仕事を辞めて弁護士に転職しました

公務員として数年間働いていましたが、思い切って公務員を辞めて司法試験を受験し、現在は弁護士として働いています。 自分が受験生の時は情報が少なく相談できる人もいなかったため、色々と悩むことも多かったです。 公務員のこと、司法試験のことなどについて、受験生の方に参考になるかも知れないことを書いていけたらと思っています。 質問がある方はコメント欄に記載してもらえれば可能な範囲で回答したいと思います。回答まで時間がかかることが多々ありますがご容赦ください。

司法試験・予備試験

司法試験予備校に(できるだけ)通わずに約1年で予備試験に合格する方法・参考書などについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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初めまして。つい最近このサイトを教えてもらい閲覧させてもらっている者です。
現在法学部に通っている大学一年生です。
つい先日学校の一年生対象の法曹志望のゼミに入り始めての授業的なものを受けてきました。
内容はただのオリエンテーションだったのですが同級生でも既に入門書を読み終えていたり某予備校に通っている人もいて内心とても焦っています。
家庭の事情もあり予備校には通わないルートで予備試験、司法試験に受かりたいと思っています。
・・・
来年の予備試験を受けてできる限り受かりたいと思っています。
とりあえずブログでも紹介されていた伊藤塾の入門書を頼んだので届いたら全部2,3周は読もうと思っています。
・・・
その後のルートや参考書を一緒に考えてもらえるとありがたいです。
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  • ■予備校の利用について

私の同級生の中には予備校に通わずに予備試験や司法試験に合格した人は何人もいますし、私自身も経済的な理由や時間的制約があったため、予備校は、答練やDVDなどで販売されている単発の講座をいくつか受講する範囲でのみ利用していました。

なので、予備校に通わずに予備試験や司法試験に合格することは可能だと思います。

ただし、後記のとおり、可能であれば答練や直前模試については、予備校を利用することは検討しても良いと思います。

また、一般論としては、予備校を利用すればひととおりの講義受けることができる他、合格までのスケジューリングなどを示してくれますし、必要な教材を提供してくれますので、予備校を利用するメリットはあります。

質問者以外の方で予備校を利用することを検討されている方は、予備校を利用するメリットと、金銭的・時間的事情を比較衡量した上で利用を検討するのが良いと思います。





  • ■全体的なスケジューリングについて

来年の予備試験を受験するということであれば、短答式試験まで約11ヶ月、論文式試験まで約13ヶ月しか時間がないということになります。

そのため、来年の予備試験の合格を目指すのであれば、きちんとしたスケジュール管理をした上で、効率的な方法を目指す必要があると思います。

また、全ての範囲を完璧にこなすことはおそらく無理だと思いますので、本試験で出題される可能性の高い分野や、ミスをした場合に致命傷となりうる部分を重点的に学習するなど、メリハリをきかせた学習が必要になると思います。

以下、私が質問者さんと同じ立場であったら、どのような計画を立てるかについて説明したいと思います。

なお、私が受験生の時点では予備試験の制度はなかったため、以下の説明はあくまでも私が現時点で予備試験の受験生の立場だったら、という仮定の話になります。その点はご了承ください。


また、勉強の全体的・一般的な流れは以下の記事でまとめていますので、そちらも参考にしてください。







  • ■入門書を読む

相談者の方はすでに入門書を読む予定とのことですので、詳しい説明は不要だと思いますが、他の記事にも書いているとおり、最初は入門書の通読からはじめるのが良いです。

入門書に書いてあることは基本的な部分が理解できていると、その後に勉強の効率が上がります。



  • ■入門書の通読が終わった後は、早めに論文式問題集と短答式問題集に取り組む

予備試験は5月に短答式試験が、7月に論文式試験がありますので、1年前後で合格することを考えると、できるだけ早い段階で問題集に手をつけておいたほうが良いです。


論文式問題集は自分に合ったものを選んでいただければ良いと思いますが、他の記事でも書いてあるとおり、個人的には予備試験受験生であってもとりあえず基本的には「伊藤塾試験対策問題集 論文」(「予備試験論文」ではないほう)をおすすめしています。

科目によっては、他の問題集や参考書の利用を検討したほうが良い場合もあります。

各科目のおすすめの参考書等の詳細については以下の記事も参考にしてください。


また論文式問題集の選び方については以下の記事でも書いていますので参考にしてください。



「伊藤塾試験対策問題集 論文」にあるAランクの問題は各科目30問程度なので、論文式試験までの約1年という期間を考えると、問題数として処理可能な現実的な範囲だと思います(問題数が多い問題集や、ランクが付いていない問題集を使うと消化不良になる可能性が大きいので)。

Aランクの問題の解答例を何度も読んだり、解答例を見ないで自分で答案を書いてみたりして、解答例の同じような答案を書けるように訓練をするのが良いと思います。


「伊藤塾試験対策問題集 論文」にあるAランクの問題の多くは、各科目の軸となる論点ですので、何度も読んだり書いたりすることで、各科目の考え方の柱の部分が少しずつ分かってくると思います。

ただし、「伊藤塾試験対策問題集 論文」の問題と解答例を何度読んでも分からない部分や、しっくりこない部分が出てくるはずです。

そのような部分については、基本書・予備校本・判例集などの該当箇所をじっくりと読んで、理解を深めていくという作業が必要になります。


基本書、予備校本、判例集などは、本屋さんなどで自分に合いそうなものを選んでもらえれば良いと思いますが、これも以下の記事でおすすめの参考書について記載していますので、参考にしてください。



理想的には、論文式試験の3~4ヶ月前までには、Aランクの問題については、ひととおり解答例と同じような答案を書けるようにしておきたいところです。

そのためには、各問題集を何周すれば良いのかを考えた上で(何周すれば覚えるかは人によって異なります。)、毎日何問ずつ処理をしていくか、スケジューリングをする必要があります。


現実問題としては、予備試験・司法試験の合格者の中でも、「伊藤塾試験対策問題集 論文」にあるAランクレベルの問題ですら、十分に書けない・理解できていない、という人は少なからずいると思います。

しかし、上記のAランクレベルの問題の理解が不十分だと、本試験で大怪我をする可能性が非常に高くなるので、とにかくAランクレベルの問題については、きっちりとマスターしようという意識を持っておくことが大事だと思います。




  • ■短答式問題集も並行してこなしていく

予備試験では選択科目以外の科目は短答式試験がありますので、論文式問題集とは別に、早い段階で短答式試験の問題集にも手をつけておく必要があります。

短答式問題集も自分に合いそうなものを選んでもらえば良いと思いますが、質問者の方については試験まで時間がないことを考えると、短時間で回しやすい肢別本(一問一答式の問題集)を使うのが良いと思います。

肢別本はアプリと書籍があります。

●書籍



●肢別本のアプリ



アプリのメリットは持ち運びが便利でスキマ時間を効率的に使えることや、間違った問題だけを復習する等の作業がやりやすい点にあると思います。

他方、アプリでは事案図やメモを自由に書き込みできないというデメリットもありますので、それぞれのメリットとデメリットを踏まえた上で、どちらを使うか(あるいは両方を使うのか)を考えたほうが良いと思います。

