質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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はじめまして、いつもブログを参考に勉強しています。
質問なのですが、
定義や用語についてはどう覚えていったらよいのでしょうか?論文を書くにあたって、定義は必須だと感じました。問題集や過去問で出てきた定義をその都度、必要な程度に暗記すればよいのでしょうか?
それとも、何か定義集のようなもので学習すればよいのでしょうか?
初歩的な質問で申し訳ないのですが、お答えいただければ幸いです。
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◆「定義」や「規範」の覚え方について


質問者の方が述べているとおり司法試験の対策として「定義」の暗記は大事なことです。

また有名な判例が示している「規範」や、多くの基本書に載っているような「規範」の暗記も大事です。


私も司法試験の勉強を始めた頃は予備校本の巻末に載っている「定義集」などをトイレの壁に貼ったりして暗記しようと努力したのですが、暗記が苦手であったためなかなか覚えられませんでした。

そのため、論文式の問題集にあるAランクの答案例や、司法試験の過去問集(ぶんせき本など)の優秀答案の論証をパソコンでワードに打ち込んでいき、学校の試験・答練・模擬試験の直前に読み込んで暗記するようにし、司法試験本番の直前期にも同じ方法で暗記しました。

「定義」や「規範」は単体で覚えるよりも「使い方」とセットで覚えたほうが効率は良いと思います。

というのも「定義」や「規範」は「使い方」も合わせて覚えておかないと試験本番で活用することはできないですし、「使い方」をイメージできない状況で暗記しようとすると苦痛な単純作業になりやすいからです。

また暗記できる量にも限度があるので、論文式試験で必要とされる可能性の高いものから暗記をしていったほうが消化不良に陥るリスクは低くなります。

そのため論文式の問題集の答案例や論証の流れの中で「定義」「規範」を暗記していったほうが個人的には効率が良いと思います。

英単語も単体で覚えていくよりも文章の中で覚えたり実際に書いたり話したりしたほうが記憶に残りやすいと思います。

司法試験受験の「定義」や「規範」も英単語と同じように、単体で覚えるよりも論文式の問題集の答案例の流れとセットで覚えたり、実際の論文式試験の問題を解きながら覚えていったほうが記憶に定着しやすいと思います。

ただ、一部の受験生の中には定義集、基本書、予備校本、択一六法など黙々と読み込んで大量の知識を暗記できるような超人的な精神力と暗記力を持っている人もいるので、そういった人であれば本を読みながら暗記をするという方法でも良いと思います。

基本書、予備校本を読む時には、趣旨、定義・規範、理由付け、結論など、要素毎にマーカーで色分けをしておくのもお勧めです。

例えば、私は黙々と基本書を読むのが苦手なので↓のように色分けをしていました。

・条文や制度の趣旨 ⇒ 黄色

・定義・規範 ⇒ 緑

・積極方向の理由付け ⇒ 水色

・積極方向の結論 ⇒ 青

・消極方向の理由付け ⇒ オレンジ

・消極方向の結論 ⇒ 赤


基本書や予備校本の文章をこのように色分けしておくと、例えば答練や本試験の直前に「定義と規範をチェックしておこう」という場合には、緑色の部分を中心に読み込んでいけば効率的に復習ができます。

またパソコンで自分用の論証集や定義集を作っている場合には

・絶対に暗記をしておきたい定義や規範には「★」のマークを付けておく

・なかなか暗記できない定義や規範には「●」のマークを付けておく

などというようにしておくと、答練や本試験の直前のワードの検索機能を使って「★」や「●」のある箇所を検索して効率的に復習ができるようになります。
(マークは自分が見やすいものであれば何でも良いと思います。)




◆趣旨規範ハンドブックなどの予備校本を活用する方法

論文式試験用の問題集は全ての論点を網羅しているとは限らず、また最新の裁判例や過去問に出てきた論点が載っていないこともあります。

そのため論文式の問題集の穴を塞ぐ目的で、定義や規範が網羅的に整理された予備校本を活用する受験生も多いです。

受験生が良く使っているのは辰已法律研究所の「趣旨・規範ハンドブック」だと思いますが、自分の使いやすい本を選べば良いと思います。

●趣旨・規範ハンドブック

注意点としては、最初から「趣旨・規範ハンドブック」を使って暗記しようとすると挫折する可能性が高いという点です。

「趣旨・規範ハンドブック」は司法試験の勉強がある程度進んできた受験生が知識の穴を確認したり、自分の頭の中に散らばっている知識を整理するのに有効な本です。

そのため司法試験受験に必要な知識だけが網羅的にコンパクトにまとめられているものの、解説などはほとんどないので、初学者がこの本を読みながら勉強・暗記しようとしても理解できずに挫折をしてしまう可能性が高いです。

そのため最初は入門書、論文式試験や短答式の問題集、基本書や解説が多めの予備校本などを活用して勉強をして、ある程度コアとなる部分の知識や理解が深まってきた後に使ったほうが効率が良いです。



◆法律用語集を活用する

定義の覚え方という質問の趣旨とは逸れてしまいますが、司法試験の勉強をする時には手元に六法とは別に「法律用語辞典」などがあると便利です。

勉強をしていて分からない用語が出てきた時には基本書や予備校本で調べるのがベターですが10冊以上ある基本書の中から用語が載っていそうな本を選んで・・・という作業をしていると面倒になってしまい結局調べずに分からないまま進めてしまうということもあると思います。

また最近はネットで定義や用語も調べることも出来ますが正確な情報にたどり着くのに時間がかかったり、スマホやパソコンを触ったついでにSNSを見て時間が過ぎてしまったり・・・ということもあると思います。

そういった時に全科目を網羅した用語集があると比較的簡単に定義や用語を調べることができるので、定義などの理解や暗記の作業が進みやすくなります。

●有斐閣法律用語辞典

●法律学小辞典

私が受験生の時にメインで使っていたのが有斐閣の「法律用語辞典」ですが、試験に合格した後は「法律学小辞典」を使っています。

本屋さんで実際に手に取ってみて自分の好みのものを選ぶと良いと思います。




◆定義や規範は試験本番までに覚えておけば良い


受験生が想像しているよりも司法試験で丸暗記が必要とされる量は実際にはそれほど多くはないと思います。

しかし、それでも定義や規範がなかなか覚えられなかったり、一度覚えたはずのものを次々と忘れたりして、勉強が嫌になってしまうこともあると思います。


私も受験生の時に暗記法の本を読んだり悩んだりしていたのですが、とある司法試験の講師(たぶん伊藤真先生)の本に

・定義や規範は試験本番までに覚えておけば良い

・試験本番までに覚えておくことを整理しておいて直前期に覚えるという方法でも良い

というようなことが書いてあったのが役に立ちました。

暗記は繰り返せば繰り返すほど定着しやすくなるため、学校の試験・答練・模擬試験の度に暗記をするという作業を繰り返しておくと、その後に忘れてしまっていたとしても本試験の直前期に暗記をするのが楽になります。

また何度も暗記をしようと努力をしているうちに、自分がなかなか覚えられない定義や、間違いやすい定義なども分かってきます。

暗記が苦手な人は、「覚えにくい定義」「間違えやすい定義」を自分の中で整理しておいて試験の直前期に一気に暗記するという方法を試してみても良いと思います。