仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが,色々と考えるところがあり思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し,現在は弁護士として働いています。 司法試験のこと,転職のこと,公務員のことなどについて,だらだらと書いていきたいと思います。

司法試験

忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について(その2)

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。


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何度か質問させていただいているサラリーマンです(2.の方は私ではありません)。
まず、短答の成績は以下の通りです。憲法30、行政法17、民法12、商法15、民訴17、刑法21、刑訴13、教養33、合計158。
35年前に法学部を卒業しており、ゼミに入っていた憲法は、自分としては得意科目と思っています。また、学生の時は公法系の方が成績が良く刑事系も得意だと思っていました。他方、私法系はあまり成績も良くなく、商法は必修ではありませんでした。
論文試験が終わった時に一番手応えがあったのは刑法だったので、E評価はショックでした。
民法、商法は全く手応えがなく、F評価は納得です。
誤算と言えるのは一般教養で、A評価を取るべきところ、D評価は想定外でした。
ご指摘の通り、民法と商法の成績が芳しくないのは絶対的な勉強時間が足りておらず、基本ができていないせいだと思います。
また、刑事系は学生の頃から勉強すること自体は苦にならない科目だったので、民法、商法とともにしっかり勉強したいと思います。
そこでご相談なのですが、上記以外の憲法、行政法、民訴、実務の勉強についてはどの程度の時間配分を考えるべきでしょうか。
いずれも短期間で詰め込んだことは否定し得ず、年齢のせいか物忘れもあって、基本知識が定着している自信がありません。
もう一つは、短答の準備をどのくらいすべきか、ということです。今回の合格はギリギリで、しかも一般教養で受かったようなものだと思っています。
なお、自分の年齢からすると、異動の希望を出すのは難しいと思われますが、何とか時間を見つけて勉強していきたいと思います。よろしくお願い致します。
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以下の回答・説明は、「予備試験を一度受験して科目ごとの成績が分かっている」かつ「時間がほとんどない」という事情がある相談者さん用の回答であって、万人に向けたものではありませんので、相談者の方以外はその点にごついて注意ください。


  • 短答式対策について

短答式の結果を見ると、民法の得点率が40%、商法の得点率が50%ですので、やはり民事系の基本的な知識が足りないのだと思われます。

旧司法試験の時から「民法を制するものは司法試験を制する」という言葉がありましたが、民法は司法試験の基本になる科目です。

予備試験では民法の配点は他の科目と同じですが、司法試験の短答式では憲法・刑法よりも民法の配点が1.5倍多くなりますし、民法と商法は条文数が多く範囲が広いため、知識の穴があると論文式試験で大怪我をしやすい科目ですので優先して補強しておいたほうが良い科目だと思います。

そのため、短答式については知識勝負になる民法・商法を中心に、短答式過去問集を回すか、肢別本のアプリを回すなどして、基本的な知識を身につける必要があると思います。

その他、刑事訴訟法の得点率が50%を切っているあたりも気になりますので、他の点数の低かった行政法、民事訴訟法、刑事訴訟法についても短答式の勉強はできればやっておきたいところです。


「短答の準備をどのくらいすべきか」というご質問については、理想的なことを言えば、各科目について短答式過去問集か肢別本の8~9割程度を正解できるまで繰り返しやるべきです。

ただ、時間がないということですので、問題集等の8~9割程度を正解できるまでたどりつかないという可能性があります。

その場合には、民法・商法を優先した上で、実際に過去問集・肢別本を回していき、ある程度回した後は、正答率が低い科目を中心に復習していき、極端に苦手な科目を作らないようにしておく、方法で妥協せざるを得ないかも知れません。

憲法については満点を取っているようですので、憲法の短答式の勉強は知識を維持する程度で良いと思います。



  • 時間配分の考え方について


「憲法、行政法、民訴、実務の勉強についてはどの程度の時間配分を考えるべきでしょうか。」という点については、時間配分を先に考えるのではなく、最初に科目ごとに何をするべきかを考えた後に時間配分を決めるべきだと思います。

たとえば「民法については本番まで300時間勉強しよう」という目標を立ててしまうと、本番までに自分がやろうとしていた勉強が終わらない可能性が高いです。

それに対し、①「本番までに民法についてはこの作業をする」②「この作業には何時間くらいかかりそう」③「本番までに確保できる時間は何時間だから、他の作業との兼ね合いで民法については何時間を配分する」という順番で計画を立てた方が計画倒れになる可能性が低いですし、仮に計画倒れになりそうになっても途中で「このままでは計画倒れになる」ということに気づけるので、修正もききやすいです。




相談者さんが細切れ時間をどのくらい確保できるのかや、どのくらいの時間で各作業を終わらせることができるのか、といった要素によって時間配分の仕方は変わるため、はっきりと何割ずつ配分すべき、という回答をすることは難しいです。

そのため、各科目にやるべきことの案をお話した上で、時間配分の仕方の考え方の案についてお話します。


  • 憲法

憲法は短答式で満点を取っているにもかかわらず、論文式の成績はCということですので、論文式の問題の対処の仕方や、答案の書き方(何を書けば点が付きやすいのか等)がまだ十分に身についていない可能性があると思います。

憲法については基本的な知識はあると思いますので、論文式問題集の人権分野のAランクレベルの規範をきちんと覚えた上で、辰巳法律研究所の「ぶんせき本」などを読んで論文式の過去問の解き方を学んだり、予備校の答練の復習をすれば、憲法の論文式の成績は一気にあがる可能性があると思います。

憲法の答案の書き方が分からない場合には辰巳法律研究所の趣旨規範ハンドブックなどに問題の処理のテンプレートがありますし、各予備校で「憲法の答案の書き方講座」というような単発の講座をやっていたりするので、手っ取り早く予備校の力を借りるのもありだと思います。



  • 行政法

行政法は論文式で問われる範囲がある程度絞られているため、短答式試験の成績が悪くても論文式試験の成績は良い、ということがあり得る科目です。

行政法は短答式が17点であるものの、論文式がAということなので論文式の書き方は理解しているようにも思います。

ご自身の感覚として行政法の論文式試験についてはどのような問題であっても解法は理解できているということであれば、論文式についてはそれほど時間をかけなくても良いと思います。