肢別本は、コンパクトなので場所を選ばず使えるのがメリットですが、人によっては単調で苦痛に感じるかも知れません。


肢別本以外では、本番と同様の形式(5つの肢から正解を選ぶ形式等)の問題集があります。

このタイプは回すのに時間がかかるので、使う場合には消化不良にならないようスケジューリングが必要になると思います。

●短答過去問パーフェクト


一般的には、本試験まで短答式の問題集を3周~5周程度回す受験生が多いと思います。

理想的には本試験までに過去問の8割~9割程度は正解できるようにしたいところです。

毎日何問ずつ処理すれば8割~9割程度は正解できるようになるか(これも人によって異なります。)を考えた上で、毎日決めた問題数を機械的に処理していく必要があります。

短答式は基本的に勉強をした時間に比例して点数が伸びていきますので、過去問を繰り返しつつ、分からないところを基本書などに戻って確認する、という「作業」を愚直に繰り返す必要があります。




  • ■民事実務基礎・刑事実務基礎

予備試験では、民事実務基礎と刑事実務基礎という科目があります。

民事実務基礎では主に要件事実と事実認定などが、刑事実務基礎では主に事実認定・刑事手続・法曹倫理などが出題されます。


実務基礎科目は、民法・刑法・刑事訴訟法を理解していないと勉強効率が悪いという特徴があるので、民法・刑法・刑事訴訟法の勉強がある程度進んだ後に手を着け始めるのが良いと思います。

試験直前になって「実務基礎科目の勉強をしていなかった!」とならないように、スケジュールに組み込んでおく必要があります。

他の記事(忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について(その2))でも書きましたが、私が時間がない受験生であれば以下のような勉強をすると思います。


・「新問題研究要件事実」に出てくる要件事実とその考え方を押さえる

・「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造」を読んで「新問題研究要件事実」には記載のない要件事実を押さえておく

・法曹倫理、刑事実務基礎については、予備校が出版している参考書などを利用してざっと頭に入れる

●新問題研究要件事実

●紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造

要件事実には色々な問題集や参考書がありますが、時間がない場合には「新問題研究要件事実」と「紛争類型別の要件事実」に掲載されている要件事実をきちんと押さえることが大事だと思います。

私も色々な本に手を出して遠回りしましたが、最終的にはこの2冊に落ち着きました。(「紛争類型別の要件事実」は何度も読み込んでいると1~2時間程度で通読できるようになるため、試験直前に高速で復習できるツールになります。)

「新問題研究要件事実」は読みやすいので、民法の勉強がある程度進んだ後に読めば十分に理解できると思います。

「紛争類型別の要件事実」は、解説がシンプル過ぎて最初のうちは難しく感じると思いますので、岡口基一裁判官の「要件事実マニュアル」の1巻と2巻を辞書として手元に置いておき、分からない時に参照できるようにしておくと良いと思います(なお、3巻以降は受験生の時点では必要ありません。)。

●要件事実マニュアル





民事実務基礎・刑事実務基礎に関し、予備校が出版している参考書については、以下のいずれか、または複数を使っている人が多いと思います。

●刑事実務基礎の定石

●司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック

●民事実務基礎 (伊藤塾試験対策問題集:予備試験論文)




  • ■一般教養対策

2022年度から予備試験の出題科目に一部変更されます。

その結果、一般教養科目は短答式試験のみとなり、論文式試験での一般教養科目は廃止されます。

制度の変更点は早稲田セミナーのウェブサイトの説明が分かりやすかったです。




短答式試験における一般教養科目は、40問程度の中から20問を選択して回答する内容となっており、大学受験レベルの知識で解ける問題も多いため、大学入試である程度の勉強をしていた人であれば、それなりの点数は取れると思います。

ほとんどの受験生は一般教養科目の勉強をする時間が十分に取れないまま、試験本番を迎えるというのが実情だと思います。

法務省のウェブサイトにある過去問を解いてみて、何割程度解けそうか確認してみてから、対策の必要性を検討するのが良いと思います。



  • ■選択科目対策

2022年度から予備試験に一部変更があり、論文式試験で選択科目が追加されます。

この点は、辰巳法律研究所のウェブサイトの説明が分かりやすいと思います。





選択科目の追加は、時間のない予備試験受験生にとっては、結構な負担になると思いますが、制度が変わる以上、避けては通れません。

まず、どの選択科目を受験するかを決めなければなりません。

独学で勉強をする場合には、教材が手に入りやすい労働法や倒産法を選ぶのが無難だと思います。

労働法と倒産法の知識は実務でも必要となることが多いですし、民法や民事訴訟法の勉強と重複する部分もあるので、他の科目の理解度の向上にも繋がります。

ただし、労働法を選択した合格者に聞くと、労働法は覚える量が多い(らしい)です。

倒産法も覚える量は「やや多め」です。


私は倒産法を選択しました。

倒産法は条文の数が比較的多く理解するまでにある程度の時間が必要になるものの、ある程度の訓練をしておけば、論文式試験ではどんな問題が出ても手元にある条文を頼りに、そこそこの答案を書くことができる(知らない問題が出て大怪我をするというリスクは少ない)という印象です。


経済法・国際私法・租税法・環境法などのほうが合格までに必要な学習量が少ないため、時間が足りないという場合で、「教材が比較的少なくても独学できる自信がある」という場合や、「他の選択科目のほうが興味があってやる気が出る」というような場合には、経済法・国際私法・租税法・環境法などから選んでも良いと思います。

ちなみに、経済法や国際私法の知識は、大きな法律事務所以外ではあまり使わないことが多いと思います(街弁の私はほとんど使うことがない。)。

環境法も、一般的な弁護士は使う場面は少ないと思います。

租税法は実務でも使うことがあるのですが、簿記や会計が分かっていないと知識を活用しずらいと思います。

そういった意味で、実務で活用することまで考えると、やはり労働法か倒産法が、つぶしがききやすいと思います。




その他の選択科目としては、知的財産法・国際公法があります。

知的財産法・国際公法は、「知的財産法・国際公法が大好き!」という受験生が選択することが多く、他の受験生のレベルが高いので、難易度は高めだと思います(知財・国際公法が好きな人であれば問題ないともいます。)。




前記のとおり私は司法試験では倒産法を選択しました。

参考までに私が使った教材と、使い道を記載しておきます。

・山本和彦先生の「倒産処理法入門」
⇒入門書として通読

・伊藤眞先生の「破産法・民事再生法」
・判例百選
⇒調べ物をする時に利用、通読はしてない

倒産法演習ノート(おすすめ)
・選択科目えんしゅう本〈2〉倒産法
⇒主要論点の学習に利用

●倒産処理法入門
●破産法・民事再生法(伊藤眞)
●判例百選
●倒産法演習ノート
●司法試験論文 選択科目えんしゅう本〈2〉倒産法



  • ■論文式試験の過去問

ある程度勉強が進んで来たら、論文式試験の過去問を時間を計って解き、合格答案と自分の答案を比較して分析をする、という作業をしたほうが良いです。

理想を言えば、論文式試験の半年前くらいから、過去問の分析はしたいところです。

質問者の方は、法学部生ということなので、予備試験を受験する予定のある同級生や先輩などとゼミを組んで、過去問を解き、法務省のウェブサイトで公表されている出題趣旨などに基づいてお互いの答案を批評し合う、という作業をすることも有益だと思います。


