質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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論文試験の結果が届きました。
憲法C、行政法A、刑法E、刑事訴訟法E、一般教養D、民法F、民事訴訟法B、商法F、法律実務Bで合計212点。合格点は230点以上でしたので、残念ながら不合格となりました。
仕事をしながらとは言え、それなりに一生懸命勉強した結果なので、自分としては一応納得しています。
そこで一つ質問させて下さい。
以前にも書きましたが、しっかり勉強できたのは一昨年の秋から昨年6月までの9ヶ月間で、その後は仕事が急に忙しくなってしまい、あまり満足に勉強できませんでした。
特に昨秋からは過労死レベルの忙しさで、しかもエッセンシャルワーカーなので在宅勤務もできず、自由な時間は週末に数時間程度という生活です。
従って、これからあまり上積みは期待できず、むしろ歳のせいか昨夏までに勉強したことを忘れてしまう心配をしてしまうのですが、今年また予備試験にチャレンジすることは無謀なことでしょうか?
また、再チャレンジするとしたら、どのような勉強方法が効果的・効率的でしょうか?
いつも身勝手な質問で恐縮ですが、ご教示いただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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法務省で公表されている令和2年度の予備試験のデータを見ると、

合格ラインの230点は上位19.11%以上、464位以上

質問者さんの212点は上位32.95%以上、800位以上

なので、勉強を継続することができれば、合格ラインに達する可能性は十分にあると思います。


ただ、合格ラインまでの点数は18点なので「合格まであと少し」という感じもしますが、司法試験や予備試験の論文式試験の点数は偏差値に換算されているので、実際には見た目よりも18点という点数差は大きいということは認識しておく必要はあると思います。



いずれ、現時点で諦めるのはもったいない成績だと思います。

  • ●勉強時間の確保について

「週末に数時間程度」だけの勉強時間ですと、やはり予備試験に合格するのに必要な勉強時間としては足りないと思います。

そのため、平日に少しずつでも勉強する時間を確保することが必要だと思います。

例えば、通勤時間、休憩時間、食事の時間などを勉強に充てることはできないのでしょうか。

私も仕事をしながら法科大学院の受験勉強をしていた際、残業が多かったため、通勤時間にiPodに入れた定義集を聞いたり、休憩時間や食事の時間に参考書を読んだりして勉強をしていました。

また、自宅のトイレにも定義集や暗記したい事項を印刷したものを置いておいていつでも読めるようにしておいたり、お風呂に入る時にも湯船につかりながら参考書を読んだりしていたこともありました。

お風呂で本を読むとシワシワになるので、今であれば肢別本のアプリなどを入れた防水のスマホを持ち込むのも良いかも知れません。

1回1回の勉強時間は少なくても細切れの時間を積み上げていくともそれなりの勉強時間を確保することもありますし、時間がない中で危機感を持って勉強する場合のほうが集中していることが多いです。

予備試験や司法試験の受験生は1日中勉強している人も少なくないので、そういったライバルがいる中で合格を目指すのであれば、時間がない中でも勉強時間をひねり出していく他ないと思います。



それから、今後、仕事の忙しさが減っていく可能性はないのでしょうか。

これは会社にもよると思いますが、私がいた職場では部署や年度によって忙しさが変動していました。

異動希望を出せるような職場であれば、残業時間が少ない部署への異動希望を出してみる、ということも考えたほうが良いと思います。

また、会社によると思いますが大学院に進学するために休職できる制度が設けられていたりすることもあるので、仕事をしながら勉強をするよりも法科大学院など進学して予備試験・司法試験を目指しつつ、やっぱり道が違うと思ったら会社に戻るという選択肢を残しておく、というパターンもあると思います。

場合によっては転職や退職等も視野に入れる必要があるかも知れませんが、転職・退職はリスクを伴うことも事実なので、慎重に考えたほうが良いと思います。




  • ●勉強の内容について

前提として一般的に同じ勉強時間を費やすのであれば、得意科目の点数を上げるよりも、苦手科目の点数を上げるほうが効率が良いです。

相談者の方の論文式の成績は「憲法C、行政法A、刑法E、刑事訴訟法E、一般教養D、民法F、民事訴訟法B、商法F、法律実務B」とのことですが、私が気になったのは「民法」と「商法」の成績が一番悪いという部分です。