他方、今回A評価を受けたものの、行政法の論文式の問題の解き方がまだマスターできていないという場合には、憲法と同様に辰巳法律研究所の「ぶんせき本」、予備校の答練、趣旨規範ハンドブックなどを使って、解き方を頭に入れておいたほうが良いでしょう。

短答式については、今回の試験で得点率が6割を切っているのは心許ないので、問題集・肢別本等を使って少なくとも7割程度は得点できるよう、基本的な知識のインプットをしたほうが良いと思います。


  • 民事訴訟法

民事訴訟法は、どちらかと言うと短答式試験と論文式試験の成績が比例しやすい科目だと思いますが、質問者さんの民事訴訟法の成績は、短答式が17点であるものの、論文式がBということで、若干ちぐはぐな印象を受けます。

可能性としては、自分が知っている範囲が論文式試験で出たか、他の受験生の論文式の出来があまり良くなかったために、相対的に成績が浮き上がった可能性もあるかも知れません。

民事訴訟法に関しては、短答式の知識をインプットしていれば、論文式試験では少なくとも「何を書いていいのか全く分からない」という事態にはなりにくい科目ですので、まずは問題集・肢別本等を使って短答式の勉強をし、できれば伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について、同じような答案を書けるように訓練をしておくと良いと思います。



  • 民事実務基礎・刑事実務基礎

私が受験生の時は予備試験は無く、実務基礎科目は法科大学院の定期試験対策でしかやっていないため、あくまで自分がもし現在の予備試験の受験生だったらということを前提とした回答になります。

実務基礎科目については、民法・刑法・刑事訴訟法を理解していないと勉強効率が悪いという特徴がありますし、他の受験生も十分な対策ができてない人が多い、というのが実情だと思います。

その点を踏まえて、私が時間がない受験生であれば以下のような勉強をすると思います。

・「新問題研究要件事実」に出てくる要件事実とその考え方を押さえる

・「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造」を読んで「新問題研究要件事実」には記載のない要件事実を押さえておく

・法曹倫理、刑事実務基礎については、予備校が出版している参考書か予備校の講義を利用してざっと頭に入れる

●新問題研究要件事実

●紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造

要件事実には色々な問題集や参考書があるので手を広げて色々なものを使いたくなるのですが、基本的には「新問題研究要件事実」と「紛争類型別の要件事実」の要件事実をきちんと理解していれば、予備試験、司法試験、司法修習の起案、二回試験のいずれにも対応できると思います(私も最初は色々と手を広げましたが、司法修習に入った後に上記の2冊に絞ったところ起案の成績が安定するようになりました)。

「紛争類型別の要件事実」は解説がシンプル過ぎて最初のうちは難しく感じると思いますので、岡口基一裁判官の「要件事実マニュアル」を辞書として手元に置いておき、分からない時に調べるようにしておくと理解がはかどると思います。

●要件事実マニュアル

「要件事実マニュアル」は司法試験レベルでは1巻と2巻があれば十分です。




民事実務基礎・刑事実務基礎に関し、予備校が出版している参考書については、以下のいずれか、または複数を使っている人が多いと思います。

●刑事実務基礎の定石

●司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック

●民事実務基礎 (伊藤塾試験対策問題集:予備試験論文)


予備校の講義は民事実務基礎・刑事実務基礎合わせて30時間くらいだと思いますので、予備校の講義をメインで対策する場合は復習もかねて40~50時間は確保しておく必要があると思います。



  • 刑法

刑法に関しては短答式で7割の得点があり、得意科目だと思っていて、一番手応えがあったのに論文式がE評価だった、というのが気になります。

刑法の論文式試験は、処理の仕方が身についていれば少ない知識でも高得点を取りやすい科目ですので、もし知識が十分であるにも関わらず論文式の評価が悪かったとすれば、論文の書き方、特に事実の当てはめと評価の仕方に問題があるのかも知れません。

できれば、再現答案を合格者や予備校の講師に見てもらうなどして、自分の弱点がどこにあるのか((ア)知識が足りていない、(イ)定義や規範の暗記が不正確だった、(ウ)事実の当てはめと評価の仕方に問題がある、(エ)記述量のバランスが悪い、(オ)それ以外)を分析してもらったほうが良いと思います。

(もし、周りに再現答案を見てくれる人がいないという場合には、再現答案を他の方に見られても良いのであれば、このブログのコメント欄等に貼り付ける等してもらえれば、時間のある時に目を通した上でコメントさせていただきます。)

刑法の勉強として何をやるべきかは、その分析が終わってから決めたほうが良いと思いますが、おそらく「事実の当てはめと評価の仕方に問題がある」の可能性が高いように思いますので、その場合には、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する、という作業が必要になってくると思います。




  • 刑事訴訟法

刑事訴訟法は短答式が13点、論文式がの評価がEということなので、基本的な知識に不足があるように思います。

また、刑事訴訟法の論文式試験は刑法と同様に、事実のあてはめや評価が重要であるため、刑法と同様に論文式の成績が悪かったということを考えると、刑事訴訟法についても、事実の当てはめと評価の仕方がまだ身についていない可能性があります。

伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題をマスターした上で、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する、という作業が必要になってくると思います。



  • 民法・商法

民法、商法については短答式の勉強をすれば基本的な知識は身につくと思いますが、論文式試験では規範を暗記していないときちんとした答案は書けないので、短答式の勉強とは別に最低でも伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題、あるいは趣旨規範ハンドブックで重要とされている論点の規範については、暗記をするという作業が必要になります。





  • 全体の勉強のまとめ

次の試験までどのような勉強をするかはご自身で決めていただく必要がありますが、時間がないということを前提に、全体の勉強方法の案の1つを提示すると以下のようになると思います。