合格者の再現答案は各予備校が出していますが、私は辰巳法律研究所の「ぶんせき本」を使っていました。

●令和2年(2020年)司法試験予備試験 論文本試験 科目別・A答案再現&ぶんせき本




  • ■短答式試験の過去問など

肢別本(一問一答式)を使って短答式試験の勉強をしていた場合には、本試験の数ヶ月前から、年度別の過去問集などを使って本試験形式(複数の肢から正解を選ぶ形式)の問題の処理方法に慣れておく必要があります。

●司法試験&予備試験 単年度版 短答過去問題集(法律基本科目) 令和2年



  • ■答練・直前模試を受ける

質問者の方は、「予備校は通わない」ことを考えているということですが、可能であれば答練(後期・第2クール)と直前模試だけでも受講しておくことをおすすめします。

私は受験生時代は親からの援助を受けておらず貯金と奨学金でやりくりしていたので金銭的な余裕はあまりありませんでしたが、書籍代と答練・直前模試の費用は合格のための必要経費と割り切って予算を確保していました。

答練は、主に前期(第1クール)と後期(第2クール)がありますが、後期(第2クール)から受講する受験生が多いと思います。

前期(第1クール)の答練は無理してまで受講する必要はないと思います。

後期(第2クール)の答練と直前模試は多くの受験生が受講するため、本試験で答練・直前模試と同様の論点が出題された場合に、差をつけられてしまう可能性があります。

また、論文式試験では、知識だけでなく、与えられた時間内で、問題の趣旨を読み取って、途中答案にならにように答案を書き切る能力を身につけるための訓練も必要になります。

そのためには、時間を計って本試験形式の論文式試験の答案を何度も書く、という作業を繰り返す必要があるのですが、答練や模試を受けていないと、この訓練が不十分になるおそれがあります。

そのため、可能であれば、1校で良いので、後期(第2クール)の答練と直前模試は受講しておくことをおすすめします。


費用は予備校によって異なりますが、辰巳法律研究所の場合、後期(第2クール)の答練が12万8500円~14万2200円程度、直前模試は2万6600円程度のようです。








どの予備校の答練・直前模試を受けるかは、費用との兼ね合いもありますが、多くの受験生が受講している予備校の答練・直前模試を受講したほうが良いと思います。

他の受験生が受講している答練・直前模試と同様の論点が本番で出題された際に、自分だけその論点の学習が不十分だと、不利になる可能性があるからです。

私が受験生の時は、辰巳法律研究所の答練・直前模試を受験している同級生が多かったですが、最近の司法修習生の話を聞いていると伊藤塾や他の予備校の答練・直前模試を受験した人も増えているように思われます。

最近では受講料の安さを売りにした新しい予備校(資格スクエア、アガルートなど)の受講生も増えてきているようです。

周りの受験生の話を聞いてみて、受講している人が多い予備校の答練・模試を受験するのが無難ではないかと思います。



金銭的な理由などでどうしても予備校の答練や直前模試を受験できない場合には、論文式試験に慣れておくために、過去問を時間を計って解く、という訓練を多め行っておいたほうが良いと思います。



  • ■弱点と予想論点の補強

予備校の答練や直前模試を受験すると、他の受験生と比較する形で点数が出るため、自分の知識不足・理解不足の科目が分かると思います。

金銭的な事情で答練や模試を受けることができない場合でも、ゼミを組んで仲間と過去問を解き、答案を見せ合うことでも自分の弱点を知ることができます。

予備試験は相対的な試験であるため、他の受験生との比較した際に、自分の弱い部分を補強する必要があります。

そのため、本試験の直前期には、自分の弱点を補強するための時間を確保しておくと良いです。

また、例年、論文式試験の直前の時期になると、辰巳法律研究所の「ハイローヤー」という雑誌などで、論文式試験の予想論点の特集が取り上げられることが多いです。




特に刑事系や公法系では予備校の予想があたることが多いので、論文式試験の直前期には、上記の論文式試験の予想論点の特集記事などを見て、予想論点について、自分の知識や理解に穴がないか確認・復習をしておくと良いです。



  • ■その他

勉強方法とは直接的には関係しませんが、予備試験・司法試験の勉強をする上では勉強仲間を作っておくことをおすすめします。

質問者の方は法学部で法曹志望のゼミに所属しているということですし、予備校に通っている同級生もいるようですから、仲間を作りやすい環境にあると思います。


予備試験・司法試験の勉強をする上で仲間を作る主なメリットは以下のとおりです。


・モチベーションを維持しやすい

⇒お互い集まって自習やゼミをやることで、やる気が出ない時でも強制的に勉強できる。


・自分の考え方・勉強方法がズレている時に軌道修正しやすい

⇒予備試験・司法試験に安全に合格するためには「他の合格者と同じような答案」を書くことが大事です。論文式試験の過去問を解いた後にお互いの答案を批評し合うことで、自分の考え方や勉強方法のズレに気づくことができます。


・試験・勉強方法に関する情報を得やすい

⇒質問者の方は予備校には通わない予定とのことですが、予備校に通っている仲間がいると、その仲間から予備試験・司法試験に関する情報(法改正、予想論点、使い勝手の良い新しい参考書など)の情報が得られる。




以上、司法試験予備校に(できるだけ)通わずに約1年で予備試験に合格する方法・参考書などについて私見を書きましたが、これから勉強を進めていく上でまた疑問点がまた出てくると思いますので、その際はまた質問してください。



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予備試験(司法試験)の論文式試験における手形法の勉強について


質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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働きながら予備試験の勉強をしているものです。
ひとつ、教えていただければ大変幸いです。
商法の試験範囲には手形法が含まれますが、どのように、また、どの程度勉強されましたでしょうか?
予備試験受験生ですので、当然、短答の対策はしておりますが、論文になりますと、正直全く書ける気がしません。出題可能性が低いために気力が湧かないというのもあるかもしれませんが
アドバイスいただけますでしょうか?
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私が受験生の時は予備試験は無かったため、ロースクール受験、司法試験受験をとおした経験と、自分がもし現在の予備試験の受験生だったらということを前提とした回答になります。




  • ○私がロースクールを受験した時

私がロースクールを受験する際、受験先のロースクールの入試で手形法が出題される可能性があったため、柴田孝之先生の「論文基礎力養成講座 商法・会社法」に載っている問題の範囲で、一応、手形法の勉強はしました。

ただ、質問者さんと同様に「出題可能性が低いために気力が湧かない」という状況であり、手形法についてはあまり理解ができていないままロースクール入試本番を迎えました。

そして、入学試験で運良く手形法が出題されなかったため、特に問題は生じなかった、というのが正直なところです。



  • ○私が司法試験を受験した時

私が司法試験を受験した時は、商法についても短答式があったため、短答式の過去問演習の範囲でのみ手形法の勉強をし、論文式試験については全く対策をしませんでした。

ロースクールで商法の教授からは「今後は手形は使われなくなるから、手形の勉強は各自でするように」と言われた記憶があります。

過去問を見る限り、司法試験の論文式試験では手形法の知識を正面から問うような問題は(現時点では)出題されたことは無いと思います。



  • ○予備試験について

予備試験については、論文式試験の過去問を見ると、平成24年平成28年に手形法の知識を正面から問う問題が出題されています。

そのため、現時点では、予備試験の本番で「手形法を勉強していなかったけれども、出題されてしまった」という事故を防ぐためには、ある程度は手形法の勉強をしておいたほうが良いはと思います。

