質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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40歳になってから弁護士になっても就職先はあるのでしょうか
ちなみに職歴は5年ほどある30代半ばの男性です
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私の同期や私が所属する弁護士会に来た修習生の中には40歳以上の人は何人かいましたが、私が知っている範囲では、最終的に全員就職先は決まっているようです。

サンプルが10人以下なのであまり無責任なことは言えませんが、40代であれば、仕事をした経験があって、ある程度社会人としてのマナーがある人であれば、就職できる可能性は高いと思います。

50歳を超えるとハードルはさらに上がると思いますが、私が知っている範囲でもそれでも50代で弁護士になって就職した人もいます。

以前に書いた「50代・60代で司法試験に合格した後の就職について」という記事を参考にしてもらえればと思います。


40代で就職する際の壁としては

① 就職先のボスや兄弁が自分よりも年下だと採用されにくい

② 年齢が40代だからといって最初の給料等の条件は20代の弁護士と同じ(場合によってはそれ以下)

というあたりだと思います。



①については、自分よりも年上の弁護士が経営している法律事務所や、ボスよりも年配の勤務弁護士がいるような事務所を中心に就職活動をすると、採用される確率はあがると思います。


②については、弁護士になって1~2年の間はサラリーマン時代よりも収入が少なくなることを覚悟する必要があると思います。

ある程度経験を積めば収入は増えていくと思いますし、同じ事務所で働いていて収入が増えない場合には他の法律事務所への転職や独立を検討すれば良いと思います。



以下は蛇足ですが、以前の記事でも書いたとおり、弁護士は就職先が見つからなくても、いきなり独立することが可能な職業です。


首都圏でいきなり独立するのはハードルが高いと思いますが、地方であれば独立して間もなく国選事件・刑事当番が回ってくると思いますし、独立して1年くらい経つと、成年後見等や破産管財事件などが定期的に回ってくるところもあると思います。

国選は受任すれば1件10万円から20万円程度の収入が入ってきます。裁判員裁判であれば1件50万円以上になることもありますが、弁護士なった最初のうちは先輩弁護士と共同受任する必要があるという場合が多いと思います(共同受任しても報酬はそれぞれに支払われます)。

刑事当番では運が良ければ私選(ある程度お金のある人の刑事弁護)にあたることがあります。(私は弁護士になって2ヶ月目で私選弁護にあたり、約2週間被疑者の弁護活動をして約50万円くらいの収入がありました。)

成年後見は1件で年間24万円~30万円程度の報酬になる場合が多いと思いますが、成年後見等は受任しない弁護士もいるので、5件以上、人によっては10件以上受けていたりします。

管財事件も最初のうちは報酬が少ない事件(1件10万円から20万円くらい)が多いですが、裁判所に信頼してもらえれば100万円以上の報酬が見込める事件も回ってくるようになります。

その他に、弁護士会・法テラス・自治体などが主催する法律相談に行くと定期的に事件が入ってきますし、弁護士会から自治体の委員、各研修の講師依頼、単発の法律相談会などの案内等が来ます。法律相談料、委員報酬、講師謝金等だけで月10万円以上の収入になることもあります。

地方だとまだホームページを作っていない事務所もあるので、SEOを意識したホームページを作れば「(地域名) 弁護士」で検索した場合に、Googleの検索結果に1頁目にあっさり出てきたりします。

あまりえり好みをせずに積極的に仕事をやっていけば、いきなり独立しても、やっていくことは可能だと思います。

ただ、独立した場合、経費もそれなりにかかるので、最初のうちは経費をあまりかけないように賃料の安い小さな事務所で、事務員無しで始めるのが無難だと思います。


1年目から独立するのは怖いという場合は、「給料はそれほど高くなくても良いので、修行のために事務所に置かせてください」的なスタンスで何件もお願いをしていれば、「仕方ない。じゃあ1年だけ。」という感じで経験を積ませてくれる事務所はおそらくあると思います。




いきなり独立するのは怖い思う人もいるかも知れませんが、司法試験の勉強をしっかりやって、司法修習を真面目にこなしていれば、司法修習が終わった時点で、弁護士として働くための基本的な知識は身についているはずです。

就職をしてもボスや兄弁が丁寧に仕事を教えてくれるとは限りませんし、弁護士の仕事は自由である反面、自分の頭で考えて決定しなければならない場面が多い仕事でもあります。


独立をして1人で仕事をしていても弁護士会の業務や委員会などを真面目にやっていれば、他の弁護士からアドバイスを受けることができたり、仕事を振ってもらえることもあります。

なので、「就職できなかったらどうしよう」と思う気持ちは分かりますが、弁護士を目指すからには「自分が希望する就職先が見つからなかったら独立も考えよう」と覚悟して、独立をした時のことも考えて司法試験の勉強や司法修習に取り組むほうが良いのではないかと思います。

そして、独立も覚悟している人のほうが勉強を一生懸命やる傾向がありますし、事務所経営のことも考えたりすることになるので、かえって早く司法試験に合格して就職先もあっさり決まったりすると思います。



なので、結論としては

・40代であれば、仕事をした経験があってある程度社会人としてのマナーがある人であれば、就職できる可能性は高い

・「就職できなかったらどうしよう」と悩むのであれば、独立する時のことを考えて司法試験の勉強や司法修習での勉強をきちんとしておく。そのほうが、受験生としても弁護士としても成長のスピードは速い。

というのが私の考えです。


ご不明な点があればまた質問してください。


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