・細切れ時間を使って民法・商法の肢別本のアプリを回す

・他の科目についても前回の試験の成績が悪かった科目を中心に肢別本のアプリを回す

・憲法の論文式について「ぶんせき本」・答練・趣旨規範ハンドブック・講座などを使って書き方を身につける

・行政法の論文式について「ぶんせき本」・答練・趣旨規範ハンドブックなどを使って書き方を身につける

・民事訴訟法について、伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について、同じような答案を書けるように訓練する

・「新問題研究要件事実」に出てくる要件事実とその考え方を押さえた上で、「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造」をざっと読み「新問題研究要件事実」には記載のない要件事実を押さえる

・法曹倫理、刑事実務基礎については、予備校が出版している参考書か予備校の講義を利用してざっと頭に入れる

・刑法について、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する

・刑事訴訟法について、伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について似たような答案を書けるようにする

・刑事訴訟法について、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する

・科目全体について、最低でもAランクの問題、重要とされている論点の規範については、論文式試験本番までに暗記する


他にもやるべきことがあるかも知れませんが、上記の内容であれば、平日に細切れ時間を使って勉強時間を確保し、週末にある程度まとまった勉強ができれば、消化できるかも知れません。


そして、自分が本番までやるべきことを決めたら、

(ア)それぞれの作業をいつ、どこでやるのか(通勤途中に電車の中で何分やる、土曜日の何時から何時まで自宅の机でやる、毎日お風呂につかりながら何分やる、朝・夜の食事の時間にご飯を食べながら何分やる等)を決めて、試験本番までにどのくらいの勉強時間を割けるかを計算し、

(イ)そして、上記の作業について、これまでのご自身の勉強の進捗率などをもとに、ぞれぞれ何時間かかりそうかという予測を立て、

(ウ) (ア)と(イ)の時間をもとに、それぞれの作業を、いつからいつまでに、どこでやるというスケジュールを組んで、そのスケジュールに従って実行してみて、

(エ)実際にやってみると、スケジュールを調整しなければ本番まで間に合わないという場面が出てくると思いますので、適宜、優先順位の低い作業を切り落とす等して、スケジュールを再作成し、再度実行する、

という作業を繰り返すのが良いと思います。

このような計画を立てれば、自ずと、それぞれの作業にどのくらいの時間を割り当てるべきか、という回答が出てくると思います。




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司法試験・予備試験における論文式・短答式の勉強時間の配分などについて


質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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まとめて質問させて下さい。
論文を中心に勉強するのが基本だと思いますが、論文・短答・基本書はどのくらいの割合でやるのが基本ですか。
6・3・1位というのは適当ですが、論文中心で短答もやりながら分からない所は基本書で確認でしょうか。
ある程度分かるまでというのが基本だと思いますが、どういう基準でやっていたでしょうか。
刑法は短答はやらずに論文だけで殆ど問題なしですか。
短答は脚別本アプリでやろうと思います。
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私は、行政法まで一周していますが、まだ予備試験は受けておりません。
短答をやれば基本書はわからないところを確認すれば良いだけなのか、一度は通読するべきか悩んでいます。
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  • ●論文式・短答式の勉強時間の配分について


私が受験生の時は予備試験がまだなかったので参考にならないかも知れませんが、私は論文式と短答式について、おおよそ以下のような割合で勉強していたと思います。

(1)法科大学院の受験勉強の時

⇒論文式の勉強100%(法科大学院の入学試験に短答式がなかったため)

(2)法科大学院1年目

⇒論文式の勉強約90%、短答式の勉強約10%(法科大学院の定期試験が論文式のため)

(3)法科大学院2年目

⇒論文式の勉強約60%、短答式の勉強約40%


私がもし予備試験の受験生であれば、おそらく1年目は論文式7割:短答式3割、又は論文式6割:短答式4割くらいで勉強することになるだろうと思います。

そして、1年目で予備試験の短答式にまずまずの成績で受かった場合には、2年目以降は短答式の割合を1割から2割程度に減らすと思います。

論文式の勉強と短答式の勉強をどのくらいの割合でやるべきかは人それぞれだと思いますが、「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」という考え方で計画を立てるよりも、「論文式について合格レベルに到達できるまでどのくらいの時間が必要そうか、短答式について合格レベルに到達できるまでどのくらいの時間が必要そうか」という観点から計画を立てたほうが時間切れになるリスクは小さいと思います。



短答式のほうが比較的勉強時間を管理しやすいと思いますので、先に短答式の勉強時間の管理方法の案についてお話します。

短答式に関しては、私の周りでは

「過去問集(や肢別本)についてだいたい8~9割以上を正解できるようになるまで繰り返しやる」

という受験生が多かったです。


予備試験に関しては、短答式の勉強をする目的は大きく分けて以下の2点にあると思います。

①短答式の試験で合格できるだけの知識を身につけること

②各科目について知識を身につけて論文式試験に活かせるようにすること


過去問集(又は肢別本)の9割を解ける状態にならなくても①の目的を達成することはできると思いますが、②のように知識の穴をできるだけ埋めるということまでを考えると、過去問集等の9割くらいは正解できるレベルに持っていければ理想的です。


「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」という考え方よりも、以下のように計画を立てたほうが、時間切れになるリスクは小さいと思います。

(1)短答式の試験本番まで勉強のために費やせる日数・時間を計算する

(2)短答式の過去問集(又は肢別本)の問題数(頁数)を数える

(3)短答式の過去問集を何回くらい繰り返せば、8~9割解けそうか見込みを立てる

(4)(1)~(3)の数値をもとに、1日何問(あるいは何頁、何時間)短答式の勉強をする必要があるか計算する

(5)上記の計算をもとに実際に勉強をしてみて、計画にずれが生じた場合には適宜(1)~(4)の作業を行い計画を修正する


たとえば、

(1)試験本番まで360日ある

(2)全科目合わせて10,000肢ある

(3)自分の理解力なら4回くらい繰り返せば8~9割くらいは解けるようになりそう

(4)90日(360日÷4回)で1周する必要があるので、1日111肢(10,000肢÷90日)こなす必要がある

みたいな感じです。


上記の例の場合、1日に肢別本を111肢こなすのに4時間かかるということであれば、残りの時間を論文式試験などの勉強にあてることができるということになります。

肢別本は回せば回すほど早く読めるようになっていきますし、確実の解ける問題は次からは飛ばせば良いので、だんだんと回せるスピードは上がってくると思います。



論文式試験の勉強についても似たような考え方で計画を立てていくと良いです。

例えば、論文式試験の勉強として、試験本番までに以下の勉強をするという計画を立てたとします。

① 各科目について、○月までに論文式問題集を最低3回やる

② ○月から本試験の論文式の過去問を過去5年分やる

③ ○月から予備校の答練を受ける(各科目全3回)