ただ、今年(令和3年)の2月から3月頃にかけて、「経済産業省が2026年めどに約束手形の利用廃止を求める方針を決定した」という報道がありました。

(以下のサイトの「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」の「報告書」に詳細が記載されているようです。)



司法試験や予備試験は、裁判官・検察官・弁護士という実務家の資格を与えるための試験なので、上記の報道の内容をふまえると、実務的に使われなくなる可能性の高い手形について、予備試験でも出題が減ったり、無くなったりする可能性があると思います。

個人的には、今後の司法試験や予備試験の論文式試験で手形法の知識を正面から問う問題が出題される可能性は低いだろうとは思っていますが、前記のような事故を防ぐためには、現時点ではある程度の勉強はしておいたほうが良いと思います。



  • ○手形法の勉強はどこまでやるべきか

予備試験受験生であれば、短答式の勉強をする際に手形法の勉強もすることになるため、手形法について基本的な知識はインプットできるはずです。

そのため、論文式試験で手形法が出題された際には、短答式試験の知識をフル活用して、手元にある六法を頼りに、何とか解答をひねり出す(三段論法を守りつつ解答らしいものを作って軽傷で済ませる)、という方法もあると思います。

現実問題として、予備試験の論文式試験で手形法が真っ正面から出題された時に、質の高い答案を書ける受験生はそれほど多くないと思います。

そのため、条文を間違えずに指摘して、三段論法を守りつつ、それなりに説得力のある論証をすることができれば、大怪我を避けることは可能だと思います。


もっとも、質問者さんのように「短答式の勉強だけでは論文式試験でどのように書けば良いのかイメージがわかない」と方もいると思いますので、その場合には、論文式試験用の問題集や、論文式試験の解答的な解説がなされている予備校本を使って、論文式試験の答案のイメージを作っておく、という方法もあると思います。

別の記事で紹介している伊藤塾の「試験対策問題集」や辰巳法律研究所の「えんしゅう本」にも、数問程度、手形法の問題があったと思います。

★試験対策問題集

★えんしゅう本

数問という問題数は「時間がないので、基本的な問題に絞ってくれていたほうが助かる」と感じる人もいると思いますし、「問題集が少ないと不安」と感じる人もいると思うので、ご自身がどこまで手形法の勉強に時間割くことができるか等の事情をふまえた上で、本屋さんで実際に見てみて、自分の気に入ったものを選ぶと良いと思います。


その他、LECの「C-Book 商法II」という予備校本では、手形法に関する論点ごとに「問題の所在」「考え方のすじ道」という箇所に問題と解答例のような形で解説されています。

★C-Book 商法II

この「C-Book」に掲載されている主要論点を解答例に形でインプットしておけば、手形法の分野では試験が怖いということはなくなると思います。

ただ、現実的には、他の科目との兼ね合いで、手形法を予備校本で網羅的に勉強するための時間をとることは、かなり難しいと思います。


そのため、私が今の予備試験の受験生だった場合には、

(1)短答式の過去問演習で手形法の基本的な知識をインプットする

(2)それでも不安な場合には、「試験対策問題集」や「えんしゅう本」など、問題数が少なめの論文式問題集の解答例を読んだり写経したりして、解答のイメージを掴んでおく

(3)論文式試験で手形法が出際された際の過去問と合格者の再現答案(成績上位者の答案だけでなくボーダーラインの答案も)を読んで、少ない知識でどのように無難な答案を書くべきかをイメージしておく

というくらいで済ませると思います。


前記のとおり、政府も約束手形は廃止する方向で動いているようですので、今後は司法試験や予備試験で手形法の知識を正面から問う問題が減ったり、無くなったりする可能性があると思います。

令和3年度以降の予備試験の短答式の問題において、手形法の問題が著しく減ったり、無くなったりするようであれば、論文式試験でも手形法の分野が出題される可能性は低いと思いますので、今後の状況をふまえつつ、どこまで勉強するのかを判断したほうが無駄な勉強をしなくて済むと思います。


  • ○その他(蛇足です)

前記のとおり、私はロースクールで商法の教授からは「実務では今後は手形は使われなくなる」と言われていましたし、政府も約束手形を廃止する方針です。

しかし、実務に出てみると、中小企業などでは未だに手形を使っているところもあり、たまに手形がからんだ問題に出くわすこともあるため、私は「受験生の時にもう少し手形を勉強しておけばよかった」と思うことがあります。

「手形法の勉強をしようとしても、やる気が出てこない」という気持ちは、自分もそうだったので良く分かります。

手形法が良く分かっていないと私のように苦労することもあるかも知れませんので、実務で手形法の問題に出くわした時のことをイメージしながら勉強を頑張っていただければと思います。



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ロースクールの勉強と司法試験の勉強の両立などについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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今後の勉強方法について、アドバイスを頂けないでしょうか。
現在、ブログを参考に入門書を読んで、問題集を解くという方法を繰り返していたのですが、ロースクールに入学後はこのような勉強方法(問題集を解くことを繰返す)を継続すべきなのでしょうか。司法試験対策としては、このような勉強方法が重要なのかなと感じて入るのですが、どうしても、ロースクール卒業のために、授業の予習復習、課題や定期試験対策をメインとしなければいけないように感じています。
今後の勉強の仕方(ロースクールの勉強と司法試験の勉強の割合や、いつから短答の対策をはじめるべきかなど)について何かアドバイス等ありましたらお願い致します。
既習コースで入学しておりますが、仕事を半分休みながら2年間(令和3、4年)かけて、ロースクール2年目を履修し、仕事を完全休業(令和5年)しロースクール3年目を終える予定です。令和5年目の後期からは授業はかなり少なくなるような履修を計画しております。
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ロースクールの授業の予習・復習、課題、定期試験対策をどこまでやるかは、(1)ロースクールの単位認定の厳しさと、(2)ロースクールの授業と司法試験との関連性の程度、によって判断することになると思います。


例えば、私のいたロースクールでは、上記(1)と(2)の状況は以下のような感じでした。


憲法・民法・民事訴訟法
⇒(1)単位認定は緩い、(2)授業と司法試験との関連性の程度は低い

行政法
⇒(1)単位認定は緩い、(2)授業と司法試験との関連性の程度は中程度

商法
⇒(1)単位認定は緩い、(2)授業と司法試験との関連性の程度は高い

刑法・刑事訴訟法
⇒(1)単位認定はかなり厳しい、(2)授業と司法試験との関連性の程度は非常に高い



私のいたロースクールでは刑法・刑事訴訟法の単位認定が厳しかったです(毎年のように10%程度留年)。

他方で、先輩の話によると、刑法・刑事訴訟法についてはロースクールの定期試験である程度の成績を取ることができれば、司法試験でも容易に合格点が取れる、という話でした。

私は、ロースクールの初回の定期試験では刑法・刑事訴訟法ともに点数が悪く、周りの同級生は旧司法試験の勉強を何年も続けてきた猛者ばかりという状況でした。

そのような状況でしたので、既習1年目は、ロースクールの刑法・刑事訴訟法の予習・復習に費やす時間が多かったです。

ただ、ロースクールの予習・復習をしているだけでは定期試験で安定した点数を取ることは難しいと思い、既習1年目の夏休み(2ヶ月くらい)に伊藤塾の「試験対策問題集」のAランクの問題を中心に復習をし、基本的な知識・理解の定着に努めました。

