の話を早めにして良さそうだな」とか、そういった心構えや準備がしやすいという点で、精神的に良い部分はあると思います。(逆に「相手方の弁護士が○○先生だった・・あの先生すぐにキレるんだよな・・・」みたいなこともありますが、それはそれで心の準備ができます。)

・車で通勤できることがある。

 ⇒事務所の方針や事務所の場所によると思いますが、地方都市の場合は、車で通勤できることがあります。満員電車に乗ることなく、車で短時間で職場に行けるメリットは結構大きいと思います。私も車で通勤していますが通勤のストレスはゼロです。子供ができたときには通勤途中に子供を学校に送っていったりすることもできると思いますので、車が使えるのは便利だと思います。


○弁護士として東京都内で就職するデメリット

・事務所にもよるが長時間働いている弁護士が多い(と思う。)。

 ⇒東京都内に就職した私の同期のほとんどは、平日は深夜まで働いていますし、土日も片方又は両方出勤しているという人が多いです。「人の数倍働いて人の数倍稼ぐ」というような働き方が多いようなイメージです。東京の弁護士の話を聞くと「他の事務所は終電で帰れないところも多いけど、うちの事務所は基本的に終電で帰れるから恵まれている」みたいなことを言う人もいます・・・。他方、地方都市では事務所によると思いますが、比較的ワークライフバランスを保っている事務所が多いのではないかと思います。地方都市は場所にもよりますが、賃料や人件費が都内の比べると低いので、事務所経営がしやすいところが多いと思います。

・移動が電車になることが多い。

 ⇒これも説明するまでもないと思いますが、やはり満員電車での通勤は苦痛です。ただし、弁護士は事務所によってはラッシュの時間に出勤しなくて良いので、サラリーマン時代よりは通勤は楽かも知れません。



○弁護士として地元で就職するデメリット

・地元の人間関係がかえって煩わしく感じることがある。

 ⇒これもケースバイケースなのですが、地元で働いていると、あまり仲の良くなかった同級生から夜中に電話が掛かってきて延々と法律相談される・・・なんてこともたあにありますし、家族や親戚から頼まれて、あまり筋の良くない事件を受けて欲しいと言われるなんてこともあります。このあたりは上手く断れるようになれば問題ないのですが、慣れるまでは煩わしいと感じることもあると思います。(もっとも、東京の場合も知人が増えてくると同様の問題があると思います。)


・弁護士の関係が密接である分、会務などの仕事に追われることがある。

 ⇒これは単位会の規模によると思いますが、東京に比べると地方のほうが、弁護士会の会務や委員会活動などが回ってくる可能性が高いです。私の単位会では、会務や委員会活動を積極的にやっている先生が多く、本当に頭が下がります。会務や委員会活動をあまりやりたくない人にとっては大変かも知れません。(このあたりは合格後に地元の先生聞いてみると正確な情報が得られると思います。)


・就職に失敗した場合に、同じ単位会の中で転職しにくい場合がある。

⇒これも単位会の規模によると思いますが、地方都市では顔見知りの弁護士が比較的多いので、法律事務所を辞めた後に同じ単位会の中で就職活動をしようとすると、「○○先生のところ辞めたんだね。○○先生とは面識があるから採用すると○○先生に申し訳ないので・・・。」みたいな感じで、採用を躊躇される場合があります。そういった意味では、東京に比べると就職先の事務所を変えるハードルはやや高めです。

・人口規模にもよるが、事件の相手方の関係者が、知り合いだったりするという場面が増える。

 ⇒名古屋は人口が多いのでこのような問題は少ないかも知れませんが、地元に就職すると事件の相手方の関係者が、自分の知人だった、という場面に出くわすことはあると思います。


●司法修習でどこに配属されるかにもよる

余談ですが、司法修習の配属先との関係で自分では想像もしていなかったような場所に就職する人が結構います。

現在東京都内に住んでいて地元が名古屋ということであれば、第1希望と第2希望に東京と名古屋を記載するという人が多いと思うのですが、司法修習地の配属先は希望が通るとは限りません。

司法修習の配属先の希望は

第1群(東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、大阪、名古屋、その他の政令指定都市などの大都会)から2箇所まで選べる

第2群(水戸、前橋、金沢、高松などの、そこそこの都会)は第1希望から第4希望の好きなところに書けるが、第3希望と第4希望に書くことになるパターンが多い

第5希望と第6希望を書く時は、第3群(その他の地方都市・山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほうなど)から選ばないといけない

といったルールになっています。


第1希望と第2希望を東京と名古屋などの激戦区にすると、第1希望と第2希望の抽選に外れた場合、第3希望と第4希望の争いでも敗れてしまい、第5希望か第6希望の場所に飛ばされる、というケースが結構あります。

じゃあ第5希望か第6希望を書かなければ良いのかというと、そういうことでもなくて、第5希望か第6希望を何も書いていないとさらに人気の少ない北海道の地方都市に飛ばされたりします。

なので何をどう頑張っても、現在東京に住んでいる方が、司法修習で地方都市(山陰・九州・四国・北海道・東北などの端っこのほう)に飛ばされるというケースが結構あるんです。

司法修習で地方都市に配属された場合、地方都市から頑張って東京や地元に通って就職活動をする人が多いのですが、地方都市の生活が気に入る人も一定割合いて、中には修習先の弁護士にも気に入られてさらに居心地が良くなり、そのまま修習先に就職してしまうというパターンも結構あります。

なので、今から就職先を考えておくことは大事なことですが、実際に司法修習が始まってみないと、どこに就職することになるか分からない、ということも多いと思います。



●東京か地元が迷った場合には

東京に就職するか地元に就職するか迷った場合には、家族(や交際相手)の意見を聞いてみるのも良いと思います。

現在結婚されているか分かりませんが、結婚の予定があるのであればいずれかの実家に近いほうが子育てはしやすいと思いますし、長男であれば将来両親が高齢になった場合には、実家が近いほうが何かと都合が良い、ということもあると思います。

家族などの意見を聞いても決まらないという場合には、私だったら取りあえず東京都内で就職先を見つけて、東京が合わないと思った場合や、家族の都合で地元に戻る必要が生じた時点で、地元に戻ると思います。

一度地元に就職した後に東京で就職し直すよりも、東京で就職した後に地元に戻るほうが、一般的にはハードルが低いからです。

司法修習地の希望が通るかわかりませんが、取りあえず名古屋で司法修習をして地元の先生とのコネを作りつつ、東京に通って就職活動をして東京に就職し、地元に戻りたくなったら地元の先生のコネを頼って地元に戻る・・・私だったらそういう計画を立てるかもな・・・と思います。

またご不明な点がありましたらコメント欄に記載してください。