④ 直前期には弱点の補強、予想論点の復習、規範や定義の暗記をする

そして、例えば、上記の①の作業を6ヶ月間(180日)で終わらせるという計画を立てた場合、各問題集の問題数の総数を数えた上で、180日以内の終わるよう、1日に処理すべき問題数を割り当てていくことになります。

計画を立てて実際にやってみると「時間が足りない」という場合が出てくることがあると思いますので、その時は例えば「論文式の問題集はとりあえずAランクの問題だけをやる」等、どこかを妥協してくしかありません。



以上のように、「論文式の勉強に何割の時間を使う、短答式の勉強に何割の時間を使う」というのは、本試験までの日数と自分がやろうとしている勉強内容から逆算して1日にやるべき作業の内容を決めて結果的に出てくる割合であって、「他の人が論文式と短答式の勉強の割合を何対何にしているから、自分もそうする」という形で決めるべきものではないと思います。

また、自分の勉強の進捗具合によっても割合は変わってきます。

例えば、試験が近づいてくると「短答式については合格点は取れそうだが、論文式の答練の順位が低い」という場合には計画を見直した上で論文式の勉強時間を増やす必要がありますし、逆に「論文式の答練の順位は悪くないが、短答式の模試を受けてみたら合格点に届かなかった」という場合には、当然短答式の勉強の割合を増やしていく必要があります。






  • ●基本書について

基本書については、私は論文式の問題集、予備校の答練、論文式の過去問などを解いていて、参考答案や解説を見ても理解できない時に読むようにしていました。

また私は論文式の問題集などに書いてある論証が覚えにくいと思った際には、頻出の論点については自分なりの論証集のようなものを作るようにしていたので、論証集を作る材料(事案、問題点、理由付け、制度趣旨、規範、あてはめの仕方等)を探すために基本書や判例集を参照していました。


一方で、短答式の勉強をしながら分からないところを基本書で調べるという人もいると思いますが、個人的には短答式の問題集をやりながら、逐一分からないところを基本書で読んでいると時間が足りなくなる可能性が高いと思います。

短答式の勉強をする時は、六法は引くようにはしたほうが良いと思いますが、最初のうちは解説を読んでも分からない部分が出てきても「そういうものなんだ」と割り切って先に進んでいったほうが効率が良いと思います。

そして、短答式の問題集(又は肢別本)を何度も繰り返すなかで、何度解説を読んでも分からないという問題に絞って基本書でじっくりと調べる、というのが良いと思います。


なお、辰巳法律研究所から「短答過去問パーフェクト」という問題集が出版されていますが、この問題集の解説はかなり詳しいです。

●ISBN-10 : 4864664544


確かこの問題集の説明の中に「逐一基本書などを参照しなくとも解説を読むだけで理解できるように解説を詳しく書いている」というような記載があったと思います(うろ覚えなので間違っているかも知れませんが)。

短答式の問題をこなすうえで「分からないところがあると気になるけど、逐一基本書で調べるのは面倒くさい」という人や、「肢別本の解説がシンプルすぎて全然頭に入ってこない」という人は、こういった解説が詳しい問題集を使うのもありだとは思います。

ただ、以前の記事でも書いたとおり「短答過去問パーフェクト」は解説が詳しい分、自分にとって必要のない解説は読み飛ばす等の工夫をしないと、短答式の勉強にかなり時間をとられてしまうので注意をしてください。



以上のように基本書については、私は主に論文式の問題などをこなす際に使っていて、基本書を通読するための時間というのはほとんど設けていませんでした(ただし、入門書的な薄い本は隙間時間、移動時間、食事の時間などを使って何冊か通読しています)。

基本書を通読するべきかどうかは意見が分かれるところだとは思いますが、論文式の問題をこなしたり答練の復習をするときに基本書の該当箇所を読んでいるだけでも基本書の大事な部分はカバーできると思いますので、自分にとって基本書をどのように使うのが効率が良いかを考えた上で基本書を使うようにしたほうが良いと思います。


なお、もし基本書を通読する場合には、通読する前に、通読をするためにどのくらいの時間がかかるか計算をしてみてください。

どの基本書を読むかにもよりますが、全科目の基本書を通読するとなると、膨大な時間がかかると思います。

そして、基本書は1回読むだけでは理解できないため何度も読むとなると、読むスピードがよほど速い人でない限り、基本書を繰り返し読むという作業だけで試験本番までの勉強時間の大半を使うことになる、という計算結果になるはずです。

なので、個人的には最初のうちから基本書を通読するという勉強方法はあまりおすすめはしません。

基本書を通読するとしても、ある程度勉強が進んだ後に、目的意識を持って読んだほうが得られる知識・理解度は大きいと思います。





  • ●刑法の短答式の勉強について

「刑法は短答はやらずに論文だけで殆ど問題なしですか。」という質問についてですが、以前の「●忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について」という記事で私が「刑事系に関しては、論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でも足切りにならない程度の点数は取れる可能性が高いと思います」という説明をしたために、このような質問をされたのだと思います。

しかし、この記載は、上記の記事の質問者さんが

① 予備試験の短答式試験に一度通過した実績がある

② 仕事が忙しくて勉強時間があまり取れない

ということを前提とした説明であって、一般論ではありません。



確かに、刑事系の短答式で出題される問題は、論文式試験の論点と同じような論点が出題されることも多いため、論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でもある程度の点数を取れる可能性は高いです。