その結果、ロースクールの後期の刑法・刑事訴訟法の定期試験の点数は安定するようになり、定期試験でも上位の成績をとることができ、既習1年目が終わる時点では刑法・刑事訴訟法の論文式試験の勉強は、それ以上あまりやらなくても十分だろうと思えるくらいのレベルになっていました。


また、ロースクールの民事訴訟法の授業がカオス過ぎて全く頭に入ってこなかった(学説の対立や最先端の論文の話ばかりで何が判例・通説なのか良く分からなかった)ので、既習1年目の段階で知識を整理するために同様に「試験対策問題集」のAランクの問題を中心に復習をしながら定期試験対策をしました。


その他の科目について、既習1年目の時点では主にロースクールの予習と定期試験対策(授業の復習)に追われていて、論文式問題集を回す時間はあまりなかったです。



既習2年目は主に、

・既習1年目であまり勉強ができなかった憲法・行政法・民法・商法(会社法)の自主ゼミを組んで論文問題集をこなす

・短答式の勉強を始める

・司法試験の論文式試験の過去問を解くゼミを組んで時間を計って答案を作成しお互いの答案を読みつつ批評をし合う

ということをしました。





以上の私の経験を踏まえると

・ロースクールに入学後に問題集を解くことを繰返すという勉強を継続すべきか

⇒ロースクールに入る前にどの程度まで問題集の知識・理解を高めることができたかによるが、ロースクールの定期試験に合わせて論文式問題集が使えるようであれば活用し、定期試験に追われて問題集を十分に回せなかった科目については既習2年目に復習をする。


・ロースクールの勉強と司法試験の勉強の割合

⇒ロースクールの勉強と司法試験の勉強の切り分けが難しいと思いますが、ロースクールの授業の予習・復習・定期試験対策をすることで司法試験の成績に直結する科目については、全力でロースクールの勉強をする。司法試験の成績に直結しないと思われる科目については基本的には単位を落とさない程度に最低限の勉強をする。


・いつから短答の対策をはじめるべきか

⇒既習1年目からやり始めるのが望ましいが、既習2年目から勉強をはじめても十分に間に合う。


相談者の方は、既習1年目を2年で、既習2年目を1年で履修されるようですので、その点は適宜読み替えていただければです。



なお、私はロースクールに入学する前は、基本的に論文式の問題集として伊藤塾の「試験対策問題集」又は柴田孝之先生の「論文基礎力養成講座」を使っていましたが、既習2年目はゼミの仲間が使っている問題集との兼ね合いで、以下の問題集も使っていました。

憲法  「事例研究 憲法」

行政法 「事例研究行政法」

民法  「民法総合・事例演習」

会社法 「ロースクール演習会社法」









これらの問題集は解答例が無かったり、今では改訂されておらず古くなっているものもありますので、予備校の問題集や、他の新しい問題集のほうが使い勝手が良いと思います。

特に「民法総合・事例演習」は今では使っている受験生はほとんどいないと思いますが、司法試験との関係ではオーバースペックなのでおすすめはしません。




論文式の問題集は、問題集を回すことが目的なのではなく、試験本番で合格答案を書けるようになるのが目的ですので、ロースクールの予習・復習・定期試験対策だけで合格答案が書けるレベルになるのであれば、敢えて使う必要はありません(ただ、実情としてロースクールの予習・復習・定期試験対策をしているだけで司法試験で合格答案が書けるような教育をしているロースクールはそれほど多くないように思われます。)

また、金銭的に余裕があるのであれば、論文式問題集を回すのではなく、予備校の答練を大量に受けて復習をすることで、合格答案が書けるレベルに持っていくというタイプの受験生もいます。


個人的には「問題集を回す」という勉強法は、時間的にも金銭的にもコスパが良い勉強法だと思いますが、ご自身が置かれている状況や、知識・理解の定着具合などを考慮しつつ、どの勉強方法をとるのが良いか判断されるのが良いと思います。


不明な点がありましたらコメント欄などに記載をしてください。



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東京リーガルマインド(LEC)の司法試験・予備試験用の書籍などについて

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います

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LECはあまりブログに出てきませんが、あまり評判は良くないのでしょうか。
・・・
レビューを見ると過去問の分析や短答等、他社の書籍より解説が薄いようですが択一六法以外は余り良くないのか評判を知りたいです。
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東京リーガルマインド(LEC)自体が評判が良くない、ということはないと思います。

旧司法試験時代から東京リーガルマインド(LEC)を利用したことのある受験生・合格者は相当な数だと思います。

私の同級生にもLECの入門講座を受けたことがある人が何人もいました。

弁護士に受験生時代の話を聞くと「司法試験予備校と言えばLEC」というような話をする人も未だに少なくないです。

伊藤塾の伊藤真先生がLECの講師をされていたのは有名な話ですし、他の予備校の有名な先生が実はLEC出身だった、ということもあります。

以前に比べると新興勢力の予備校が増えていることもあり、LECの勢いは落ちている感じはしますが、今でも大手の司法試験予備校であることに変わりはないと思います。



他の記事でも取り上げていると思いますが、私が受験生時代に使っていたLECの主な書籍は「C-Book」と「択一六法」です。







私が記事でお勧めしている書籍の多くは、基本的に私が受験生時代に使っていたもの、私の同級生の合格者の多くが使っていたもの、弁護士になった後に使ってみて良いと思ったものが中心です。

自分があまり使ったことがないものや、同級生などから使い勝手などの評判を聞いたことがないものをお勧めするのは無責任だと思うので、自分があまり知らない書籍はお勧めに挙げていないのですが、私がお勧めしていない書籍であっても、良い参考書や基本書は沢山あると思いますので、実際に本屋さんなどで手に取って自分の目で見てみて、自分に合いそうなものを選ぶのが良いと思います。

私が受験生の時は、「新」司法試験が始まって数年しかたっていなかったのですが、私の記憶では当時は新司法試験に対応した書籍の辰巳法律研究所が販売しているものが多かったと思います。

そのため、私がお勧めしている本の中では、辰巳法律研究所の本の紹介が多くなっています。

私が受験生時代にLECの問題集はほとんど使っていなかったので(「論文の森」という問題集を少し使ったことがあるくらい)、LECの問題集の紹介をしていませんが、LECの評判が悪いということはないと思います。


以下、私がLECの問題集に目をとおしてみた感想についてお話したいと思います。



  • ●論文式試験用の過去問

現在、LECからは「司法試験&予備試験 論文5年過去問 再現答案から出題趣旨を読み解く」(以下「論文5年過去問」)という本が出版されています。

「過去問の分析」については、論文式試験に関しては、個人的には掲載されている再現答案の数の多さ(順位の幅)があったほうが、得られるものが多いと思っています。

論文式試験の過去問の資料として、私が各記事で辰巳法律研究所の「ぶんせき本」をお勧めしている理由1つは、(年度にもよりますが)「ぶんせき本」では超上位の合格答案から、そこそこの合格答案まで幅広い再現答案が掲載されているので、論文試験でどのような論述をすれば点が付きやすいのかという感覚を身につけやすいという点にあります。

先日、LECの「論文5年過去問」をざっと見てみましたが、内容はシンプルであるものの、科目ごとに5年分の過去問の再現答案に目を通すことができるという視認性の良さは、「論文5年過去問」のほうにメリットがあると感じました。

「ぶんせき本」は全科目・単年度ごとの購入になりますが、「論文5年過去問」は科目別・過去5年分が掲載されているので、科目ごとに過去問を周回・分析したい場合には便利だと思います。