民事系の実体法(民法・商法)については範囲が広いため、勉強時間の差が出やすい科目です(勉強時間と成績が比例しやすいです)。

相談者の方は勉強時間があまり確保できなかったようですが、そのことが民法・商法の成績の悪さに直結しているように思われます。

短答式の成績が分かりませんが、民法・商法に関しては、短答式の基本的な知識があれば論文式試験で成績が極端に悪くなるということは考えにくいため、おそらく相談者の方は、民法・商法の基本的な知識がまだ十分に身についていない可能性があるように思います。

そのため、正攻法で対策をするのであれば、民法と商法の短答式の過去問をこなしたり、論文式問題集のAランクの問題を中心に理解を深める等して、弱点を補強したほうが、合格に近くなると思います。

短答式についてはその他の科目についても足切りにならないように最低限の勉強はしておいたほうが良いでしょう。



論文式については、民事系の他に、刑法・刑事訴訟法の成績が悪いのも気になります。

刑事系の成績が悪い理由についてざっくりと整理すると

(ア)基本的な知識・理解が欠けている

(イ)知識・理解はあるが論文の書き方が身についていない

(ウ)(ア)と(イ)の両方

に分けられると思いますが、自分がどのタイプに当てはまるのかを確認した上で対策をする必要があります。

勉強時間がこれまであまり確保できていなかったということであれば、おそらく(ア)か(ウ)のどちらかでないかと思います。

刑事系に関しては、(一度短答式を通過している質問者さんに関しては)論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でも足切りにならない程度の点数は取れる可能性が高いと思いますので、勉強時間があまり確保できないようであれば、論文式問題集のAランクの問題を中心に論点知識をインプットした上で、予備校の答練を受けて論文の書き方を勉強するとともに、出題される可能性が高い論点を重点的に押さえておくのが良いと思います。

刑事系の論文式試験については予備校の予想があたることも少なくないので、時間が無いのであれば刑事系についてはある程度はヤマをはることも考えたほうが良いと思います。

刑事系については、論文式問題集のAランクの問題について参考答案と似たような文章が書けるようにした上で、論文の書き方のコツを掴むことができれば短期間で成績が上がりやすい科目です。



以上をまとめると、私が相談者の方と同じ立場の受験生であればということですが

・民法・民事訴訟法を中心に細切れ時間などに肢別本のアプリなどを使って短答式の基本的な知識を身につける

・週末のまとまった時間にまず刑法・刑事訴訟法の論文式の問題集でAランクの問題(各科目30問ずつ程度)について、同じような答案を書けるように努力をする

・予備校の論文式の答練を受験して徹底的に復習をし、似たような問題が出た際に確実に点を取れるようにしておく

・試験直前に予備校などが出版している予想論点を記載した冊子を購入し、予想論点について穴がないようにしておく

という感じでとりあえず進めるかな、と思います。


本当であれば論文式の過去問もやりたいところですが相談者の方の状況では過去問まで手を付けるのは厳しいと思いますので、予備校の論文式の答練で本試験方式の解き方への耐性を付けつつ、出題される可能性が高い論点を中心に復習できるようにする、というように妥協するしかないかと思います。

このような方法で、民法・民事訴訟法の弱点を補強し民事系については論文式試験で大怪我をしない程度のそこそこの点数を取ることを目標とし、比較的短期間で成績の上げやすい刑事系の成績を大幅に上げることができれば、次年度の試験で合格圏内に入れる可能性は十分にあると思います。


論文式試験の再現答案等をいただければもう少し具体的なアドバイスができるかも知れませんが、受験勉強は基本的に自分に足りない部分を把握してそこを補強していく、という作業の繰り返しですので、上記の勉強方法を参考にしていただいた上で、自分なりの方針を立てていただければと思います。



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