しかし、一度も刑法の短答式の勉強をせずに本試験の望むというのはかなりリスクが高いですし、上記の質問者さんと違ってある程度勉強時間を確保できる人であれば、刑法の短答式の勉強も当然にやっておくべきです。

論文式試験の受験において知識・理解の穴を埋めておくという観点からも、やはり刑法の短答式の勉強はきちんとやっておいたほうが無難だと思います。





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忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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論文試験の結果が届きました。
憲法C、行政法A、刑法E、刑事訴訟法E、一般教養D、民法F、民事訴訟法B、商法F、法律実務Bで合計212点。合格点は230点以上でしたので、残念ながら不合格となりました。
仕事をしながらとは言え、それなりに一生懸命勉強した結果なので、自分としては一応納得しています。
そこで一つ質問させて下さい。
以前にも書きましたが、しっかり勉強できたのは一昨年の秋から昨年6月までの9ヶ月間で、その後は仕事が急に忙しくなってしまい、あまり満足に勉強できませんでした。
特に昨秋からは過労死レベルの忙しさで、しかもエッセンシャルワーカーなので在宅勤務もできず、自由な時間は週末に数時間程度という生活です。
従って、これからあまり上積みは期待できず、むしろ歳のせいか昨夏までに勉強したことを忘れてしまう心配をしてしまうのですが、今年また予備試験にチャレンジすることは無謀なことでしょうか?
また、再チャレンジするとしたら、どのような勉強方法が効果的・効率的でしょうか?
いつも身勝手な質問で恐縮ですが、ご教示いただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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法務省で公表されている令和2年度の予備試験のデータを見ると、

合格ラインの230点は上位19.11%以上、464位以上

質問者さんの212点は上位32.95%以上、800位以上

なので、勉強を継続することができれば、合格ラインに達する可能性は十分にあると思います。


ただ、合格ラインまでの点数は18点なので「合格まであと少し」という感じもしますが、司法試験や予備試験の論文式試験の点数は偏差値に換算されているので、実際には見た目よりも18点という点数差は大きいということは認識しておく必要はあると思います。



いずれ、現時点で諦めるのはもったいない成績だと思います。

  • ●勉強時間の確保について

「週末に数時間程度」だけの勉強時間ですと、やはり予備試験に合格するのに必要な勉強時間としては足りないと思います。

そのため、平日に少しずつでも勉強する時間を確保することが必要だと思います。

例えば、通勤時間、休憩時間、食事の時間などを勉強に充てることはできないのでしょうか。

私も仕事をしながら法科大学院の受験勉強をしていた際、残業が多かったため、通勤時間にiPodに入れた定義集を聞いたり、休憩時間や食事の時間に参考書を読んだりして勉強をしていました。

また、自宅のトイレにも定義集や暗記したい事項を印刷したものを置いておいていつでも読めるようにしておいたり、お風呂に入る時にも湯船につかりながら参考書を読んだりしていたこともありました。

お風呂で本を読むとシワシワになるので、今であれば肢別本のアプリなどを入れた防水のスマホを持ち込むのも良いかも知れません。

1回1回の勉強時間は少なくても細切れの時間を積み上げていくともそれなりの勉強時間を確保することもありますし、時間がない中で危機感を持って勉強する場合のほうが集中していることが多いです。

予備試験や司法試験の受験生は1日中勉強している人も少なくないので、そういったライバルがいる中で合格を目指すのであれば、時間がない中でも勉強時間をひねり出していく他ないと思います。



それから、今後、仕事の忙しさが減っていく可能性はないのでしょうか。

これは会社にもよると思いますが、私がいた職場では部署や年度によって忙しさが変動していました。

異動希望を出せるような職場であれば、残業時間が少ない部署への異動希望を出してみる、ということも考えたほうが良いと思います。

また、会社によると思いますが大学院に進学するために休職できる制度が設けられていたりすることもあるので、仕事をしながら勉強をするよりも法科大学院など進学して予備試験・司法試験を目指しつつ、やっぱり道が違うと思ったら会社に戻るという選択肢を残しておく、というパターンもあると思います。

場合によっては転職や退職等も視野に入れる必要があるかも知れませんが、転職・退職はリスクを伴うことも事実なので、慎重に考えたほうが良いと思います。




  • ●勉強の内容について

前提として一般的に同じ勉強時間を費やすのであれば、得意科目の点数を上げるよりも、苦手科目の点数を上げるほうが効率が良いです。

相談者の方の論文式の成績は「憲法C、行政法A、刑法E、刑事訴訟法E、一般教養D、民法F、民事訴訟法B、商法F、法律実務B」とのことですが、私が気になったのは「民法」と「商法」の成績が一番悪いという部分です。

民事系の実体法(民法・商法)については範囲が広いため、勉強時間の差が出やすい科目です(勉強時間と成績が比例しやすいです)。

相談者の方は勉強時間があまり確保できなかったようですが、そのことが民法・商法の成績の悪さに直結しているように思われます。

短答式の成績が分かりませんが、民法・商法に関しては、短答式の基本的な知識があれば論文式試験で成績が極端に悪くなるということは考えにくいため、おそらく相談者の方は、民法・商法の基本的な知識がまだ十分に身についていない可能性があるように思います。

そのため、正攻法で対策をするのであれば、民法と商法の短答式の過去問をこなしたり、論文式問題集のAランクの問題を中心に理解を深める等して、弱点を補強したほうが、合格に近くなると思います。