また、掲載されている再現答案については、「ぶんせき本」のほうが順位が高いものが多いものの、大きな差はないと感じました。


私が今の受験生であれば

過去問を単年度ごとにじっくりと分析したい 
⇒ 辰巳法律研究所の「ぶんせき本」


時間がないので短時間で科目ごとにとりあえず過去問と再現答案にざっと目を通したい
⇒LECの「論文5年過去問」

という基準で選ぶかな、と思います。


論文式試験の過去問の演習については、優秀な人とゼミを組めるのであれば、お互いに時間をはかって答案を書いて、お互いに答案を批評し合うという作業をすると、効率が良いです。

ゼミを組む場合には、同じゼミの人が使っている本と同じものを持っていたほうが批評をし合う場合に便利だと思うので、自分が受験生だったら勉強仲間が持っているものと同じほうを選ぶかも知れません。






  • ●短答式の問題集

LECからは現在、短答式の問題集として「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」という本が出版されていますが、先日、目をとおした範囲では「バランスのとれた一般的な問題集」という印象を受けました。

●司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集

解説が特別詳細という訳ではないですが、無駄な記述がある訳でもなく、解説を読んで分からない部分だけ基本書や判例集を参考にする、という使い方をすれば特に問題はないと思いますし、この問題集をマスターすれば、短答式試験は余裕でクリアできるはずです。


短答式の問題集については、正直、どの予備校の問題集も一長一短で、「絶対にこれが良い」というものはないと思います。

どの問題集であっても、実際に使ってみると解説に納得できない等の場面に出くわすこともありますが、どの問題集を使っていても、不満に感じる部分は出てくると思います。

なので「どこの予備校か」で選ぶのではなく、以下の要素を考慮した上で、今の自分の状況にあった問題集を選ぶのが良いと思います。


・問題の量
⇒問題の量が多いほうがマスターできれば本番で高得点ととれる可能性が高くなりますが、問題の量が多いと消化不良で終わって全範囲を網羅できないまま本番を迎えることになるリスクがあります。なので、本番までに自分自身が費やせる勉強時間を考慮した上で消化可能な量の問題集を選ぶほうが良いと個人的には思っています。


・解説の量
⇒解説の量が多いほうが逐一基本書や判例集を参照する手間が省けるというメリットがありますが、長文の解説を読んでいると当然時間もかかります。また、長々と説明されるよりも、シンプルな解説のほうがかえって分かりやすいという場合もあります。これも自分の勉強の進捗具合、理解力の程度、逐一基本書で調べたほうが頭に入るタイプか等によって、解説の量が多いものか、シンプルな解説のものかを選ぶと良いです。


・解説の傾向
⇒判例の判旨などを引用した上で「条文・判例がこう言っているからこれが正解(正解に至る細かい理由の説明なし)」というシンプルな解説が中心の問題集がある一方で、「条文・判例はこう言っているけど、こういう理屈で考えればこれが正解」という形で自分の頭で考えて正解を導けるように攻めた解説の内容になっている問題集もあります。前者は万人に受け入れれやすく読みやすいものの、頭に残りにくいというデメリットがあります。後者は頭に残りやすく論文式試験への応用が利くものの、解説者の解説の内容が自分の考え方と合わないと「余計な解説を入れないで・・・」とイライラしたりしてしまう場合もあります。


・一問一答式か本試験形式か
⇒一問一答式は速く回せますが、肢切り・個数問題等の練習ができないのと、飽きやすいというデメリットがあります。本試験形式は、その逆で、肢切り・個数問題等の練習ができますが、時間がかかるというデメリットがあります。


・体系別か単年度版か
⇒一般的に体系別の問題集のほうが頭に残りやすく学習効率は良いですが、試験までに十分な時間がないと消化不良になる可能性があります。単年度版は学習効率は劣りますが、短期間でとりあえず全範囲を網羅するという作業を繰り返すので、「一部の分野だけ全く勉強していない」という状況になるリスクが少ないです。



上記の視点でLECの「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」を見ると、以下のような印象を受けました。

・問題の量
⇒問題集としては一般的な量だが、十分な勉強時間を確保できない人にとっては、消化不良になる可能性がある量。「司法試験&予備試験 体系別短答過去問題集」には正答率の記載があるので、スケジュール的に厳しい場合には、正答率の高い基本的な問題を中心に回すか、問題数の少ない別の問題集を優先する等の工夫が必要と思われる。

・解説の量
⇒前記のとおり、解説は多くもなく少なくもない、というバランスの取れた量。逐一基本書や判例集を参照したくないという人にとっては物足りないと感じるかも知れないが、「解説はそこそこシンプルで良いからサクサクと進めたい」という人にとっては適度な量だと思われる。少なくとも「解説を読むのに時間がかかってなかなか前に進まない」ということはないはず。

・解説の傾向
⇒あまり攻めた詳しい解説はない。正解・不正解の理由として条文を内容を引用しているだけのものも多いが、それがかえって「余計な記述がなく読みやすい」と感じる人もいると思うので、好みの問題。

・一問一答式か本試験形式か
⇒本試験形式なので肢切り・個数問題の練習ができるが、前記のとおりタイムリミットには注意が必要。

・体系別か単年度版か
⇒体系別なので一般論としては頭に残りやすく学習効率は良いと思われるが、前記のとおりタイムリミットには注意が必要。


実際に自分の目で読んでみて、自分のスケジュール、勉強方法、性格に合いそうかチェックしてみるのが良いと思います。

ネットのレビューなども参考にするのも1つの考えですが、実際に自分の目で見て、自分の目的に合致した本か、読んでみてやる気がでそうか、といった観点から選んだほうが、後悔は少ないと思います。

結局、どの問題集・参考書を使っても合格する人は合格しますので、どの問題集・参考書を使うか悩んだ場合には、とりあえず使ってみて「違うな」と思ったら別の参考書に乗り換えるか検討する、というように、「走りながら考える」ほうが長期的に見ると無駄が少ない場合もあります。


それでも決められないという場合には、周りの受験生(できれば成績が良い人)にどの問題集・参考書を使っているか聞いてみて、一番シェア率が高かった本を使うというのも考え方の1つです。

「この問題集・参考書を使っていて大丈夫だろうか」と心配になった場合に、「他の多くの受験生もこの本を使っているから特に問題はないだろう」「優秀なアイツが使っているから間違いない」と自分に安心感を与えることができるので、勉強に集中しやすくなると思います。





  • ○柴田孝之先生の本など

その他、LECの講師である柴田孝之先生の本は個人的におすすめです。

柴田先生の本は、LECから出版されているものと、他社から出版されているものがあります。

柴田孝之先生の本は、このブログよりも数百倍、読む価値はあると思います(個人的な感想ですが)。



私は司法試験の勉強がある程度進んだ後に「試験勉強の技術」という本を読みましたが、柴田孝之先生の試験勉強に関する考え方やノウハウが凝縮されたような本で、勉強方法や勉強の進め方に悩んでいる人にとっては参考になると思います。