短答式についてはその他の科目についても足切りにならないように最低限の勉強はしておいたほうが良いでしょう。



論文式については、民事系の他に、刑法・刑事訴訟法の成績が悪いのも気になります。

刑事系の成績が悪い理由についてざっくりと整理すると

(ア)基本的な知識・理解が欠けている

(イ)知識・理解はあるが論文の書き方が身についていない

(ウ)(ア)と(イ)の両方

に分けられると思いますが、自分がどのタイプに当てはまるのかを確認した上で対策をする必要があります。

勉強時間がこれまであまり確保できていなかったということであれば、おそらく(ア)か(ウ)のどちらかでないかと思います。

刑事系に関しては、(一度短答式を通過している質問者さんに関しては)論文式試験の勉強をしっかりとしていれば、短答式でも足切りにならない程度の点数は取れる可能性が高いと思いますので、勉強時間があまり確保できないようであれば、論文式問題集のAランクの問題を中心に論点知識をインプットした上で、予備校の答練を受けて論文の書き方を勉強するとともに、出題される可能性が高い論点を重点的に押さえておくのが良いと思います。

刑事系の論文式試験については予備校の予想があたることも少なくないので、時間が無いのであれば刑事系についてはある程度はヤマをはることも考えたほうが良いと思います。

刑事系については、論文式問題集のAランクの問題について参考答案と似たような文章が書けるようにした上で、論文の書き方のコツを掴むことができれば短期間で成績が上がりやすい科目です。



以上をまとめると、私が相談者の方と同じ立場の受験生であればということですが

・民法・民事訴訟法を中心に細切れ時間などに肢別本のアプリなどを使って短答式の基本的な知識を身につける

・週末のまとまった時間にまず刑法・刑事訴訟法の論文式の問題集でAランクの問題(各科目30問ずつ程度)について、同じような答案を書けるように努力をする

・予備校の論文式の答練を受験して徹底的に復習をし、似たような問題が出た際に確実に点を取れるようにしておく

・試験直前に予備校などが出版している予想論点を記載した冊子を購入し、予想論点について穴がないようにしておく

という感じでとりあえず進めるかな、と思います。


本当であれば論文式の過去問もやりたいところですが相談者の方の状況では過去問まで手を付けるのは厳しいと思いますので、予備校の論文式の答練で本試験方式の解き方への耐性を付けつつ、出題される可能性が高い論点を中心に復習できるようにする、というように妥協するしかないかと思います。

このような方法で、民法・民事訴訟法の弱点を補強し民事系については論文式試験で大怪我をしない程度のそこそこの点数を取ることを目標とし、比較的短期間で成績の上げやすい刑事系の成績を大幅に上げることができれば、次年度の試験で合格圏内に入れる可能性は十分にあると思います。


論文式試験の再現答案等をいただければもう少し具体的なアドバイスができるかも知れませんが、受験勉強は基本的に自分に足りない部分を把握してそこを補強していく、という作業の繰り返しですので、上記の勉強方法を参考にしていただいた上で、自分なりの方針を立てていただければと思います。



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辰巳法律研究所の趣旨規範ハンドブックについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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辰巳に聞くのが一番かもしれませんが質問します。
伊藤塾ネタが多いところで辰巳の質問をするのも少し気が引けるのですが...。
他のは伊藤塾を使用していたのですが、何となく民訴辰巳のえんしゅう本を読み、その時にえんしゅう本の後ろを見ました。
そうしたら、辰巳の場合、論文のインプットは趣旨規範ハンドブックになっていました。
そうなると、辰巳の場合、テキストを使用せずに論文はえんしゅう本を使いつつ分からない所は趣旨規範ハンドブックでインプットをして学習する事を想定していると思われます。
そうなると、他の予備校だと予備校本が別にあると思いますが、辰巳の場合、自分ではまとめ本だと思っていた趣旨規範ハンドブックが他の予備校で言うところの予備校本という位置づけでえんしゅう本とセットにして学習するのが効率的なのでしょうか。
このやり方をすると、別に短答の学習を行えば論文の知識も両方得ることが出来、合格の能力を得ることが出来るという事でしょうか。
そんな事は辰巳に聞けと言われそうですが、質問させていただきます。
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個人的には辰巳法律研究所がいわゆる「予備校本」(網羅的なテキスト)を出していないのは、辰巳法律研究所は「基本書」を使って勉強することを前提にしているからだと思います。

辰巳の短答式の問題集や肢別本などでは参考文献として学者が書いた基本書が参考文献として挙げられていますし、かなり古いデータですが、西口竜司先生の入門講座でもテキストとしては主に学者の書いた基本書が指定図書にされていたようです。




辰巳法律研究所のパンフレットには以下の記載があります。
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「今回私が担当する入門講座では、いわゆる予備校テキストではなく、私が指定する基本書と判例集をテキストとして使用します。その理由は以下の2点です。
①法学部・ロースクールも基本書を使用する
②予備校テキストは勉強しやすい反面、思考力が身につかない
以下、具体的にお話します。
まず、①についてですが、大学でもロースクールでも法律を学ぶ際には基本書や判例集を使用します。したがって、入門段階から同じように基本書や判例集を使うことで、それらに慣れてしまうのが得策です。また、試験で点をとるための基本書の読み方、判例の読み方も今後大切になります。
その点も講義では気をつけていきたいと考えています。
次に②についてですが、予備校のテキストは勉強の便宜が考えられており、非常に使いやすいのがメリットです。一方、勉強のしやすさを重視するため、いろいろな基本書のいいところを切り貼りし、繋げ合わせた点は否めず、記述の一貫性や体系的理解に欠ける点がデメリットです。
新司法試験考査委員の先生方が毎年ヒアリングで重要視する「考える力」を養成するには、各科目の体系的理解が不可欠であり、前述の通り、体系的理解を身につけるには予備校テキストには一抹の不安があります。
そこで、私の入門講座では受験勉強という視点から見て最適な基本書、すなわち体系的理解を身につけるのにふさわしく、しかも出来る限り分厚くない基本書を選別し、使用することにしたのです。
結果、皆さんが基本書と判例百選を使いこなし、各科目の体系的理解を得ること、そしてそれを利用し、試験問題と対話できるようになることを西口クラスの最終目標にしたいと思います。」
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このパンフレットが作成された当時には、既に「趣旨規範ハンドブック」はありましたので、「辰巳の場合、テキストを使用せずに・・・学習する事を想定している」ということではないと思います。


上記の入門講座では「実務基礎ハンドブック」が指定図書になっているので、「【実務基礎】ハンドブック」については「他の予備校で言うところの予備校本という位置づけ」と言うことはできると思いますが、「【趣旨規範】ハンドブックが他の予備校で言うところの予備校本という位置づけ」ということではないと思います。



「趣旨規範ハンドブック」は私も使っていましたし、とても便利な本ですが、「趣旨規範ハンドブック」は、ある程度知識が身についた後に真価を発揮する本で、勉強の初期の段階で「趣旨規範ハンドブック」を中心に勉強するのは結構大変だと思います。

というのも、私も初期の段階で一度「趣旨規範ハンドブック」で知識をインプットしようとしたのですが、挫折をした経験があるからです。


「趣旨規範ハンドブック」は、論文式試験に必要な論点や定義がコンパクトにまとめられており、一見すると、「趣旨規範ハンドブック」に書いてあることを全て理解し暗記すれば、効率的に合格レベルに達することができるのではないか?とも思えます。


しかし、勉強の初期の段階で、実際に「趣旨規範ハンドブック」で知識をインプットしようとすると、問題が出てきます。

「趣旨規範ハンドブック」は、論点や定義がコンパクトにまとめられているのが長所なのですが、記述があっさりとしすぎていて論点を理解するために必要な情報が少ないですし、論文試験の問題文に相当する「事案」の説明もないので、「趣旨規範ハンドブック」だけで論点を理解することは難しいのです。


そのため、「趣旨規範ハンドブック」を使いながら知識をインプットしていこうとすると、


「趣旨規範ハンドブック」を読む
  ↓
よく分からないところが沢山出てくるので基本書、「他社の予備校本」、判例集などを読んで理解を深める


という作業を繰り返す必要があります。


実際にこのような作業を繰り返しながら知識をインプットしていた同級生もいましたが、この作業は基本書・予備校本を何度も通読するのと同じくらいの忍耐力を必要とします。

また、「趣旨規範ハンドブック」は一見コンパクトに見えますが、出題可能性が低い論点も含めて、ありとあらゆる論点が網羅的に記載されているため、「趣旨規範ハンドブック」を中心に知識をインプットしようとすると、膨大な時間がかかります。



論文式試験の知識をインプットするのであれば、やはりこれまでおすすめしているように、論文式問題集を中心にインプットしていったほうが効率的だと思いますし、苦痛も比較的少ないと思います。

「物事の結果のうち8割は2割の要素によってもたらされる」という「パレートの法則」というものがありますが、司法試験も同じで、論文式試験で出題される可能性の高い論点は、基本書や「趣旨規範ハンドブック」に書いてある論点の2割から3割程度だと思います。

受験生としてはあらゆる論点を広く万遍なく勉強したくなるものですが、早期に合格する受験生は論文式試験で出題される可能性の高い重要な論点をしっかりと理解し、些末な論点については大怪我をしない程度にさらっと押さえておく、というようにメリハリをきかせている人が多いです。

論文式試験での重要論点が何かを知るためには、最初のうちは基本書や「趣旨規範ハンドブック」よりも、掲載されている論点の数が少ない論文式試験の問題集を使ったほうが感覚がつかみやすいと思います。



なお、私は伊藤塾の「伊藤塾試験対策問題集」を主におすすめしていますが、「えんしゅう本」でも全く問題はないと思います。

私の同級生の中には「えんしゅう本」を使って合格した人は何人もいます。

要は自分が使いやすいと思うもの、自分が使っていてやる気が出やすいものを使えば良いのです。




では、「趣旨規範ハンドブック」は使えないかというと、そんなことは全くなくて、勉強がある程度進んできて知識・理解が増えた後であれば、「趣旨規範ハンドブック」はとても役立つツールになります。

勉強がある程度進んでくると、自分が良く知っている論点・分野と、自分の苦手な論点・分野が出てきて、知識・理解にムラが出てくることが多いです。

その時に、弱点を補強するために「趣旨規範ハンドブック」を読むと、自分が苦手だったり未知の論点を抽出することができ、苦手な論点・分野に絞って基本書・他の予備校本を読むことで、苦手な分野を克服していくことができます。



それから、「趣旨規範ハンドブック」には、科目ごとに本試験タイプの問題の解き方が詳しく解説されています。

勉強がある程度進んできて、論文式試験の過去問や、答練を受けていると、解き方が分からなくて
困ってしまう、ということが何度も出てくると思います。

その時に、「趣旨規範ハンドブック」を見ると、科目ごとに、どういう視点・順序で問題に取り組めば良いか解説されていますので、「趣旨規範ハンドブック」を頼りに論文式試験の解法を身につけていくことができます。



このように、「趣旨規範ハンドブック」は、勉強の初期よりもむしろ後半で役立つ参考書だと思いますし、最初から「趣旨規範ハンドブック」を使って知識のインプットをしようとすると、忍耐力のない人は挫折する可能性が大きいと思います。


ただ、先ほど書いたとおり、「趣旨規範ハンドブック」と基本書を使って、知識をインプットして合格した同級生はいますので、忍耐力に自信があるのであれば、初期の段階から「趣旨規範ハンドブック」を使っても良いと思います。

その場合でも、「趣旨規範ハンドブック」は、基本書や「他の予備校で言うところの予備校本」の代わりにはなり得ません。

「趣旨規範ハンドブック」は、あくまで論点や定義をコンパクトにまとめた本であり、論点を理解するために必要な情報が非常に少ないからです。

「趣旨規範ハンドブック」を使って知識をインプットするのでれば、基本書や「他の予備校で言うところの予備校本」を併用して使うことが不可欠だと思います。



質問者の方は、えんしゅう本を読み終わった段階のようですが、私だったら以下のように勉強を進めていくと思います。


①えんしゅう本にある問題について、参考答案と同じような答案が書けるようになる努力をする。

②えんしゅう本にある問題について、何度読んでも分からない論点については、基本書や予備校本を読んで理解を深める

③並行して短答式の過去問を大量にこなす。

④早い段階で論文式の答練や過去問にも取りかかる。

⑤論文式の答練や過去問をこなしていると、理解が不十分であることを実感するので、必要に応じて、①②の作業を繰り返す。

⑥論文式の答練や過去問をこなしていると、知識・理解に穴があることを実感するので、「趣旨規範ハンドブック」などを使って、自分の知らない論点・知識を洗い出し、穴を埋めていく。