●試験勉強の技術




その他、私は司法試験の勉強を始めた頃に、隙間時間(仕事の昼休みなど)に「S式1問1答法律用語問題集」を読んでいました。

「基本書や学部ではちゃんと教えてくれないけど、法律を勉強する上では最初から知っておいたほうが良い知識」なども含めて、一問一答の形で整理されています。

細切れの時間を効率的に使って基本的な知識をインプットしたい場合にはおすすめです。

●S式1問1答法律用語問題集


その他に柴田孝之先生は様々な本を出しています。

かなり古い本ですが、個人的には「司法試験合格論文機械的作成法」という本なども参考になりました。

本屋さんなどで中身を見てみて、自分に合うと思った場合には活用すると良いと思います。


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忙しい社会人の予備試験・司法試験に向けた勉強時間の確保と勉強方法について(その2)

質問をいただきましたので、私見についてお答えしたいと思います。


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何度か質問させていただいているサラリーマンです(2.の方は私ではありません)。
まず、短答の成績は以下の通りです。憲法30、行政法17、民法12、商法15、民訴17、刑法21、刑訴13、教養33、合計158。
35年前に法学部を卒業しており、ゼミに入っていた憲法は、自分としては得意科目と思っています。また、学生の時は公法系の方が成績が良く刑事系も得意だと思っていました。他方、私法系はあまり成績も良くなく、商法は必修ではありませんでした。
論文試験が終わった時に一番手応えがあったのは刑法だったので、E評価はショックでした。
民法、商法は全く手応えがなく、F評価は納得です。
誤算と言えるのは一般教養で、A評価を取るべきところ、D評価は想定外でした。
ご指摘の通り、民法と商法の成績が芳しくないのは絶対的な勉強時間が足りておらず、基本ができていないせいだと思います。
また、刑事系は学生の頃から勉強すること自体は苦にならない科目だったので、民法、商法とともにしっかり勉強したいと思います。
そこでご相談なのですが、上記以外の憲法、行政法、民訴、実務の勉強についてはどの程度の時間配分を考えるべきでしょうか。
いずれも短期間で詰め込んだことは否定し得ず、年齢のせいか物忘れもあって、基本知識が定着している自信がありません。
もう一つは、短答の準備をどのくらいすべきか、ということです。今回の合格はギリギリで、しかも一般教養で受かったようなものだと思っています。
なお、自分の年齢からすると、異動の希望を出すのは難しいと思われますが、何とか時間を見つけて勉強していきたいと思います。よろしくお願い致します。
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以下の回答・説明は、「予備試験を一度受験して科目ごとの成績が分かっている」かつ「時間がほとんどない」という事情がある相談者さん用の回答であって、万人に向けたものではありませんので、相談者の方以外はその点にごついて注意ください。


  • 短答式対策について

短答式の結果を見ると、民法の得点率が40%、商法の得点率が50%ですので、やはり民事系の基本的な知識が足りないのだと思われます。

旧司法試験の時から「民法を制するものは司法試験を制する」という言葉がありましたが、民法は司法試験の基本になる科目です。

予備試験では民法の配点は他の科目と同じですが、司法試験の短答式では憲法・刑法よりも民法の配点が1.5倍多くなりますし、民法と商法は条文数が多く範囲が広いため、知識の穴があると論文式試験で大怪我をしやすい科目ですので優先して補強しておいたほうが良い科目だと思います。

そのため、短答式については知識勝負になる民法・商法を中心に、短答式過去問集を回すか、肢別本のアプリを回すなどして、基本的な知識を身につける必要があると思います。

その他、刑事訴訟法の得点率が50%を切っているあたりも気になりますので、他の点数の低かった行政法、民事訴訟法、刑事訴訟法についても短答式の勉強はできればやっておきたいところです。


「短答の準備をどのくらいすべきか」というご質問については、理想的なことを言えば、各科目について短答式過去問集か肢別本の8~9割程度を正解できるまで繰り返しやるべきです。

ただ、時間がないということですので、問題集等の8~9割程度を正解できるまでたどりつかないという可能性があります。

その場合には、民法・商法を優先した上で、実際に過去問集・肢別本を回していき、ある程度回した後は、正答率が低い科目を中心に復習していき、極端に苦手な科目を作らないようにしておく、方法で妥協せざるを得ないかも知れません。

憲法については満点を取っているようですので、憲法の短答式の勉強は知識を維持する程度で良いと思います。



  • 時間配分の考え方について


「憲法、行政法、民訴、実務の勉強についてはどの程度の時間配分を考えるべきでしょうか。」という点については、時間配分を先に考えるのではなく、最初に科目ごとに何をするべきかを考えた後に時間配分を決めるべきだと思います。

たとえば「民法については本番まで300時間勉強しよう」という目標を立ててしまうと、本番までに自分がやろうとしていた勉強が終わらない可能性が高いです。

それに対し、①「本番までに民法についてはこの作業をする」②「この作業には何時間くらいかかりそう」③「本番までに確保できる時間は何時間だから、他の作業との兼ね合いで民法については何時間を配分する」という順番で計画を立てた方が計画倒れになる可能性が低いですし、仮に計画倒れになりそうになっても途中で「このままでは計画倒れになる」ということに気づけるので、修正もききやすいです。




相談者さんが細切れ時間をどのくらい確保できるのかや、どのくらいの時間で各作業を終わらせることができるのか、といった要素によって時間配分の仕方は変わるため、はっきりと何割ずつ配分すべき、という回答をすることは難しいです。

そのため、各科目にやるべきことの案をお話した上で、時間配分の仕方の考え方の案についてお話します。


  • 憲法

憲法は短答式で満点を取っているにもかかわらず、論文式の成績はCということですので、論文式の問題の対処の仕方や、答案の書き方(何を書けば点が付きやすいのか等)がまだ十分に身についていない可能性があると思います。

憲法については基本的な知識はあると思いますので、論文式問題集の人権分野のAランクレベルの規範をきちんと覚えた上で、辰巳法律研究所の「ぶんせき本」などを読んで論文式の過去問の解き方を学んだり、予備校の答練の復習をすれば、憲法の論文式の成績は一気にあがる可能性があると思います。

憲法の答案の書き方が分からない場合には辰巳法律研究所の趣旨規範ハンドブックなどに問題の処理のテンプレートがありますし、各予備校で「憲法の答案の書き方講座」というような単発の講座をやっていたりするので、手っ取り早く予備校の力を借りるのもありだと思います。



  • 行政法

行政法は論文式で問われる範囲がある程度絞られているため、短答式試験の成績が悪くても論文式試験の成績は良い、ということがあり得る科目です。

行政法は短答式が17点であるものの、論文式がAということなので論文式の書き方は理解しているようにも思います。

ご自身の感覚として行政法の論文式試験についてはどのような問題であっても解法は理解できているということであれば、論文式についてはそれほど時間をかけなくても良いと思います。

他方、今回A評価を受けたものの、行政法の論文式の問題の解き方がまだマスターできていないという場合には、憲法と同様に辰巳法律研究所の「ぶんせき本」、予備校の答練、趣旨規範ハンドブックなどを使って、解き方を頭に入れておいたほうが良いでしょう。

短答式については、今回の試験で得点率が6割を切っているのは心許ないので、問題集・肢別本等を使って少なくとも7割程度は得点できるよう、基本的な知識のインプットをしたほうが良いと思います。


  • 民事訴訟法

民事訴訟法は、どちらかと言うと短答式試験と論文式試験の成績が比例しやすい科目だと思いますが、質問者さんの民事訴訟法の成績は、短答式が17点であるものの、論文式がBということで、若干ちぐはぐな印象を受けます。