⑦答練や論文式の過去問をこなしていると、どうやって対処して良いのか分からない問題が出てくるので、「趣旨規範ハンドブック」などに書いてある、論文式の解き方のマニュアルを参考にしながら、解法を身につけていく。


このように、私であれば「趣旨規範ハンドブック」は、後半のほうで活用すると思いますし、実際に受験生の時もそうでした。


以上が私の考えですが、司法試験の勉強方法には絶対的な正解のようなものはありませんし、勉強方法は合格者の中でも千差万別なので、色々と試してみたり、他の合格者の話も聞いてみて、自分に合う方法を探すことも大事だと思います。



なお、私の記事では「伊藤塾ネタが多い」ように見えるかも知れませんが、伊藤塾とは利害関係はなく、特定の予備校を優先しようという意図はありません。

論文式試験問題集については、単純に伊藤塾のものが出来が良いと考えているだけです。

私が受験生時代に最もお布施をした額が大きかったのは辰巳法律研究所だと思います。

受験生時代は、短答式では辰巳法律研究所やスクール東京出版の問題集を使っていましたし、答練や単発の講義は辰巳法律研究所を使っていました。

他方、予備校本はLECの「C-BOOK」を全科目買っていました。伊藤塾のテキストである「試験対策講座」は数科目分買いましたが、自分に合わないと思ったのでほとんど使いませんでした。

このように、自分に必要だと思う参考書等とつまみ食い的に使っていただけで、特定の予備校だけを使っていた訳ではありません。

節操のない感じに見えるかも知れませんが、受験生にとっては予備校は自分の合格の可能性を上げるために上手く使うことが大事なので、自分に合っていて好きな予備校を選べば良いと思いますし、勉強の段階や分野、時期、自分の理解度等によって使う予備校を変えることも全く問題ないと思います。


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司法試験の勉強において全科目を1周するペースについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。

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もう一つ質問です。
勉強を初めて約1年10ヶ月たちましたが、ようやく行政法まで来ました。
基本書読みすぎなのか問題集もやりすぎなのか流石に遅すぎると思います。
普通というのが何かという事もありますが、普通はどのくらいで一周する物でしょうか。やはり、半年か遅くても一年くらいにしないと問題だと思ってきました。
アガルートで、インプットは300時間で一周を目指すようですが、これは一日3時間の勉強で約3ヶ月位ですし、流石に一度で覚えられないでしょうから3周を目安にしているようですが、それでも9ヶ月です。
アウトプット入れても一年位で一周しないと2年目に進めないと思います。
私のようなのは予備校のペースにのったほうが独学より良いかもしれないと思ってきました。
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勉強のペースは自分に合った形で良いと思いますが、全科目を1周するのに1年10ヶ月以上かかっているというのは、時間がかかり過ぎだと思います。

法律の勉強は前半で学んだことが後半の理解に必要だったり、後半で学ぶことが前半の理解に必要だったりするので、最初のうちは浅くて良いので、全体を短期間で何度かぐるぐると回すことが大事だと思います。

これまでの記事で最初に入門書を読むことや、問題集を中心にした勉強法をおすすめしているのも同じ理由によるものです。


もし「伊藤塾試験対策問題集」を使っているのであれば、まずケース以外の「A」ランクの問題のみを、読んでみるのが良いと思います。

「伊藤塾試験対策問題集」の「B」ランクや「C」ランクの問題については、合格者レベルでもまともな答案をかけないような論点が含まれているのに対し、「A」ランクの問題の論点については合格レベルの受験生であれば当然に理解をしておくべきものがほとんどだからです。

「A」ランクの問題だけであれば、科目にもよりますが1科目あたり30問程度ですので、数日から2週間程度で1科目を回せるはずですし(1日じっくりと2問ずつやっても15日)、全科目を3ヶ月~4ヶ月程度で回せるはずです。

もしかしたら分からない部分を基本書等で調べるのに時間がかかっているのかも知れませんが、例えば1日2問は必ずやると決めて、その日のうちに調べきれなかった部分は、後回しにする、という割り切りも必要だと思います。

何度か回しているうちに「いつもこの論点はよく分からないんだよな」という部分が出てくると思いますので、その時にじっくりと当該論点について基本書を読み込んだり、判例集を読めば良いと思います。


「伊藤塾試験対策問題集」以外の本を使う場合でも、たとえば辰巳法律研究所の「えんしゅう本」であれば数日で一周することは可能だと思います。

読んでいるうちに分からない部分もあると思いますが、最初のうちは取りあえず全体を読み切ることを目標にして、分からない部分は「この部分が分からない」という発見をしたことが収穫だと割り切るのが良いと思います。


その他、短答式の勉強であれば一問一答式の問題集を1冊2~3日のペースで読み切る、という勉強法もあります。


苦行に近い勉強法であるため根性のない私は成功したことは1度もないのですが、同級生では、この肢別本を短期間で読み切る、という勉強法をしている人は何人もいました。


いずれどの方法を使うにせよ、短期間で全体を回す勉強法はいくつもありますので、自分に合いそうな方法から試してみるのが良いと思います。

自分でペースを掴むのがどうしても難しい場合には、ご指摘のように予備校をペースメーカーにするという方法もあると思います。


なお、基本書を読むという勉強法は大事なのですが、私の知り合いの中には、基本書をほとんど読まずに合格した人は何人もいます。

それに対し、問題演習をせずに合格した人は私が知る限りはいません。

時間がかかり過ぎるようであれば、基本書を読む時間よりも、問題演習をする時間を優先した方が、全体を早く回せるようになると思います。

また不明な点があれば質問してくだささい。



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