可能性としては、自分が知っている範囲が論文式試験で出たか、他の受験生の論文式の出来があまり良くなかったために、相対的に成績が浮き上がった可能性もあるかも知れません。

民事訴訟法に関しては、短答式の知識をインプットしていれば、論文式試験では少なくとも「何を書いていいのか全く分からない」という事態にはなりにくい科目ですので、まずは問題集・肢別本等を使って短答式の勉強をし、できれば伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について、同じような答案を書けるように訓練をしておくと良いと思います。



  • 民事実務基礎・刑事実務基礎

私が受験生の時は予備試験は無く、実務基礎科目は法科大学院の定期試験対策でしかやっていないため、あくまで自分がもし現在の予備試験の受験生だったらということを前提とした回答になります。

実務基礎科目については、民法・刑法・刑事訴訟法を理解していないと勉強効率が悪いという特徴がありますし、他の受験生も十分な対策ができてない人が多い、というのが実情だと思います。

その点を踏まえて、私が時間がない受験生であれば以下のような勉強をすると思います。

・「新問題研究要件事実」に出てくる要件事実とその考え方を押さえる

・「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造」を読んで「新問題研究要件事実」には記載のない要件事実を押さえておく

・法曹倫理、刑事実務基礎については、予備校が出版している参考書か予備校の講義を利用してざっと頭に入れる

●新問題研究要件事実

●紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造

要件事実には色々な問題集や参考書があるので手を広げて色々なものを使いたくなるのですが、基本的には「新問題研究要件事実」と「紛争類型別の要件事実」の要件事実をきちんと理解していれば、予備試験、司法試験、司法修習の起案、二回試験のいずれにも対応できると思います(私も最初は色々と手を広げましたが、司法修習に入った後に上記の2冊に絞ったところ起案の成績が安定するようになりました)。

「紛争類型別の要件事実」は解説がシンプル過ぎて最初のうちは難しく感じると思いますので、岡口基一裁判官の「要件事実マニュアル」を辞書として手元に置いておき、分からない時に調べるようにしておくと理解がはかどると思います。

●要件事実マニュアル

「要件事実マニュアル」は司法試験レベルでは1巻と2巻があれば十分です。




民事実務基礎・刑事実務基礎に関し、予備校が出版している参考書については、以下のいずれか、または複数を使っている人が多いと思います。

●刑事実務基礎の定石

●司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック

●民事実務基礎 (伊藤塾試験対策問題集:予備試験論文)


予備校の講義は民事実務基礎・刑事実務基礎合わせて30時間くらいだと思いますので、予備校の講義をメインで対策する場合は復習もかねて40~50時間は確保しておく必要があると思います。



  • 刑法

刑法に関しては短答式で7割の得点があり、得意科目だと思っていて、一番手応えがあったのに論文式がE評価だった、というのが気になります。

刑法の論文式試験は、処理の仕方が身についていれば少ない知識でも高得点を取りやすい科目ですので、もし知識が十分であるにも関わらず論文式の評価が悪かったとすれば、論文の書き方、特に事実の当てはめと評価の仕方に問題があるのかも知れません。

できれば、再現答案を合格者や予備校の講師に見てもらうなどして、自分の弱点がどこにあるのか((ア)知識が足りていない、(イ)定義や規範の暗記が不正確だった、(ウ)事実の当てはめと評価の仕方に問題がある、(エ)記述量のバランスが悪い、(オ)それ以外)を分析してもらったほうが良いと思います。

(もし、周りに再現答案を見てくれる人がいないという場合には、再現答案を他の方に見られても良いのであれば、このブログのコメント欄等に貼り付ける等してもらえれば、時間のある時に目を通した上でコメントさせていただきます。)

刑法の勉強として何をやるべきかは、その分析が終わってから決めたほうが良いと思いますが、おそらく「事実の当てはめと評価の仕方に問題がある」の可能性が高いように思いますので、その場合には、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する、という作業が必要になってくると思います。




  • 刑事訴訟法

刑事訴訟法は短答式が13点、論文式がの評価がEということなので、基本的な知識に不足があるように思います。

また、刑事訴訟法の論文式試験は刑法と同様に、事実のあてはめや評価が重要であるため、刑法と同様に論文式の成績が悪かったということを考えると、刑事訴訟法についても、事実の当てはめと評価の仕方がまだ身についていない可能性があります。

伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題をマスターした上で、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する、という作業が必要になってくると思います。



  • 民法・商法

民法、商法については短答式の勉強をすれば基本的な知識は身につくと思いますが、論文式試験では規範を暗記していないときちんとした答案は書けないので、短答式の勉強とは別に最低でも伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題、あるいは趣旨規範ハンドブックで重要とされている論点の規範については、暗記をするという作業が必要になります。





  • 全体の勉強のまとめ

次の試験までどのような勉強をするかはご自身で決めていただく必要がありますが、時間がないということを前提に、全体の勉強方法の案の1つを提示すると以下のようになると思います。


・細切れ時間を使って民法・商法の肢別本のアプリを回す

・他の科目についても前回の試験の成績が悪かった科目を中心に肢別本のアプリを回す

・憲法の論文式について「ぶんせき本」・答練・趣旨規範ハンドブック・講座などを使って書き方を身につける

・行政法の論文式について「ぶんせき本」・答練・趣旨規範ハンドブックなどを使って書き方を身につける

・民事訴訟法について、伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について、同じような答案を書けるように訓練する

・「新問題研究要件事実」に出てくる要件事実とその考え方を押さえた上で、「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造」をざっと読み「新問題研究要件事実」には記載のない要件事実を押さえる

・法曹倫理、刑事実務基礎については、予備校が出版している参考書か予備校の講義を利用してざっと頭に入れる

・刑法について、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する

・刑事訴訟法について、伊藤塾試験対策問題集などの論文式問題集のAランクの問題について似たような答案を書けるようにする

・刑事訴訟法について、「ぶんせき本」や答練を通して論文式の優秀答案と同じような文章を書けるように訓練する

・科目全体について、最低でもAランクの問題、重要とされている論点の規範については、論文式試験本番までに暗記する


他にもやるべきことがあるかも知れませんが、上記の内容であれば、平日に細切れ時間を使って勉強時間を確保し、週末にある程度まとまった勉強ができれば、消化できるかも知れません。


そして、自分が本番までやるべきことを決めたら、

(ア)それぞれの作業をいつ、どこでやるのか(通勤途中に電車の中で何分やる、土曜日の何時から何時まで自宅の机でやる、毎日お風呂につかりながら何分やる、朝・夜の食事の時間にご飯を食べながら何分やる等)を決めて、試験本番までにどのくらいの勉強時間を割けるかを計算し、

(イ)そして、上記の作業について、これまでのご自身の勉強の進捗率などをもとに、ぞれぞれ何時間かかりそうかという予測を立て、

(ウ) (ア)と(イ)の時間をもとに、それぞれの作業を、いつからいつまでに、どこでやるというスケジュールを組んで、そのスケジュールに従って実行してみて、

(エ)実際にやってみると、スケジュールを調整しなければ本番まで間に合わないという場面が出てくると思いますので、適宜、優先順位の低い作業を切り落とす等して、スケジュールを再作成し、再度実行する、

という作業を繰り返すのが良いと思います。

このような計画を立てれば、自ずと、それぞれの作業にどのくらいの時間を割り当てるべきか、という回答が出てくると思います。




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